


前書き:ノイロトロピンは「非オピオイド・非NSAIDs」の“ちょっと特殊”な疼痛治療薬
ノイロトロピン(Neurotropin)は、一般的な「ロキソニン(NSAIDs)」や「カロナール(アセトアミノフェン)」のように炎症を直接抑えるタイプとは異なり、中枢の痛み抑制系(下行性疼痛抑制系)を賦活することで痛みを和らげる、独特な位置づけの薬です。添付文書上も「下行性疼痛抑制系賦活型」「非オピオイド、非シクロオキシゲナーゼ阻害」と整理されています。
さらに、ノイロトロピンは錠剤(ノイロトロピン錠4単位)と注射剤(ノイロトロピン注射液3.6単位など)があり、効能・用法のラインナップが一部異なります。
この記事では、薬局・病院での説明にそのまま使えるように、「何の薬か」「どういうときに使うか」「副作用や相互作用」「他薬との比較」を、根拠(添付文書・インタビューフォーム・ガイドライン)に沿って丁寧にまとめます。
本文:ノイロトロピンとは?(成分・特徴・適応・作用機序)

1) 成分:ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液(生物由来製品)
ノイロトロピンの一般名は、ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液です。名前の通り、製造工程上「ワクシニアウイルスを接種した家兎(うさぎ)の炎症皮膚」由来の抽出物を成分とする製剤で、注射剤では「生物由来製品」として扱われています。
ここは誤解が多いポイントで、「体内でワクシニアウイルスが増える」薬ではありません。あくまで“抽出液”を有効成分とする医薬品で、臨床では鎮痛・そう痒などの目的で使われます(適応は剤形で異なる)。
2) 製剤:錠剤と注射で「効能」が少し違う
| 製剤 | 代表例 | 主な効能(添付文書) | 用法の概略 |
|---|---|---|---|
| 内服 | ノイロトロピン錠4単位 | 帯状疱疹後神経痛、腰痛症、頸肩腕症候群、肩関節周囲炎、変形性関節症 | 通常成人 1日4錠を朝夕2回 |
| 注射 | ノイロトロピン注射液3.6単位 | 腰痛症、頸肩腕症候群、症候性神経痛、皮膚疾患に伴うそう痒、アレルギー性鼻炎、SMON後遺症状(冷感・異常知覚・痛み) | 通常 1日1回3.6単位(疾患により増量・例外あり) |
ポイントは、錠剤は「帯状疱疹後神経痛」など“痛み寄りの適応”、注射は「そう痒」「アレルギー性鼻炎」「SMON後遺症状」など適応が広いという違いです。

3) どういうときに使う?(代表的な処方シーン)
● 帯状疱疹後神経痛(PHN)
錠剤の代表適応のひとつです。添付文書には、PHNでは「4週間で効果がなければ漫然投与しない」という注意が明記されています。
● 慢性化しやすい運動器疼痛:腰痛症・頸肩腕症候群・肩関節周囲炎・変形性関節症
「NSAIDsが胃に合わない」「腎機能が心配」「長期でNSAIDsを避けたい」などの場面で、選択肢に入ることがあります(ただし疾患や重症度により方針は変わります)。
錠剤の臨床成績欄には、腰痛症・頸肩腕症候群などでの試験成績の概要が掲載されています。
● 注射で扱うことが多い:そう痒(湿疹・皮膚炎、蕁麻疹)・アレルギー性鼻炎・症候性神経痛・SMON後遺症状
注射剤は、痛み以外(そう痒・アレルギー性鼻炎)も適応に含まれます。SMON後遺症状については、投与期間の目安(例:6週間、2週間で無効なら漫然投与しない)が記載されています。
4) 作用機序:下行性疼痛抑制系の賦活+局所の起炎物質抑制など
錠剤の添付文書では作用機序として、「モノアミン作動性下行性疼痛抑制系の活性化」に加え、侵害刺激局所でのブラジキニン遊離抑制、末梢循環改善などが挙げられています。
さらに添付文書の薬効薬理には、動物モデルで5-HT3受容体(セロトニン系)やα2受容体(ノルアドレナリン系)に関連する所見が示されています。

ノイロトロピンはガイドラインでどう扱われる?(神経障害性疼痛での立ち位置)
日本ペインクリニック学会の「神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン 改訂第2版」では、神経障害性疼痛の薬物療法として、第一選択薬(例:プレガバリン、デュロキセチン、三環系抗うつ薬など)に加え、ノイロトロピン(ワクシニアウィルス接種家兎炎症皮膚抽出液)は“第二選択薬”として位置づけられています。
つまり、神経障害性疼痛(たとえばPHNなど)では、「いきなり最初の一手」になりやすい薬というより、症状・副作用・併存疾患を見ながら追加・切替で使う候補、というのが“ガイドライン上の基本形”です。
症例・実践例:薬局での説明を「比較」でわかりやすくする

実践①:患者さんにまず伝える「3行説明」テンプレ
- ノイロトロピンは、一般的な痛み止め(NSAIDs)と違って、痛みを抑える神経の働きを助けるタイプの薬です。
- 眠気や胃の不快感が出ることがあるので、最初は様子を見てください。
- (PHNなら)4週間で効き目がはっきりしない場合は、続け方を主治医と相談する薬です。
実践②:よくある処方パターン別「他薬との比較」
A. NSAIDs(ロキソプロフェン等)と比べる
| 観点 | ノイロトロピン | NSAIDs(例:ロキソプロフェン) |
|---|---|---|
| 主な作用 | 下行性疼痛抑制系の賦活など(非COX阻害) | COX阻害→炎症・痛み物質を減らす(一般論) |
| 向きやすい痛み | 神経痛要素・慢性疼痛の補助、PHNなどで選択肢 | 炎症性疼痛(急性の筋骨格痛など)で使われやすい |
| 胃腸・腎の負担 | NSAIDsほど典型的ではないが、胃部不快感等はあり得る | 胃潰瘍・腎機能悪化など注意(一般論) |
| 眠気 | 眠気・めまいが起こり得る | 通常は中枢性鎮静は主作用ではない(一般論) |
薬局での言い方例:
「ロキソニンは“炎症を抑える系”ですが、ノイロトロピンは“痛みを抑える神経のスイッチを助ける系”です。胃や腎臓の事情でNSAIDsを続けにくい時に、選択肢になることがあります。」
B. プレガバリン(リリカ)と比べる(神経障害性疼痛でよく出る比較)
神経障害性疼痛では、ガイドライン上、プレガバリンなどが第一選択薬、ノイロトロピンは第二選択薬として整理されています。
| 観点 | ノイロトロピン | プレガバリン |
|---|---|---|
| ガイドライン上の位置づけ | 第二選択薬 | 第一選択薬(代表例) |
| 副作用で目立つもの | 眠気、めまい、胃部不快感、発疹など | 眠気・ふらつき等が問題になりやすい(ガイドラインにも注意点の記載) |
| 使い分けの現場感 | 第一選択が合わない/追加で試す、などで登場しやすい | 第一選択として先に検討されやすい |
C. デュロキセチン(サインバルタ)・三環系抗うつ薬(TCA)と比べる
これらも神経障害性疼痛の第一選択薬として挙げられます。ノイロトロピンは第二選択の位置づけです。
薬局では「抗うつ薬なの?」と聞かれやすいので、
「デュロキセチン等は“神経の痛み”にも効くように設計されていて、ノイロトロピンは“別ルートで痛みを抑える補助役”」
と整理すると伝わりやすいです(※適応・併存疾患・副作用で選択は変わります)。
D. トラマドール(弱オピオイド)と比べる
ガイドラインではトラマドールも第二選択薬の枠に置かれています(他のオピオイドは原則さらに慎重)。
患者さん向けには、「ノイロトロピンは“オピオイドではない”(依存や便秘のイメージが強い薬とは別系統)」という説明が安心につながる場面があります。添付文書上も「非オピオイド」と明記されています。
副作用・注意点:ここだけは外さない(添付文書ベース)

1) 重大な副作用(頻度不明でも“見逃さない”)
- ショック/アナフィラキシー(注射・錠剤いずれも記載)
- 肝機能障害/黄疸(AST/ALT/γ-GTP上昇など)
実務上は、発疹・呼吸苦・血圧低下などのアレルギー症状や、だるさ+黄疸/褐色尿などの肝障害サインがあれば、服用中止と受診勧奨を早めに。
2) 比較的よく遭遇する副作用
- 錠剤:発疹、胃部不快感、悪心、眠気・めまいなど
- 注射:眠気、めまい、消化器症状、注射部位反応(発赤・腫脹・疼痛)など
3) 妊娠・授乳・小児・高齢者
- 妊婦:有益性が危険性を上回る場合にのみ投与(錠・注とも)
- 授乳婦:継続/中止を検討(錠・注とも)
- 小児:錠剤は小児等の臨床試験未実施、注射は低出生体重児・新生児を対象とした試験未実施などの記載
- 高齢者:状態観察し慎重投与(生理機能低下)
相互作用:結論から言うと「CYP相互作用は起こりにくい」—ただし“眠気の足し算”は要注意
ノイロトロピン錠の薬物動態には、in vitro試験として、複数のCYP基質の代謝に影響を与えないこと、またCYP2E1/CYP3A4で代謝される併用薬との相互作用が起こる可能性は極めて低いことが示唆される、と記載があります。
一方で、実務で気にしたいのは、添付文書上も出てくる眠気・めまいです。
ベンゾジアゼピン系、睡眠薬、抗ヒスタミン薬、プレガバリン等と併用している患者では、“眠気の足し算”で転倒リスクが上がることがあるため、服薬指導では「車の運転」「立ちくらみ」「夜間トイレ」など生活行動に落とし込んだ注意喚起が有用です。
まとめ:ノイロトロピンの要点(薬剤師が押さえるべき結論)
- ノイロトロピンは、下行性疼痛抑制系を賦活するタイプの疼痛治療薬で、NSAIDsやオピオイドとは系統が違う。
- 錠剤はPHNなど“痛み寄りの適応”、注射はそう痒・アレルギー性鼻炎・SMON後遺症状なども含む。
- 神経障害性疼痛のガイドラインでは、第二選択薬として位置づけられる。
- 副作用は眠気・めまい・胃部不快感・発疹など。重大な副作用としてアナフィラキシー、肝機能障害/黄疸に注意。
- CYP相互作用は起こりにくいと示唆されるが、鎮静系薬剤との“眠気の足し算”は現場で重要。
よくある質問
Q1. ノイロトロピンって「ステロイド」や「抗生物質」みたいな薬ですか?
いいえ。添付文書上は「疼痛治療剤(非オピオイド、非シクロオキシゲナーゼ阻害)」で、作用の中心は下行性疼痛抑制系の賦活などです。
Q2. 「うさぎ」や「ワクシニア」って聞くと不安です。感染したりしませんか?
ノイロトロピンは“抽出液”を成分とする医薬品で、臨床での使い方は鎮痛やそう痒治療です(剤形で適応は異なります)。少なくとも添付文書の位置づけは「疼痛治療剤」であり、ワクシニアウイルス感染を起こす目的の薬ではありません。
Q3. どのくらいで効きますか?
疾患や個人差が大きいです。少なくとも錠剤の添付文書では、帯状疱疹後神経痛において「4週間で効果が認められない場合は漫然と投薬を続けない」と明記されています。
Q4. 他の薬と一緒に飲んでも大丈夫?
添付文書上、CYPを介する大きな相互作用は起こりにくいと示唆されています。
ただし、眠気・めまいがあり得るため、睡眠薬・抗不安薬・抗ヒスタミン薬・プレガバリンなどと併用している場合は、ふらつきや転倒に注意してください。
Q5. 妊娠中・授乳中でも使えますか?
添付文書では、妊婦は「有益性が危険性を上回る場合にのみ」、授乳婦は「継続/中止を検討」とされています。自己判断での継続・中止は避け、必ず主治医に相談が必要です。
参考文献(最終確認日:2026-02-08)
- PMDA 医療用医薬品情報:ノイロトロピン錠4単位 添付文書(PDF)
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/530288_1149023F1036_1_11 - PMDA 医療用医薬品情報:ノイロトロピン注射液3.6単位 添付文書(PDF)
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/530288_1149601A2062_1_08 - PMDA:ノイロトロピン錠4単位 インタビューフォーム(PDF)
https://www.info.pmda.go.jp/go/interview/1/530288_1149023F1036_1_100_1F.pdf - PMDA:ノイロトロピン注射液3.6単位 インタビューフォーム(PDF)
https://www.info.pmda.go.jp/go/interview/1/530288_1149601A2062_1_080_1F.pdf - 日本ペインクリニック学会:神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン 改訂第2版(公開ページ)
日本ペインクリニック学会 - 日本ペインクリニック学会:神経障害性疼痛の薬物療法(Ⅲ)PDF(CQ15〜等)
https://www.jspc.gr.jp/Contents/public/pdf/shi-guide08_11.pdf
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薬剤師向け転職サービスの比較と特徴まとめ


今日は、特徴をわかりやすく整理しつつ、読んでくださる方が自分の働き方を見つめ直しやすいようにまとめていきましょう。
働く中で、ふと立ち止まる瞬間は誰にでもあります
薬剤師として日々働いていると、忙しさの中で気持ちに余裕が少なくなり、
「最近ちょっと疲れているかも…」と感じる瞬間が出てくることがあります。
- 店舗からの連絡に、少し身構えてしまう
- 休憩中も頭の中が業務のことでいっぱいになっている
- 気づけば仕事中心の生活になっている
こうした感覚は、必ずしも「今の職場が嫌い」というわけではなく、
「これからの働き方を考えてもよいタイミングかもしれない」というサインであることもあります。
無理に変える必要はありませんが、少し気持ちが揺れたときに情報を整理しておくと、
自分に合った選択肢を考えるきっかけになることがあります。
薬剤師向け転職サービスの比較表
ここでは、薬剤師向けの主な転職サービスについて、それぞれの特徴を簡潔に整理しました。
各サービスの特徴(概要)
ここからは、上記のサービスごとに特徴をもう少しだけ詳しく整理していきます。ご自身の希望と照らし合わせる際の参考にしてください。
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・面談を通じて、これまでの経験や今後の希望を整理しながら話ができる点が特徴です。
・「まずは話を聞いてみたい」「自分の考えを整理したい」という方にとって、利用しやすいスタイルと言えます。
・全国の薬局・病院・ドラッグストアなど、幅広い求人を取り扱っています。
・エリアごとの求人状況を比較しやすく、通勤圏や希望地域に合わせて探したいときに役立ちます。
・「家から通いやすい範囲で、いくつか選択肢を見比べたい」という方に向いているサービスです。
・調剤薬局の求人を多く扱い、条件の調整や個別相談に力を入れているスタイルです。
・勤務時間、休日日数、年収など、具体的な条件について相談しながら進めたい人に利用されています。
・「働き方や条件面にしっかりこだわりたい」方が、検討の材料として使いやすいサービスです。
・調剤系の求人を取り扱う転職支援サービスです。
・職場の雰囲気や体制など、求人票だけではわかりにくい情報を把握している場合があります。
・「長く働けそうな職場かどうか、雰囲気も含めて知りたい」という方が検討しやすいサービスです。
・薬剤師に特化した職業紹介サービスで、調剤薬局・病院・ドラッグストアなど幅広い求人を扱っています。
・公開されていない求人(非公開求人)を扱っていることもあり、選択肢を広げたい場面で役立ちます。
・「いろいろな可能性を見比べてから考えたい」という方に合いやすいサービスです。
・調剤薬局を中心に薬剤師向け求人を取り扱うサービスです。
・研修やフォロー体制など、就業後を見据えたサポートにも取り組んでいる点が特徴です。
・「現場でのスキルや知識も高めながら働きたい」という方が検討しやすいサービスです。
気持ちが揺れるときは、自分を見つめ直すきっかけになります
働き方について「このままでいいのかな」と考える瞬間は、誰にでも訪れます。
それは決して悪いことではなく、自分の今とこれからを整理するための大切なサインになることもあります。
転職サービスの利用は、何かをすぐに決めるためだけではなく、
「今の働き方」と「他の選択肢」を比較しながら考えるための手段として活用することもできます。
情報を知っておくだけでも、
「いざというときに動ける」という安心感につながる場合があります。


「転職するかどうかを決める前に、まずは情報を知っておくだけでも十分ですよ」ってお伝えしたいです。
自分に合う働き方を考える材料が増えるだけでも、少し気持ちがラクになることがありますよね。
無理に何かを変える必要はありませんが、
「自分にはどんな可能性があるのか」を知っておくことは、将来の安心につながることがあります。
気になるサービスがあれば、詳細を確認しながら、ご自身のペースで検討してみてください。


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