腸管循環と胆汁酸と腸内細菌叢【腸内フローラ】

腸内フローラ

皆さんこんにちは!

薬局薬剤師のゆずまるです

今回は胆汁と腸内細菌の関わりについて書きたいと思います

内容は

  • 胆汁の働きについて
  • ビリルビンとは何か
  • 胆汁酸とは何か
  • 腸管循環と腸内細菌
  • ウルソデオキシコール酸について

について説明していきますのでよろしければお付き合いください

胆汁

胆汁は脂肪を消化するために必要な液体でのことです

肝臓では1日に約1リットルほどの胆汁が作られています

胆汁の成分は胆汁酸、ビリルビリン(黄色の胆汁色素)、コレステロール、リン脂質などで構成されます

ただそのほとんどは水分でできています(95%以上)

脂肪の消化を助ける働きがあるため、食事をしていない時は不要な物質です

食事をするときに備えて胆のうで一時的に貯められます

胆のうでは50mlしか胆汁を貯められないため、その間に水分が抜けていき5〜10倍ほどに濃縮されていきます

食事を取るとコレシストキニンという消化管ホルモンが分泌され、胆のうへ刺激が起き、胆のうは筋肉を収縮させる。

胆のうから胆汁が分泌され、胆道を通り十二指腸へ

食べ物と混ざり合い消化を助けます

ビリルビン

胆汁の構成成分であるビリルビンは寿命を終えた赤血球のヘモグロビンの分解物です

脾臓で寿命を迎えた赤血球が壊されると脂溶性のビリルビンが生じます

ビリルビンは水に溶けないためにアルブミンと結合することで肝臓内へ運びます[間接ビリルビン]

肝臓内に運ばれた間接ビリルビンはその後、水に溶けやすくするために、グルクロン酸抱合を受ける

抱合体となると水に溶けるようになります

この状態の事を直接ビリルビンといいます[間接ビリルビン+グルクロン酸]

この直接ビリルビンの状態で胆汁の一部となって小腸へ分泌されます

腸内で腸内細菌の働きによりビリルビンはウロビリノーゲンへと変換され、尿や便へ排泄される

胆石

胆石はコレステロール由来の石と色素石の2種類があります。

コレステロール石は、胆汁のコレステロール濃度が高いときに結晶化し胆石になります

色素石はビリルビンカルシウム石と黒色石があります

ビリルビンカルシウム石は胆汁の細菌感染が原因と考えられています

黒色石は原因はよくわかっていませんが溶血などでヘモグロビン代謝の亢進によりCuやFeとの金属錯体を形成し黒色石ができると考えられています

ビリルビンカルシウム胆石

ビリルビンカルシウム胆石は細菌感染による不溶性ビリルビンカルシウム析出が関与していると言われています

胆汁がうっ滞したり、胆道内の感染が発生すると、腸内細菌によって直接ビリルビンからグルクロン酸が剥がされてしまうことがあります

これは大腸菌や嫌気性菌の菌体からβグルクロニダーゼが放出されることが起因と言われています

そこでカルシウムと結合してしまうと結晶化してしまい胆石が生じると言われています[間接ビリルビン+カルシウム]

胆石の形成リスク

胆石ができやすい人の特徴は「5F」と言われています

  • Fatty 太った人
  • Female 女性
  • Forty 40歳代以降
  • Fair 色白
  • Fecund 多産婦

の頭文字から来ています

実際には肥満の方や40〜50歳代以降の人は急性胆嚢炎になりやすい傾向にありますが全てが因果関係があるとは言えません

高コレステロール食が胆汁中の過飽和が起き結晶化しやすくなると言われています

また急激なダイエットなどで食事を抜くと過剰濃縮で胆石ができることがあるため注意

ちなみに胆嚢内の胆汁の過剰濃縮による胆石(胆嚢結石)は主にコレステロールによるもので全体の約70%

前述したビリルビン関連の胆石は20%程度です

胆管炎と細菌

胆石が詰まると炎症を引き起こします。詰まる場所によって胆嚢炎や胆管炎を引き起こす

その際に細菌感染感染も併発することがあります

通常の胆汁内は無菌状態ですが

  • 急性胆管炎では約60〜90%
  • 急性胆嚢炎では約30〜60%

の胆汁内に細菌感染の陽性反応が見られます

ちなみに胆汁内の菌種は

グラム陰性菌では

  • 大腸菌・・・30〜44%
  • クレブシエラ属・・・10〜20%
  • シュードモナス族・・・1〜20%
  • エンテロバクター属・・・5〜9%

グラム陰性菌では

  • エンテロコッカス属・・3〜34%
  • ストレプトコッカス属・・・2〜10%
  • 嫌気性菌・・・4〜20%

という報告があります。(ガイドライン参照)

胆汁酸

胆汁酸は胆汁に含まれる主要成分です

主に吸収や排泄に関わっています

また胆汁酸は界面活性作用をもっています

マイナスに帯電してるため陰イオン界面活性剤(洗剤)と同じ働きをもちます

脂質を乳化しミセルを形成することによってトリグリセリド(脂肪)やコレステロール、脂溶性ビタミンの消化・吸収を促進します

また、コレステロールやビリルビン、薬物代謝物などの毒性化合物を体外に排泄する役割ももちます

胆汁中のコレステロールの割合がミセル域を越えて高い揚合には結晶として析出しやすくなり、 コレステロール由来の胆石に発展すると考えられています

胆汁酸の組織傷害性

人の細胞や細菌の細胞の表面である細胞膜はリン脂質二重層からなると言われています

胆汁酸は細胞膜に作用し膜のバリア機能を破壊するといわれています

そのためバクテリアなどの侵入を阻止する抗菌作用を持ち合わせると言われています

しかし人体の細胞表面も同様の構造を持つため細胞の傷害には注意が必要です

界面活性剤は二重膜の外側に侵入して膜を拡張させて細胞膜を破壊するといわれています

細胞膜を構成しているリン脂質二重層は水も油も好きな両親媒性物質です

それと同じ性質を持つ胆汁酸の疎水基が周囲の水に押しだされることで細胞膜の疎水部分に侵入し細胞膜を壊し、分断させるといわれています

その破壊する過程は陽イオン界面活性剤も陰イオン界面活性剤も本質的には同じようで、膜荷電とイオン界面活性剤との静電的相互作用は重要ではないといわれています

一次胆汁酸

胆汁酸は肝臓でコレステロールから合成されます

コレステロール→7α-ヒドロキシコレステロール→コール酸やケノデオキシコール酸などへ順に生成していきます

ここで作られたコール酸やケノデオキシコール酸は一次胆汁酸といわれています

一次胆汁酸
  • コール酸
  • ケノデオキシコール酸

コレステロールから作られる胆汁酸は約80%コール酸が生成されます

それに対してケノデオキシコール酸は数%程度です

抱合胆汁酸(胆汁酸塩)

一次胆汁酸であるコール酸はそのままの状態では組織を傷つけてしまう可能性があります

そのためアミノ酸と抱合体(胆汁酸塩)となり存在しています。

抱合胆汁酸
  • グリココール酸[コール酸+グリシン]
  • タウロコール酸[コール酸+タウリン]
  • タウロケノデオキシコール酸[ケノデオキシコール酸+タウリン]
  • グリコケノデオキシコール酸[ケノデオキシコール酸+グリシン]

一次胆汁酸はタウリンやグリシンと結合することで胆汁酸塩として胆管を傷つけることなく通りぬけ小腸へ分泌されます

脱抱合反応

小腸へと抜けた胆汁酸塩は腸内細菌の作用でタウリンやグリシンが離脱します

このときの変換反応に関わるのは小腸に多く存在するビフィズス菌や乳酸菌が大半を占め、胆汁酸塩ヒドロラーゼ(BSH)に触媒され脱抱合反応が見られます

タウロコール酸からの脱抱合反応

二次胆汁酸

脱抱合化を受けた一次胆汁酸であるコール酸やケノデオキシコール酸は更に腸内細菌の働きにより二次胆汁酸へ変換されます

二次胆汁酸
  • デオキシコール酸(コール酸由来)
  • リトコール酸(ケノデオキシコール酸由来)
  • ウルソデオキシコール酸

コール酸はデオキシコール酸へ

ケノデオキシコール酸はリトコール酸へ変換されます

この2つの生成は腸内細菌のClostridium 属から作られると言われています

二次胆汁酸へ変換されると疎水性が増し、抗菌活性なども高まる一方で毒性も高まると言われています

クロストリジウム属が関与?

一次胆汁酸から二次胆汁酸へ変換する腸内細菌の1つにClostridium scindens(クロストリジウムシンデンス)という菌株がいます

C. scindensはC. difficileと同様にClostridium属の嫌気性細菌です

一次胆汁酸であるコール酸は腸内細菌の働きによりデオキシコール酸や 7-oxo-デオキシコール酸に変換されます

バクテロイデス門の一般的な菌株の大半は毒性の低い7-oxo-デオキシコール酸を生成します

一方Clostridium属のほんの一部の菌は7α位の脱水酸化活性をもつためデオキシコール酸へと変換させる働きをもつと言われています

しかしながらClostridium属は菌数が少ないにもかからず大腸のデオキシコール酸の濃度は 7-oxo-デオキシコール酸濃度よりも圧倒的に多い

このことからC. scindensには7-oxo-デオキシコール酸からコール酸へ戻す特殊な経路が存在するのではないか言われています

この他にも二次胆汁酸促進作用などからもC. difficile腸炎の治療や予防にC. scindensが有効なのでは?とも言われています

クロストリジウムと一般的な細菌の代謝

腸肝循環

胆汁酸は過剰なコレステロールを体外へだす大切な役割をもちます

しかしながら胆汁酸の1~2%は糞便へ排泄されるがそのほとんどは再利用されます

98~99%は小腸末端(回腸)から門脈系へいき再び吸収されて肝臓へもどる

腸肝循環は肝臓から合成された胆汁酸の再利用までの一連の流れを指します

一日当り10 回前後の腸肝循環が行われていると言われています

コレステロール吸収充進を示す胆汁酸はコール酸とデオキシコール酸と言われています

その他の胆汁酸、特にウルソデオキシコール酸はコレステロールの吸収作用は弱いと言われています

ちなみにケノデオキシコール酸から作られるリトコール酸には発がん性があると言われています

ウルソデオキシコール酸

食べ過ぎによりコレステロールの摂取量が増えてしまった人におすすめな胆汁酸はウルソデオキシコール酸です

ウルソデオキシコール酸はクマ由来の二次胆汁酸で熊胆(ゆうたん)というクマの胆のうから作られています

疎水性が低く細胞毒性が低いのが特徴です

脂質の吸収作用も弱いため特におすすめな胆汁酸です

毒性の低いウルソデオキシコール酸を摂取しつづけることで体内の胆汁酸の割合はウルソデオキシコール酸が高くなります

その結果、デオキシコール酸やリトコール酸なども相対的に減り、全体的な細胞傷害性が弱まります

また、この他の作用にも胆石溶解やコレステロールの吸収を抑える働きも確認されています

市販薬としても気軽に購入できるのはいいですよね


あとがき

胆汁酸の役割、ビリルビンの役割、腸管循環の流れを理解して頂けましたか?

胆汁酸には腸内細菌が関与してるんだな

という位の認識でも持っていただけたら幸いです

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参考文献

Bile Acid Metabolism and lntestinal Flora Kiyohisa UcHiDAi“

Bile acid stress response in lactic acid bacteria and bifidobacteria Atsushi Yokota Laboratory of Microbial Physiology, Research Faculty of Agriculture, Hokkaido University, Kita9 Nishi9, Kita-ku, Sapporo, Hokkaido 060-8589, Japan

腸内嫌気性菌による胆汁酸の7位水酸基の変換について平野清寿

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