


肝炎治療の自己負担が大幅軽減!?公費助成制度を詳しく解説!
肝炎ウイルス(B型・C型)による感染は、慢性肝炎から肝硬変、さらには肝がんへと進行するリスクを伴う重要な疾患です。
近年では抗ウイルス薬による治療成績が飛躍的に向上していますが、その分治療費も高額になることが少なくありません。
そこで国や自治体が提供しているのが「肝炎治療の公費助成制度」です。
これは、一定の要件を満たすことで、自己負担額が月額1〜2万円に軽減される制度であり、特に長期治療が必要なB型・C型肝炎の患者さんにとって、非常に心強い支援策です。
この記事では、薬剤師や医療関係者、そして肝炎と診断されたばかりの患者さんに向けて、制度の概要・対象となる治療・助成の仕組み・申請の流れなどを、分かりやすく丁寧に解説していきます。
制度の全体像を把握し、適切に活用することで、治療への不安を和らげ、患者さんのQOL向上にもつながりますよ。
肝炎治療特別促進事業とは?
この制度は、国が定めた「肝炎治療特別促進事業」として、都道府県が実施主体となり、患者さんが指定医療機関で必要な治療を受けられるよう医療費の一部を公費で助成する仕組みです。
対象となる治療
- B型肝炎:インターフェロン治療、核酸アナログ製剤治療(エンテカビル、テノホビル等)
- C型肝炎:インターフェロン治療、インターフェロンフリー治療(DAA)
自己負担限度額(月額)
- 住民税所得割 23万5,000円未満:月額10,000円
- 住民税所得割 23万5,000円以上:月額20,000円
この制度を活用すれば、たとえばC型肝炎の治療に必要なDAA(直接作用型抗ウイルス薬)の薬剤費が高額でも、自己負担は上限額までに抑えられるため、経済的負担が軽減されます。
助成対象となるのは、保険診療で行われる治療や検査、薬剤費などです。
ただし、差額ベッド代や食事療養費、文書料など保険適用外の費用は対象外となるため注意が必要です。
申請には、主治医による診断書、本人確認書類、保険証の写し、所得証明などが必要となります。

都道府県ごとの助成制度の違いとは?
肝炎治療の公費助成制度は、基本的に厚生労働省の方針に基づいて全国で実施されていますが、都道府県によって細かい運用や対象範囲、申請方法に違いがあります。
ここでは主要な自治体である「東京都」「神奈川県」「埼玉県」の違いを比較してみましょう。
東京都の場合
- 東京都内に住所を有することが申請条件
- 肝炎専門医療機関での治療が対象
- 初診前に受給者証を交付されていない場合でも、後日払い戻し申請が可能
神奈川県の場合
- インターフェロン治療において、最長72週までの延長が認められる
- 受給者証が届く前にかかった費用も、「療養費申請」で助成対象に
- マイナンバー提出により所得証明が省略できる場合あり
埼玉県の場合
- 申請した月の1日から助成が遡って適用される
- 限度額管理票を医療機関で提示することが必要
- 72週のインターフェロン延長治療も特例として対応可能
このように、どの自治体も基本的には同じ制度をベースにしているものの、助成の対象期間や申請時の書類、治療延長の可否などに違いが見られます。
申請を行う際には、必ずお住まいの都道府県のホームページや保健所に最新情報を確認しましょう。

肝炎公費助成の申請の流れと必要書類は?
公費助成を受けるには、事前に所定の手続きを行い、「受給者証」と「限度額管理票」を取得する必要があります。
以下は、一般的な申請の流れです(自治体によって若干の違いがあります)。
申請の流れ(一般的な手順)
- 肝炎ウイルス検査の実施と陽性判定
- 専門医療機関での診察・治療方針の決定
- 診断書など必要書類を揃えて自治体に申請
- 審査・交付 → 受給者証および管理票が自宅に届く
- 医療機関・薬局で提示して治療開始
必要書類の一例
- 主治医による診断書(指定様式)
- 本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)
- 健康保険証のコピー
- 所得証明書(課税証明書など)※マイナンバーで省略可の場合あり
- 申請書一式(自治体のサイトまたは窓口で取得)
注意点:申請から交付までには1~2週間かかることがあります。
交付前に治療を開始した場合でも、領収書を保管しておけば「療養費支給申請」で払い戻しが受けられます。

薬局で確認すべき公費助成のポイントとは?
肝炎治療で公費助成を受ける患者さんに対応する際、薬局では以下の点を必ず確認しましょう。
①「受給者証」と「限度額管理票」の提示
調剤時にこの2点の提示がないと、公費での請求処理ができません。
提示されない場合は、患者さんに再確認を行い、交付状況を確認してください。
②自己負担限度額の把握
限度額管理票には、月額の自己負担上限が記載されています。
薬剤費の自己負担額がその上限を超えていないか、毎回確認しましょう。
③同一月内の他医療機関利用の有無
限度額は同一月内での合算が可能です。
他院でも治療を受けている場合、他施設の利用状況を聞き取りしておくと、誤った請求や患者負担のトラブルを防げます。
④交付前の支払いへの配慮
「受給者証」がまだ届いていない段階で来局する患者さんもいます。
その場合は、自費での支払いとなるが、後日払い戻し可能であることを説明し、領収書の保管を促しましょう。

助成の対象になる薬は?ウルソは含まれる?
「肝炎治療特別促進事業」では、ウイルス性肝炎の原因ウイルスに対して直接作用する治療薬が助成の対象となります。
つまり、肝炎ウイルスの除去や増殖抑制を目的とした抗ウイルス薬が主な対象です。
対象となる主な薬剤(例)
B型肝炎
- インターフェロン製剤(ペグインターフェロンなど)
- 核酸アナログ製剤(エンテカビル、テノホビル、ラミブジンなど)
C型肝炎
- インターフェロン治療
- インターフェロンフリー治療(DAA)
└ ソホスブビル、レジパスビル、マヴィレット、ハーボニー、エプクルーサなど
また、治療中の副作用対策に必要な検査や対症療法(保険適用範囲内)についても、助成対象に含まれます。
ウルソ(ウルデオキシコール酸)は助成対象外
一方で、ウルソ(商品名:ウルソデオキシコール酸)は、胆汁の流れを改善する肝庇護薬であり、抗ウイルス作用を持たないため、助成対象外です。
ウルソはウイルスを抑える薬ではなく、あくまで補助的な役割の薬であり、「肝炎治療特別促進事業」の趣旨に合致しないとされています。
まとめ表
分類 | 助成対象 | 備考 |
---|---|---|
インターフェロン | ◯ | B型・C型ともに対象 |
核酸アナログ製剤 | ◯ | 主にB型 |
インターフェロンフリー(DAA) | ◯ | C型治療薬 |
副作用対策薬 | ◯ | 保険診療範囲に限る |
ウルソ(肝庇護薬) | × | 助成対象外 |

ウルソは補助的な薬なので残念ながら公費の対象外なんだよ〜。誤って請求しないように薬局でもチェックしてね♪
【薬局での具体的な対応例】こんなときどうする?
ケース①:受給者証の提示がない患者さんが来局
状況:患者さんがC型肝炎のDAA処方を持参したが、受給者証を持っていない。
対応:
- まず患者さんに受給者証の交付有無を確認。
- 「申請はしているが、まだ届いていない」とのこと。
- この場合は通常通り保険で算定し、自費で窓口負担分を一時支払いしてもらう。
- 「受給者証が届いた後、療養費支給申請で差額払い戻しが可能」と説明。
- 領収書は必ず渡し、再来局時に受給者証提示で再確認。
ケース②:限度額を超えそうな処方の会計
状況:マヴィレット14日分+血液検査で、自己負担額が1万8000円になった。
対応:
- 限度額管理票を確認し、患者の上限が「1万円」であることを確認。
- 患者から1万円のみ受領し、差額は「公費対象」として処理。
- 公費請求時には限度額を超えた分のみを対象として請求。
ケース③:ウルソを一緒に処方された場合
状況:DAAと一緒にウルソが処方され、公費として請求可能か不明。
対応:
- ウルソは抗ウイルス薬ではないため、助成対象外。
- 公費ではなく保険扱いで計算し、患者に通常通り自己負担を請求。
- DAA分については限度額まで自己負担を確認し、差額を公費請求。

まとめ
肝炎治療における公費助成制度「肝炎治療特別促進事業」は、治療費の自己負担を月額1〜2万円に軽減できる非常に有効な支援制度です。
対象となるのは、B型・C型肝炎の根治を目的とした治療で、インターフェロン製剤・核酸アナログ製剤・DAA(インターフェロンフリー)などが含まれます。
ウルソのような肝庇護薬は対象外ですので注意が必要です。
薬局では、「受給者証」と「限度額管理票」の確認を確実に行い、自己負担額が上限を超えないよう請求対応することが重要です。
また、交付前の患者さんには療養費申請が可能であることを丁寧に案内しましょう。
要点チェックリスト
- ✅ 治療薬が助成対象か確認(抗ウイルス薬かどうか)
- ✅ 受給者証・限度額管理票を提示してもらう
- ✅ 限度額内での会計処理を行う
- ✅ 交付前でも支払った分は療養費申請で払い戻し可能
- ✅ ウルソなど対象外薬剤は通常保険対応に

肝炎治療公費助成クイズ
Q1. 肝炎治療特別促進事業の対象となる薬剤はどれ?
- A. ウルソ
- B. エンテカビル
- C. シリマリン
- D. タウリン
正解:B. エンテカビル
エンテカビルはB型肝炎に対する核酸アナログ製剤で、助成の対象です。
一方、ウルソやタウリンは肝庇護薬であり、制度の対象外となります。
Q2. 公費助成制度において、ウルソ(ウルデオキシコール酸)は対象となる?
- A. はい、すべての肝臓の薬が対象
- B. いいえ、ウルソは対象外
正解:B. いいえ、ウルソは対象外
ウルソは肝機能の改善を目的とした薬ですが、抗ウイルス作用を持たないため公費助成の対象にはなりません。
Q3. 限度額管理票に記載された自己負担限度額を超える薬剤費が発生した場合、どうする?
- A. 超えた分も患者が支払う
- B. 限度額までを患者が支払い、超えた分は公費請求
正解:B. 限度額までを患者が支払い、超えた分は公費請求
公費助成制度では、月ごとの自己負担上限を超えた金額は全額公費から支払われます。
Q4. 受給者証の交付前に来局した患者にはどう説明すべき?
- A. 受給者証がないので助成は使えない
- B. 一時的に自己負担で支払い、後日療養費支給申請が可能と案内
正解:B. 一時的に自己負担で支払い、後日療養費支給申請が可能と案内
受給者証交付前であっても、領収書を提出すれば遡って払い戻しが受けられます。
よくある質問
Q. 肝炎治療の公費助成は誰でも受けられますか?
A. 助成を受けるには、B型またはC型肝炎と診断され、かつ対象となる治療(インターフェロン、核酸アナログ製剤、DAAなど)を受けることが条件です。申請時には所得制限がありますが、ほとんどの方が対象となります。
Q. 自己負担はどれくらいになりますか?
A. 月ごとの上限額が設定されており、住民税所得割が23万5,000円未満の方は月1万円、それ以上の方は月2万円が上限です。
Q. ウルソは助成対象になりますか?
A. いいえ、ウルソは肝庇護薬であり、抗ウイルス薬ではないため助成の対象外です。
Q. 受給者証がまだ届いていない場合の対応は?
A. 一時的に通常の自己負担で支払っていただき、後日「療養費支給申請」により払い戻しが可能です。領収書の保管を忘れずに行いましょう。
Q. 助成の申請はどこでできますか?
A. お住まいの都道府県または市区町村の保健所や健康福祉課などの窓口で申請できます。申請書類はホームページからもダウンロード可能です。
Q. 期限が切れたらどうなりますか?
A. 有効期限が切れる前に更新申請が必要です。更新を忘れた場合は、一度自己負担での支払いになりますが、早めに手続きを行えば補填できる可能性があります。
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