薬局でマイナ保険証の利用率を上げる！患者の心を動かす声かけ術

 

前書き：読み取り率を上げる意義と、読者へのゴール

薬局におけるオンライン資格確認は、正確で迅速な資格確認・薬剤情報の活用・限度額管理の円滑化など、患者と薬局の双方にメリットがあります。
一方で現場では「機器の使いづらさ」「同意や説明の難しさ」「個人情報不安」などの壁があり、導入済みでも読み取り率が伸び悩むケースが少なくありません。
この記事では、制度の要点→現場の課題→実践策→不安への説明→症例・運用例まで、薬局ですぐ使える形で整理します。

制度の要点：マイナ保険証とオンライン資格確認の基本

マイナンバーカードを健康保険証として使う仕組みは、顔認証付きカードリーダーで本人確認を行い、オンラインで資格情報を照会します。
同意があれば薬剤情報や特定健診情報等を医療の安全・質向上のために参照できます（同意はいつでも選択可）。
制度は段階整備が続き、薬局・医療機関での導入が原則義務化されています。
（出典：厚労省「オンライン資格確認について」・「マイナンバーカードの健康保険証利用」）

• 資格確認はオンラインで即時照会（厚労省）。
• 顔認証・暗証番号によりなりすまし利用を抑止。
• 薬剤情報や健診情報の参照は患者の明示同意が必要。

現場で読み取り率が伸びない主因を可視化

分類	主な要因	よくある現象
機器・配置	リーダーが見つけづらい／手元が狭い	「どこに置けば？」と質問が多発
システム	レセコン連携の遅延・不安定	「ぐるぐる待ち」で不信感
運用	案内トーク・同意取得のばらつき	スタッフごとに説明が違う
心理	「落としたら悪用？情報は何が見える？」	カード提示の拒否、紙保険証希望
周知	対応薬局の表示不足	患者が「使える」と知らない

読み取りを増やす：6つの実践ステップ

STEP1：リーダー配置と動線を“置くだけ・迷わない”に

• 受付正面・腰高で視認性の高い位置に固定。置台はカードの向きが分かるピクトを貼付。
• 「ここにカードを置いてください」赤文字のミニPOPを常設。
• 毎日オープン前に通電チェック・清掃。埃・指紋は読み取り不良の原因。

STEP2：案内トークを統一。安心ワードを添える

おすすめ定型フレーズ：

「マイナンバーカードを健康保険証としてお使いいただけます。こちらにカードを置くだけで、数秒で保険確認が完了します。」
「カード内に病歴などの個人情報は入っていません。薬の履歴を参照する時は必ずご本人の同意をいただきます。」

STEP3：店外・店内の周知を強化（ポスター／HP／LINE）

• 入口ドア・受付前に「マイナ保険証対応薬局」ポスターを掲示。
• HP、Googleビジネスプロフィール、LINEの固定メッセージに明記。
• スタッフ名札に「マイナ保険証OK」缶バッジ。視認性が利用促進に直結。

STEP4：連携を“速く・止まらない”に（ICT最適化）

• レセコン／電子薬歴の通信設定を点検。ファイアウォール例外やDNS遅延の洗い出し。
• 失敗時の標準手順（向き直し→別機→手入力）をカードサイズのマニュアルで手元に。
• ベンダー連絡票に「発生時刻／端末／エラー内容」を即記録。再現性の有無も。

STEP5：KPIを週次で共有し、ちいさな成功を称賛

• 指標：利用率＝読み取り件数÷総受付件数、ワンショット成功率。
• スタッフ別・時間帯別に見える化。改善策（声かけ・配置換え）を試行。
• 月末に小さなインセンティブ（表彰・カフェ券）で継続性UP。

STEP6：不安に寄り添い、透明性で信頼をつくる

• 同意画面で取得・参照する情報の範囲を口頭＋視覚で明示。
• 「参照は任意」「同意しないを選べる」を先に伝え、主導権は患者に。
• 個人情報ポリシーとログ監査の体制をカウンター掲示・HP掲載。

ミニケース：中規模薬局が利用率10％→55％まで伸ばした4か月

1. 初月：リーダー2台化・正面配置／案内POP設置／毎朝点検。→利用率25％。
2. 2か月目：案内トークの統一・ロールプレイ／失敗手順カード化。→35％。
3. 3か月目：HPとLINEで周知、缶バッジ導入／エラー記録とベンダー調整。→45％。
4. 4か月目：週次KPI共有＋表彰／不安Q&Aポスター／同意画面の見える化。→55％。

ポイントは、ハード（機器）×ソフト（説明）×カルチャー（称賛）の三位一体運用です。

「落としたら？盗まれたら？」にどう答えるか：安心の根拠と伝え方

1）カード内に病歴や住所の“本体データ”は入っていません

ICチップには本人確認用の電子証明書などが入っているだけで、病歴・薬歴などの詳細情報はカードの中に保存されていません。
薬局で参照する薬剤情報・健診情報はオンライン経由で取得し、勝手に閲覧・保存はできません（取得は患者同意が前提）。

2）紛失しても“なりすまし受診”は極めて困難

• 受付時は顔認証または暗証番号（4桁）が必要。
• 紛失時は24時間365日のコールセンターで一時停止が可能：0120-95-0178。
• 停止後に再発行すれば旧カードは機能停止。悪用継続はできません。

3）薬局で見られる情報は厳格に制限、同意が基本

区分	薬局が扱える情報	同意要否
保険資格	保険者名・資格有効期限 等	資格確認の範囲（同意不要）
薬剤情報	過去の処方・調剤履歴（概ね3年）	患者の明示同意が必要
特定健診	健診結果・保健指導情報	患者同意が必要

薬局内ではアクセスログが保存され、外部持ち出しや不正閲覧はルールとシステムの両面で抑止されます。

4）カウンターで使える安心トーク例

「カードの中に病気の情報は入っていません。
参照する時は、いつでも同意しないを選べます。落としても顔認証があるので、他人は使えませんよ。」

5）“見える化”の工夫で心理的ハードルを下げる

• 「個人情報の取り扱い」掲示／HP掲載。アクセスログ監査の有無も明記。
• 同意画面の見本ポスター：どの項目を参照でき、どれが任意かを図示。
• 「停止の連絡先」ミニカードを配布（0120-95-0178／24時間）。

💬トークでマイナ保険証の読み取りを増やす方法

マイナンバーカードの利用を増やす一番のカギは、制度説明でも機械操作でもありません。
それは「受付スタッフや薬剤師の声かけ」です。
トーク次第で読み取り率は2倍以上に伸びることもあります。

① 「使いますか？」より「こちらに置いてください」

質問形式（Yes／No）は拒否を生みやすく、提案トークが効果的です。

🗣️「マイナンバーカードを健康保険証としてお使いいただけます。こちらにカードを置いてくださいね。」

人は「選択肢」よりも「提案」に自然と従いやすい傾向があります。

② 「理由」を添えて納得を生む

🗣️「マイナ保険証を使うと、限度額証明書を持たなくても自動で処理されます。」
🗣️「保険証を探す手間がなくなるので、受付がスムーズですよ。」

「なぜ必要なのか」を明確にすると、患者は安心してカードを差し出してくれます。

③ 不安を持つ方には“先に安心”を伝える

「個人情報」「悪用」などの不安を先読みし、安心ワードから入ると効果的です。

🗣️「カードの中には病気の情報は入っていません。資格確認だけに使いますのでご安心くださいね。」

安心→行動の順番が大切です。説明の前にまず“安心”を届けましょう。

④ 短く・具体的に・1往復15秒以内で

説明が長いと「難しそう」「めんどくさい」と感じられます。
1回のトークは15秒以内・1テーマ1文が理想です。

🗣️「カードを置くだけで資格確認が一瞬で終わります。」
🗣️「顔認証があるので、落としても他人は使えません。」

⑤ 否定せず共感してから説明

「それは違います」ではなく「そうですよね」で始めましょう。
共感→事実説明の順にすることで、信頼が生まれます。

患者：「怖いから出したくないの」
薬剤師：「そうですよね、最近いろんなニュースもありますもんね。でも実はカード内には病歴情報は入ってないんですよ。」

⑥ 「他の方も使ってます」で安心を共有

「他の人もやっている」と聞くと、人は安心して行動します。
これを社会的証明の法則といいます。

🗣️「最近は7割くらいの方がマイナ保険証を使われています。」
🗣️「みなさん“思ったより簡単だった”っておっしゃいますよ。」

⑦ 最後に「感謝」と「称賛」を添える

読み取り後の一言が、次回もカードを出すきっかけになります。

🗣️「ありがとうございます！スムーズに読み取れました😊」
🗣️「ご協力いただけて助かります！」

行動を褒める＝再行動のきっかけです。

チームで使えるトーク統一表

シーン	おすすめトーク例	避けたい言い方
初回受付	「カードを保険証としてお使いいただけます」	「カードありますか？」
不安訴え	「カード内には個人情報は入っていません」	「大丈夫ですよ」だけで終わる
同意取得	「薬の履歴を安全に確認するためです」	「とりあえず押してください」

📊トーク改善で成果が出た薬局事例

• A薬局（東京都）：声かけ統一＋安心トーク導入で利用率15%→52%
• B薬局（福岡県）：「顔認証の安全性」を説明→1ヶ月で＋20ポイント
• C薬局（大阪府）：スタッフ間で週1ロールプレイ→継続利用率80％超

🌿まとめ：制度説明より“人の言葉”が効く

制度の理解はもちろん大切ですが、患者の行動を変えるのは「人の言葉」です。
“安心を伝える力”が読み取り率を上げる最大の武器になります。

• 💬 選択ではなく提案
• 🩺 理由と安心を添える
• 😊 感謝と共感で締める

これを薬局全体で共有すれば、マイナ保険証が“当たり前に使われる”空気を作れます。
読み取り率アップ＝信頼アップ。現場からできる改革です🌸

 

• 技術：リーダー配置・通信最適化・失敗時のリカバリー動線。
• 説明：同意は任意／カード内に医療情報は入っていない／紛失時は即停止。
• 文化：KPIの共有・称賛・ポジティブ体験の積み重ね。

「最初から完璧」より「小さく速く回す」。週次で改善サイクルを回すほど、利用率は着実に伸びます。

よくある質問

Q. マイナ保険証に切替えたら、高額療養費の限度額認定証は不要ですか？

多くのケースで窓口負担の即時適用が可能になります。詳細は加入する保険者の案内をご確認ください。

Q. 電子証明書の有効期限が切れたら使えませんか？

有効期限の3か月前～3か月後はリーダーで更新アラートが出ます。期限切れ後も3か月間は健康保険証として利用可能です。早めの更新を。

Q. オンライン資格確認で「資格情報なし」と出たら？

転職・保険切替の届出～データ登録に時間差が生じる場合があります。紙の資格確認や一時的な自己負担立替の説明を丁寧に。

Q. どうしてもカードを出したくない患者さんには？

強制ではありません。紙保険証や資格確認書を丁寧に案内しつつ、メリットと停止連絡先（紛失時）だけ共有しておきましょう。

参考文献（一次情報・最終確認日：2025-10-10）

1. 厚生労働省「オンライン資格確認について（医療機関・施術所等）」
   
   オンライン資格確認について（医療機関・施術所等、システムベンダ向け）

   オンライン資格確認の医療機関・施術所等、システムベンダ向けの情報を掲載しております。

   www.mhlw.go.jp
2. 厚生労働省「マイナンバーカードの健康保険証利用について」
   
   マイナンバーカードの健康保険証利用について

   www.mhlw.go.jp
3. デジタル庁「マイナンバーカードの健康保険証利用」
   
   マイナンバーカードの健康保険証利用｜デジタル庁

   デジタル庁は、デジタル社会形成の司令塔として、未来志向のDX（デジタル・トランスフォーメーション）を大胆に推進し、デジタル時代の官民のインフラを一気呵成に作り上げることを目指します。

   www.digital.go.jp
4. マイナンバーカード総合サイト「紛失・一時停止／セキュリティ」
   
   紛失・一時停止／セキュリティ – マイナンバーカード総合サイト

   www.kojinbango-card.go.jp
5. 厚生労働省「オンライン資格確認 QA集」
   
   オンライン資格確認　QA集

   www.mhlw.go.jp
6. 厚生労働省「マイナンバーカード電子証明書の有効期限（案内・更新）」
   
   資格確認方法について

   www.mhlw.go.jp
7. デジタル庁「マイナンバーの安全性」
   
   マイナンバーカードの安全性｜デジタル庁

   デジタル庁は、デジタル社会形成の司令塔として、未来志向のDX（デジタル・トランスフォーメーション）を大胆に推進し、デジタル時代の官民のインフラを一気呵成に作り上げることを目指します。

   www.digital.go.jp
8. マイナンバーカード総合サイト「紛失・拾得について」
   
   マイナンバーカード及び電子証明書を搭載したスマートフォンを紛失した場合の一時停止方法は？ – マイナンバーカード総合サイト

   www.kojinbango-card.go.jp
9. デジタル庁ニュース「薬局での『これからの医療の受け方』紹介キャンペーンについて」
   
   薬局での「これからの医療の受け方」紹介キャンペーンについて｜デジタル庁

   デジタル庁は、デジタル社会形成の司令塔として、未来志向のDX（デジタル・トランスフォーメーション）を大胆に推進し、デジタル時代の官民のインフラを一気呵成に作り上げることを目指します。

   www.digital.go.jp

---

---