


②前書き:この記事でわかること
くも膜下出血(特に破裂脳動脈瘤によるもの)は、急性期治療(手術・血管内治療、集中治療、合併症管理など)を乗り越えたあとも、疲労感・集中力低下・物忘れ・気分の落ち込みなどの“目に見えにくい症状”が続くことがあります。こうした状態は「post-aSAH syndrome(くも膜下出血後症候群)」として報告され、社会復帰(とくに復職)の難しさにも関係します。
- 疲れやすい・集中できない主な原因(脳の回復、睡眠、心理、薬など)
- 「怠け」ではない理由
- 日常生活・仕事で困るポイントと対策(具体例つき)
- 医療機関に相談すべき危険サイン


③本文:くも膜下出血後に疲れやすい・集中できない主な理由
1)大前提:脳は“見えないケガ”から回復中
くも膜下出血は、脳の表面の空間(くも膜下腔)に血液が広がり、出血そのもの+炎症反応+脳のむくみ+髄液循環の乱れ+血管攣縮による虚血など、脳に複合的ストレスがかかります。AHA/ASAのガイドラインでも、くも膜下出血は重篤で合併症管理と回復支援が重要とされます。
退院できても、脳はまだ回復途中で、エネルギー効率が落ちているイメージです。だからこそ、「少し動いただけで電池切れ」みたいな疲れが起きます。

2)「脳の疲れ(mental fatigue)」は精神論ではなく“よくある後遺症”
くも膜下出血の回復期~慢性期には、注意・記憶・処理速度・段取り(遂行機能)などが低下しやすく、復職や生活の質に影響することが報告されています。
疲労にも種類があり、筋肉疲労というより、「頭を使うほど強くなる疲れ」(認知的疲労)が出ることがあります。SAH後の疲労は数年単位で残ることもある、という系統的レビューもあります。
3)集中できない理由①:注意の配分・切り替えが弱くなる
「集中できない」は“やる気不足”ではなく、注意のコントロールが難しくなることで起きます。とくに次の場面で困りやすいです。
- 話を聞きながらメモする(マルチタスク)
- 周囲が騒がしい場所で作業する
- 手順が多い仕事でミスが増える(確認漏れ、順番違い)
- 予定変更に弱くなる(切り替えが苦手)
この「目に見えにくい認知の問題」は復職にも影響しうると報告されています。

4)集中できない理由②:睡眠障害(眠れない・浅い・昼夜逆転)
入院中の環境、痛み、ストレス、薬の影響で睡眠が乱れ、退院後も昼寝が増えて夜眠れない…という流れがよくあります。睡眠が崩れると、疲労と集中低下がセットで悪化しやすいです。SAH後疲労と睡眠・気分との関連が示唆されています。
5)疲れやすい理由①:炎症・神経伝達・ストレス系など“全身”の変化
脳卒中後疲労は、単一の原因では説明できず、炎症反応やストレス系など複数の要因が関与すると考えられています。脳卒中後疲労は頻度が高く、生活への影響が大きいことが指摘されています。
つまり、「気合で乗り切れない疲れ」が起きても不思議ではありません。
6)疲れやすい理由②:不安・抑うつ・PTSDなど心理的要因
突然の発症、救急搬送、ICU体験は強いストレスです。SAH後の疲労は、不安・抑うつ・PTSD症状と関連する可能性が報告されています。
ここが重要で、心理的要因が絡む場合でも、「気のせい」ではなく治療・支援の対象です。睡眠や気分のケアが入るだけで、疲れが軽くなる人もいます。
7)見落としやすい原因:水頭症・てんかん・貧血・甲状腺など
くも膜下出血後は髄液の流れが乱れ、水頭症(正常圧水頭症を含む)を起こすことがあります。歩行のふらつき、物忘れ、意欲低下がセットで出ることもあり、疲労や集中力低下の背景になりえます(診断は主治医の評価が必要です)。
また、発作が目立たないてんかん、貧血、甲状腺機能異常、栄養不足などが重なると症状は増幅します。「後遺症だと思っていたら、治療できる別要因が混ざっていた」は実際に起こります。
8)薬の影響:眠気・だるさを強める薬は意外と多い
退院後は降圧薬、睡眠薬、抗不安薬、鎮痛薬など複数薬が重なることがあります。薬によっては眠気や注意力低下が出ます。自己判断で中止せず、「症状(いつ・どんな時に)+服薬状況」をセットで医師・薬剤師に伝えるのが安全です。
また、急性期には脳血管攣縮の予防・治療薬が使われることがあります。日本のガイドラインでも遅発性脳血管攣縮への薬物療法が記載されています。
例としてクラゾセンタン(ピヴラッツ)は、添付文書で注意事項が示されています。
| 薬のカテゴリ(例) | 疲労・集中低下に関わりやすい副作用 | 相談のポイント |
|---|---|---|
| 睡眠薬・抗不安薬 | 翌日の眠気、注意力低下、転倒リスク | 「翌朝まで残る眠気」があるか/量・種類の見直し |
| 鎮痛薬(一部)、抗ヒスタミン薬 | 眠気、だるさ、口渇 | 服用タイミング調整・代替薬の検討 |
| 降圧薬 | 血圧が下がり過ぎると倦怠感・立ちくらみ | 家庭血圧+症状を記録して受診時に共有 |
④症例・具体例:生活の中でどう困る?どう整える?

ケース1:買い物で頭が真っ白(人混み・情報量が多い)
状況:スーパーに行くと、帰宅後に寝込む。レジ待ちで焦ってミス。家族に「それくらいで?」と言われる。
なぜ起きる?人混み・音・商品選択で脳に入る情報量が増え、注意の配分が追いつかず「脳の処理が飽和」しやすい。
対策:
- 買い物は短時間・少量に分割(週1の大量買いより10分×2回など)
- 空いている時間帯を選ぶ
- 定番商品を固定化し、選択回数を減らす
- 疲れる前に撤退する“上限ルール”を作る(例:レジ3人以上なら別日に)
ケース2:復職すると午後に思考停止(“午後の壁”)
状況:午前は何とかなるが、午後からミスが増える。会議で話が入らない。帰宅後は何もできない。
なぜ起きる?脳の回復途中は「集中の持久力」が落ち、精神的疲労(mental fatigue)が出やすい。SAH後の疲労は就労にも関係することが示されています。
対策(現実的に効く順):
- 最初は勤務時間を短くして慣らす(いきなりフルタイム復帰は事故りやすい)
- 集中が要る仕事は午前に寄せ、午後はルーチン・確認作業へ
- 会議は「議事メモ共有」「録音」「要点だけ先にもらう」など後で補える形に
- 15〜20分の休憩を“予定として”入れる(休むのも仕事)
ケース3:家事の段取りが組めない(遂行機能の低下)
状況:洗濯を回したのに干し忘れる。料理の火が不安。片付けが始められない。
対策:
- 家事を1工程ずつチェックリスト化
- タイマー・アラームを多用(火・洗濯・入浴)
- 同時進行をやめる(料理しながら掃除しない)
- 危険が絡む作業は“見守り”や“代替”を優先
実践編:一番おすすめは「ペーシング(疲れる前に休む)」
疲れが強い人ほど「頑張れた日に取り返そう」として翌日ダウンしがちです。そこで有効なのがペーシングです。
- 疲労が10段階で「6」になる前に休む(「8」まで粘らない)
- 活動は「短く・回数を分ける」
- 1日の予定は“やること”より“休む時間”から先に埋める

受診時に強い味方:「3点セット」メモ
病院で相談するときは、次の3点がそろうと話が早いです。
- 睡眠(就寝・起床・昼寝)
- 活動(外出、人と会う、画面作業など)
- 症状(疲労、頭痛、めまい、集中低下)+服薬タイミング
「いつ悪いか」が分かるだけで、原因(睡眠・薬・負荷)が絞れます。
⑤まとめ
- くも膜下出血後の疲労・集中低下は、脳の回復、睡眠、心理、薬など複数要因が絡む
- 「怠け」ではなく、研究でも重要な後遺症として扱われている
- 対策は「ペーシング」「負荷を下げる工夫」「記録」「専門職への相談」
- 水頭症など治療できる原因が隠れることもあるので、悪化や新症状は放置しない

⑥よくある質問(FAQ)
Q1. どれくらいで元に戻りますか?
個人差が大きく、はっきり「◯か月で治る」とは言えません。疲労は長く残ることも報告されていますが、生活調整や睡眠・気分のケアで改善する例もあります。
焦って負荷を上げ過ぎないことが回復の近道です。
Q2. 「集中できない」のは認知症ですか?
必ずしも認知症ではありません。注意・処理速度・遂行機能の低下や、疲労・睡眠・抑うつが重なると“物忘れっぽく”見えます。
ただし、進行する・生活に強い支障がある場合は主治医に相談してください。
Q3. すぐ受診した方がいい危険サインは?
次がある場合は、すぐ医療機関へ相談(状況によって救急受診)してください。
- 突然の激しい頭痛、意識がぼんやりする
- 片側の麻痺、ろれつが回らない、視野が欠ける
- けいれん、急な意識消失
- 歩行が急に悪化、尿失禁や物忘れが急に進む(※水頭症などの評価が必要)
Q4. 薬の副作用かどうかは、どう見分けますか?
「飲んだ後に眠気が強い」「薬を変えた/増えた時期と一致」などがヒントです。自己中断は危険なので、服薬時間と症状をメモして相談してください。添付文書で注意点が示される薬もあります(例:クラゾセンタン)。
Q5. 家族や職場にどう説明したらいい?
「見た目は元気でも、脳は回復途中で疲れやすい」「情報量が増えると処理が追いつかずガス欠になる」など、具体的な困りごと(会議が続くと無理、騒がしい場所が苦手)を添えて伝えると理解されやすいです。復職には疲労・認知の問題が影響しうることも報告されています。
⑦参考文献(最終確認日:2026-01-16)
- AHA/ASA: 2023 Guideline for the Management of Patients With Aneurysmal Subarachnoid Hemorrhage(PDF)
- 日本脳卒中学会:脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2025〕(差し替え項目PDF)
- Hinkle JL, et al. Poststroke Fatigue: Emerging Evidence and Approaches to Management. Stroke. 2017(PubMed)
- Kutlubaev MA, et al. Fatigue after subarachnoid haemorrhage: a systematic review. 2012(PubMed)
- Sorteberg A, et al. Return to work after aneurysmal subarachnoid hemorrhage. 2024(PMC)
- Buunk AM, et al. Return to work after subarachnoid hemorrhage: The influence of cognitive deficits. PLOS ONE. 2019
- Buunk AM, et al. Mental versus physical fatigue after subarachnoid hemorrhage. 2018(PMC)
- PMDA:ピヴラッツ点滴静注液150mg(クラゾセンタンナトリウム)医療用医薬品情報
- ピヴラッツ点滴静注液150mg 添付文書(PDF)
- 日本脳卒中学会:脳卒中急性期リハビリテーションの指針(2023年5月1日)(PDF)
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薬剤師向け転職サービスの比較と特徴まとめ


今日は、特徴をわかりやすく整理しつつ、読んでくださる方が自分の働き方を見つめ直しやすいようにまとめていきましょう。
働く中で、ふと立ち止まる瞬間は誰にでもあります
薬剤師として日々働いていると、忙しさの中で気持ちに余裕が少なくなり、
「最近ちょっと疲れているかも…」と感じる瞬間が出てくることがあります。
- 店舗からの連絡に、少し身構えてしまう
- 休憩中も頭の中が業務のことでいっぱいになっている
- 気づけば仕事中心の生活になっている
こうした感覚は、必ずしも「今の職場が嫌い」というわけではなく、
「これからの働き方を考えてもよいタイミングかもしれない」というサインであることもあります。
無理に変える必要はありませんが、少し気持ちが揺れたときに情報を整理しておくと、
自分に合った選択肢を考えるきっかけになることがあります。
薬剤師向け転職サービスの比較表
ここでは、薬剤師向けの主な転職サービスについて、それぞれの特徴を簡潔に整理しました。
各サービスの特徴(概要)
ここからは、上記のサービスごとに特徴をもう少しだけ詳しく整理していきます。ご自身の希望と照らし合わせる際の参考にしてください。
・薬剤師向けの転職支援サービスとして、調剤薬局やドラッグストアなどの求人を扱っています。
・面談を通じて、これまでの経験や今後の希望を整理しながら話ができる点が特徴です。
・「まずは話を聞いてみたい」「自分の考えを整理したい」という方にとって、利用しやすいスタイルと言えます。
・全国の薬局・病院・ドラッグストアなど、幅広い求人を取り扱っています。
・エリアごとの求人状況を比較しやすく、通勤圏や希望地域に合わせて探したいときに役立ちます。
・「家から通いやすい範囲で、いくつか選択肢を見比べたい」という方に向いているサービスです。
・調剤薬局の求人を多く扱い、条件の調整や個別相談に力を入れているスタイルです。
・勤務時間、休日日数、年収など、具体的な条件について相談しながら進めたい人に利用されています。
・「働き方や条件面にしっかりこだわりたい」方が、検討の材料として使いやすいサービスです。
・調剤系の求人を取り扱う転職支援サービスです。
・職場の雰囲気や体制など、求人票だけではわかりにくい情報を把握している場合があります。
・「長く働けそうな職場かどうか、雰囲気も含めて知りたい」という方が検討しやすいサービスです。
・薬剤師に特化した職業紹介サービスで、調剤薬局・病院・ドラッグストアなど幅広い求人を扱っています。
・公開されていない求人(非公開求人)を扱っていることもあり、選択肢を広げたい場面で役立ちます。
・「いろいろな可能性を見比べてから考えたい」という方に合いやすいサービスです。
・調剤薬局を中心に薬剤師向け求人を取り扱うサービスです。
・研修やフォロー体制など、就業後を見据えたサポートにも取り組んでいる点が特徴です。
・「現場でのスキルや知識も高めながら働きたい」という方が検討しやすいサービスです。
気持ちが揺れるときは、自分を見つめ直すきっかけになります
働き方について「このままでいいのかな」と考える瞬間は、誰にでも訪れます。
それは決して悪いことではなく、自分の今とこれからを整理するための大切なサインになることもあります。
転職サービスの利用は、何かをすぐに決めるためだけではなく、
「今の働き方」と「他の選択肢」を比較しながら考えるための手段として活用することもできます。
情報を知っておくだけでも、
「いざというときに動ける」という安心感につながる場合があります。


「転職するかどうかを決める前に、まずは情報を知っておくだけでも十分ですよ」ってお伝えしたいです。
自分に合う働き方を考える材料が増えるだけでも、少し気持ちがラクになることがありますよね。
無理に何かを変える必要はありませんが、
「自分にはどんな可能性があるのか」を知っておくことは、将来の安心につながることがあります。
気になるサービスがあれば、詳細を確認しながら、ご自身のペースで検討してみてください。


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