

近年、ニュースやSNSで取り上げられることが増えた「SFTS(重症熱性血小板減少症候群)」。
これはマダニに刺されることで感染する新興ウイルス感染症で、毎年のように国内で患者報告が続き、死亡例も出ています。
「マダニ=山奥」と思われがちですが、実際には庭・畑・公園といった身近な環境にも潜んでおり、私たちの生活と切り離せない存在です。
この記事では、薬剤師の視点から
- SFTSとはどんな病気か(症状・感染経路・治療)
- マダニがどこに生息するのか
- SFTS以外に気をつけるべきマダニ媒介疾患
- 日常でできる予防策(服装・虫よけ・チェック法)
- セルフメディケーションの限界と受診の目安
までをわかりやすく総まとめします。
さらに、理解度をチェックできるクイズや、よくある質問への回答も用意しました。
ぜひ最後まで読んで、患者さんや家族、ペットを守るための正しい知識を持ち帰ってください。

SFTS(重症熱性血小板減少症候群)とは?
SFTSはマダニが媒介するウイルス感染症で、主な症状は発熱・消化器症状・血小板減少です。
重症化すると出血傾向や意識障害が起こり、命に関わることもあります。
病原体はダビエバンダウイルス(旧SFTSウイルス)。日本では感染症法の四類感染症に指定されています。
感染経路は?
- 主経路:ウイルスを持つマダニに刺されること
- 動物関連:発症したネコやイヌの体液や咬傷からの感染事例あり
- ヒト→ヒト:患者の血液や分泌物からの感染が国内でも報告(2024年)
潜伏期は6〜14日(通常7〜10日)です。
主な症状と検査所見
- 発熱、倦怠感、食欲低下、嘔吐、下痢、腹痛
- 重症化で出血傾向、意識障害、DIC、多臓器不全
- 血液検査で:血小板減少・白血球減少・肝酵素上昇
「高熱+消化器症状+血小板減少」ならSFTSを強く疑うのが大事なポイントです。
診断と治療
診断はPCR検査や抗体検査で行われ、発生届は必須です。
治療は支持療法が基本ですが、2024年にファビピラビル(アビガン®)がSFTSに承認され、早期投与が推奨されています。
マダニはどこにいるの?
マダニは山だけでなく、公園・庭・畑のあぜ道・落ち葉のたまりにも生息します。
草や低木で「クエスティング」行動をとり、動物や人が通ると付着します。
活発なのは春から秋、特に初夏と秋にピークです。
クエスティングとは?

マダニの代表的な行動様式のひとつが「クエスティング(questing)」です。
これは、草や低木に登り、前脚を広げて通りかかる動物や人に取りつく行動のことを指します。
クエスティングの特徴
- 地面から30cm〜1.5m程度の高さの草や葉に登る
- 後ろ足で植物にしがみつき、前脚を大きく広げて待ち構える
- 二酸化炭素(呼気)や体温、振動を感知してターゲットに反応
- 接触すると素早く服や毛に取りつく
なぜ重要?
この行動のおかげで、「人がマダニの巣に入る」のではなく「マダニが人に飛び移る」という現象が起こります。
つまり、ハイキングや農作業で道の端・草むらに入るだけでも付着するリスクがあるのです。

マダニはSFTSだけ?他の病気は?
マダニが媒介するのはSFTSだけではなく、日本紅斑熱・ライム病・ダニ媒介性脳炎・アナプラズマ症・回帰熱・エゾウイルス感染症などがあります。
さらに、感染症ではありませんがα-Gal症候群(赤身肉アレルギー)もマダニ咬傷を契機に発症します。
| 疾患名 | 潜伏期 | 主症状 | 備考 |
|---|---|---|---|
| SFTS | 6〜14日 | 発熱、消化器症状、血小板減少 | 重症化で死亡例あり |
| 日本紅斑熱 | 2〜8日 | 発熱、発疹、刺し口 | 抗菌薬で治療可 |
| ライム病 | 数日〜週 | 遊走性紅斑、関節痛、神経症状 | 北海道・本州山間部 |
| ダニ媒介性脳炎 | 7〜14日 | 発熱、脳炎症状、後遺症あり | 北海道に集中 |
| α-Gal症候群 | 食後2〜6時間 | じんましん、腹痛、アナフィラキシー | 肉アレルギー |
万一マダニに噛まれたら?
マダニが皮膚に吸着しているのを見つけたとき、多くの人が慌てて指でつぶしたり無理に引き抜こうとしたりしてしまいます。
しかしこれはNGです。
無理に取ろうとすると、マダニの口器や体液が皮膚に残り、感染リスクが高まるためです。
人の場合の正しい対応
- できるだけ早く医療機関を受診(皮膚科や内科)
- 無理に取らず、マダニが付いたままでもそのまま病院へ
- マダニをつぶさないよう注意(体液にウイルスが含まれる可能性あり)
- 自然に落ちた場合は、マダニを密閉容器で保存し医師に提示すると診断に役立つ
人:受診までの注意点
- アルコールやオイルで外そうとしない
- 患部は触らず、絆創膏などで軽く覆う程度にする
- 熱・消化器症状・倦怠感が出たら、SFTSを含む感染症を念頭に速やかに再受診
ペットの場合の対応
- 飼い主が素手で取ろうとしない(感染リスクあり)
- 動物病院での除去・処置を受けるのが基本
- マダニが付着したままでもそのまま動物病院へ
- 無理に取って口器が残ると炎症や感染の原因になる
- 発熱・元気消失・食欲低下などがあればSFTSを含む感染症の可能性を獣医師に伝える
- 今後の予防としてペット用マダニ駆除薬(スポットオンや内服タイプ)を獣医師と相談
医療従事者向け:マダニ除去の基本手技
医療従事者がマダニ除去を行う場合は、以下の手順が推奨されます。
- ディスポーザブル手袋を装着し、マスク・ゴーグルなど標準予防策+接触予防策を徹底する。
- マダニの頭部(口器)を皮膚に近い位置で把持できるように、細い先のピンセットや専用器具(ティックリムーバー等)を使用。
- 皮膚に対して垂直方向にゆっくり持ち上げるように抜去する(ねじらない/潰さない)。
- 除去後は咬着部を石鹸と流水で洗浄し、必要に応じて消毒。
- 取り除いたマダニは密閉容器やアルコール保存で保管し、病原体検査に回せるようにする。
- 患者には1〜2週間の健康観察を指示し、発熱や消化器症状があれば直ちに再診するよう説明。
注意: 口器が皮膚に残った場合は、局所切開で摘出することがあります。
また、処置時に医療者自身が体液曝露しないよう、感染防御を徹底することが重要です。
セルフメディケーションの限界
市販の虫刺され薬や消毒薬で済ませるのは危険です。
人もペットも、マダニ咬傷は必ず医療機関・動物病院で処置すべきケースです。

薬剤師視点でできることは?
マダニやSFTSは「医療機関に任せるもの」と思われがちですが、薬局・薬剤師にもできることは多くあります。
薬剤師は地域の最前線で患者さんに接する立場だからこそ、早期受診への橋渡し役や予防啓発の役割が重要です。
1. 予防啓発
- 店頭POPや会話で伝える:「長袖・長ズボン」「虫よけの適切な使用」「帰宅後のチェック」を繰り返し案内
- 虫よけ商品の適正案内:ディート・イカリジンの濃度と年齢制限を説明
- 季節ごとの情報発信:春~秋に「マダニ注意!」と掲示・SNS発信
2. 受診勧奨(トリアージ)
以下のようなレッドフラッグ症状を聞き取ったら、即日受診を促すことが薬剤師の役割です。
- 高熱(38℃以上)+消化器症状(下痢・嘔吐・腹痛)
- 屋外活動歴・マダニ曝露(皮膚に黒い粒の付着など)
- 紫斑や出血傾向、意識がもうろうとしている
- 高齢者や基礎疾患を持つ患者さん
- ペットに咬まれた後の発熱
3. 医薬品の適正使用サポート
- ファビピラビル(アビガン®)など承認薬の情報提供(相互作用・禁忌の確認)
- 支持療法で使う解熱鎮痛薬・補液・抗菌薬との相互作用チェック
- 重症化リスク患者(高齢者・腎肝機能障害)への服薬指導
4. 地域連携
- 保健所・医師会・動物病院と連携して正しい情報を共有
- 地域の健康講座・学校教育での啓発活動
- ペット飼育者への「動物も媒介源になる」注意喚起
薬剤師は「薬を渡すだけ」ではなく、感染症の一次予防・早期発見・適正使用支援まで担える存在です。
地域に根ざした薬局だからこそ、マダニやSFTSに関する相談窓口として信頼される体制を整えましょう。

まとめ
- SFTSはマダニ媒介+動物・患者体液からもうつる
- 発熱+消化器症状+血小板減少で強く疑う
- 治療は支持療法+ファビピラビル(承認済み)
- マダニは草地・公園・庭先にもいるため予防が重要
- マダニはSFTSだけでなく、複数の感染症を媒介
理解度チェック!マダニとSFTSのクイズ(3問)
Q1. マダニが最も多く潜んでいる場所はどこでしょう?(1つ選択)
A. 舗装された道路の真ん中/B. 草むら・やぶ・落ち葉のたまり/C. 屋内の畳の上
正解:B
マダニは草むら・やぶ・落ち葉のたまりなどで待ち構え、人や動物が通ると付着します。舗装路や畳の上にはほとんどいません。
Q2. SFTSの典型的な症状セットとして最も正しいのは?(1つ選択)
A. 発熱+発疹+刺し口/B. 発熱+消化器症状+血小板減少/C. 咳嗽と咽頭痛のみ
正解:B
SFTSは「発熱+消化器症状(嘔吐・下痢など)+血小板減少」が典型的です。発疹は少なく、風邪様症状だけでは説明できません。
Q3. マダニが媒介する感染症として正しくないのはどれでしょう?(1つ選択)
A. 日本紅斑熱/B. ライム病/C. インフルエンザ
正解:C
インフルエンザは飛沫感染するウイルスで、マダニとは関係ありません。マダニはSFTS・日本紅斑熱・ライム病・ダニ媒介性脳炎などを媒介します。
よくある質問
SFTSの致命率は?
おおむね10〜30%とされ、高齢者ほど重症化しやすいです。
ワクチンはある?
現時点で承認済みワクチンはありません。予防はマダニに刺されないことが基本です。
市販薬で対応できる?
できません。解熱鎮痛薬だけで様子を見るのは危険で、発熱+消化器症状があれば必ず受診を
SFTSの致命率は?
おおむね10〜30%とされ、高齢者ほど重症化しやすいです。
ワクチンはある?
現時点で承認済みワクチンはありません。予防はマダニに刺されないことが基本です。
市販薬で対応できる?
できません。解熱鎮痛薬だけで様子を見るのは危険で、発熱+消化器症状があれば必ず受診を。
マダニに噛まれると痛いですか?
ほとんどの場合痛みはなく気づきにくいです。
マダニの唾液には麻酔作用・抗炎症作用があり、刺された瞬間も吸血中も痛みを感じにくくなっています。
そのため「黒い粒が皮膚についていて気づいた」というケースが多いです。
マダニに噛まれても冷静でいられる?
はい、落ち着いて大丈夫です。
マダニは数日間吸血しますが、数時間で重症化するわけではありません。
大切なのは 「潰さない・無理に取らない・医療機関へ行く」 というシンプルな対応です。
このルールを覚えておけば、慌てず冷静に対処できます。
参考文献
- 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)|国立感染症研究所
- SFTSに関するQ&A|厚生労働省
- SFTS診療の手引き 2024年版
- 日本感染症学会:SFTSクイックリファレンス
- ダニ媒介感染症について|北海道
- 特殊な食物アレルギーQ&A(α-Gal症候群)|日本アレルギー学会
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薬剤師向け転職サービスの比較と特徴まとめ


今日は、特徴をわかりやすく整理しつつ、読んでくださる方が自分の働き方を見つめ直しやすいようにまとめていきましょう。
働く中で、ふと立ち止まる瞬間は誰にでもあります
薬剤師として日々働いていると、忙しさの中で気持ちに余裕が少なくなり、
「最近ちょっと疲れているかも…」と感じる瞬間が出てくることがあります。
- 店舗からの連絡に、少し身構えてしまう
- 休憩中も頭の中が業務のことでいっぱいになっている
- 気づけば仕事中心の生活になっている
こうした感覚は、必ずしも「今の職場が嫌い」というわけではなく、
「これからの働き方を考えてもよいタイミングかもしれない」というサインであることもあります。
無理に変える必要はありませんが、少し気持ちが揺れたときに情報を整理しておくと、
自分に合った選択肢を考えるきっかけになることがあります。
薬剤師向け転職サービスの比較表
ここでは、薬剤師向けの主な転職サービスについて、それぞれの特徴を簡潔に整理しました。
各サービスの特徴(概要)
ここからは、上記のサービスごとに特徴をもう少しだけ詳しく整理していきます。ご自身の希望と照らし合わせる際の参考にしてください。
・薬剤師向けの転職支援サービスとして、調剤薬局やドラッグストアなどの求人を扱っています。
・面談を通じて、これまでの経験や今後の希望を整理しながら話ができる点が特徴です。
・「まずは話を聞いてみたい」「自分の考えを整理したい」という方にとって、利用しやすいスタイルと言えます。
・全国の薬局・病院・ドラッグストアなど、幅広い求人を取り扱っています。
・エリアごとの求人状況を比較しやすく、通勤圏や希望地域に合わせて探したいときに役立ちます。
・「家から通いやすい範囲で、いくつか選択肢を見比べたい」という方に向いているサービスです。
・調剤薬局の求人を多く扱い、条件の調整や個別相談に力を入れているスタイルです。
・勤務時間、休日日数、年収など、具体的な条件について相談しながら進めたい人に利用されています。
・「働き方や条件面にしっかりこだわりたい」方が、検討の材料として使いやすいサービスです。
・調剤系の求人を取り扱う転職支援サービスです。
・職場の雰囲気や体制など、求人票だけではわかりにくい情報を把握している場合があります。
・「長く働けそうな職場かどうか、雰囲気も含めて知りたい」という方が検討しやすいサービスです。
・薬剤師に特化した職業紹介サービスで、調剤薬局・病院・ドラッグストアなど幅広い求人を扱っています。
・公開されていない求人(非公開求人)を扱っていることもあり、選択肢を広げたい場面で役立ちます。
・「いろいろな可能性を見比べてから考えたい」という方に合いやすいサービスです。
・調剤薬局を中心に薬剤師向け求人を取り扱うサービスです。
・研修やフォロー体制など、就業後を見据えたサポートにも取り組んでいる点が特徴です。
・「現場でのスキルや知識も高めながら働きたい」という方が検討しやすいサービスです。
気持ちが揺れるときは、自分を見つめ直すきっかけになります
働き方について「このままでいいのかな」と考える瞬間は、誰にでも訪れます。
それは決して悪いことではなく、自分の今とこれからを整理するための大切なサインになることもあります。
転職サービスの利用は、何かをすぐに決めるためだけではなく、
「今の働き方」と「他の選択肢」を比較しながら考えるための手段として活用することもできます。
情報を知っておくだけでも、
「いざというときに動ける」という安心感につながる場合があります。


「転職するかどうかを決める前に、まずは情報を知っておくだけでも十分ですよ」ってお伝えしたいです。
自分に合う働き方を考える材料が増えるだけでも、少し気持ちがラクになることがありますよね。
無理に何かを変える必要はありませんが、
「自分にはどんな可能性があるのか」を知っておくことは、将来の安心につながることがあります。
気になるサービスがあれば、詳細を確認しながら、ご自身のペースで検討してみてください。



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