

- はじめに:台風と薬局運営のリアルな課題
- 台風で薬局は休めるのか?
- 不可抗力と会社都合の違い
- 鉄道が全線運休した場合、従業員都合なの?
- まとめ:鉄道運休時の整理
- 経営者としての実務対応
- スタッフを休ませた場合、誰が出勤する?
- 管理薬剤師が遠方で公休の場合は?
- 台風時:出勤した人と休んだ人の待遇は不公平?
- まとめ:公平性を担保する工夫が大切
- 災害時のシナリオ別対応
- BCP(事業継続計画)テンプレート
- 財務影響シミュレーション
- 追加ケーススタディ:2019年台風19号での薬局対応
- 追加ケーススタディ:東日本大震災時の薬局運営
- さらに深掘り:財務シミュレーションのバリエーション
- よくある質問(Q&A)
- まとめ
- 参考文献
- 薬剤師向け転職サービスの比較と特徴まとめ
はじめに:台風と薬局運営のリアルな課題
日本は毎年のように台風や大雨、地震といった自然災害に直面します。そんな中で地域の薬局は、単なる「薬を渡す場所」ではなく、住民の健康と生活を支える社会インフラとしての役割を担っています。
しかし経営者にとって、災害時の薬局運営は簡単な判断ではありません。「開けるべきか、休むべきか」「スタッフの安全をどう守るか」「患者への影響を最小化するにはどうするか」など、多くの課題が同時に押し寄せます。
特に管理薬剤師が遠方で出勤できない場合やスタッフを休ませたい場合には、法律・労務・財務のバランスを取りながら判断する必要があります。
本記事では、薬局経営者の視点から、台風などの災害時に薬局を休めるのか、休ませる場合は誰が出勤するのか、そして「管理薬剤師が遠方で公休のときの対応」まで、実務で役立つ知識を体系的にまとめました。
この記事を読めば、いざというときに迷わない災害時の薬局運営マニュアルが手に入ります。
台風で薬局は休めるのか?
薬局は薬剤師がいなければ調剤できません。
薬剤師不在の状態では、調剤室を閉鎖し「薬剤師不在」の掲示を行わなければ違法になります。さらに、第一類医薬品や要指導医薬品の販売も不可となります。
一方で、第2類・第3類医薬品の販売は登録販売者がいれば可能です。つまり「薬局の本来機能である調剤」は止まるが、「ドラッグストア的な物販部分」だけ開けることは選択肢になります。


不可抗力と会社都合の違い
ここは経営者にとって非常に重要です。
| 状況 | 区分 | 休業手当 |
|---|---|---|
| 台風で店舗が浸水、停電 | 不可抗力 | 不要 |
| 鉄道が全線運休しスタッフが来られない | 従業員都合 | 不要 |
| 営業可能だが安全確保のため休業 | 会社都合 | 平均賃金の60%以上支給 |
鉄道が全線運休した場合、従業員都合なの?
台風や大雪で鉄道が全線運休し、スタッフが通勤できないケースは、経営者にとって判断が難しい場面です。
労基法や厚労省のQ&Aをもとに整理すると以下のようになります。
① 鉄道全線運休で従業員が出勤できない場合
会社が営業可能な状態で、従業員が通勤できない場合は「従業員都合」となります。
この場合、休業手当の支払い義務はなく、無給扱い(ノーワーク・ノーペイの原則)です。ただし、会社が柔軟に「有給休暇を使ってよい」とすることは可能です。
② 鉄道運休に加えて店舗も停電・浸水した場合
この場合は「不可抗力による休業」とされます。会社側に責任はないため、休業手当の支払い義務はありません。
③ 鉄道が一部動いているが、会社判断で休みにした場合
営業できるのに安全配慮で休業を決めた場合は「会社都合」となり、平均賃金の60%以上を休業手当として支払う必要があります。
まとめ:鉄道運休時の整理
| 状況 | 区分 | 休業手当 |
|---|---|---|
| 鉄道全線運休で社員が来られない(会社は営業中) | 従業員都合 | 不要(無給) |
| 鉄道運休+店舗も停電・浸水 | 不可抗力 | 不要(無給) |
| 鉄道一部運行だが会社が全休にした | 会社都合 | 必要(平均賃金の60%以上) |
経営者としての実務対応
- 法的には「従業員都合」と整理できるケースもあるが、現場では柔軟な対応が望ましい。
- 「有給休暇を使ってよい」とするなど、従業員に不利益を与えない工夫が信頼につながる。
- 判断を巡るトラブル防止のため、就業規則や非常時マニュアルに明文化しておくのがおすすめ。

経営判断+従業員の安心感のバランスが大事だね!
スタッフを休ませた場合、誰が出勤する?
実際の現場では以下の3つの選択肢が一般的です。
- 管理薬剤師のみ:最低限の営業体制。来局者が少なければ十分対応可能。
- 薬剤師+事務1名:調剤+受付・会計補助。安全性と効率のバランスが取れる。
- 全面休業:クリニックが休診、交通遮断などで合理性あり。
管理薬剤師が遠方で公休の場合は?
このケースは意外と多いです。
代行薬剤師を事前に指定していれば、その人が「管理者の代理」として運営可能です。指定がない場合は「薬剤師不在時間」として扱い、調剤を止め、掲示・施錠を行います。
台風時:出勤した人と休んだ人の待遇は不公平?
台風や大雪などの災害時、「頑張って出勤してくれた人」と「有給で休んだ人」が同じ賃金扱いになるのは不公平では?」という疑問を持つ経営者は少なくありません。
法律上の原則
- 出勤した人 → 通常どおり労働したため賃金100%支給
- 有給休暇を使った人 → 労基法上の権利であり賃金100%支給
つまり、法的には両者とも100%支給で「同じ待遇」となり、不公平感が生じやすいのです。
経営者ができる実務上の工夫
① 出勤者に特別手当を支給する
台風時に出勤してくれた従業員に、「災害対応手当」や「交通費実費補填」を出すことで努力を可視化できます。少額でもモチベーション維持につながります。
② 有給休暇ではなく「特別休暇」を設ける
災害で休んだ従業員を「年次有給休暇消化」扱いにせず、会社独自の「災害特別休暇」を設定すれば、有給残日数を減らさずに済みます。結果的に、出勤者との不公平感が薄まります。
③ 就業規則・マニュアルに明文化する
あらかじめ規則に記載しておけばトラブルを避けられます。例えば:
- 「災害時に出勤した従業員には特別手当◯円を支給する」
- 「災害で欠勤した場合は特別休暇扱いとし、賃金を全額または一部補償する」
まとめ:公平性を担保する工夫が大切
法律上はどちらも賃金100%で同じ扱いになりますが、経営判断で「出勤者にプラス評価」「休んだ人の不利益を減らす」仕組みを導入することで、不公平感を和らげることができます。

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災害時のシナリオ別対応
ケース1:午前中のみ営業
午前に集中投薬し、午後は安全確保のため閉局。患者には事前告知。
ケース2:代行者で対応
管理薬剤師が遠方で来られないが、代行薬剤師が出勤し通常営業。
ケース3:全面休業
暴風域に入り交通機関も全停止。患者も来られないため休業。
BCP(事業継続計画)テンプレート
【薬局台風対応マニュアル】 前日:気象庁HP・自治体情報を確認 ↓ 出勤判断:管理薬剤師 or 代行者の可否確認 ↓ 営業方針:最小開局 / 不在時間運用 / 全面休業 ↓ 情報発信:掲示・電話・SNS・Googleマップ更新 ↓ 在宅患者対応:緊急連絡網発動
財務影響シミュレーション
| 項目 | 通常営業 | 台風当日営業 | 休業 |
|---|---|---|---|
| 処方箋枚数 | 100枚 | 20枚 | 0枚 |
| 売上 | 50万円 | 10万円 | 0円 |
| 人件費 | 15万円 | 10万円 | 5〜10万円 |
| 損益 | +25万円 | -10万円 | -5万円 |
追加ケーススタディ:2019年台風19号での薬局対応
2019年の台風19号では、首都圏の多くの薬局が臨時休業を選択しました。あるチェーン薬局では、前日にLINE公式アカウントで「処方は前倒しでお願いします」と患者に案内し、当日は全面休業。結果として患者の混乱は最小限に抑えられ、従業員の安全も守ることができました。
追加ケーススタディ:東日本大震災時の薬局運営
震災時には薬局が避難所代わりになった例もありました。停電でレセコンが使えない中、手書きで処方箋管理を行った薬局もあります。BCPには「停電時対応」「紙レセプト対応」も盛り込む必要があります。
さらに深掘り:財務シミュレーションのバリエーション
営業するか休むかの判断は数字で比較するのが分かりやすいです。
| パターン | 売上 | 人件費 | 休業手当 | 損益 |
|---|---|---|---|---|
| 通常営業 | 50万円 | 15万円 | 0円 | +25万円 |
| 最小営業(薬剤師1名+事務1名) | 15万円 | 8万円 | 0円 | -3万円 |
| 全面休業(不可抗力) | 0円 | 0円 | 0円 | -10万円(固定費のみ) |
| 全面休業(会社都合) | 0円 | 0円 | 8万円 | -18万円 |
よくある質問(Q&A)
登録販売者だけで営業可能?
第2・第3類のみ販売可。調剤不可。
薬剤師不在時間は何時間まで?
自治体により異なるが、原則「4時間または開局時間の1/2まで」。
管理薬剤師が公休で呼べないとき?
代行薬剤師を指定するか、不在時間運用 or 休業に切替。
患者への告知方法は?
店頭ポスター、電話ガイダンス、LINE公式、Googleビジネス更新。
休業手当を払いたくない場合は?
不可抗力であることを証明する資料を残す。写真、交通情報など。
Q:在宅患者の薬はどう確保する?
前日までに訪問調剤を前倒しし、冷蔵薬は保冷バッグで配布。在宅患者には家族や訪看と連携して「備蓄薬リスト」を作成します。
Q:停電時の冷蔵庫管理は?
冷蔵庫には温度ロガーを設置し、非常用電源またはドライアイスで温度を維持。インスリンやワクチンの破棄判断基準もマニュアルに記載します。
Q:処方箋期限が切れる患者は?
医師に電話確認を行い、必要に応じてFAXや電子処方箋で翌日以降の投薬に切り替えます。
Q:災害時に薬局を地域住民に開放する?
避難所としての利用は想定外だが、トイレや給水を一時提供する薬局もありました。BCPに「地域連携」の項目を入れると信頼度が高まります。
Q:従業員が帰宅困難になった場合は?
毛布や非常食を備蓄し、店舗内に一時待機場所を設けます。労務管理上は勤務時間外の「待機」扱いとするか検討が必要です。
Q:行政への報告義務はある?
臨時休業や薬剤師不在時間は、事後であっても速やかに保健所へ報告するのが望ましいです。自治体によっては専用様式があります。
まとめ
- 薬局は台風や大雪など災害時でも「法令遵守」が最優先。薬剤師が不在の場合は調剤不可であり、調剤室施錠・掲示・不在時間届出が必須です。
- 管理薬剤師が遠方で公休でも「代行薬剤師」を事前指定すれば営業は可能。代行がいない場合は不在時間運用または休業判断が必要です。
- 鉄道が全線運休した場合、原則は「従業員都合の欠勤」扱いで休業手当不要。ただし会社が安全配慮で休ませた場合は「会社都合」となり休業手当(平均賃金60%以上)が必要です。
- 「出勤者」と「休んだ人」の不公平感を防ぐには、出勤者への特別手当や災害特別休暇制度を設けると効果的です。
- 経営判断の透明性を高めるため、就業規則・非常時マニュアル・BCP(事業継続計画)にあらかじめルールを明文化しておきましょう。
- 患者対応では、店頭掲示・電話ガイダンス・SNS発信・Googleビジネス更新をセットで運用し、近隣薬局の案内や翌日の対応を周知することが信頼を守る鍵です。

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薬剤師向け転職サービスの比較と特徴まとめ


今日は、特徴をわかりやすく整理しつつ、読んでくださる方が自分の働き方を見つめ直しやすいようにまとめていきましょう。
働く中で、ふと立ち止まる瞬間は誰にでもあります
薬剤師として日々働いていると、忙しさの中で気持ちに余裕が少なくなり、
「最近ちょっと疲れているかも…」と感じる瞬間が出てくることがあります。
- 店舗からの連絡に、少し身構えてしまう
- 休憩中も頭の中が業務のことでいっぱいになっている
- 気づけば仕事中心の生活になっている
こうした感覚は、必ずしも「今の職場が嫌い」というわけではなく、
「これからの働き方を考えてもよいタイミングかもしれない」というサインであることもあります。
無理に変える必要はありませんが、少し気持ちが揺れたときに情報を整理しておくと、
自分に合った選択肢を考えるきっかけになることがあります。
薬剤師向け転職サービスの比較表
ここでは、薬剤師向けの主な転職サービスについて、それぞれの特徴を簡潔に整理しました。
各サービスの特徴(概要)
ここからは、上記のサービスごとに特徴をもう少しだけ詳しく整理していきます。ご自身の希望と照らし合わせる際の参考にしてください。
・薬剤師向けの転職支援サービスとして、調剤薬局やドラッグストアなどの求人を扱っています。
・面談を通じて、これまでの経験や今後の希望を整理しながら話ができる点が特徴です。
・「まずは話を聞いてみたい」「自分の考えを整理したい」という方にとって、利用しやすいスタイルと言えます。
・全国の薬局・病院・ドラッグストアなど、幅広い求人を取り扱っています。
・エリアごとの求人状況を比較しやすく、通勤圏や希望地域に合わせて探したいときに役立ちます。
・「家から通いやすい範囲で、いくつか選択肢を見比べたい」という方に向いているサービスです。
・調剤薬局の求人を多く扱い、条件の調整や個別相談に力を入れているスタイルです。
・勤務時間、休日日数、年収など、具体的な条件について相談しながら進めたい人に利用されています。
・「働き方や条件面にしっかりこだわりたい」方が、検討の材料として使いやすいサービスです。
・調剤系の求人を取り扱う転職支援サービスです。
・職場の雰囲気や体制など、求人票だけではわかりにくい情報を把握している場合があります。
・「長く働けそうな職場かどうか、雰囲気も含めて知りたい」という方が検討しやすいサービスです。
・薬剤師に特化した職業紹介サービスで、調剤薬局・病院・ドラッグストアなど幅広い求人を扱っています。
・公開されていない求人(非公開求人)を扱っていることもあり、選択肢を広げたい場面で役立ちます。
・「いろいろな可能性を見比べてから考えたい」という方に合いやすいサービスです。
・調剤薬局を中心に薬剤師向け求人を取り扱うサービスです。
・研修やフォロー体制など、就業後を見据えたサポートにも取り組んでいる点が特徴です。
・「現場でのスキルや知識も高めながら働きたい」という方が検討しやすいサービスです。
気持ちが揺れるときは、自分を見つめ直すきっかけになります
働き方について「このままでいいのかな」と考える瞬間は、誰にでも訪れます。
それは決して悪いことではなく、自分の今とこれからを整理するための大切なサインになることもあります。
転職サービスの利用は、何かをすぐに決めるためだけではなく、
「今の働き方」と「他の選択肢」を比較しながら考えるための手段として活用することもできます。
情報を知っておくだけでも、
「いざというときに動ける」という安心感につながる場合があります。


「転職するかどうかを決める前に、まずは情報を知っておくだけでも十分ですよ」ってお伝えしたいです。
自分に合う働き方を考える材料が増えるだけでも、少し気持ちがラクになることがありますよね。
無理に何かを変える必要はありませんが、
「自分にはどんな可能性があるのか」を知っておくことは、将来の安心につながることがあります。
気になるサービスがあれば、詳細を確認しながら、ご自身のペースで検討してみてください。



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