足がつる原因と対策｜こむら返りを防ぐ薬剤師の知恵袋

夜中に突然ふくらはぎがつって飛び起きた、そんな経験はありませんか？
「こむら返り」とも呼ばれるこの症状は、誰にでも起こり得る身近なトラブルです。
特に高齢者や運動をしている人、妊婦さんなどに多く見られますが、実はその原因や予防法は意外と知られていません。

この記事では、足がつる原因とメカニズム、そして自分でできる予防法や対処法を、薬剤師の視点から詳しく解説していきます。
患者さんへのアドバイスやセルフケアの知識として、現場で活用できる内容を目指しています。

足がつる原因は何？

足がつる原因はさまざまありますが、主に以下の要因が知られています。

• 筋肉の疲労や過使用：長時間の立ち仕事、激しい運動、または逆に長時間の不動など
• 電解質（ミネラル）の不足：特にマグネシウム、カリウム、カルシウムの不足
• 冷えによる血行不良：冬場やクーラーの効いた部屋、就寝中など
• 脱水：水分不足、発汗過多、アルコール摂取など
• 加齢：筋量減少、神経の変性などにより起こりやすくなる
• 薬の副作用：利尿薬、降圧薬、スタチンなど一部の薬剤
• 疾患：糖尿病、肝疾患、腎疾患、甲状腺機能異常、脊柱管狭窄症など

特に大事なポイントとして、「電解質バランスの乱れ」と「冷え」は夜間のこむら返りによく見られる原因です。

足がつるのを防ぐには？対策と予防法まとめ

足がつるのを予防するためには、以下のような生活習慣やセルフケアが効果的です。

✅ ストレッチの習慣化

寝る前や運動後に、ふくらはぎ・太もも・足首の軽いストレッチを行うことで筋肉の柔軟性を保ち、こむら返りを予防できます。

✅ 水分・電解質の補給

汗をかいた後や夏場は特に、ミネラルを含んだ飲料（スポーツドリンクや麦茶など）を摂ることが大切です。
カリウム（バナナ、トマト）、マグネシウム（ナッツ、海藻）、カルシウム（乳製品）を含む食事も意識しましょう。

✅ 足元の冷え対策

冷えは筋肉の血流を悪化させるため、靴下を履いて寝る、湯たんぽを使う、入浴で温めるといった対策が有効です。

✅ 適度な運動

ウォーキングやふくらはぎの筋トレなどを継続し、血流と筋肉のポンプ機能を高めましょう。ただし無理な負荷は逆効果です。

✅ サプリや漢方薬の活用

芍薬甘草湯（しゃくやくかんぞうとう）は、急な筋肉のけいれんに効果があるとされる漢方薬です。
また、マグネシウムサプリは慢性的なミネラル不足による症状に有効な場合もあります。

生活習慣の見直しと、症状に応じたケアを取り入れることで、足がつる頻度を大きく減らすことができます。
予防は一日で効果が出るものではありませんが、継続することで体質改善につながります。

なぜ芍薬甘草湯はこむら返りに効くの？

芍薬甘草湯（しゃくやくかんぞうとう）は、漢方薬の中でもこむら返りの即効性が期待できることで知られています。
ではなぜ効くのでしょうか？そのメカニズムを分かりやすく解説します。

💊 成分と作用のポイント

• 芍薬（しゃくやく）：筋肉をゆるめる（筋緊張の緩和）作用があります。
• 甘草（かんぞう）：抗炎症・鎮痛作用をもち、痛みや収縮の抑制に働きます。

この2つの生薬が組み合わさることで、急激な筋肉の収縮＝けいれんを抑える働きをします。
特に発作的に起こるこむら返りに対しては、服用から数分で効果が出ることもあるため、「即効性のある漢方」として重宝されています。

⚠ 注意点

• 基本的には症状が出たときの単回服用が推奨されます。
• 甘草にはカリウム低下や浮腫、血圧上昇などの副作用があるため、連用や高齢者への使用には注意が必要です。

薬剤師としては、「その場しのぎでなく、根本原因（冷え・ミネラル不足など）の予防をあわせて指導すること」が大切です。

季節や年齢でこむら返りの原因は変わる？

こむら返りは「誰にでも起こりうる」症状ですが、季節や年齢によって起こりやすさや原因に違いがあります。

🌞 夏と冬で原因が違う！

夏場は汗による脱水・電解質不足が主な原因です。冷房で足が冷えることも影響します。
一方、冬場は筋肉の血流が悪くなり、冷えや運動不足による筋力低下が影響します。

• 夏：汗・運動・水分不足 → ミネラル補給がカギ！
• 冬：冷え・運動不足 → 温め＆ストレッチが重要！

👶 若年者と高齢者でリスクも違う！

若い人では、スポーツや激しい運動後の筋疲労が原因で起こることが多く見られます。

一方、高齢者では、加齢による筋力低下や、血行不良・慢性疾患・服用中の薬の影響など、複数の要因が重なって発症することが一般的です。

• 若年層：運動後、汗をかいたあと、ミネラル補給不足
• 高齢者：筋力低下、血流低下、利尿薬や降圧薬の使用

このように、状況に応じた予防・対策が大切です。患者さんの年齢や生活環境をふまえた説明が、こむら返りの再発予防につながります。

実際にあった症例と対応例

ここでは、実際に薬局や日常生活で遭遇することの多い「足がつる」症例について紹介します。

🧓 症例①：70代・女性・高血圧で利尿薬服用中

夜間にふくらはぎのこむら返りで週に数回目が覚めてしまうという相談がありました。
食事内容や生活習慣を確認すると、塩分制限のために野菜摂取量が減り、マグネシウムやカリウムの不足が疑われました。

対応としては以下のようなアドバイスを行いました：

• 夕食後に軽いストレッチを取り入れる
• バナナや豆腐などミネラルを含む食品を追加
• 医師と相談のうえで芍薬甘草湯の併用を検討

🏃‍♀️ 症例②：30代・女性・スポーツジムでの筋トレ後に頻繁につる

足がつる頻度が高く、運動後や入浴後に起こるとのことでした。
大量に汗をかくことやミネラル補給が不十分であることが背景にありました。

以下の点を中心に指導しました：

• スポーツドリンクや経口補水液での電解質補給
• トレーニング前後のストレッチ強化
• 入浴後に足を冷やしすぎないよう注意

患者背景に応じたアドバイスが非常に重要です。生活習慣や服薬内容をふまえたカウンセリングが、再発予防につながります。

まとめ

足がつる、いわゆる「こむら返り」は、筋肉疲労・ミネラル不足・冷え・脱水など、さまざまな要因が絡み合って発生します。

薬剤師として重要なのは、患者さんの背景や服薬状況、生活習慣をふまえて適切なアドバイスを提供することです。

今回紹介したストレッチ、水分・電解質補給、冷え対策、サプリや漢方薬の活用などは、誰でも実践しやすいセルフケアの一環です。

また、頻繁につる場合や痛みが長引くケースでは、疾患や薬剤の影響も疑われるため、医療機関への受診をすすめる判断力も必要です。

よくある質問

Q：どうして「こむら返り」っていうの？

「こむら」とは、ふくらはぎ（腓腹部）のことを指す昔の言葉です。
こむら返りはつまり、「ふくらはぎの筋肉がひっくり返る（＝激しく収縮する）」ような感覚が語源となっています。
この言葉は江戸時代ごろから使われていたとされ、日本独自の表現なんです。

クイズで確認！こむら返りの理解度チェック

Q1：以下のうち、足がつる（こむら返り）の原因として最も関連が深いものはどれでしょう？

1. カルシウム不足
2. 血糖値の上昇
3. ビタミンCの不足
4. 日光不足

Q2：こむら返りの予防に有効なのはどれ？

1. 糖質制限
2. 夜間の水分制限
3. ストレッチ
4. 断食

Q3：次のうち、医療機関の受診をすすめるべき症状はどれ？

1. 筋肉痛が2分以内でおさまる
2. 足にしびれや色の変化がある
3. 軽い違和感だけ
4. 一日一回程度のけいれん

参考文献

• Effect of Shakuyaku‑kanzo‑to in patients with muscle cramps — こむら返りを伴う患者に対して、芍薬甘草湯が有効であった臨床報告（肝硬変・腰部脊柱管狭窄症など）
• Shakuyaku‑kanzo‑to as Treatment of Painful Muscle Cramps in Patients with Lumbar Spinal Stenosis — 腰部脊柱管狭窄症患者に対して、低用量2.5gで有効性を確認
• Systematic review: Effect of Shakuyaku‑kanzo‑to in patients with muscle cramps — 一貫したメタ分析は難しいものの、効果の可能性を示唆するレビュー報告

 

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