

地域支援体制加算の届出には、複数の実績基準を満たす必要がありますが、その中でも「麻薬調剤実績10回以上」という要件は、特にクリアが難しいと感じる薬局が多い項目です。
一般的な外来業務では麻薬処方が少ないため、漫然と調剤を続けていても到達するのは困難です。
しかし、戦略的に在宅調剤を組み合わせたり、地域の医療機関と連携したりすることで、意外とスムーズに実績を積むことができます。
さらに、この取り組みは麻薬調剤実績だけでなく、他の加算要件にも波及的に好影響を与えるため、薬局の成長にも直結します。
この記事では、麻薬調剤実績を効率的かつ確実に積み上げていくための具体策を、図表や事例も交えて詳しく解説していきます。

麻薬調剤とは?
麻薬調剤とは、医師の処方せんに基づき、麻薬及び向精神薬取締法で定められた麻薬(例:モルヒネ、フェンタニル、オキシコドンなど)を調剤・交付する業務のことを指します。
これらの薬剤は依存性や乱用の恐れがあるため、厳格な取扱いルールが定められています。
通常の医療用医薬品と異なり、麻薬免許を持った薬剤師が調剤・交付・記録・保管を厳密に管理する必要があります。
また、使用量・交付先なども帳簿に記録し、所轄の保健所へ報告義務もあります。
麻薬調剤に該当する処方の例
- 経口剤:モルヒネ塩酸塩錠(MSコンチンなど)
- 貼付剤:フェンタニルパッチ(デュロテップ、ワンデュロなど)
- 注射剤:モルヒネ注、フェンタニル注、レミフェンタニル注など
調剤時に必要なポイント
- 専用の「麻薬処方せん」であること(通常の処方せんは使用不可)
- 調剤後の麻薬調剤録の記載
- 金庫保管・帳簿管理・在庫数の定期的な確認
このように、麻薬調剤は専門的な知識と法的管理を要する業務であり、地域における高度な薬学的管理を担う証拠として、地域支援体制加算の評価項目になっています。

麻薬調剤実績を増やすための戦略
① 在宅調剤との連動で効率アップ
- 在宅患者(緩和ケア・痛み管理など)は麻薬処方が多い傾向にあり、在宅調剤24回以上の実績を積みながら麻薬回数も自然に増やせます 。
- 在宅重症例を担当するクリニック・訪問看護と連携し、麻薬処方依頼を受けられる体制を整えましょう。
② 施設基準の同時クリアで信頼性向上
- 麻薬小売業者免許や無菌製剤処理環境があると、在宅薬学総合体制加算の上位取得にも有利です 。
- 麻薬対応体制を店内・薬剤情報誌・ホームページに明示し、医療機関や患者への認知を高めましょう。
③ 医療機関へトレーシングレポートで信頼構築
- 麻薬処方がある患者には、在宅フォローや服薬支援を提案し、トレーシングレポートで継続依頼につなげます 。
- 定期的に医師・看護師との多職種連携会議を開いて、在宅事例を共有・改善策を話し合いましょう。
④ スタッフ研修・業務フロー強化
- 麻薬調剤に関する社内研修やマニュアル作成で、処方受領~調剤・患者説明~記録までをシステマチックに。
- かかりつけ薬剤師指導料等を活用し、麻薬患者向けフォロー体制を整備・算定につなげましょう 。
⑤ 実績データの可視化とPDCA
- 麻薬調剤実績や在宅調剤回数などを月次で記録・分析し、足りないときは医療機関への再アプローチ。
- 不足の理由を特定し、チームで改善策を共有し迅速に対応する体制が必要です。
麻薬は基本的に持たないようにしてるが常備すべきなの?
多くの薬局では「麻薬は管理が大変だから、できるだけ在庫は持たない」という方針をとっています。
それは決して間違いではありません。
麻薬は依存性・管理リスクが高く、在庫には厳密な記録・保管義務が伴うため、不要な在庫はむしろリスクになります。
ただし、地域支援体制加算の麻薬調剤実績を目指す場合は、“最低限の常備”が必要になる場面もあります。
常備すべき麻薬の考え方
- 在宅緩和ケアのニーズがある地域 → 経口モルヒネ、貼付フェンタニルなど
- 訪問診療の急な処方 → 即日対応ができるよう、最低限の注射薬を1セット
- 近隣医療機関の処方傾向を確認 → 常用されている麻薬を数本在庫化
ポイントは「即応性」と「無理のない範囲」
必要なのはすべての麻薬を揃えることではなく、想定される症例に合わせた“少量常備”です。
「この薬局なら急な麻薬処方でも安心して任せられる」という評価を得やすくなります。
また、在庫が不要な場合でも、迅速な取り寄せルート(例:卸への即日発注体制)を確保しておくことで、実質的な“対応可能薬局”としての機能を果たせます。

手軽に件数増やせる取り組みは?
麻薬調剤実績10回以上を目指すにあたって、「すぐに始められる、無理のない取り組み」をいくつか押さえておくと、実績づくりがグッと楽になります。
① 医療機関や訪問看護に「麻薬調剤できます」と伝える
- 掲示物や案内チラシに「麻薬調剤可能薬局」と明記
- FAXやお薬手帳シールで医療機関・ケアマネに周知
周囲が知らないと処方も来ないので、まずは認知からスタート!
② 麻薬処方に慣れている医師に積極連携
- 緩和ケア・がん治療に注力している医師へアプローチ
- 「急な処方にも対応できます」と伝えておくと◎
③ 麻薬帳簿・管理表のテンプレート整備
- 帳簿が整っていると新規受け入れもしやすくなる
- 麻薬調剤マニュアルを作成し、誰でも対応できる体制を
④ 既存患者で対象になる人をリストアップ
- 慢性疼痛や終末期ケアを受けている方の中に、麻薬処方の可能性がある人がいないか確認
- 処方医に相談・提案してみるのもOK
⑤ 近隣薬局と連携して麻薬を融通し合う体制
- 在庫を持たずに「麻薬調剤に対応できる」体制を構築
- 緊急時は系列店や協力薬局から取り寄せて対応可能
これらはすべて、特別な設備投資や負担なく、明日からでも始められる実践策ばかりです。
まずは“麻薬処方が来るための導線づくり”からスタートしましょう!

もっと簡単にできる裏技ないの?
「麻薬調剤って大ごとに感じる…もっと簡単にカウント稼げないの?」という声もありますよね。実は、ちょっとした工夫で“件数を稼げる裏技的な方法”も存在します。
ただし、法的にはもちろん正当な範囲内で、あくまで“抜け道”ではなく“視点を変えた取り組み”です。
① 1回でも麻薬処方が出れば「1件」としてカウントOK!
- 複数回処方されるよりも、10人に1回ずつ調剤した方が要件に近づく
- → 通院患者で麻薬を使っている人に切り替え提案もアリ
② 入院患者の退院後処方(レスキュー用)を狙う
- 緩和ケア病棟などからの退院時、レスキュー用麻薬(少量)処方がされることがある
- 退院前に医療連携室・MSWとコンタクトを取っておく
③ 点滴・注射薬は1アンプルでも「調剤」扱い
- 麻薬注射剤(例:モルヒネ注)を1バイアル調剤するだけでも「1回」カウント
- 訪問診療対応時の緊急薬で入ることがある
④ 無菌調剤体制がない薬局に紹介してもらう
- 地域に無菌設備がない薬局があれば「麻薬だけ当薬局に回してもらう」連携提案
- → 処方医・ケアマネ・他薬局へ情報提供がカギ
⑤ 家族への説明含めた服薬指導を強調して依頼
- 「麻薬の指導は時間かかるから、説明しっかりできる薬局に」と紹介してもらいやすい
これらは「処方が来るかどうか」を左右する微差ですが、意識しておくと大きな差になります。

露出は控えたい…安全に周知するには?
「麻薬調剤に対応していることを周囲に知ってもらいたいけど、あまり目立たせるのはちょっと…」という不安の声もよく聞きます。
特に、防犯面で“麻薬”という言葉を公に掲示することに抵抗があるという方も多いでしょう。
そこでおすすめなのが、“麻薬”という表現を使わず、やわらかく・自然に伝える工夫です。
方法①:医療機関や連携先に直接伝える
- クリニック、訪問看護、ケアマネージャーに「緩和ケア・在宅疼痛管理も対応可能」と案内
- FAX連絡票や面談時にさりげなく伝える形が効果的
方法②:お薬手帳への自然なメッセージ記載
- 「在宅医療にも対応しています」などの汎用的な文言に
- 患者や家族にも安心感を与える内容で信頼性アップ
方法③:ウェブサイト・LINEなどで限定的に案内
- 薬局の公式サイトに「がん疼痛などの在宅支援に対応」と記載
- LINE公式などで提携クリニックのみ閲覧できる案内文を用意
このように、「麻薬調剤可能薬局です」と書かなくても、しっかり伝える手段はたくさんあります。
安全性と伝達力のバランスを保ちながら、地域連携を進めましょう。

実践例:安全に麻薬調剤実績を増やした薬局の取り組み
今回は“麻薬”という言葉を前面に出さずに、調剤実績を積み上げた薬局の具体例をご紹介します。安全性に配慮しながら、しっかりと実績と信頼を得たケースです。
実例①:在宅緩和ケアクリニックと提携、自然な流れで処方を受注
- 背景:麻薬と明記せず「在宅疼痛管理も対応可能です」と連携医に案内
- 結果:退院患者のレスキュー処方が毎月1~2件コンスタントに入る
表現を和らげつつも医療者には対応範囲を明確に示すことで、紹介がスムーズに。
実例②:患者のおくすり手帳に“在宅・緩和ケア対応中”のメッセージ
- 内容:「在宅療養中の方もご相談ください」の一文を手帳に貼付
- 結果:訪問看護師からの紹介で緩和ケア患者の処方が月に数件
患者・家族にも配慮した文言で、信頼を得ながら導線を確保。
実例③:系列店から特定薬局に在宅対応を集中、処方件数を一括管理
- 内容:麻薬処方や在宅処方は1店舗が担当、他店舗は紹介のみ
- 成果:1店舗で月5件超の処方を安定して確保、加算基準を満たす
在庫管理もその1店舗に集約することで、無駄なく・安全に運営。
実例④:医師・看護師に定期的に「疼痛緩和支援薬局」として訪問報告
- 内容:麻薬には触れず「疼痛管理支援が可能な薬局」と紹介
- 成果:多職種連携会議からの紹介で数名の処方依頼が入る
「頼れる薬局」として認知され、継続的な信頼と処方につながる。

まとめ
地域支援体制加算の中でも特にハードルが高いと感じられがちな「麻薬調剤実績10回以上」ですが、戦略的に取り組めば十分にクリアが可能な項目です。
そのためには、在宅調剤との連携を軸に据え、医療機関や地域資源との信頼関係を構築し、安全にかつ適切に調剤対応が可能であることを発信することがカギとなります。
また、“麻薬”という言葉を過度に前面に出さずとも、緩和ケアや疼痛管理対応薬局としての立ち位置を築くことで、患者・家族・医療職からの信頼と依頼につながります。
設備投資が難しい薬局でも、紹介体制・系列連携・文言の工夫などにより、無理なく実績を積み上げられます。
ぜひこの記事を参考に、地域の中で“選ばれる薬局”へとステップアップしていきましょう。

麻薬調剤に関する理解度チェッククイズ
クイズ1:麻薬調剤実績の件数にカウントされるのはどれ?
A. 麻薬注射剤1バイアルの調剤
B. 同じ患者への複数回調剤を1件とカウント
C. 向精神薬の調剤
D. OTC鎮痛薬の販売
正解:A
麻薬調剤の件数カウントは「麻薬処方に基づいて調剤が行われた回数」が基準です。注射剤1アンプルの調剤でも1件としてカウント可能です。
Bは1人に何回出しても「件数」では1件、C・Dはそもそも対象外です。
クイズ2:以下のうち、麻薬調剤に該当しないものはどれ?
A. フェンタニル注射薬の調剤
B. オキシコドン錠の調剤
C. 向精神薬(ジアゼパム)の調剤
D. モルヒネ坐薬の調剤
正解:C
向精神薬(ジアゼパムなど)は「麻薬」ではなく「向精神薬」として分類され、別の管理区分です。麻薬調剤実績の対象にはなりません。
A・B・Dはいずれも麻薬に該当し、麻薬調剤として記録されます。
クイズ3:在宅麻薬調剤において、薬局が優先的に整えておくべき体制はどれ?
A. 24時間営業の体制
B. 店頭販売専門スタッフの常駐
C. 麻薬小売業者免許の取得と帳簿整備
D. 全麻薬の全種類を常時在庫
正解:C
麻薬調剤を行う薬局には「麻薬小売業者免許」が必須です。また、法令に基づいた帳簿管理や金庫保管体制などの整備も必要不可欠です。
Aは在宅対応薬局として好ましいですが、麻薬調剤実績のためには必須ではありません。Dのように全種常備は現実的でなく、安全面でも不適切です。
よくある質問
Q.麻薬調剤実績のカウントはどう数えられるの?
A.麻薬の「処方1回=調剤1回」として1件カウントされます。
同じ患者であっても、異なる処方箋で複数回調剤が行われた場合は、その都度カウントされます。
逆に、1回の処方で複数アンプルや剤形が出ても、それは1件として扱われます。
Q.1アンプルの調剤でも1件になりますか?
A.はい、なります。調剤回数がカウント基準ですので、たとえ1アンプルの少量調剤であっても、麻薬処方に基づいていれば正式に1件としてカウントされます。
Q.2アンプルや3アンプル調剤すれば件数も増えますか?
A.いいえ、増えません。1回の処方に基づく調剤は、本数に関係なく「1件」としてカウントされます。件数を増やすには別処方が必要です。
Q.分割調剤をした場合、件数はどうなりますか?
A.分割調剤を行った場合でも、元の処方箋が1枚であれば「1件」のカウントです。分割の回数でカウントを増やすことはできません。
Q.麻薬の在庫を持っていなくても麻薬調剤はできますか?
A.はい。常備していなくても、迅速な取り寄せルートや系列薬局からの連携体制が整っていれば、調剤対応薬局として問題ありません。これにより実績もカウント可能です。
Q.“麻薬調剤できます”とアピールするのが不安です
A.「麻薬対応薬局」と明記しなくても、「在宅疼痛管理に対応しています」「緩和ケアもご相談ください」などの表現で十分伝わります。防犯上の不安がある場合は、案内先を医療従事者に限定するなど工夫しましょう。
参考文献








\忙しい薬剤師でもOK!最短で合格を目指すならココ/
【呼吸療養認定士】吸入指導のエキスパートへ!

「吸入薬、うまく使えてないな…」という患者さん、多くないですか?
この資格があれば、吸入デバイス指導から生活指導まで、医師に一目置かれる存在に。
✅ 呼吸器疾患への薬物療法が体系的に理解できる
✅ COPDや喘息の服薬アドヒアランスに貢献
✅ 地域包括ケアでの活躍チャンス拡大!

【透析技術認定士】電解質・水分管理の知識が武器になる!

透析患者の処方、なんとなくで扱っていませんか?
この資格で「透析処方が読める薬剤師」になれます。
✅ 血液・腹膜透析の薬学的視点がしっかり学べる
✅ 高カリウム血症やP管理などのアセスメント力がアップ
✅ チーム医療の中で活躍の場が広がる!

【認知症ケア認定士】「ただの服薬指導」からの脱却!

認知症の方との会話に困ること、ありませんか?
この資格で「認知症に寄り添える薬剤師」になれます。
✅ BPSD(行動心理症状)への対応知識も学べる
✅ 在宅・施設での多職種連携がスムーズに
✅ ケアマネや家族からの信頼も高まる!

【糖尿病療養認定士】薬だけじゃない、生活まで支える力!

HbA1cばかり見ていませんか?
この資格があれば、「生活までアドバイスできる薬剤師」に。
✅ 食事・運動・インスリンまで包括的に学べる
✅ SMBG・インスリン注射の技術支援にも対応
✅ 外来・薬局・在宅、どの現場でも活躍できる!

悩んでいる時間がもったいない。今日から一歩踏み出そう!








コメント