【酵母菌】酵母菌と腸内環境【腸内フローラ】

腸内フローラ

腸内フローラという言葉はご存知でしょうか

今回は酵母菌のお話を少しですがさせていただきたいと思います

【薬剤師歴】 8年目
【管理薬剤師歴】4年目
【勤務場所】調剤&ドラッグストア
【実績】地域支援体制加算・後発3・健康サポート薬局を無実績状態から3年以内に達成
【目指す薬局】地域に根ざした薬局

腸内フローラ

腸には約100兆個、重さにして1.5kgほどの腸内細菌がいると言われています。

ヒトの腸を広げるとテニスコート1面分ほどの広さになります

腸の表面に1000種類程の細菌が群れをなして生息しているためその様子を花畑にたとえ「腸内フローラ」と呼ばれています。

腸内細菌には善玉菌と悪玉菌が存在し(日和見菌も存在します)、善玉菌は人体の健康維持、悪玉菌は人体に害を及ぼします。

その細菌の働きによる体の影響力は大きく、「1つの臓器」に匹敵するのではないかと言われています。

腸内の善玉菌を増やし、腸内環境を良好に保つ事がヒトの健康にとって大変重要です。

そこで善玉菌を積極的に食事から摂取しようという事で生まれた概念がプロバイオティクスです。

プロバイオティクス

プロバイオティクスとは

「消化管内の細菌叢を改善し、宿主に有益な作用をもたらしうる有用な微生物と、それらの増殖促進物質」のことを指します

プロバイオティクスとしては乳酸菌やビフィズス菌といった細菌類が良く知られていますが酵母菌もその対象であります

酵母とは

酵母は直径5~10ミクロンの非常に小さい菌で一つの細胞でできています。(単細胞生物)

細胞に核を持つ真核生物に属します

酵母はカビやキノコと同様に有機物に含まれる糖をアルコールと炭酸ガスに分解してエネルギーを得ながら成長・分裂をしていきます。

これを発酵といい、酵母はその発酵過程で生成されるさまざまな栄養素も吸収します

もうすこし詳しく!〜酵母の構造〜

酵母の細胞内には二重の膜構造をもつ核膜で仕切られた核が存在します

細胞質膜に包まれた細胞質内には小胞体やミトコンドリア、リボソーム、液胞などが存在します

細胞質膜の外側には多糖やタンパク質、脂質からなる細胞壁が存在します

細胞壁の基本骨格を成しているのはグルコースの多糖であるβ-グルカンです

β-グルカンと少量のキチンと合わさることで細胞壁の網目構造が形成されます

また最外層にはD-マンノースから構成される多糖のマンナンとタンパク質の複合体が結合している

β-グルカンやマンナンなどは、酵母やカビの細胞壁特有の成分です

動物細胞には存在しないため動物細胞か酵母を認識する際に重要な成分であると考えられています

Toll-like receptor(TLR)

酵母やカビ、細菌などの微生物の菌体構成成分が動物細胞のレセプターに結合するとその細胞内で情報伝達が行われてさまざまな免疫応答が起きる

そのレセプターの代表格がToll-like receptor(TLR)である。

もともとはショウジョウバエで真菌を認識するレセプターとして発見されたました

哺乳類においても似たレセプターがみつかったためTLRと名づけられました

TLRはヒトなど哺乳類の細胞の表面や細胞内に存在します

酵母を認識するレセプターとしはTLR1またはTLR6とTLR2との重合体やTLR4、TLR9が関わっていると言われています

TLRのほかに酵母の細胞壁構成成分であるβ-グルカンと結合するdectin-lというレセプターも酵母の認識に関わっています

TLR2は乳酸菌などのグラム陽性菌にTLR4は大腸菌などのグラム陰性菌の認識にも関わっています

TLR2+TLR1
TLR2+TLR6
C.albicansの細胞壁構成成分(PLM)
S.cemisiaeの細胞壁粗画分(ザイモサン)
C.albicansやS.cerevisiaeの菌体
グラム陽性菌など
TLR4マンナン
グラム陰性菌など
C.albicans菌体
TLR9C.albicans菌体
dectin-lβ-グルカン
S.cerevisiaeの細胞壁粗画分(ザイモサン)

腸内に多い酵母菌

酵母も人の腸内フローラを構成している微生物の一つです

細菌と比較すると少ない量です

最も高頻度で検出される酵母は、カンジダ・アルビカンス(C.albicans)です。

人の腸内に常在する酵母で何らかの原因で宿主の免疫が落ちたときに異常増殖し局所や全身の感染症を引き起こす

血清中に発芽管(生殖管)を形成することでマクロファージなどの貪食細胞の殺菌から逃れ増殖していく

Candida属酵母はアルビカンス以外にも腸内に多く存在しときに病原性を示す

食品にも使われている酵母

酵母には発酵食品に利用される菌種もあります。

人が酵母を食品から摂取することで腸管内で定着することで、もしくは吸収排泄の過程で体に様々な影響を及ぼしているものと考えられています

発酵食品由来菌種

 

【ビールや日本酒、パンなど】

  • サッカロミセス・セレビシエ

【耐塩酵母︰味噌や醤油など】

  • カンジダ・ビルサチルス
  • ジゴサッカロミセス・ルーキシィ

【発酵乳ケフィア】

  • クルイベロミセス・マルシアヌス
  • カンジダ・ケフィール(発酵乳ケフィア)

こうして並べてみると偉人みたいな噛みそうな名前が多いですよね

サッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)

「出芽酵母」や「パン酵母」というと一般的にこの種を示します。

酵母といえばセレビシエ!というくらい有名な酵母菌でもやしもんにも出てきましたね

通常は人の腸内にはほぼ生息していないが、一定期間摂取し続けると糞便中から生きたまま検出され、腸管内にも定着がみられるようになる

このことから人の腸内には様々な酵母が生息し人の体にも影響を及ぼしていると考えられています

酵母とプロバイオティクス

酵母は酸や酸素に対する耐性が強いため に胃酸や胆汁酸等による障害が少なく腸 まで死滅せずに達する可能性が高いと言われています

しかしながら酵母のプロバイオティクスとしての作用に関する検討は乳酸菌と比較するとあまり進んでいないのが現状です

マウスの腸内でS.cerevisiaeが小腸のバイエル板と呼ばれる部分に存在するM細胞から吸収され続いて粘膜固有層に存在するマクロファージやリンパ球などの免疫細胞に接触し取り込まれた

S.cerevisiae由来のβ-グルカン(β-glucan)の刺激によりマクロファージのサイトカイン産生と貧食能が増強する

酵母の摂取は免疫系にも作用するのではと言われています

腸管免疫

腸管上皮細胞は腸管腔の一番外側に単層を成して外来の物質にさらされている。

バリアーとしての働きのほかに細胞表面分子やサイトカインなどの液性因子を発現することが知られています

粘膜固有層や上皮細胞間に存在するマクロファージや樹状細胞、リンパ球などのさまざまな免疫担当細胞との相互作用により腸管免疫における重要な役割を担っています

酪酸によるTLRの誘導?

invitro(実験など)での論文報告で以下の内容を見つけました

caco-2細胞中のTLR1,TLR2,TLR6,加えてdectin-1のmRNA発現量を測定したところ,酪酸添加培地または未添加培地で培養したCaco-2細胞において,これらのレセプターmRNAの発現が認められた。

さらにTLR1,TLR6,dectin-1のmRNAの発現量は,10mM酪酸添加培地での4日間培養により,増加していた

酵母が腸管上皮細胞の免疫応答に及ぼす作用

腸内環境を擬似的に作成した実験です

腸内下ではTLRが作られ増える作用があるようですが酪酸存在下の方がレセプターがしっかり増えるようですね

これだけでも腸管上皮様細胞の免疫応答には酪酸が影響を与えるとは言えそうです

Caco-2細胞とは

ヒト結腸癌由来細胞 であるCaco-2 は培養により腸管上皮様に分化することか知られています

小腸の腸管機能をスクリーニングする際の細胞モデルとして研究分野などで広く用いられています

酵母によるサイトカイン刺激

Caco-2細胞とS.cerevisiaeやC.albicansと共培養したところサイトカインの一つであるIL-8産生促進作用が認められたとの報告もあります

酪酸添加培地で前培養したCaco-2細胞のIL-8mRNAの発現量は、S.cerevisiaeまたはC.albicansとの共培養により顕著に増加した。

この応答は酪酸未添加の培地で培養したCaco-2細胞ではみられなかった。

10mM酪酸添加培地で培養したCaco-2細胞では,酪酸未添加の培地で培養したCaco-2細胞と比べて,IL-8mRNAの発現量が増加した。

酵母が腸管上皮細胞の免疫応答に及ぼす作用

S.cerevisiaeやC.albicansによる刺激でCaco-2細胞内でIL-8を合成するための情報がより多く伝えられるようですね

酪酸存在下ではTLRがしっかり作られるからでしょうか

酵母菌+酪酸条件下だとさらにCaco-2細胞のIL-8分泌量の増加がみられています

酪酸は腸内細菌の代謝産物であり腸管上皮細胞等の分化を誘導することが知られています

その作用機序については完全に解明されていないが酪酸生成菌と同時服用はかなり酵母菌と相性が良いと言えそうです

酪酸生成菌とは?
【酪酸生成菌】宮入菌の特徴【腸内フローラ】
皆さまこんにちは 薬局薬剤師のゆずまるです 今回は酪酸生成菌の宮入菌について紹介します 宮入菌とは? クロストリジウム・ブチリカ厶(Clostridium butyricum) そのうちのMIYAIRI株は人の腸管内の腐敗菌に対して強い拮抗

IL-8産生促進能はC.albicansのほうがS.cerevisiaeよりも強い。しかしながら過剰にIL-8産生することもあるため過剰免疫になり、細胞障害性は高いと考えられます

インターロイキン8(IL-8)

IL-8は腸管上皮細胞が産生するサイトカインのひとつです

免疫細胞である好中球などの局所への遊走活性をもっています

細菌や真菌などが侵入してくると、マクロファージが感知しIL-8を放出。好中球等を必要な場所に集める働きがあります

マクロファージや好中球が貪食することで顆粒中の酵素や活性酸素で消化や殺菌します

異物に対する生体の防御反応としてとても重要である

酵母菌を使った商品例

有名なところではエビオスがありますよね

エビオスは医療用にも市販でもどちらにも存在します


乾燥ビール酵母を用いています

ビタミンB1やミネラル類、アミノ酸なども多く含まれています

アサヒが強そうな分野ですよね!

サッカロミセスの酵母菌が配合してあるとの記載があります

まとめ

酵母菌に関する研究はあまり進んでいないのが現状で免疫系に作用する論文等もあまり多くは見つけられませんでした

医薬品分野としても大きく研究が進んでいないのが現状ですが、菌株により治療に活用されているものもあるため別記事で紹介させていただきます

この分野での研究が進み人体へ良い免疫系へ作用が認められたらいいですよね

食からのプロバイオティクスももっと広まっていくのではと思います

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参考文献

Immune Responses of Intestinal Epithelial Cells to YeastsShizue SAEGUSA, Tomohiro Hosoi (Tokyo Metropolitan Food Technology Research Center)

(1→3)-β-D-グルカン受容体Dectin-1の自然免疫及び抗腫瘍免疫活性作用と真菌感染防御における役割

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