処方箋の読み方完全攻略！略語・記号・症例まで薬剤師が徹底解説

処方箋とは？

処方箋（しょほうせん）とは、医師や歯科医師が患者に投与する薬の種類、用量、用法を記載し、薬剤師に対して調剤を依頼する正式な文書です。

薬剤師法第24条や医師法、保険薬局に関する規則など、複数の法律や規定に基づいて取り扱いが義務付けられています。

つまり、処方箋は「薬を安全に患者へ届けるための設計図」のようなもの。薬剤師はその設計図を正確に読み解き、適切に薬を調剤し、患者へ説明します。逆に言えば、処方箋の読み間違いは重大な調剤過誤につながるリスクがあります。

処方箋の法的役割

• 薬剤師が調剤を行うための必須書類
• 診療報酬請求の根拠となる
• 交付後は一定期間（原則3年間）保管義務がある
• 交付日から4日以内が有効期限（例外あり）

処方箋の構造

処方箋は大きく次のような項目に分かれています。それぞれの項目ごとに確認すべきポイントがあります。

項目	内容	確認ポイント
患者情報	氏名、生年月日、性別、住所、保険情報	誤交付防止のため必ず照合
医療機関情報	病院名、所在地、電話番号、診療科	記載漏れや間違いに注意
処方医情報	医師名、署名または押印	署名がない場合は疑義照会
処方内容	薬品名、規格、用量、用法、日数	規格違い、用量過多・過少の確認
備考欄	ジェネリック可否、リフィル回数、特記事項	変更不可欄、アレルギー記載の有無など
交付日	発行日付	有効期限の起算日

患者と薬剤師で違う「処方箋の見方」

患者側は「薬をもらうための紙」という認識が強いですが、薬剤師にとっては「安全に薬を渡すためのチェックリスト」です。

患者視点	薬剤師視点
薬の名前や回数が書かれている紙	用量・用法・相互作用・禁忌などを読み取る情報源
薬局で提出すれば薬がもらえる	疑義があれば医師へ確認、必要に応じて処方変更
ジェネリック可かどうかはあまり意識しない	ジェネリック変更不可の指定や患者希望の確認

やってはいけない読み間違い例

1. 「1日3回 毎食後」を「1日1回 朝食後」と見間違える
2. 薬の規格（mg数）を確認せずに先発と後発を切り替える
3. 日数のゼロが欠けて「7日」が「70日」に見える
4. ジェネリック変更不可を見落として変更してしまう

処方箋の項目別・詳細解説

1. 患者情報欄

患者情報欄には、氏名、生年月日、性別、住所、保険情報などが記載されます。薬剤師は、受付時に保険証や診察券と照合し、間違いがないか確認します。

• 氏名：同姓同名の場合は生年月日で確認
• 生年月日：年号の書き方（和暦・西暦）に注意
• 保険者番号・記号・番号：レセプト請求時に重要

特に大事なポイントは、患者本人であることを確実に確認すること。間違えると、別人に薬を渡すという重大な過誤につながります。

2. 医療機関情報欄

医療機関の名称、所在地、電話番号、診療科が記載されます。この欄は疑義照会の連絡先として重要です。

• 名称：略称で書かれている場合は正式名称を把握
• 診療科：内科、外科、小児科などで処方傾向が異なる
• 電話番号：処方医へ確認連絡をする際に必要

3. 処方医情報欄

医師名と署名または押印が必要です。これが欠けていると、法的に無効な処方箋となる場合があります。

• 署名：直筆の場合と印字の場合がある
• 押印：電子カルテの場合は電子署名が多い

4. 処方内容欄

薬品名、規格、用量、用法、日数などが記載されます。

• 薬品名：先発品・ジェネリックの区別
• 規格：mg数や容量に注意（同名異規格に注意）
• 用量：1回量と1日量を混同しない
• 用法：「毎食後」「就寝前」「頓服」などの記載を確認

5. 備考欄

ジェネリック医薬品への変更可否、リフィルの回数、特記事項（アレルギー、妊娠中など）が記載されます。

• 変更不可欄にチェックがあればジェネリック変更はできない
• アレルギー情報は必ず確認して薬歴と照合
• リフィル処方の場合、回数や次回調剤可能日を確認

6. 交付日

処方箋の有効期限は交付日を含めて4日以内（休日・祝日を含む）です。これを過ぎると原則として無効になります。

現場で役立つ処方箋チェックのコツ

1. 患者情報→処方内容→備考欄の順で確認：ミス防止に有効
2. 規格・用量は声に出して確認：口頭確認で誤読防止
3. 略語は必ず意味を把握：分からないまま進めない
4. ジェネリック可否は赤丸チェック：視覚的に見逃さない
5. 疑義照会メモを常に準備：連絡時にスムーズ

読み間違い防止チェックリスト

• 患者氏名と生年月日を確認したか？
• 有効期限内か？
• 処方医署名はあるか？
• 規格や用量に間違いはないか？
• ジェネリック変更可否を確認したか？
• 相互作用や禁忌はないか？

処方箋の略語・記号 完全攻略

処方箋には、ラテン語・英語・ドイツ語などが由来の略語や、薬剤師・医療従事者特有の記号が多く使われます。これらを正しく理解していないと、投薬ミスや服薬指導の誤りにつながります。

頻出略語一覧（基本編）

略語	意味	読み方	注意点
BID	1日2回	ビーアイディー	朝夕食後などの指定がある場合も
TID	1日3回	ティーアイディー	毎食後のことが多い
QID	1日4回	キューアイディー	起床時＋毎食後など
HS	就寝前	エイチエス	睡眠薬や鎮静薬で多い
AC	食前	エーシー	空腹時服用の薬で注意
PC	食後	ピーシー	食直後（p.c.）との違いに注意
PRN	頓服	ピーアールエヌ	症状が出た時に服用
SOS	救急時のみ	エスオーエス	緊急性の高い場合に使用

剤形・単位に関する略語

略語	意味	読み方	注意点
Tab	錠剤	タブ	規格を必ず確認
Cap	カプセル	キャップ	外観が似ている薬に注意
Syr	シロップ	シロップ	小児処方で多い
Oint	軟膏	オイント	外用剤の用量間違いに注意
mL	ミリリットル	エムエル	小数点の読み間違い注意
mg	ミリグラム	ミリグラム	mgとgの取り違えは致命的

現場でよく見る省略表記（応用編）

• 7T 分1 朝食後：錠剤7錠を1回分として朝食後に服用
• 2C 分2 毎食後：カプセル2個を1日2回毎食後
• 1包 分3 食後：粉薬1包を1日3回食後
• 外用 一日数回塗布：外用薬は用法があいまいな場合もあるので注意

読み間違い注意ワード集

1. 1.0g と 10g：小数点の位置で10倍の差
2. OD錠：口腔内崩壊錠、通常錠と取り違えない
3. シロップ濃度：%表示とmg/mL表示の違いに注意
4. 頓服回数：「1日○回まで」の指示が抜けやすい
5. 外用剤の単位：g、cm、指先単位（FTU）など多様

略語の覚え方のコツ

処方箋の略語は数が多く、最初は圧倒されます。しかし、以下の方法を使えば効率的に覚えられます。

1. 語源から覚える：例）BID（bis in die）＝1日2回、TID（ter in die）＝1日3回
2. イメージで覚える：HS（就寝前）はベッドマークを連想
3. 関連する薬と一緒に覚える：睡眠薬＝HS、抗菌薬＝BID/TID
4. 実物の処方箋を見て覚える：現場で見た方が定着しやすい
5. 先輩薬剤師に口頭確認：間違った記憶を修正できる

略語クイズに挑戦！

以下の略語や記号の意味を考えてみましょう。

症例紹介：略語の誤読による疑義照会

症例1：HSを1日2回と誤解

70代女性。睡眠薬の処方に「HS」と記載があったが、新人薬剤師が「BID」と見間違え、1日2回服用と誤って理解。投薬前にベテラン薬剤師が気づき、医師へ疑義照会して誤りを回避。

症例2：mgとgの単位ミス

抗菌薬の粉薬に「1.0g」と記載されていたが、mL単位と混同して計量。服薬前に気づき、処方を確認。単位の誤解は投与量過剰の大きなリスク。

症例3：外用剤の塗布回数省略

「一日数回塗布」とだけ書かれた軟膏を「1日1回」と患者に説明しかける。患者から「前は朝昼晩と言われた」と申告があり、処方医に確認して正しい指示を把握。

第2部まとめ

• 略語は語源とセットで覚えると記憶に残りやすい
• 単位や剤形の取り違えは重大事故につながる
• クイズや症例で実践的に覚えると定着度が高まる
• 必ず疑義照会の判断力とセットで身につけること

処方箋読み方 実践編

ここからは、実際の現場での症例を通じて、処方箋の読み取り方と注意点を深堀りしていきます。単なる知識ではなく、現場で即使えるスキルとして落とし込みましょう。

症例1：用量の不一致

70代男性、高血圧治療中。処方箋には「アムロジピンOD錠5mg 1錠 分1 朝食後 14日分」と記載。しかし薬歴では前回2.5mg服用。用量が倍になっているため、医師へ疑義照会。

• 読み取りのポイント：用量変更の意図を確認する
• 対応：医師は「血圧が十分下がらなかったため増量」と説明。患者にも理由を説明し納得してもらう

症例2：併用禁忌の見落とし

50代女性、うつ病治療中。処方箋にSSRIとMAO阻害薬が併記。薬剤師が相互作用を確認し、即座に疑義照会。医師が処方変更。

• 読み取りのポイント：併用禁忌や重大な相互作用は最優先で確認
• 対応：薬歴と照合し、必ず疑義照会で医師に意図を確認

症例3：日数と用量の不一致

処方箋には「セフカペンピボキシル錠100mg 1錠 分3 毎食後 5日分」と記載。しかし総数が10錠になっており、必要数15錠と不一致。

• 読み取りのポイント：分3で5日分なら総数は15錠になるはず
• 対応：医師に確認し、正しい数量に訂正

疑義照会の流れと実例

1. 処方箋確認で不一致や不明点を発見
2. 疑義内容を簡潔にメモ
3. 医療機関へ連絡（電話が基本）
4. 医師に状況と疑問点を伝える
5. 回答を記録し、処方箋に修正・記載

重要なポイント：疑義照会は「医師の指示に従うだけ」ではなく、「患者の安全を守るための確認作業」です。

リフィル処方箋の読み方と注意点

• 「リフィル可○回」欄の確認
• 次回調剤可能日を必ず患者に説明
• 体調変化や副作用があれば医師へ報告

ジェネリック変更可否の見方と対応

• 「変更不可」にチェックがあれば原則変更できない
• 患者希望による変更は確認記録が必要
• 同効薬でも規格違いに注意

まとめ

ここまで、処方箋の基礎から略語・記号、実際の症例や疑義照会、リフィルやジェネリック対応まで解説しました。改めて重要なポイントを整理します。

• 処方箋は患者の安全を守る設計図であり、正確な読み取りが必須
• 略語や記号は語源・意味・使用例・注意点をセットで覚える
• 疑義照会は医師と患者をつなぐ重要なコミュニケーション
• リフィル処方やジェネリック可否は患者への説明責任がある
• 現場では「知識×経験」で処方箋の背景まで読み取る力が重要

よくある質問

処方箋の有効期限はどれくらい？

原則として交付日を含めて4日以内です。休日や祝日も含まれるため、実質的に短く感じる場合があります。

医師の署名や押印がない処方箋は有効？

法的に無効となる可能性が高く、薬剤師は必ず疑義照会を行う必要があります。

電子処方箋はどう読む？

電子処方箋は内容がデータとして薬局に送信され、画面上で確認します。記載内容は紙処方箋と同じですが、入力ミスが減る利点があります。

ジェネリック医薬品に変更できる条件は？

処方箋に「変更不可」の記載がなければ変更可能です。ただし、患者が希望しない場合は変更しません。

リフィル処方箋で気をつけることは？

次回調剤可能日や体調の変化、副作用の有無を確認し、必要に応じて医師へ報告します。

参考文献

• 処方箋とは？ | 日本調剤
• 【知っておきたい】処方せんの読み方と確認したい4つのポイント
• 処方せんの略語一覧《完全版》
• 保険処方箋の記載内容について
• 薬局DX]処方箋略語一覧

 

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