※医学的には、くも膜下出血後に「言葉が出にくい/理解に時間がかかる」などの症状が目立つことがあり、言語聴覚療法(ST)やリハの対象になります。脳卒中領域では言語障害に対するリハの推奨が示されています。
※高次脳機能障害(注意・記憶など)の考え方や訓練・対応は、公的な情報源(国立障害者リハビリテーションセンター)でも整理されています。
※脳卒中後の言語療法について、Cochraneレビュー要約では「集中的な訓練が機能的コミュニケーション等の改善につながりうる」一方で負担面の課題も示されています。



前書き:その“言葉の出にくさ”は、気合い不足ではありません
くも膜下出血(SAH)後に、言葉が出にくい/理解に時間がかかる/会話がしんどいという変化が目立つことがあります。これは「怠け」でも「根性不足」でもなく、脳のネットワークがダメージを受けたり、回復過程で“脳の処理速度”や“注意・記憶”が落ちたりすることで起こりえます。
この記事では、医療者としての一般的な情報提供として、次の順で説明します(個別の診断はできません)。
- くも膜下出血後に会話が難しくなる主な理由(後遺症の可能性)
- 「どんな状況が体の中で起きているのか」:脳の働きのイメージ図
- 改善のための王道:言語聴覚療法・認知リハ・生活調整
- 今日からできる「うまく喋れる秘訣」:会話の設計、言い換え、準備の技
- 受診の目安(要注意サイン)

本文:くも膜下出血後に「言葉が出ない/咀嚼が遅い」が起きる理由
1. まず整理:それは“失語症”だけじゃない
「言葉が出ない」と聞くと、真っ先に失語症(言語そのものの障害)を連想しがちです。もちろん失語症は重要ですが、くも膜下出血後はそれ以外に、次の要素が組み合わさって“会話が難しくなる”ことがよくあります。
| 起きやすい要素 | 本人の体感 | 外から見える様子 |
|---|---|---|
| 失語(言語機能) | 言いたい単語が出ない/言い間違える | 言いよどみ、言い換え、誤り |
| 注意・ワーキングメモリ | 相手の話を保持できない/途中で迷子 | 聞き返しが増える、話が飛ぶ |
| 処理速度の低下 | 頭の中の変換に時間がかかる | 返事が遅い、沈黙が長い |
| 疲労・脳疲労 | 午前は平気、夕方ガクッ | ミス増、言葉が崩れる |
| 感情(不安・抑うつ) | 焦ると真っ白、頭が固まる | 早口・沈黙・自己否定 |
つまり、「言語」+「注意・記憶」+「処理速度」+「疲労」+「感情」の“ミックス”として現れやすいのが特徴です。
ここを分解して対策すると、改善の糸口が見えやすくなります。

2. 体の中で何が起きてる?:脳を“会話工場”としてイメージする
脳をざっくり「会話工場」にたとえると、会話は次の工程で動いています。
- 相手の言葉を耳で受け取り(入力)
- 意味を理解して(理解)
- 返事の内容を考え(企画)
- 言葉を選び(単語検索)
- 文に組み立て(文生成)
- 口・舌・声で出力(発話)
くも膜下出血後は、脳のどこか1か所だけでなく、工程同士をつなぐ“ネットワーク(白質の配線)”が弱ることがあります。すると「単語は思い浮かぶのに口から出るまで時間がかかる」「理解の工程に遅れが出る」など、“一歩ずつ遅れていく”感覚が起きやすいです。
(図)会話が詰まるポイント(簡易イメージ)
| 工程 | 詰まり方の例 | その場のコツ |
|---|---|---|
| 理解 | 言われた内容が頭に入らない/追えない | 要点を1つずつ、復唱して確認 |
| 企画 | 返事を考えるのに時間がかかる | 「少し考えるね」と宣言して間を確保 |
| 単語検索 | 名前・単語が出ない(喉まで) | 特徴説明→言い換え→指差し |
| 発話 | 口が回らない/詰まる | 短く区切ってゆっくり |
3. なぜ“くも膜下のあと”に目立つの?:代表的な背景
くも膜下出血では、出血そのものに加えて、回復の途中でさまざまな二次的要因が起こりえます。全部が全員に当てはまるわけではありませんが、代表例を挙げます。
- 脳血管攣縮(れんしゅく)や微小梗塞:一時的に血流が落ち、言語・注意のネットワークに影響が出ることがある
- 水頭症や髄液循環の変化:ぼんやり・処理の遅さとして出ることがある
- 前頭葉ネットワークのダメージ:計画、注意配分、切り替えが弱り「会話が追えない」へ
- 脳疲労(易疲労性):回復期は脳が“節電モード”になりやすく、負荷が高い会話で露呈しやすい
- 睡眠障害・うつ・不安:どれも言語の取り出し速度を下げる(治療対象)
ここで大事なのは、「後遺症=一生固定」ではないということです。
脳は回復に時間がかかりますし、訓練と環境調整で“使いやすい回路”を育てる余地があります。

4. それ、後遺症?:目安になる「3つの見分けポイント」
医療機関で評価するのが一番確実ですが、セルフチェックの目安として「後遺症らしさ」を感じやすいポイントを3つ紹介します。
| ポイント | 後遺症として起きやすいパターン | 補足 |
|---|---|---|
| 再現性 | 同じ場面(電話、雑談、会議)で繰り返し起こる | “特定の負荷”で出やすい |
| 疲労依存 | 疲れると顕著、休むと少し戻る | 脳疲労・注意低下のサイン |
| 複合 | 言葉だけでなく、注意・記憶も絡む | 高次脳機能障害の要素 |
「以前からあったけど、くも膜下後に目立つ」は、“もともとの特性に、脳の処理余力の低下が上乗せされた”という説明がしっくり来ることがあります。
ただし、急に悪化した/新しい神経症状が出た場合は別です(後述の受診の目安へ)。
5. 改善の王道:評価→訓練→生活設計(この順が近道)
「うまく喋れる秘訣」はたくさんありますが、遠回りしないための王道はこの3段階です。
- 評価:どの工程が詰まっているかを見える化(失語検査、注意・記憶、処理速度など)
- 訓練:言語聴覚療法(ST)+必要に応じて認知リハ、心理的ケア
- 生活設計:疲労管理、環境調整、会話の“設計”で成功体験を増やす

:今日からできる「うまく喋れる秘訣」15選(会話の設計図)
ここからは、外来STでもよく使う「その場の工夫」をまとめます。“脳の処理を減らす”か“時間を買う”のが基本戦略です。
【A】時間を買う:沈黙を“気まずさ”から“作戦”へ
- ①宣言して間を作る:「少し考えるね」「ゆっくりでいい?」と先に言う
- ②復唱してバッファを作る:「えっと、つまり○○ってことだよね?」
- ③メモの許可を取る:「メモしながら聞いてもいい?」
- ④会話の速度を交渉する:「結論から短く言ってもらえると助かる」
【B】単語が出ない時の“回り道”は正義
- ⑤特徴説明(迂回):「白くて四角い、冷蔵庫に貼るやつ(=マグネット)」
- ⑥カテゴリーで攻める:「食べ物」「薬」「場所」など枠を先に置く
- ⑦反対語・近い言葉:「暑いの反対」「大きいじゃなくて…」
- ⑧ジェスチャー・指差し:視覚ルートは強い味方
- ⑨固有名詞は諦めてOK:人名・店名は特に出にくい。役割で言う(「担当の先生」「駅前のスーパー」)
【C】理解が遅い時:入力を“細切れ”にする
- ⑩一文一義にしてもらう:長い説明は分割依頼
- ⑪重要語だけ拾う:名詞と数字をメモ(例:日時・場所・金額)
- ⑫確認はYes/No化:「AかBならどっち?」に変換してもらう
【D】疲労対策:会話は“筋トレ”と同じで配分が命
- ⑬会話の予定を午前に寄せる:脳の余力がある時間帯に重要な話
- ⑭「3割余裕」で切り上げる:疲れ切る前に終えると回復が早い
- ⑮休憩ルールを先に決める:30分話したら5分休む、など
この15個は、根性論ではなく情報処理の設計です。できそうなものを2〜3個だけ選んで、1週間試してみるのがコツです。

症例・具体例:同じ“言葉が出ない”でも中身が違う
ケース1:返事が遅い(処理速度+注意)タイプ
状況:雑談では何とかなるが、複数人の会話や電話で置いていかれる。返事に時間がかかり「無視?」と誤解される。
体の中:相手の言葉を保持するワーキングメモリが弱り、処理が追いつかない。
実践:「少し考えるね」と宣言→要点メモ→質問をYes/No化で会話を単純化。重要な電話は“要件メモ”を手元に置く。
ケース2:単語が出ない(語検索)タイプ
状況:物の名前、人名、店名が出ない。説明はできるのに単語だけが欠ける。
体の中:言語ネットワークの“検索”が遅い。焦りでさらに検索が詰まる。
実践:特徴説明→近い言葉→ジェスチャーの順で“回り道”を習慣化。固有名詞は役割で置き換え、必要ならスマホのメモにリスト化。
ケース3:疲れると一気に崩れる(脳疲労)タイプ
状況:午前は平気なのに夕方は会話が成立しない。
体の中:脳のエネルギー配分が不安定で、負荷の高い会話が最後に残る。
実践:重要な用事は午前、夕方は“聞く専門”にする。1日の会話量に上限を作り、休憩を「予定」に組み込む。

⑤まとめ:言葉の出にくさは「工程の詰まり」—分解すれば対策できる
- くも膜下出血後の「言葉が出ない/咀嚼に時間」は、失語だけでなく注意・処理速度・疲労などの複合で起こりやすい
- “どこで詰まるか”を見える化すると、訓練と工夫が効きやすい
- 王道は「評価→言語聴覚療法(ST)→生活設計」
- 今日からは「時間を買う」「回り道で伝える」「入力を細切れ」「疲労管理」の4本柱で成功体験を増やす
そして何より、あなたのつらさは“説明できる症状”であり、工夫と支援で軽くできる可能性がある—ここを覚えておいてください。
⑥よくある質問
Q1. 失語症か高次脳機能障害か、どう見分けますか?
自己判断は難しいです。言葉そのもの(理解・発話・読み書き)に偏るなら失語の要素が強く、注意・記憶・切り替え・疲労で波が出るなら高次脳機能の要素が混じりやすいです。どちらも併存することがあるので、言語聴覚士や医師の評価が近道です。
Q2. どこに相談すればいい?(受診先の目安)
まずは主治医(脳外科・神経内科)に「会話で困っている」ことを具体例つきで伝え、言語聴覚療法(ST)や高次脳機能評価につながるルートを相談します。地域によっては高次脳機能障害の情報・支援センターや専門外来の情報が役立ちます。
Q3. どれくらいで良くなりますか?
個人差が大きいです。回復には時間がかかる一方、訓練や環境調整で「日常会話が楽になる」「伝え方が上手くなる」など実感が出ることは珍しくありません。焦りは症状を悪化させやすいので、短距離走ではなく“長期のリハ”として設計するのがおすすめです。
Q4. 薬で良くなりますか?
言語そのものを「飲めば治す」薬は一般にありません。睡眠障害、うつ、不安、痛みなどがあると会話がさらに難しくなるため、それらを治療することで“話しやすさ”が上がることはあります。薬の変更・追加は必ず主治医に相談してください。
Q5. 家族や周囲はどう関わればいい?
周囲の協力はとても効果的です。ポイントは、「急かさない」「一文を短く」「Yes/Noで確認」「メモや指差しを歓迎」。本人が話しやすい“会話の場”を一緒に作るのが支援になります。
Q6. すぐ受診すべき危険サインは?
次がある場合は早めに医療機関へ:急な悪化、激しい頭痛、麻痺・しびれ・ろれつの急な悪化、意識がぼんやり、けいれん、歩行のふらつきが増えた等。くも膜下出血後は再発だけでなく、別の合併症もあり得ます。ためらわず相談してください。

⑦参考文献(最終確認日:2026-01-13)
- 脳卒中治療ガイドライン 2021〔改訂2025〕(日本脳卒中学会)
- 脳卒中急性期リハビリテーションの指針(2023年5月1日)(日本脳卒中学会)
- 高次脳機能障害情報・支援センター(国立障害者リハビリテーションセンター)
- 医学的リハビリテーションプログラム(国立障害者リハビリテーションセンター)
- 脳卒中後の言語障害に対する言語療法(Cochraneレビュー要約)
- 失語症に対するCI療法(J-STAGE)
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薬剤師向け転職サービスの比較と特徴まとめ


今日は、特徴をわかりやすく整理しつつ、読んでくださる方が自分の働き方を見つめ直しやすいようにまとめていきましょう。
働く中で、ふと立ち止まる瞬間は誰にでもあります
薬剤師として日々働いていると、忙しさの中で気持ちに余裕が少なくなり、
「最近ちょっと疲れているかも…」と感じる瞬間が出てくることがあります。
- 店舗からの連絡に、少し身構えてしまう
- 休憩中も頭の中が業務のことでいっぱいになっている
- 気づけば仕事中心の生活になっている
こうした感覚は、必ずしも「今の職場が嫌い」というわけではなく、
「これからの働き方を考えてもよいタイミングかもしれない」というサインであることもあります。
無理に変える必要はありませんが、少し気持ちが揺れたときに情報を整理しておくと、
自分に合った選択肢を考えるきっかけになることがあります。
薬剤師向け転職サービスの比較表
ここでは、薬剤師向けの主な転職サービスについて、それぞれの特徴を簡潔に整理しました。
各サービスの特徴(概要)
ここからは、上記のサービスごとに特徴をもう少しだけ詳しく整理していきます。ご自身の希望と照らし合わせる際の参考にしてください。
・薬剤師向けの転職支援サービスとして、調剤薬局やドラッグストアなどの求人を扱っています。
・面談を通じて、これまでの経験や今後の希望を整理しながら話ができる点が特徴です。
・「まずは話を聞いてみたい」「自分の考えを整理したい」という方にとって、利用しやすいスタイルと言えます。
・全国の薬局・病院・ドラッグストアなど、幅広い求人を取り扱っています。
・エリアごとの求人状況を比較しやすく、通勤圏や希望地域に合わせて探したいときに役立ちます。
・「家から通いやすい範囲で、いくつか選択肢を見比べたい」という方に向いているサービスです。
・調剤薬局の求人を多く扱い、条件の調整や個別相談に力を入れているスタイルです。
・勤務時間、休日日数、年収など、具体的な条件について相談しながら進めたい人に利用されています。
・「働き方や条件面にしっかりこだわりたい」方が、検討の材料として使いやすいサービスです。
・調剤系の求人を取り扱う転職支援サービスです。
・職場の雰囲気や体制など、求人票だけではわかりにくい情報を把握している場合があります。
・「長く働けそうな職場かどうか、雰囲気も含めて知りたい」という方が検討しやすいサービスです。
・薬剤師に特化した職業紹介サービスで、調剤薬局・病院・ドラッグストアなど幅広い求人を扱っています。
・公開されていない求人(非公開求人)を扱っていることもあり、選択肢を広げたい場面で役立ちます。
・「いろいろな可能性を見比べてから考えたい」という方に合いやすいサービスです。
・調剤薬局を中心に薬剤師向け求人を取り扱うサービスです。
・研修やフォロー体制など、就業後を見据えたサポートにも取り組んでいる点が特徴です。
・「現場でのスキルや知識も高めながら働きたい」という方が検討しやすいサービスです。
気持ちが揺れるときは、自分を見つめ直すきっかけになります
働き方について「このままでいいのかな」と考える瞬間は、誰にでも訪れます。
それは決して悪いことではなく、自分の今とこれからを整理するための大切なサインになることもあります。
転職サービスの利用は、何かをすぐに決めるためだけではなく、
「今の働き方」と「他の選択肢」を比較しながら考えるための手段として活用することもできます。
情報を知っておくだけでも、
「いざというときに動ける」という安心感につながる場合があります。


「転職するかどうかを決める前に、まずは情報を知っておくだけでも十分ですよ」ってお伝えしたいです。
自分に合う働き方を考える材料が増えるだけでも、少し気持ちがラクになることがありますよね。
無理に何かを変える必要はありませんが、
「自分にはどんな可能性があるのか」を知っておくことは、将来の安心につながることがあります。
気になるサービスがあれば、詳細を確認しながら、ご自身のペースで検討してみてください。



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