


2025年に入ってから、医療業界やマスコミでも「OTC類似薬の保険適用除外(通称:保険外し)」が大きな話題となっています。
これは、市販薬(OTC)と成分や効果がほぼ同じ医療用医薬品について、健康保険の対象から外す
という動きで、今後の医療制度改革の一環として注目されています。
一見すると「市販薬で代替できるなら保険を使わなくてもいいのでは?」というシンプルな話に見えますが、実はその背景には日本の財政問題、高齢化社会、セルフメディケーション推進、医療アクセスの平等性といった多くの課題が絡んでいます。
そしてこの制度変更は、薬剤師や医師の現場業務だけでなく、患者の服薬行動や金銭的負担にも大きな影響を与える可能性があります。
この記事では、OTC類似薬がどのような薬剤を指すのか、その保険外しがなぜ進められているのか、そして私たち薬局薬剤師が今後どのように対応していくべきか
について、わかりやすく、かつ専門的な観点から深掘りしていきます。
患者説明に迷ったとき、処方解析の参考にしたいとき、あるいは制度動向を知っておきたいときにも役立つ内容になっていますので、ぜひ最後まで読んでください。
OTC類似薬とは?
OTC類似薬とは、医療用医薬品でありながら、市販薬(OTC)と同一、または極めて類似した有効成分・用量・効果効能を持つ医薬品のことです。
つまり、医師の診察を経て処方される薬でありながら、薬局やドラッグストアでもほぼ同等のものを市販薬として手に入れられる薬を指します。
たとえば、アレルギー性鼻炎に使われる「アレグラ錠(フェキソフェナジン)」は、OTCの「アレグラFX」などと成分が同一です。
他にも、解熱鎮痛剤の「ロキソニン錠(ロキソプロフェン)」と「ロキソニンS」、胃薬の「ガスター錠(ファモチジン)」と「ガスター10」なども同様の関係にあります。
医療用医薬品名 | 成分名 | 対応するOTC薬品名 |
---|---|---|
アレグラ錠 | フェキソフェナジン塩酸塩 | アレグラFX |
ロキソニン錠 | ロキソプロフェンナトリウム | ロキソニンSシリーズ |
ガスター錠 | ファモチジン | ガスター10 |
ナウゼリン錠 | ドンペリドン | ドンペリドン配合OTCはなし(類似薬あり) |
このような薬剤は、医師の処方箋がなくてもOTCで代替できるため、「軽症であればOTCで十分」との考えが広まり、保険財政の見直し対象になっているのです。

なぜOTC類似薬が保険外になるの?
OTC類似薬が保険適用から除外される流れには、医療費抑制、セルフメディケーション推進、医療資源の効率的活用といった複数の目的があります。
以下にその理由を詳しく解説します。
1. 医療費の増大に対する抑制策
日本の医療費は高齢化の影響で年々増加しており、2023年度の国民医療費は約46兆円にも達しました。
その中で、軽症・自己判断で対応できる症状に対しても保険が使われている現状が、財政的に問題視されています。
たとえば「くしゃみや鼻水でアレグラを処方してもらう」「ちょっとした胃もたれでガスターを処方される」といったケースでは、OTCで十分対応できると判断され、医療リソースの無駄遣いと見なされるようになりました。
2. セルフメディケーションの推進
厚生労働省は以前から、軽症の症状には市販薬で自己管理する「セルフメディケーション」を推進しています。
これにより、軽度の体調不良での医療機関受診を減らし、重症患者や専門的治療を必要とする患者への医療資源を集中させる狙いがあります。
この動きは、セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)とも連動しており、「OTC薬で済むものは保険から外す」という流れと整合性を持っています。
3. 保険制度の公平性の確保
医療保険制度は「限られた財源を、真に必要な人に公平に配分する」ことが目的です。
誰でも簡単にOTCで買える薬を、診療報酬付きで処方されてしまうと、制度の公平性が揺らぐという指摘があります。
特に湿布薬のように「数十枚単位で処方されるが、OTCでは数枚入りが市販されている」例では、医療費の無駄遣いとの批判が強まり、保険外しの大きなきっかけとなりました。
4. 実際の制度改正の流れ
- 2016年:湿布薬の制限(70枚ルール)導入
- 2023年:中医協で「OTC類似薬の保険適用除外」について本格議論
- 2025年度:対象薬の選定と段階的除外が進行中

OTC類似薬が保険外になると何が起きる?
OTC類似薬が保険適用から外れると、最も大きな変化は「自己負担の急増」です。
これまで3割負担で済んでいた薬が、突然「全額自己負担(10割)」になれば、患者にとって経済的なインパクトは無視できません。
1. 患者への影響
- 薬代が3~4倍以上に跳ね上がる:例えばアレグラ錠は1錠約26.1円ですが、保険外になると全額自己負担(例:1日2錠×30日で1,566円)
- 受診控え・服薬中断の懸念:特に慢性疾患や高齢者にとっては大きな負担
- OTC薬への移行が進むが、自己判断での服薬ミス・重複投与・副作用リスクが高まる
2. 医療機関への影響
- 外来件数の減少:軽症での受診控えが進む可能性あり
- 診療報酬の減収:とくに内科・耳鼻科・整形外科などに影響
- 患者への説明義務の増加:「保険適用外です」との告知や文書対応が必要
3. 薬局・薬剤師への影響
- 服薬指導の複雑化:「この薬は保険が効かないので、代わりにOTCを使うとしたら…」といった説明が必要に
- OTC販売への知識と接客力が問われる:薬剤師の説明力・商品提案力がより重要に
- 調剤報酬の減収・患者離れの懸念
4. 実際の保険外化の流れ
2025年度中に「保険外化リスト」が厚労省から提示され、2026年度診療報酬改定で一部実施される見込みです。対象となるのは、以下のような薬剤群です:
薬効群 | OTC類似例 | 医療用例 |
---|---|---|
抗ヒスタミン薬 | アレグラFX、クラリチンEX | アレグラ錠、クラリチン錠 |
解熱鎮痛薬 | ロキソニンS、イブ | ロキソニン錠、カロナール錠 |
胃薬 | ガスター10 | ガスター錠 |
整形用湿布薬 | ボルタレンEX、パテックス | ロキソプロフェンテープなど |

アレグラはOTCがあるけど、ビラノアは?OTCがない薬はどうなる?
「アレグラ(フェキソフェナジン)」は、OTC版のアレグラFXが全国の薬局・ドラッグストアで販売されており、セルフメディケーション対応がしやすい典型例です。
しかし、「ビラノア(ビラスチン)」や「デザレックス(デスロラタジン)」など、現時点でOTC展開されていない抗ヒスタミン薬も多く存在します。
OTCがない薬はどうなるのか?
- OTCが存在しない=保険適用除外の対象にはなりにくい
- 厚労省の方針では「OTCと同等の入手性・効果がある」ことが前提
- アレグラ・クラリチン・ジルテックなどは対象になりやすいが、ビラノア・デザレックスは除外される可能性大
なぜビラノアなどはOTC化しないのか?
- OTC化の審査が進んでいない
- 眠気がほとんどなく、選択的H1拮抗作用が強い=医師の処方意義がある
- 食事の影響を受けやすく、服薬指導が必要(空腹時投与)
- OTC化しても市場規模が見込めないとの製薬企業判断も影響
今後の懸念:人気処方薬に偏る可能性
OTCがある薬が保険外になれば、医師も患者も「保険適用される類似薬」=ビラノアやデザレックスなどに処方をシフトさせる動きが強まることが懸念されます。
- =「患者負担を避けるための薬剤選択」が行われ、医学的最適性ではなく制度的事情が優先される
- 結果として、処方のバランスが崩れる・薬価が高い新薬が選ばれるという可能性も
薬剤師としての対応は?
- 患者に「アレグラとビラノアの違い」「自己負担の有無」「OTCでの可否」などを整理して説明
- 医師に対しても「制度変更に伴う処方動向の注意点」を情報提供
- OTCがない薬=安全性・指導が求められる薬としての付加価値を理解してもらう

薬局薬剤師として現場でどう対応する?
OTC類似薬の保険適用除外が進むことで、薬局薬剤師は「単なる調剤担当」から「セルフメディケーション支援者」へと役割が広がります。
患者が混乱しないよう、現場では以下のような対応が求められます。
1. 保険外であることの明確な説明
薬剤師としてもっとも重要なのは、「この薬は保険適用外なので、全額自己負担になります」という点を明確に伝えることです。
- レセコンでの保険チェック時に確認
- 処方せん受付時に「このお薬は保険が効かない可能性があります」と事前案内
- 患者の負担金を具体的に提示して納得を得る
2. 代替手段(OTC薬)の提案
医療用からOTCへの切り替えを提案する際は、成分、用量、服用方法、副作用の比較を丁寧に説明する必要があります。
- 例:「アレグラ錠60mg(保険外)」→「アレグラFX(OTC)」を案内
- 「服用時間は同じで、効果も類似しています」などの比較解説
- セルフメディケーション税制の活用アドバイスも効果的
3. 患者タイプ別の対応戦略
患者層 | 対応ポイント |
---|---|
高齢者 | 耳が遠い・理解が難しい方もいるため、ゆっくり丁寧に説明。OTCを勧める場合は価格と使い方を併記。 |
子育て世代 | 負担感に敏感な層。ジェネリックや市販薬の価格差を示して安心感を与える。 |
慢性疾患の方 | 「継続処方をどうするか」を主治医とも連携。毎月の負担額の見通しを伝える。 |
4. 店舗運営・スタッフ教育の工夫
- 「保険外薬リスト」や価格表を作成・掲示
- OTC薬の在庫を拡充し、薬剤師が即案内できる体制を整備
- 新人薬剤師への教育:「保険適用外=OTC案内+納得感の説明」をロールプレイ訓練

具体的な症例・処方例
ここでは、実際の薬局業務でよくあるケースをもとに、保険外になったOTC類似薬をどう説明し、どう提案するかを、症例別に紹介します。
患者対応の参考にしてください。
症例1:アレグラ錠(フェキソフェナジン)の処方を希望する花粉症患者
- 患者:30代男性、花粉症歴5年、症状軽度〜中等度
- 処方内容:アレグラ錠60mg 1日2回 14日分
- 保険外化により、自己負担額:約1,500円(従来の3割負担:約430円)
薬剤師の対応例:
「アレグラ錠は現在、OTCでもほぼ同じ成分・効果の『アレグラFX』が販売されています。保険外になるため、今回は薬局で購入されるほうが費用的には割安です。必要であれば、ジェネリックのOTCや、効果が近い他の市販薬もご案内できますよ。」
症例2:ガスター錠(ファモチジン)を希望する胃痛持ちの中年女性
- 患者:40代女性、胃酸過多や胃もたれで年に数回処方
- 処方内容:ガスター錠10mg 1日2回 7日分
- 保険外化による全額自己負担:約170円 → OTCの「ガスター10」比較:12錠 1,738円
薬剤師の対応例:
「このガスター錠と同じ成分の『ガスター10』は市販でも入手可能です。ただし、市販品は錠数が少なく価格差が出やすいため、短期間だけなら処方薬のままが割安かもしれません。」
症例3:湿布薬をまとめて希望する整形外科通院中の高齢者
- 患者:70代男性、変形性膝関節症で毎月63枚処方
- 処方内容:ロキソプロフェンテープ63枚/月
- 保険外化により、1枚約17.6円×63枚=1,100円(3割負担時:約330円)
薬剤師の対応例:
「このロキソプロフェンテープは今後、保険が効かなくなる予定です。市販の貼付薬でも痛みを和らげられるものがありますが、長期間使用される場合はまとめ買いなども含めてご相談ください。貼る位置や使用頻度なども確認させてくださいね。」

OTC類似薬が自費になることで懸念されることは?
保険外しによりOTC類似薬が自費になると、一見すると医療費の削減に繋がるように見えますが、実際には多くの懸念事項が生じます。
以下に、現場視点からの課題を整理して解説します。
1. 患者の受診控え・服薬中断
薬代の全額自己負担化により、軽症どころか中等症でも「受診しない」「薬を買わない」選択をする患者が増加する可能性があります。
- 例:「花粉症くらい我慢する」として、薬を使わずに悪化→副鼻腔炎に
- 慢性胃炎の放置→消化性潰瘍・貧血のリスク
2. セルフメディケーションによる誤用・過量使用
OTCに切り替えることで、医師や薬剤師の指導がなくなる=用法・用量の逸脱、重複投与、併用禁忌などのリスクが増加します。
- 特に高齢者や多剤服用者では要注意
- ドラッグストアで十分な説明が受けられないことも
3. 医療格差の拡大
所得や教育水準によって、薬へのアクセスや使用の質が変わる懸念があります。これは公衆衛生上、非常に重要な問題です。
- 医療に対するリテラシーの低い層ほど誤用・放置の可能性が高まる
- 地域格差(都市部 vs 過疎地)も影響
4. 薬局経営や薬剤師業務への影響
- 調剤収入の減少により、経営が圧迫される薬局も
- 一方で、OTC販売や相談業務の強化が求められ、薬剤師の役割が拡大
5. 結局は医療費が増加する可能性も
初期段階で薬を控えた結果、重症化→入院・手術といった高額医療につながることもあります。これは結果的に医療費全体を押し上げる要因になります。

自費以外に医療費を削減する方法はある?
OTC類似薬を保険外にする政策はインパクトが大きいものの、患者の負担増に直結するため慎重な運用が求められます。それ以外にも医療費削減のアプローチはいくつかあります。
1. ジェネリック医薬品(後発品)の使用促進
もっとも現実的かつすでに実績のある削減策です。先発品に比べて価格が大幅に低く、同等の効果・安全性があることが多いため、医療費全体の3割以上を占める薬剤費の削減に直結します。
- 2025年現在、使用割合は約80%超まで普及
- さらなる使用推進には「安定供給」と「医師の理解」が課題
2. ポリファーマシー対策
高齢者を中心に、5剤以上の多剤併用による副作用や重複投与が問題視されています。
薬剤師による処方提案・減薬支援は、薬剤費と医療費の両方を抑える効果があります。
- 服薬管理指導料やリフィル制度との連動も可能
- 医師と連携した減薬支援の体制整備がカギ
3. リフィル処方箋の活用
2022年の制度改正で導入された「リフィル処方箋」は、安定疾患の患者が医師の診察なしで継続的に薬を受け取れる仕組みです。
- 通院回数を減らし、診療費を抑える
- 薬剤師による服薬状況のモニタリングが重要
4. 在宅医療・地域包括ケアの推進
入院医療に比べて、在宅医療は医療費を抑えながら生活の質を維持しやすいとされています。
- 医療機関から在宅・訪問薬剤管理へ移行を支援
- 介護・医療・福祉の連携強化が不可欠
5. 医療のICT化・AI活用
電子カルテ連携やAI問診、オンライン診療などにより、医療資源の効率的活用が可能になります。
- 重複検査・投薬の防止
- 診療・投薬ミスの減少

薬剤師の権限が増えれば、医療費削減にもっと貢献できる?
これまで紹介した医療費削減策の多くは、実施には医師の判断・診断・処方裁量が前提となっており、薬剤師が単独で実行できる範囲は限られていました。
ジェネリック推進やポリファーマシー対策、リフィル処方への移行なども「医師の理解」が前提で、現場の薬剤師としてはもどかしさを感じる場面も多いのが実情です。
薬剤師の権限が強化されれば何が変わる?
もし、薬剤師がより裁量を持ち、医師と対等な医療パートナーとして機能する環境が整えば、以下のような具体的な貢献が期待できます。
- 処方提案(疑義照会以上の積極的介入):重複投与の削除、投与量の調整、副作用リスクの最適化など
- 処方変更権限:軽度疾患に対するOTC切り替えの判断、代替薬の自主選択
- 継続投薬判断:リフィル処方時の継続是非を薬剤師が判断可能に
- 在宅での服薬設計・減薬:訪問薬剤管理において、処方そのものに対して提案だけでなく意思決定ができる
世界では薬剤師の権限がもっと広い
たとえば英国では、薬剤師による「独立処方(Independent Prescribing)」が制度化されており、特定の研修を受けた薬剤師は診断・処方・投薬までを自ら判断して行えます。
カナダやオーストラリアなどでも、医師の指示を経ずに軽症対応が可能なスキームが整っています。
日本で権限強化が進まない理由は?
- 医師会との利害調整:職域の明確化や対立懸念
- 法制度の未整備:薬剤師法・医療法における役割定義の限界
- 薬剤師教育の実務偏重:臨床判断スキルの体系的習得がまだ発展途上
今後への提言:対等な「チーム医療」へ
薬剤師が「処方を待つだけの存在」から「処方を創る存在」へ進化すれば、患者のQOL向上にも医療費削減にも大きく貢献できます。
そのためには…
- 地域薬局での臨床介入・服薬レビューの制度化
- 薬局薬剤師向けの臨床スキル研修・認定制度の充実
- 医師とのダブルチェック体制の構築

保険外しと関係する「零売」とは?
零売(れいばい)とは、薬剤師の判断で、医療用医薬品の一部を処方箋なしで販売できる制度です。
正式には「要指導医薬品・第1類医薬品以外の一部の医療用医薬品」が対象であり、販売にはいくつかの条件があります。
零売の対象となる薬とは?
- 比較的安全性が高く、長期使用実績がある医療用医薬品
- OTCに近い効能・成分を持つ薬(=OTC類似薬との重なりが多い)
医療用医薬品名 | 零売可能? | 備考 |
---|---|---|
アレグラ錠 | 〇 | OTC類似薬あり、零売可 |
ガスター錠 | 〇 | OTC版と同成分、零売可 |
ロキソニン錠 | △ | 薬局判断次第(NSAIDs注意) |
ナウゼリン錠 | △ | 中枢性副作用リスク有 |
零売のメリットは?
- 医療機関を受診せずに薬を購入できるため、時間・費用を節約できる
- OTCより安価な場合もある(ジェネリック医薬品の零売)
- 薬剤師が服薬指導を行うことで安全性が確保されやすい
零売の課題と注意点は?
- 販売可能な薬が限られている(一部の薬局しか対応していない)
- 薬歴・指導記録の管理義務があり、業務負担が増える
- 医師との連携や判断ラインが曖昧になりがち
薬剤師としての対応は?
保険外しが進む中で、「保険適用外=すぐにOTCへ」ではなく、「零売による提供も可能か?」という選択肢を持つことが、患者サービスの幅を広げます。
- 零売の可否を確認し、必要に応じて患者に案内
- OTC・零売・処方薬それぞれの価格・効果・安全性を比較して説明

零売制度は今後拡大されるべき?
OTC類似薬の保険外しを契機に、零売制度の活用・制度拡大は現実的な選択肢として再注目されています。
患者の医療アクセス維持、薬剤師の専門性発揮、医療費抑制など多くの利点がありますが、制度上の課題も存在します。
現状の零売制度の限界とは?
零売は薬機法第24条により認められていますが、実際には下記の制約があります:
- 対象品目が非常に限られている(睡眠薬・抗菌薬・向精神薬などは不可)
- 薬剤師による判断に依存する部分が大きいため、対応が薬局によってバラバラ
- 薬歴管理・記録保存義務があり、業務負担が重い
- 「医療の抜け道」扱いされがちで、制度上の正当性が広く知られていない
制度拡大のメリット
- 軽症者がスムーズに医薬品へアクセスできる(医療機関の混雑緩和)
- 受診控えによる重症化リスクの低減
- 薬剤師による介入で安全性も担保
- OTCでは対応できないが診察不要な症状に柔軟対応
今後の制度設計に向けた提言
- 零売対象医薬品の拡大:OTCと重複する医療用医薬品に限定して段階的に拡張
- 全国統一ガイドラインの整備:安全性・必要性の基準を明文化
- 零売薬歴の電子管理・簡素化:業務効率を高めつつ記録義務も果たす
- 薬剤師教育の強化:臨床判断力・問診力を育成する研修制度
海外の事例と比較
たとえばイギリスでは「Pharmacy First」制度が導入されており、薬剤師が初期診療を担うことで、患者は無料で医療用医薬品を受け取れます。
軽症への早期対応を薬局が担う仕組みとして注目されています。
日本でも「薬剤師が病気の初期対応をする」制度設計が進めば、医師と薬剤師が役割分担をしながら、より効率的かつ公平な医療提供体制を構築できる可能性があります。

まとめ
OTC類似薬の保険適用除外は、日本の医療制度の今後を左右する大きな転換点です。
表面的には「軽症に保険は使わない」といった財政的合理性に見えますが、その実態は患者負担、医療アクセス、薬剤師業務、制度設計のすべてに波及する複雑な問題です。
薬剤師として私たちに求められるのは、知識だけでなく、判断力・説明力・提案力です。
「これは保険外になります」で終わらせるのではなく、患者にとって最適な選択肢をともに考え、寄り添う姿勢が問われています。
また、OTC類似薬問題に限らず、今後の医療制度改革では薬剤師がもっと裁量を持ち、治療設計に積極的に関わる未来が求められるはずです。
その実現のためには、現場からの声を届け、制度を理解し、スキルを磨くことが欠かせません。
日々の調剤業務や服薬指導の中にこそ、制度改革のヒントがあります。
この記事が、現場で働く薬剤師の皆さんにとって、「変化に備え、動き出す」きっかけになれば幸いです。

よくある質問(Q&A)
Q1: OTC類似薬が保険外になることで、医療費は本当に減るの?
A: 政府や維新の会は「約3,500〜1兆円規模の医療費削減効果」を見込んでいますが、医師会などは「重症化による高額医療費の増加」「医療アクセスの低下による負担増」を強く懸念しています
Q2: 低所得者や子育て世代への影響は?
A: 日本医師会は、「所得や教育水準により医療アクセスに格差が出る」「子育て世代の自己負担増」「公費助成対象外により不利益が拡大」と懸念を表明しています
Q3: 医療の質はどうなる?
A: 医師会は「診察なしで軽症は自己判断で済ませると、重篤な病気の早期発見の機会が失われる」と指摘。薬剤師協会も「適切な診断・治療がされず、重症化リスクが増す」と警告しています 。
Q4: 処方が高価な薬にシフトする可能性は?
A: 日本総研は、「OTC類似薬を外すと、医師が患者負担を避けてより高価な処方薬へシフトする可能性がある」とし、それを抑制するためにフォーミュラリーやモニタリングの必要性を指摘しています 。
Q5: 薬剤師の相談業務は増える?
A: はい。保険が効かない薬が増えることで、患者から「なぜ保険が使えないの?」「どのOTC薬がいい?」といった相談が増え、薬剤師の説明力や対応力がこれまで以上に求められるようになります。
参考文献
- 日医「社会保険料削減」目的のOTC類似薬の保険外し
- 日医on‑line:社会保険料の削減を目的としたOTC類似薬保険適用除外への懸念
- 東京保険医協会:OTC類似薬の保険外しをめぐる情勢解説
- 骨太の方針2025:OTC類似薬保険適用除外の方針
- 日本総研:OTC類似薬議論のポイント
- 薬剤師による制度変化への対応・業務影響(note記事)








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