


質の良い睡眠を取るにはどうすればいい?
現代人の多くが「寝ても疲れが取れない」「夜中に何度も目が覚める」などの睡眠トラブルを抱えています。
睡眠は心身の健康にとって欠かせないものであり、免疫力の維持、記憶の整理、ホルモンバランスの調整、自律神経の安定など、さまざまな生理的機能に密接に関わっています。
実際に、慢性的な睡眠不足は生活習慣病やうつ病のリスクを高める要因とされており、厚生労働省が掲げる「健康日本21(第三次)」においても、睡眠に関する明確な目標が設定されています。
また、日本はOECD加盟国の中でも特に平均睡眠時間が短く、「世界一寝ていない国」とも言われています。
この背景には、仕事や学業のストレス、スマートフォンなどのデジタル機器の使用増加、生活習慣の乱れなど複数の要因が存在します。
この記事では、最新の研究やガイドラインを参考に、毎日を快適に過ごすための“良質な睡眠”の取り方をわかりやすく解説します。
忙しい人でも実践できる具体的な方法を紹介するので、ぜひ今日から取り入れてみてくださいね。
睡眠時間は何時間必要?
必要な睡眠時間は年齢や個人差によって異なりますが、一般的に以下のように推奨されています。
- 成人(18〜64歳):7〜9時間
- 高齢者(65歳以上):7〜8時間
- 思春期:8〜10時間
- 小児:9〜12時間
アメリカ睡眠財団(NSF)や日本睡眠学会などのデータでは、睡眠時間が6時間未満や9時間超では、認知機能・心血管リスクが上昇する傾向があると報告されています。
また、睡眠の“量”よりも“質”の方が重要であり、ただ長く眠るだけでは健康効果が得られないことも。
翌朝のスッキリ感・熟睡感を基準に、自分にとって適切な睡眠時間を探ることがポイントです。
質の良い睡眠をとるためには?
良質な睡眠のためには、環境・生活習慣・メンタルケアの3つを整えることが重要です。

【1】環境を整える
- 室温は15.5~18.3℃が理想
- 遮光カーテンやアイマスクで光を遮断
- 騒音対策に耳栓や静音マット
【2】生活習慣を見直す
- 日中にしっかり日光を浴びる
- 適度な運動(特に夕方まで)を継続
- 寝る前2時間はスマホやTVを控える
【3】就寝前のリラックス法
- ぬるめの入浴で深部体温を調整
- 音楽療法や深呼吸で副交感神経を優位に
- カフェイン・アルコールは控える
また、慢性的な不眠や寝つきの悪さが続く場合は、CBT-I(認知行動療法)などの専門的な介入も検討する価値があります。
昼間の行動で夜間の睡眠は変わる?
日中の過ごし方が夜の睡眠に大きく影響することは、数多くの研究で明らかになっています。
特に体内時計(サーカディアンリズム)との関係が深く、昼間の光・運動・活動量が睡眠の質に直結します。

【1】朝の光を浴びる
- 朝起きたらカーテンを開けて太陽光を浴びることで体内時計がリセットされ、夜に自然な眠気が訪れやすくなります。
- 目安は起床後1時間以内に15〜30分、外光に当たること。
【2】日中の活動を増やす
- デスクワーク中心の生活では軽いウォーキングやストレッチなどを意識的に取り入れると、夜の寝つきが改善します。
- 日中の適度な疲労感は快眠に役立ちます。
【3】昼寝の時間をコントロール
- 昼寝は20〜30分以内、午後3時までにとどめることで、夜の入眠に悪影響を与えにくくなります。
- 長すぎる昼寝は、かえって夜の睡眠を妨げるので注意が必要です。
【4】夕方以降の行動にも注意
- 夕食は就寝2〜3時間前までに済ませるのが理想です。
- カフェインは夕方以降控えることで、入眠を妨げません。
このように、昼間の習慣を整えることが、夜間の自然な眠りを引き寄せるカギになります。
日々の行動を少し意識するだけで、睡眠の質が驚くほど変わることを実感できるでしょう。
食事と嗜好品は睡眠に影響する?
食事のタイミングや内容、またカフェインやアルコールといった嗜好品は、睡眠の質に大きく影響します。
就寝前の行動が、脳と体の“休息モード”を妨げるか整えるかの分かれ道になります。

【1】就寝前の食事は軽めに
- 就寝2〜3時間前までに夕食を済ませるのが理想です。
- 脂っこい食事や消化に時間がかかる食べ物は、胃腸の活動を活発にし、眠りが浅くなります。
【2】カフェインの摂取タイミング
- カフェイン(コーヒー・緑茶・エナジードリンク)は、摂取後5〜7時間程度作用が続きます。
- 午後3時以降のカフェイン摂取は控えるのがベターです。
【3】アルコールは眠りを妨げる?
- アルコールは寝つきを良くするように思われがちですが、中途覚醒を増やし、深い睡眠を妨げることが知られています。
- とくに就寝直前の飲酒は避けましょう。
【4】睡眠を助ける食材とは?
- トリプトファン(セロトニンの材料):大豆製品、乳製品、ナッツ類
- マグネシウム(神経を落ち着ける):バナナ、アーモンド、ほうれん草
- メラトニン含有食材:キウイ、タルトチェリー、玄米
これらの食材を日常的に取り入れることで、自然な眠気を促し、睡眠の質向上に役立ちます。
就寝前のルーティンが睡眠を左右する?
就寝前の過ごし方は、眠りの質を大きく左右します。
“眠る準備”を毎晩同じように繰り返すことで、脳に「これから寝る時間だ」と認識させることができるのです。

【1】ぬるめの入浴で体温調整
- 就寝1〜2時間前に38〜40℃のお風呂に15分程度つかると、深部体温が一時的に上がった後に低下し、眠気を促します。
- シャワーだけで済ませがちな方も、週数回は湯船に浸かると効果的です。
【2】ブルーライトを避ける
- スマホやパソコン、テレビなどのブルーライトはメラトニン分泌を抑制します。
- 就寝1〜2時間前には電子機器の使用を控え、本や紙のノートなどアナログな活動に切り替えるのが理想です。
【3】リラックスする習慣を作る
- ゆったりとした音楽、アロマ、軽いストレッチ、深呼吸、瞑想など
- 毎日同じリラックス法を習慣化すると、眠気を引き出す“スイッチ”になります。
【4】照明は徐々に暗く
- 寝る1時間前からは暖色系の間接照明に切り替えると、副交感神経が優位になり、自然な眠気が訪れます。
このようなルーティンを取り入れることで、就寝前の心身がリラックス状態に導かれ、寝つきがよくなり、深い睡眠を得やすくなります。
不眠には認知行動療法(CBT‑I)が効く?
睡眠薬に頼らず、不眠症を根本から改善する方法として注目されているのが、認知行動療法 for 不眠(CBT‑I:Cognitive Behavioral Therapy for Insomnia)です。
日本睡眠学会でも第一選択の治療法として推奨されています。

【1】CBT‑Iの基本構成
- 刺激制御法:ベッド=眠る場所という条件付けを再学習
- 睡眠制限法:睡眠効率を高めるために、就床時間を制限する
- 認知再構成法:「眠れなければだめ」といった非合理な思考を修正
- リラクゼーション技法:筋弛緩法、呼吸法、瞑想など
【2】CBT‑Iはどこで受けられる?
- 医療機関(睡眠外来、心療内科、精神科)
- オンラインプログラム(アプリや遠隔診療)
- 専門カウンセラーによる個別指導
【3】効果とエビデンス
- 複数のメタ分析で、CBT‑Iは睡眠薬と同等以上の効果があることが確認されています。
- 副作用がなく、長期的な改善が見込める点も大きな利点です。
慢性的な不眠に悩む方は、まずは専門医に相談し、CBT‑Iの導入を検討してみてください。薬に頼らず、睡眠の質を根本から改善する有効な手段です。
睡眠不足は太るって本当?
「睡眠不足は太る」とよく言われますが、これは医学的にも証明されています。
慢性的な睡眠不足は肥満・代謝異常・生活習慣病のリスクを高めることがわかっています。

【1】ホルモンバランスの乱れ
- 睡眠不足により、食欲抑制ホルモン(レプチン)が減少し、食欲刺激ホルモン(グレリン)が増加します。
- 結果的に、空腹感が強くなり、過食や間食が増える傾向に。
【2】インスリン抵抗性の上昇
- 短時間睡眠を続けると、インスリンの働きが低下し、血糖コントロールが悪化します。
- これが糖尿病や脂肪蓄積の原因となることも。
【3】活動量の低下と悪循環
- 日中の眠気により活動量が減少し、エネルギー消費が低下します。
- また疲労感から甘いものを欲しやすくなり、体重増加に繋がりやすくなります。
【4】研究データからの裏付け
- アメリカの大規模調査では、毎晩5時間未満の睡眠を続けている成人は、7〜8時間眠る人に比べて肥満率が50%以上高いというデータも。
- 日本国内の調査でも、睡眠時間が短い人ほどBMIが高くなる傾向が確認されています。
このように、睡眠は“体重管理”にも深く関係しており、ダイエットを成功させたいなら、まずはしっかり眠ることが大前提となります。
おすすめの睡眠改善グッズはある?
睡眠の質を高めるために、市販のサポートグッズを活用するのも有効な手段です。快適な睡眠環境を整えるための補助ツールとして、以下のようなグッズが人気です。
【1】アイマスク・耳栓
- 光や音による刺激を遮断し、眠りに集中しやすくします。
- 特に旅行時や昼寝時にも重宝されます。
【2】高機能マットレス・枕
- 体圧分散マットレスは、身体への負担を減らし、深い眠りを促進します。
- 自分の体型・寝姿勢に合った枕を選ぶことで、いびきや肩こりの予防にも。
【3】アロマディフューザー・入浴剤
- ラベンダーやカモミールなどの香りは、リラクゼーションを促します。
- 就寝前の入浴にバスソルトやアロマ入浴剤を使うのもおすすめ。

【4】睡眠記録デバイス(ウェアラブル)
- スマートウォッチや睡眠トラッカーで、睡眠時間・中途覚醒・深睡眠の割合を可視化。
- 日々のデータを蓄積することで、自分の睡眠傾向と改善点が明確になります。
【5】ノイズマシン・ヒーリング音楽
- ホワイトノイズや自然音などの環境音が、雑音を打ち消しながらリラックスを促進します。
- Bluetoothスピーカーや睡眠専用音楽アプリも便利です。
自分に合ったグッズを見つけて、継続的に活用することが、睡眠の質の底上げに繋がります。必要に応じて複数を組み合わせてみましょう。
眠剤は使っても大丈夫?
睡眠薬(眠剤)は、不眠症の治療において有効な手段のひとつです。
ただし、依存や副作用、長期使用のリスクもあるため、正しい知識と使い方が大切です。

【1】主な睡眠薬の種類
- ベンゾジアゼピン系(BZ系):作用が強く即効性があるが、依存・耐性リスクが高め
- 非ベンゾジアゼピン系(Z薬):比較的副作用が少なく、高齢者にも使いやすい
- メラトニン受容体作動薬:体内リズムに働きかけ、習慣性が少ない
- オレキシン受容体拮抗薬:覚醒系を抑える新しいタイプで副作用も比較的少ない
【2】使用時の注意点
- 医師の処方に従い、決して自己判断で増減・中止しない
- アルコールとの併用は絶対NG(呼吸抑制の危険)
- 高齢者や多剤併用中の方は転倒・せん妄リスクに注意
【3】眠剤に頼りすぎない工夫
- 眠剤はあくまで一時的な補助と考え、CBT-Iや生活習慣改善を並行して実施
- 短期間での減量・中止が望ましいため、医師と相談しながら慎重に
どうしても眠れない時の選択肢として眠剤は有用ですが、本来の目的は「自然な睡眠リズムの再構築」です。
薬に頼りすぎず、根本的な改善を目指す姿勢が大切です。
具体的な症例と実践例
実際に睡眠に悩んでいた人たちが、どのような背景や症状を持ち、どんな工夫で改善したのか、より詳細な症例を紹介します。
個人差はありますが、改善のヒントが見つかるはずです。

【症例1】30代女性・事務職・慢性的な入眠困難
- 背景:デスクワーク中心で運動不足、仕事のストレスにより毎晩寝つきに1時間以上かかる状態が半年以上続く。休日は昼過ぎまで寝てしまい、リズムが乱れがち。
- 対策:毎朝7時に起床し、15分のウォーキングを実施。夕方以降のカフェイン摂取を中止し、就寝前1時間はスマホ・テレビを一切使用せず、読書とストレッチの習慣を開始。
- 結果:1週間で寝つきが平均20分以内に短縮。3週間後には途中覚醒も減少し、睡眠満足度が「3/10→8/10」に改善。
【症例2】40代男性・営業職・睡眠リズムの乱れと疲労感
- 背景:平日は帰宅が遅く、夜12時以降に就寝。週末は昼まで寝て「寝だめ」することでさらに体内時計が乱れ、月曜朝の体調が悪化。
- 対策:就寝・起床時間を「23時〜7時」に固定し、週末も同様に設定。睡眠日誌をつけ、毎朝の気分・集中力を記録。さらに睡眠アプリで睡眠効率を測定。
- 結果:2週間で朝の頭重感が軽減。1ヶ月後には「寝だめ」しなくても週明けの体調が安定。上司から「表情が明るくなった」と言われるように。
【症例3】50代女性・パート勤務・中途覚醒とホットフラッシュ
- 背景:更年期による体調変化で夜間の中途覚醒が1晩3回以上。ホットフラッシュによる不快感で再入眠できない状態。
- 対策:夕食のタンパク質バランスを調整し、トリプトファン・マグネシウム摂取を強化(豆腐・納豆・バナナ・アーモンド)。入浴は就寝90分前に設定し、照明を間接照明に変更。
- 結果:1ヶ月後には中途覚醒が3回→1回に減少。熟睡時間が約1時間増え、朝のだるさが大幅に改善。
【症例4】60代男性・退職後・眠剤依存と抑うつ傾向
- 背景:退職後の孤独感と生活リズムの崩れから睡眠障害が悪化。長年使用していたBZ系睡眠薬を毎晩服用していたが、効き目が薄れ、翌朝のふらつきや集中力低下を感じていた。
- 対策:睡眠専門医のもとで睡眠薬を非ベンゾ系に変更しつつ、CBT-I(刺激制御法・睡眠制限法)を週1で実施。昼間に地域のウォーキンググループに参加し、社会的接触も増加。
- 結果:2ヶ月後には眠剤使用量が半減し、CBT-I導入前よりも中途覚醒の回数が明らかに減少。朝の気分も安定し、家族との会話も増えるように。
これらの症例は、どれも生活習慣・思考・環境を段階的に見直すことで改善している点が共通しています。
睡眠に悩む人は、まずは小さなことから始めてみることが重要です。
まとめ
- 毎日決まった時間に寝起きする
- 環境・食事・日中活動を整える
- 入眠儀式を作って習慣化する
- 改善が難しいときはCBT‑Iを検討する
快適な眠りのために、今日からできることを一つずつ取り入れてみましょう!
よくある質問
Q:CBT‑Iはどこで受けられますか?
A:睡眠外来や心療内科、またはオンライン診療などで受けられます。
Q:寝る前のスマホがやめられません…
A:代わりに本を読む・ラジオを聴くなど、心を落ち着けるルーチンを持つのが効果的です。
Q:昼寝しても夜眠れますか?
A:30分以内の昼寝であれば、夜の睡眠に悪影響はほとんどありません。
参考文献








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