


海の上で働く人々――船員。
その仕事は過酷な自然環境の中、長期間にわたる乗船勤務を伴い、特有のリスクを抱えています。
そんな船員たちを守るために作られたのが「船員保険」です。
この制度は、一般の健康保険とは異なる独自の給付や手厚い保障が特徴であり、薬局薬剤師としても理解しておくと現場での対応力が格段にアップします。
この記事では、船員保険の基本からメリット・デメリット、活用のポイントまで、実例を交えて徹底的に解説します!
船員保険とは?一般の健康保険とどう違うの?


実は船員さん専用の保険制度なんだよ~。過酷な海上勤務に対応するために、一般の健康保険とはかなり違う仕組みになってるの!
船員保険は、船舶に乗って働く「船員」を対象とした公的医療保険制度です。
昭和15年に創設され、厚生労働省および全国健康保険協会(協会けんぽ)によって運営されています。
船員保険の対象者
日本船籍の船舶で働く船員で、船員法第1条の規定に基づく者が原則対象です。
外国籍でも対象となる場合があります。
船員保険の構成
現在の船員保険は、平成22年の制度改正によって整理され、以下のような給付構成になっています。
- 療養給付:一般の健康保険に準ずる医療費補助
- 傷病・出産・死亡給付:独自の手厚い給付(待機期間なし、3年支給など)
- 職務上災害給付:労災に加えた独自の休業補償や行方不明手当など

船で働く人たちを、海の上でも陸に上がってもずっと支えてくれる、そんな制度なんだね🌊
船員保険のメリットとは?他の保険制度と比べてどう違う?


他の保険制度にはない、独自の手厚い給付がたくさんあるんだよ~✨現場でも知っておくと便利!
◆ 傷病手当金がすぐもらえる&長期間支給!
一般の健康保険では3日間の待機期間があるのに対し、船員保険では待機期間なし!
さらに支給期間も最大3年間と長く、療養が長引いても安心です。
◆ 下船後も3ヶ月間、医療費が無料!
勤務中に発症した病気やけがについては、下船後3ヶ月間は自己負担なしで診療や調剤を受けられます。
薬局で保険証を確認した際、この制度が適用されると分かれば丁寧に案内しましょう。
◆ 出産手当金が妊娠判明時から支給!
健康保険では出産予定日の42日前からですが、船員保険はなんと妊娠が確認された日から支給開始!
つわりなど早期の症状でも休職中に経済的保障を受けられます。
◆ 行方不明時の補償がある
海難事故などで職務中に行方不明になった場合、家族に最大3ヶ月間の所得補償が支給されます。
他の保険制度にはない、船員ならではのリスクに対応した制度です。
◆ 労災に加え上乗せの補償がある
業務中のけがなどに対する労災保険だけでなく、船員保険独自の休業手当金(初日から100%補償)など、二重の補償体制が整っています。

健康保険よりも保障が充実してるから、船員さんにとってはまさに“命綱”のような制度だね!
船員保険の注意点とは?適用外になるケースもある?


実はあるんだよ〜。適用外になっちゃうケースや、申請のときの注意点も見逃せないよ!
◆ 加入対象者に制限がある
船員法第1条に該当する「船員」に限って強制加入となります。
観光業や釣り船など、該当しない職種は対象外。また、外国籍でも日本船籍であれば対象になるケースもあります。
◆ 傷病手当金の申請に「事業者証明」が必要
給付申請には、船舶所有者からの証明書(療養状況報告書など)が必要です。
退職や下船後に自力申請する場合は、申請書類の取得に手間がかかることがあります。
◆ 下船前に発症した慢性疾患は対象外になることも
たとえば下船前から続いている虫歯、歯周病、慢性皮膚疾患などは、職務外と判断されて対象外になる可能性があります。
◆ 任意継続期間中の制限も
退職後でも任意継続被保険者になれば最大2年間は保険が使えますが、独自給付(傷病手当金や出産手当金など)は対象外となるため注意が必要です。
◆ 海外渡航中は一部給付が制限されることも
外国寄港中や海外勤務中には、一部の医療費補助や給付申請が制限される可能性があるため、船舶会社を通じた事前確認が重要です。

ポイントは「職務中の発症かどうか」や「事業者の証明が取れるか」だよ~!申請書類は丁寧にチェックしようね。
薬局での対応ポイントは?船員保険の患者さんが来たらどうする?


大丈夫!ポイントを押さえておけば、船員さんにも安心して対応できるようになるよ✨
◆ 船員保険証の確認
保険証には「船員保険」と記載されています。
まずは傷病手当金や出産手当金の対象になるか確認しましょう。
特に「任意継続者」か「現役被保険者」かで給付内容が変わるので要注意です。
◆ 下船後3ヶ月以内かどうかをチェック
患者さんが「下船後」の場合、3ヶ月以内であれば療養費は全額公費扱いになる可能性があります。
薬局レセプトに反映する際には「全額公費」欄に入力するか、医療機関と連携しましょう。
◆ 傷病手当金対象の場合は診療情報を丁寧に記録
船員保険では申請書に「療養状況証明」が必要です。
医師の診療情報に基づいて処方内容も問われることがあるので、疑義照会や確認はしっかり行いましょう。
◆ 出産手当金や育児給付に関する情報提供
船員保険では妊娠判明から手当金支給が始まります。
妊婦さんへの声かけで「早めに申請できますよ」と案内すると、患者さんの安心感につながります。
◆ 行方不明手当や労災上乗せには薬局の関与は限定的
これらの給付は保険者と事業主との連携で処理されますが、制度知識があることで、家族や同乗者への説明時に信頼感を与えられます。

患者さんとのちょっとした会話の中から制度に気づいて、しっかりサポートしていけたらいいね♪
処方日数の制限は?船員保険だと特例があるの?


そうそう、船員さんは乗船中なかなか病院に行けないから、処方日数の特例があるんだよ〜!
◆ 原則として30日ルール
通常の保険診療と同様に、船員保険でも原則は30日を超える処方は認められていません(特に新規薬など)。
◆ 特例として長期処方が可能なケース
ただし、船員が長期間乗船予定で医療機関にかかれないことが明らかな場合は、医師の判断により30日を超える処方が可能です(厚労省通知等に基づく)。
◆ 実際の取り扱い
- 処方せんには「船員である旨」と「長期処方が必要な理由」が記載されることが多い
- 医師による文書記載がない場合、調剤薬局では30日までの処方とみなされることが多い
- リフィル処方せんの活用は、船員の乗船期間と適合するか確認が必要
◆ 薬局での対応のポイント
- 30日超えの処方が出された場合は、「長期投薬理由」の記載を確認
- 薬歴には「長期処方理由」「乗船予定」などの補足情報を記載しておく
- 疑義がある場合は医師に必ず確認し、患者さんの不利益にならないように丁寧に説明を行う

特に離島航路や海外航海のある船員さんは、2ヶ月分とか希望されることもあるから、柔軟に対応しようね!
向精神薬も船員保険で処方できる?長期投与は可能?


保険適用自体はされるけど、「向精神薬」には厳しいルールがあるから、処方日数には特に注意が必要だよ!
◆ 向精神薬も保険適用はされる
抗うつ薬、抗不安薬、睡眠薬(ベンゾジアゼピン系など)も、適応疾患に対して適正に処方される限り、船員保険でも保険適用されます。
◆ 長期処方には制限あり(30日以内)
- 新規処方時:向精神薬は通常30日以内に制限されます。
- 継続処方でも:習慣性のある薬剤(ゾルピデム、エチゾラムなど)は30日を超える処方が原則不可です。
◆ 船員だからといって例外にはならない
乗船中で医療機関を受診できない事情があっても、向精神薬の30日制限は原則厳守とされています。
厚生労働省の通達でも、「長期航海予定等を理由とした向精神薬の30日超処方」は基本的に認められていません。
◆ 薬局での対応ポイント
- 処方内容が30日を超えていないかを確認する
- 疑義がある場合は、医師に「長期処方の理由と根拠」を確認
- リフィル処方せんを活用するケースもあるが、向精神薬には適応不可であるため注意が必要

「乗船予定だから多めに…」って頼まれても、向精神薬だけは別ルールだから要注意だよ~⚠️
新薬の投与日数は?船員保険でも制限されるの?


そうそう、新薬は船員保険でも基本は「14日・30日ルール」があるよ〜。例外はあっても慎重に扱おうね!
◆ 新薬の投与日数は「原則14日制限」から
薬価収載から1年以内の新薬(新有効成分含有医薬品など)は、原則14日以内の投薬日数制限があります(保医発0325第1号など)。
◆ 一部の新薬は「30日以内」に緩和されるケースも
発売1年未満でも、安定性が高いと判断されている一部薬剤は30日制限まで緩和されることがあります。これは厚労省や保険者の通知に基づき判断されます。
◆ 船員保険も健康保険と同じ日数制限を遵守
船員保険は健康保険の療養給付をベースにしているため、新薬の投与制限ルールも共通です。
つまり、「乗船期間が長いから」といって14日や30日の制限を超える処方は認められません。
◆ 注意:制限日数超過時の調剤は査定・返戻リスクあり
- 新薬で30日以上の処方が出ていた場合、薬歴や処方箋備考欄に根拠がないと査定の対象に
- 船員でも、特別な通達や例外通知がない限りは必ず疑義照会が必要

新薬が処方されたら「収載からの経過期間」と「薬効分類」をまずチェック!安全性のためにも大切だね♪
実際の症例は?薬局での対応例を紹介!


あるある!実際の事例をいくつか紹介するね〜☺️
◆ 症例①:下船後の慢性疾患継続治療
50代男性、外航船勤務の船員。高血圧と糖尿病で定期的に内服治療中。
下船から2週間経過時に来局し、医師の診断書付きで3ヶ月分の処方せんを持参。
→ 薬局では、船員保険証の提示と「下船後3ヶ月以内」の確認を行い、自己負担0円で調剤対応。
- 処方内容は制限のない内服薬だったため、長期処方可。
- 薬歴には「船員保険、下船2週間目、3ヶ月療養対象」と明記。
◆ 症例②:睡眠薬の長期投与希望
40代男性、内航船勤務。乗船前に不眠症で通院し、ゾルピデム10mgを希望。
処方せんには「乗船のため2ヶ月分処方希望」と記載あり。
- ゾルピデムは向精神薬に該当し、30日制限があるため疑義照会を実施。
- 医師と相談のうえ、30日分のみ調剤し、残りは乗船後の対応を検討。
◆ 症例③:妊娠初期の出産手当金案内
30代女性、外航船員の配偶者。妊娠判明後につわりで受診し、処方せんを持参。
本人が「船員保険の被扶養者」であると申し出たため、妊娠初期から出産手当金が出る可能性を案内。
- 薬局での制度案内により、患者は協会けんぽに即日相談。
- 「船員保険でも出産手当金が妊娠時点から出る」と知り感謝された。

現場で船員さんに会ったとき、少しの制度知識が大きな安心につながることもあるんだよ♪
まとめ
船員保険は、海上勤務という特殊な環境で働く人々を支える公的医療制度です。
健康保険と同じように見えて、実は全く違う独自の手厚い給付が特徴です。
- 傷病手当金が最長3年支給、しかも待機期間なし!
- 出産手当金は妊娠判明日から支給スタート!
- 下船後も3ヶ月間は医療費無料で通院・調剤可能!
- 職務中の事故や行方不明に対しても給付あり!
- 薬局対応でも、日数制限・公費請求・疑義照会など知識が求められる!
薬局では、保険証の種類を見落とさず、患者さんの背景をくみ取った対応が大切です。
船員保険についてしっかり理解しておくことで、患者さんとの信頼関係の構築にもつながります。

船員保険、薬局でも見逃せない制度だよね!この記事を読んだら、明日からの対応もバッチリだね😊
船員保険について理解度チェック!クイズで確認しよう
Q1. 船員保険の傷病手当金の支給期間として正しいのはどれ?
- ① 最長1年
- ② 最長1年6ヶ月
- ③ 最長3年
- ④ 制限なし
答え:③ 最長3年
船員保険では、傷病手当金の支給期間が健康保険の1年6ヶ月よりも長く、最長3年間となっています。さらに、待機期間も不要で初日から支給される点が大きな特徴です。
Q2. 船員保険で出産手当金が支給開始されるのはいつから?
- ① 出産予定日の42日前
- ② 出産予定日の28日前
- ③ 妊娠が判明した日
- ④ 出産当日
答え:③ 妊娠が判明した日
船員保険では、健康保険よりも早い段階から手当金の支給が始まります。妊娠が判明した日から手当金の支給が可能で、つわりなど妊娠初期症状で休む際にも経済的サポートが受けられます。
Q3. 船員保険証を提示した患者が、下船から2ヶ月経過している場合の自己負担は?
- ① 全額自己負担
- ② 3割負担
- ③ 自己負担なし(公費対応)
- ④ 医療機関によって異なる
答え:③ 自己負担なし(公費対応)
船員保険では、下船から3ヶ月間は、医療費・調剤費が自己負担なしで受けられます(職務起因疾患の場合)。この制度により、海上勤務を終えた後の通院も安心です。
Q4. 船員保険の患者さんに30日を超える向精神薬が処方された場合、薬局で最も適切な対応は?
- ① そのまま調剤して問題ない
- ② 保険者に電話して確認する
- ③ 医師に疑義照会を行う
- ④ 患者に確認して自己判断で減薬する
答え:③ 医師に疑義照会を行う
向精神薬は習慣性のある薬剤が多く、30日を超える処方は原則禁止されています。たとえ船員保険の患者で長期乗船が予定されていても、例外にはならないため、必ず医師に疑義照会を行い、処方の意図を確認する必要があります。
Q5. 船員保険証を持参した患者に対し、下船後3ヶ月以内かどうかを確認する理由は?
- ① 処方箋の有効期間が変わるから
- ② 高額療養費の限度額が変わるから
- ③ 自己負担がゼロになる可能性があるから
- ④ 調剤基本料が変動するから
答え:③ 自己負担がゼロになる可能性があるから
船員保険では、下船後3ヶ月以内は、勤務中の疾病や負傷であれば医療費・調剤費が自己負担なしで受けられます。薬局でもこの制度が適用されるかを確認し、保険請求処理を正しく行うことが求められます。
Q6. 船員保険証で「任意継続被保険者」と記載されていた場合、注意すべきことは?
- ① 保険は使用できない
- ② 傷病手当金などの給付がない可能性がある
- ③ 自己負担が5割になる
- ④ 期限がないのでいつまでも使える
答え:② 傷病手当金などの給付がない可能性がある
船員保険の任意継続被保険者は、保険証を使用して診療・調剤を受けることは可能ですが、独自給付(傷病手当金や出産手当金など)は対象外となる場合が多いため、給付を期待して申請するとトラブルになることもあります。
よくある質問(Q&A)
Q. 船員でなくても船員保険に加入できますか?
A. いいえ。原則として、船員法第1条に該当する船員、およびその配偶者などの被扶養者でなければ加入できません。観光業や副業としての乗船など、船員法上の船員と認められない場合は対象外となります。
Q. 下船後3ヶ月を超えて療養を継続したい場合はどうすれば?
A. 下船後3ヶ月を過ぎると、自己負担が原則3割発生します。
引き続き公費負担を希望する場合は、任意継続被保険者手続きを検討するか、地方自治体の援助制度なども併せて活用することをおすすめします。
Q. 向精神薬を長期処方したい場合はどこに問い合わせればいいですか?
A. 医師に疑義照会を行い、「長期処方の理由と根拠」を十分に確認してください。疑義が解決しない場合は、保険者(協会けんぽや日本年金機構)にも確認を依頼する必要があります。
Q. 任意継続で入った場合、出産手当金はもらえますか?
A. いいえ。任意継続被保険者になった場合、傷病手当金・出産手当金などの独自給付は対象外となります。そのため、出産費用の補償を受けたい場合は、別途健康保険未加入者向け制度や助成制度をご確認ください。
Q. 行方不明手当金は薬局でも案内できますか?
A. 行方不明手当金は船舶所有者と保険者の手続きによる給付です。薬局から申請や受給を直接行うことはできませんが、制度の存在を教えてあげることで、患者さんや家族の安心感を高める説明が可能です。
参考文献
- 全国健康保険協会「船員保険制度の目的」
- 日本年金機構「Seamen’s Insurance System」
- ICHINOSE PARTNERS「船員労働の基本(船員保険)」
- 厚生労働省 通達「向精神薬の投薬期間につ
- 厚生労働省 医薬食品局 通達(麻向発0215第1号)








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