






薬の有効成分(API: Active Pharmaceutical Ingredient)は本来、薬効を発揮する中心的な物質です。しかし実際に患者さんへ安全かつ安定して届けるには、医薬品添加物(Excipients)が不可欠です。
添加物は薬理作用を目的にしないものの、品質(安定性・均一性)、服用性(味・におい・飲みやすさ)、製造性(再現性・生産性)、放出制御(徐放・腸溶)などを通じて、最終的な治療アウトカムに影響します。
本稿は、製剤学の視点と薬局薬剤師の実務を橋渡しし、添付文書・ガイドラインに基づく実践的な判断ポイントを体系的にまとめました。
- 対象読者:薬局・病院薬剤師、登録販売者、製剤/CMCに関心のある薬学生・MR
- ゴール:添加物の役割と選択基準を理解し、処方監査・疑義照会・服薬指導・在庫調整で即活用できる
- 読み方:まず基礎→製剤別→安全性→症例→実務Tips→FAQの順で。要点は赤・黄の強調を参照

医薬品添加物とは?
医薬品添加物は、有効成分そのものではなく、薬を安定化させたり、服用しやすくしたり、体内での吸収を助けるために配合される成分です。
基本的には薬理作用を持たず、安全性が確認されているものが使用されます。ただし患者背景によっては添加物が副作用や不耐につながり得るため、特に大事なポイントとして個別性に目配りが必要です。

医薬品添加物の役割は?
| 役割 | 代表的な添加物 | 目的・ポイント |
|---|---|---|
| 賦形剤 | 乳糖、デンプン、セルロース、マンニトール、無水ブドウ糖 | 錠剤体積の確保、均一性向上、口溶け(OD錠)や甘味付与 |
| 結合剤 | HPC、PVP、ゼラチン | 顆粒化・打錠強度向上、崩壊性とのバランス設計 |
| 崩壊剤 | クロスカルメロースNa、クロスポビドン、カルメロースCa | 水を含んで膨潤→割れ目形成→崩壊促進。OD錠では唾液量でも崩れる設計 |
| 滑沢・流動化 | ステアリン酸Mg、タルク、コロイド状二酸化ケイ素 | 金型離型・流動性改善。過量は溶出遅延のリスク |
| コーティング | ヒプロメロース(HPMC)、メタクリル酸共重合体、シェラック | 味マスキング、におい遮断、腸溶・徐放・光遮蔽 |
| 保存・防腐 | パラベン類、安息香酸Na、ベンジルアルコール(注射) | 微生物制御。経口・外用・注射で適用と閾値が異なる |
| 甘味・香料 | スクラロース、アスパルテーム、ソルビトール、香料 | 小児/嚥下困難の服薬性改善。代謝疾患への配慮 |
| 可溶化・界面活性 | ポリソルベート80/20、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 | 難溶性APIの溶解・分散。過敏症/抽出不純物管理 |
| 緩衝・等張 | リン酸塩、クエン酸塩、NaCl | pH・浸透圧の最適化。注射・点眼で特に重要 |
| 着色・識別 | 酸化チタン、鉄酸化物、食用色素 | 識別性と誤服防止。最新動向は規制情報を参照 |

製剤ごとの添加物の工夫は?
錠剤では何が重要?
打錠性・崩壊性・溶出性のトレードオフをコントロールします。OD錠ではマンニトールや低置換HPC、微細な気孔形成で口腔内崩壊を実現。腸溶錠ではメタクリル酸共重合体(Eudragit系)などでpH選択的溶解を使い分けます。
カプセルでは何を使う?
殻材にゼラチンやHPMC。酸湿度に敏感なAPIやベジタリアン対応でHPMCが選ばれることも。顆粒充填やビーズコートで徐放性を設計します。
注射剤はどう設計する?
等張化剤(NaCl、ブドウ糖)、緩衝液(リン酸/クエン酸)、安定化(アミノ酸、糖、界面活性剤)。ベンジルアルコールなどの防腐剤は新生児で禁忌/注意があり、単回投与製剤や防腐剤フリーの選択肢も検討されます。
外用・点眼では何が鍵?
基剤(ワセリン、マクロゴール)、乳化のための界面活性剤、粘稠剤(HPMC、カルボマー)、pH調整、保存剤(BAKなど)。点眼では角膜毒性の観点から濃度・接触時間・代替保存設計が論点です。
DDS(ドラッグデリバリー)はどう活用する?
- リポソーム/脂質ナノ粒子:膜内封入で局在化・徐放。抗がん・mRNAキャリアなど。
- 高分子マトリクス徐放:HPMC/PEO等で溶出制御。一次・二次機構の設計を溶出試験で評価。
- 経皮吸収:エタノール、脂肪酸、テルペン類など浸透促進剤を適正化。
- 吸入製剤:キャリアに乳糖(DPI)、HFAなど噴射剤(MDI)。粒子径分布/帯電性がデリバリー効率を左右。

- ステアリン酸マグネシウム
- クロスカルメロースナトリウム
- 酸化チタン
答え:2. クロスカルメロースNa。
解説:架橋セルロース系崩壊剤は少量で吸水膨潤→迅速崩壊に寄与。潤滑剤の過量は逆に溶出を遅らせることがあります。
安全性では何に注意する?
- 乳糖不耐症:乳糖賦形で腹部症状。乳糖不使用製剤やシロップ・OD代替を検討。
- フェニルケトン尿症:アスパルテーム含有は注意。表示を確認。
- ポリソルベート/PEG過敏:アナフィラキシー/偽アレルギーが報告。バイオ医薬や点滴で要監視。
- ベンジルアルコール:新生児での有害事象(“gasping syndrome”)に注意。防腐剤フリー選択肢。
- ベンザルコニウム塩化物(BAK):点眼で角膜上皮障害リスク。PF点眼の検討。
- 二酸化チタン:医薬品での使用動向は地域で差。色材代替や経過措置を確認。
- ニトロサミン:原薬だけでなく添加物起因のリスク評価(第三アミン、亜硝酸塩混在等)。
薬剤師の実務ではどう活かす?
- 処方監査:添付文書「添加物」欄とIFで代替可能性をチェック。禁忌背景(新生児など)は特に強調。
- 疑義照会:症状(腹部症状、蕁麻疹、点眼刺激感)と添加物の関係仮説を添えて建設的に提案。
- 服薬指導:味・口腔感覚・色の不安を先回り説明。識別性と誤服防止の観点も共有。
- 在庫・代替:同効薬での添加物差(乳糖・甘味料・保存料・色材)を棚割り台帳で可視化。
- OTC販売:ゼリー剤・オブラート・スポイト等の服薬補助具を提案(機能説明に留め、効能過大表示は避ける)。

製剤ごとに具体例は?
錠剤の具体例は?
苦味の強いAPIに対して、粒子コーティング+フィルムコートで二重の味マスキング。潤滑剤のステアリン酸Mgは0.25〜1%程度が一般的で、過量は溶出遅延や打錠欠陥の原因に。
カプセルの具体例は?
徐放ビーズ(Eudragit RS/RL)をゼラチンカプセルに充填。湿度管理と殻材の脆性に注意。HPMC殻は低湿でも安定。
注射剤の具体例は?
タンパク質製剤におけるスクロース/トレハロースの安定化、ヒスチジン/グリシン緩衝、ポリソルベート80による界面安定化など。賦形・界面活性の不純物管理が品質鍵。
外用・点眼の具体例は?
軟膏では白色ワセリン+流動パラフィンの基剤、クリームではO/W乳化の界面活性剤選択、点眼では等張・pH・保存剤の三本柱と容器材質(多層ボトル/単回投与PF容器)の選択。
実例・症例ではどう判断する?
- 症例1:乳糖不耐と賦形剤の置換 — 乳糖含有錠で腹部症状。乳糖不使用の同効薬へ切替で改善。
- 症例2:フェニルケトン尿症児とアスパルテーム — 甘味料表示を根拠に粉薬の別製剤へ調整。
- 症例3:点眼刺激とBAK — ドライアイ悪化。PF点眼へ変更提案で症状軽快。
- 症例4:生物学的製剤とポリソルベート — 注入時の反応。前処置と希釈条件の最適化、代替製剤を医師と検討。
- 症例5:新生児とベンジルアルコール — 防腐剤含有注射の回避、単回投与バイアルへ。
添付文書やガイドはどこを読む?
- 添付文書:「組成・性状」→添加物、「使用上の注意」→禁忌/慎重投与、「取扱い上の注意」→保存条件。
- インタビューフォーム:製剤設計意図、添加物機能、安定性データ、溶出法。
- 公定書・ガイドライン:日本薬局方、ICH Q8/Q9/Q10、当局の通知・Q&A。
- FDA IID:経路ごとの最大先例量の参考に。

まとめ
添加物は“おまけ”ではなく、医薬品の品質・再現性・服用性・安全性を担う設計要素です。患者背景に応じた個別最適と、最新ガイドライン・添付文書の確認が実務の鍵。薬剤師は製剤学と現場感覚を往復しながら、最適な剤形・製品選択と安心の服薬支援を提供しましょう。
よくある質問
Q. 添加物は薬効に影響するの?
A. 直接の薬理作用は想定していませんが、崩壊・溶出・吸収に影響するため発現速度や再現性を通じて臨床効果に間接影響します。
Q. 新生児に防腐剤入り注射薬は使えるの?
A. ベンジルアルコール含有は注意/禁忌のケースがあります。添付文書の対象年齢・含量を確認し、防腐剤フリーや単回投与製剤を検討します。
Q. 二酸化チタンは避けるべき?
A. 食品分野と医薬品での取扱いは異なります。地域の規制・経過措置・代替材の可用性を確認し、識別性・安定性の要件を満たす範囲で選択します。
Q. ポリソルベートやPEGでアレルギーはある?
A. 稀ですが報告があります。既往歴があれば投与中の監視と代替製剤の検討が望まれます。
Q. 乳糖不耐症の患者にはどう対応?
A. 乳糖不使用の同効薬や別剤形(散剤・シロップ)を検討し、医師と連携して代替を提案します。
参考文献
- PMDA 医療用医薬品 添付文書等情報検索
- PMDA 添付文書情報メニュー
- The Japanese Pharmacopoeia 18th(リンク集)
- 日本薬局方 第18改正(英語版PDF)
- ICH Q8(R2) Pharmaceutical Development(PDF)
- EMA: ICH Q8(R2) 解説ページ
- FDA Inactive Ingredient Database(FAQ)
- FDA IID ダウンロードページ
- EMA: ニトロサミン不純物(総合ページ)
- EMA: MAH向けニトロサミンガイダンス
- FDA: NDSRI等の許容一日曝露量(ガイダンス)
- EMA: 二酸化チタンの代替検討(2024報告)
- 欧州委員会: 医薬品における二酸化チタンの取扱い検討(2025)
- CDC: 新生児のベンジルアルコール関連死亡(MMWR)
- FDA ラベル例:ベンジルアルコールに関する警告
- EMA: ポリソルベートの患者向け情報(ドラフト)
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薬剤師向け転職サービスの比較と特徴まとめ


今日は、特徴をわかりやすく整理しつつ、読んでくださる方が自分の働き方を見つめ直しやすいようにまとめていきましょう。
働く中で、ふと立ち止まる瞬間は誰にでもあります
薬剤師として日々働いていると、忙しさの中で気持ちに余裕が少なくなり、
「最近ちょっと疲れているかも…」と感じる瞬間が出てくることがあります。
- 店舗からの連絡に、少し身構えてしまう
- 休憩中も頭の中が業務のことでいっぱいになっている
- 気づけば仕事中心の生活になっている
こうした感覚は、必ずしも「今の職場が嫌い」というわけではなく、
「これからの働き方を考えてもよいタイミングかもしれない」というサインであることもあります。
無理に変える必要はありませんが、少し気持ちが揺れたときに情報を整理しておくと、
自分に合った選択肢を考えるきっかけになることがあります。
薬剤師向け転職サービスの比較表
ここでは、薬剤師向けの主な転職サービスについて、それぞれの特徴を簡潔に整理しました。
各サービスの特徴(概要)
ここからは、上記のサービスごとに特徴をもう少しだけ詳しく整理していきます。ご自身の希望と照らし合わせる際の参考にしてください。
・薬剤師向けの転職支援サービスとして、調剤薬局やドラッグストアなどの求人を扱っています。
・面談を通じて、これまでの経験や今後の希望を整理しながら話ができる点が特徴です。
・「まずは話を聞いてみたい」「自分の考えを整理したい」という方にとって、利用しやすいスタイルと言えます。
・全国の薬局・病院・ドラッグストアなど、幅広い求人を取り扱っています。
・エリアごとの求人状況を比較しやすく、通勤圏や希望地域に合わせて探したいときに役立ちます。
・「家から通いやすい範囲で、いくつか選択肢を見比べたい」という方に向いているサービスです。
・調剤薬局の求人を多く扱い、条件の調整や個別相談に力を入れているスタイルです。
・勤務時間、休日日数、年収など、具体的な条件について相談しながら進めたい人に利用されています。
・「働き方や条件面にしっかりこだわりたい」方が、検討の材料として使いやすいサービスです。
・調剤系の求人を取り扱う転職支援サービスです。
・職場の雰囲気や体制など、求人票だけではわかりにくい情報を把握している場合があります。
・「長く働けそうな職場かどうか、雰囲気も含めて知りたい」という方が検討しやすいサービスです。
・薬剤師に特化した職業紹介サービスで、調剤薬局・病院・ドラッグストアなど幅広い求人を扱っています。
・公開されていない求人(非公開求人)を扱っていることもあり、選択肢を広げたい場面で役立ちます。
・「いろいろな可能性を見比べてから考えたい」という方に合いやすいサービスです。
・調剤薬局を中心に薬剤師向け求人を取り扱うサービスです。
・研修やフォロー体制など、就業後を見据えたサポートにも取り組んでいる点が特徴です。
・「現場でのスキルや知識も高めながら働きたい」という方が検討しやすいサービスです。
気持ちが揺れるときは、自分を見つめ直すきっかけになります
働き方について「このままでいいのかな」と考える瞬間は、誰にでも訪れます。
それは決して悪いことではなく、自分の今とこれからを整理するための大切なサインになることもあります。
転職サービスの利用は、何かをすぐに決めるためだけではなく、
「今の働き方」と「他の選択肢」を比較しながら考えるための手段として活用することもできます。
情報を知っておくだけでも、
「いざというときに動ける」という安心感につながる場合があります。


「転職するかどうかを決める前に、まずは情報を知っておくだけでも十分ですよ」ってお伝えしたいです。
自分に合う働き方を考える材料が増えるだけでも、少し気持ちがラクになることがありますよね。
無理に何かを変える必要はありませんが、
「自分にはどんな可能性があるのか」を知っておくことは、将来の安心につながることがあります。
気になるサービスがあれば、詳細を確認しながら、ご自身のペースで検討してみてください。



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