

この記事では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)にかかった後に続く不調、いわゆる「後遺症」について、“どんな症状があるのか”を中心に、できるだけ網羅的に整理します。
厚生労働省は、COVID-19後に感染性が消失しているにもかかわらず、他の原因が明らかでない症状が持続・出現・再燃する状態を「罹患後症状(いわゆる後遺症)」として整理しています。
またWHOは、いわゆるLong COVID(post COVID-19 condition)について、「通常は発症から3か月時点にもみられ、少なくとも2か月以上持続し、他疾患で説明がつかない症状」といった考え方を示しています。
なお本記事は教育目的の一般情報です。息苦しさ、胸痛、強い動悸、意識が遠のく、片側の麻痺など“急を要する症状”がある場合は、迷わず医療機関へ(救急要請を含む)ご相談ください。


一方で医療現場では「4週間以降の症状」を長期影響として扱うガイドラインもある(NICE)。
コロナの後遺症(罹患後症状)で「起こりうる症状」一覧
後遺症の特徴は、症状が“ひとつ”とは限らず、複数が重なったり、波があったり、日によって変動することです。WHOやCDCでも200種類以上の症状が報告されている旨が示されています。
まず押さえる:代表的に多い症状
厚生労働省のQ&Aでは、代表的症状として次が挙げられています:疲労感・倦怠感、関節痛、筋肉痛、咳、痰、息切れ、胸痛、脱毛、記憶障害、集中力低下、頭痛、抑うつ、嗅覚障害、味覚障害、動悸、下痢、腹痛、睡眠障害、筋力低下など。
症状を「臓器・システム別」に整理すると理解しやすい
| 分類 | よくある症状(例) | 生活で困りやすい場面 |
|---|---|---|
| 全身・体力 | 疲労感/倦怠感、微熱、筋力低下、痛み | 家事・仕事の継続が難しい、外出が億劫、回復に波がある |
| 呼吸器 | 息切れ、咳、胸部違和感 | 階段で息が上がる、会話で息苦しい、運動耐性低下 |
| 循環器 | 動悸、胸痛、立ちくらみ | 入浴後にふらつく、立位でつらい、脈が速く不安 |
| 神経・認知 | 集中力低下(ブレインフォグ)、記憶力低下、頭痛、めまい、睡眠障害 | ミスが増える、読書や会議がしんどい、睡眠の質が落ちる |
| 精神・メンタル | 抑うつ、不安、いらだち | 回復が見えず落ち込む、社会復帰への不安が強い |
| 感覚 | 嗅覚障害、味覚障害 | 食欲低下、栄養が偏る、料理の味見が難しい |
| 消化器 | 下痢、腹痛、便秘、胃部不快感 | 外出や仕事の途中で困る、食事が進まない |
| 皮膚・毛髪 | 脱毛、皮疹 | 見た目の不安、自己肯定感の低下 |
上の表は、厚労省の代表症状リストに、CDCの症状分類(呼吸器・心臓、神経、消化器など)を統合して、日常での困りごととつなげたものです。


症状は「いつ出る?いつまで続く?」—経過のイメージ
後遺症の定義と“時間軸”
後遺症を語るとき大切なのが、「症状が続く」だけでなく「いったん良くなってから新しく出る」「消えたのにぶり返す」も含む点です(厚労省の定義)。
また、回復期間は個人差が大きいですが、WHOは「一般に時間とともに改善し、典型的には4〜9か月で良くなる人が多い一方、12か月時点でも症状が残る人が一定数いる」といった見通しを示しています。
波がある(良い日と悪い日がある)
後遺症では、“今日は動けたのに、翌日は寝込む”のような変動が起こり得ます。CDCは、身体的・精神的な活動の後に症状が悪化する(post-exertional malaise: PEM)を代表的な症状として挙げています。11
コロナ後遺症の症状を「カテゴリ別」に詳しく
1)疲労感・倦怠感(全身症状)
最も代表的な症状のひとつが、疲労感・倦怠感です。厚労省でも代表症状として挙げられ、WHOのファクトシートでも「fatigue」が共通して主要症状として記載されています。
ここで重要なのは、単なる「寝不足」や「忙しさ」の疲れと違い、休んでも回復しにくい/少しの活動で強く消耗すると訴える方がいること。さらにPEMのように、活動後に遅れて悪化するパターンもあります。
2)息切れ・咳(呼吸器症状)
息切れ(breathlessness)や咳は、厚労省、WHO、CDC、NICEいずれも共通して挙げる代表的症状です。
- 階段や坂道で息が上がる
- 会話中に呼吸が苦しい
- 咳が長引き、夜間に悪化する
ただし、息切れが強い場合は貧血、喘息、心不全、肺塞栓など別の病気が隠れていないか確認が必要になることがあります。「いつもと違う強い息苦しさ」「胸痛」「血痰」などは早めに医療機関へ。
3)動悸・胸痛・立ちくらみ(循環器・自律神経っぽい症状)
厚労省は代表症状として動悸や胸痛を挙げています。
CDCでも心臓・呼吸器症状として「胸痛」「動悸」を記載しています。
WHOは、めまい・動悸・立位でのふらつき・運動不耐などが同時に出るパターン(POTSに関連するような症状群)に触れています。
この領域はまだ研究途上ですが、「立つとしんどい」「脈がやたら速い」「入浴後に悪化」など、生活に直結する訴えが出ることがあります。
4)ブレインフォグ、頭痛、睡眠障害(神経・認知)
厚労省は記憶障害・集中力低下・頭痛・睡眠障害を代表例として列挙しています。
CDCも「考える/集中の困難(brain fog)」「頭痛」「睡眠問題」を挙げています。
NICEでも「認知障害(brain fog)」「頭痛」「睡眠障害」が“よくある症状”として整理されています。
こうした症状は、本人にとっても周囲にとっても見えにくく、誤解されやすいのが難点です。「怠けている」「気のせい」ではなく、医学的に報告されている症状として扱い、生活調整や受診につなげることが大切です。
5)抑うつ・不安(メンタル)
厚労省は抑うつを代表症状として挙げています。
WHOも、睡眠障害や抑うつ、不安が起こり得ると記載しています。
ここでのポイントは、「心理的ストレスだけが原因」と単純化しないこと。身体症状の持続、社会復帰の困難、周囲の理解不足が重なり、二次的にメンタルが悪化することもあります。医療機関では身体面と精神面の両方から評価するのが一般的です。
6)嗅覚障害・味覚障害(感覚)
嗅覚・味覚の変化は、厚労省の代表症状に含まれます。
WHOでも味覚の変化(alterations in taste)が主要症状のひとつとして挙げられています。
食事が楽しくない、食欲が落ちる、栄養が偏るなど、生活の質に直結しやすい症状です。体重減少や低栄養が疑われる場合は、早めに医療者へ。
7)下痢・腹痛・便秘など(消化器)
厚労省は下痢・腹痛を代表症状として挙げています。
CDCも「下痢」「腹痛」「便秘」など消化器症状をリスト化しています。
感染後に胃腸の調子が崩れると、仕事や外出がしづらくなります。脱水になりやすい方(高齢者、持病のある方)は特に注意が必要です。
8)脱毛、皮膚症状(月経変化を含む)
厚労省の代表症状には脱毛が含まれます。
CDCでは皮疹や月経周期の変化にも触れています。
脱毛は見た目の変化としてつらく、精神的ダメージも大きい症状です。多くは時間経過で改善することもありますが、甲状腺疾患や鉄欠乏など別の要因が重なることもあるため、気になる場合は受診を。
「後遺症でもう他人にうつる?」—感染性の誤解
後遺症の相談でよくある不安が「まだうつすのでは?」です。厚労省Q&Aでは、一般に発症前2日〜発症後7〜10日程度がウイルス排出の目安であり、その期間以降に後遺症があっても、他人に感染させることはないと整理しています。


だからこそ、正しい情報が大事。
なぜ起こるの?—メカニズムは“ひとつ”ではない
後遺症の原因はまだ研究途上ですが、WHOは研究から示唆されているものとして、ウイルスの体内残存、免疫応答の変化や自己免疫、微小血栓(micro-thrombosis)などに言及しています。
つまり、「気合いで治す」「気の持ちよう」だけで片づけられる話ではなく、身体の中で起きている変化が関係している可能性があるということです。症状が多彩なのも、その人の体質・持病・感染時の重症度・再感染など、複数要因が絡むためと考えられています。
症例でイメージする:薬局・日常で出会いやすい「困りごと」
ケース1:軽症だったのに、疲労とブレインフォグで仕事が回らない
30代・デスクワーク。感染自体は軽症で解熱も早かったが、1か月後から「夕方になると頭が働かない」「会議の内容が入ってこない」。休日に少し外出すると翌日寝込む。
→ こうした訴えは、厚労省の「集中力低下」、CDCの「brain fog」「活動後に悪化(PEM)」と整合します。
実践ポイント
“頑張って取り返す”が逆効果になり得るため、予定の詰め込みを避け、活動量の調整(ペーシング)や医療機関への相談を提案。眠れない・抑うつが強い場合は早めの受診を後押し。
ケース2:息切れと動悸で不安が強い(でも検査は必要)
40代・子育て中。階段で息が上がり、入浴後に動悸。「また心臓が悪いのでは」と不安が強い。
→ 後遺症として息切れ・動悸は代表的ですが、同時に別疾患の除外も重要です。
実践ポイント
胸痛、呼吸困難、失神、片麻痺などがあれば“様子見しない”。安全側に倒して医療機関へ。症状の記録(いつ、どの程度、何をすると悪化するか)をつけると受診時に役立ちます。
ケース3:下痢が続いて外出が怖い
20代。感染後から下痢が続き、通勤電車が怖い。食事量も低下。
→ 消化器症状は厚労省・CDCともにリストに含まれます。
実践ポイント
脱水予防、水分・電解質、体重変化の確認。血便、強い腹痛、発熱、急な体重減少がある場合は早めに受診。


まとめ:後遺症の症状は多彩。まずは“分類”で整理しよう
- コロナ後遺症(罹患後症状)は、持続・新規出現・再燃を含む概念(厚労省)。
- 症状は200種類以上報告され、代表例は疲労、息切れ、咳、動悸、胸痛、ブレインフォグ、頭痛、睡眠障害、抑うつ、不安、嗅覚・味覚の変化、胃腸症状、脱毛など。
- 波がある/活動後に悪化する(PEM)こともあるため、無理に取り戻そうとしすぎない。
- 強い胸痛・呼吸困難などは別疾患の可能性もあるため、早めの受診が大切。
よくある質問
Q. コロナ後遺症って、結局どんな症状が多いの?
代表例として、疲労感・倦怠感、息切れ、咳、胸痛、動悸、頭痛、睡眠障害、記憶障害・集中力低下(ブレインフォグ)、抑うつ、嗅覚・味覚障害、下痢・腹痛、脱毛などが挙げられています。
Q. 後遺症があると、まだ人にうつしますか?
厚労省は、一般に発症前2日〜発症後7〜10日程度がウイルス排出の目安であり、その期間以降に後遺症があっても感染させることはないと整理しています。
Q. いつから「後遺症」と考えるの?
WHOは「通常、発症から3か月時点にもみられ、少なくとも2か月以上持続」を考え方として示しています。
一方、NICEガイドラインでは「急性期の発症から4週間以上続く/出る症状」を長期影響として扱い、医療の場で評価・支援する枠組みを示しています。
Q. 症状が日によって変わるのは普通?
あり得ます。CDCは、身体的・精神的な活動の後に症状が悪化する(PEM)を代表的症状として挙げています。
「良い日」に無理をして「悪い日」を増やすパターンもあるため、活動量の調整が重要になることがあります。
Q. 子どもにも後遺症は起こる?
厚労省Q&Aでも、小児にも起こることが報告されているとされています。
参考文献
- 厚生労働省:新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(いわゆる後遺症)に関するQ&A
- 厚生労働省:新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(いわゆる後遺症)
- WHO:Post COVID-19 condition (long COVID) Fact sheet(更新情報含む)
- CDC:Long COVID Signs and Symptoms
- NICE:COVID-19 rapid guideline: managing the long-term effects of COVID-19(NG188)
- NICE:NG188 Chapter 9 Common symptoms
- Nalbandian A, et al. Post-COVID-19 Condition(総説, PubMed)
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薬剤師向け転職サービスの比較と特徴まとめ


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薬剤師向け転職サービスの比較表
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各サービスの特徴(概要)
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