皆様こんにちは
薬局薬剤師のゆずまるです
ロコアテープをテーマにお話しを進めたいと思います。
今回は薬局内で疑問にあがった事例を紹介していきます。
ロコアテープと内服薬のNSAIDsの併用ケース。実際に処方があると判断に迷いますよね。
医師は時間をあけれてくれれば大丈夫だよとはいうものの、実際は何時間あけたらいいのだろうか?
今回はロコアテープを剥がしてからどのくらいで効果がなくなり、痛みが出始めるのかを考察しました。
実際の推奨された正しい使い方ではないかもしれないため、参考程度に見ていただけたらと思います。
どうしてロコアテープを調べたのか
ある日のゆずまるが所属していた調剤薬局内での出来事
ゆずまるさん
ロコアテープがでた患者さんが、自宅にある痛み止めを飲みたいって言ってて。
ああ、そうなんですね
たしか、基本的に併用はダメだって添付文書にかいてありましたよね
そうなの。でも先生は8時間開ければいいよって患者さんに伝えたみたいで。
本当にそうなのかな?
そうなんですね。。。
ロコアテープって長いこと体の中に残っている印象はありますよね。
調べてみましょうか
このような会話はじまり調べてみることになりました。
患者さんにも回答を保留にしているみたいですので急いで調べることにしました。
ロコアテープとは
ロコアテープは大正製薬と帝人ファーマが共同販売した経皮吸収型消炎鎮痛薬です
主成分はエスフルルビプロフェン40mgで1日1回貼付の変形性関節炎用の貼り薬です。
既存の外用剤フルルビプロフェン(商品名アドフィード、ゼポラスなど)の活性体(光学異性体;S体)であるエスフルルビプロフェンとハッカ油を配合した経皮吸収型のNSAIDsです。
基剤を工夫することでエスフルルビプロフェンを膏体中に溶解状態で高濃度かつ均一に分散させ、経皮吸収や標的組織への移行性を高めた製剤であると言われています
下記にロコアテープの特徴を簡易的にまとめました
- 変形性関節症における鎮痛・消炎に適応
- フルルビプロフェンのS体(活性体)
- 基剤を工夫することにより経皮吸収や標的組織への移行性を高めている
- 1日2枚までの使用制限あり
- 内服薬との併用は原則しないこと
ロコアテープは内服薬と同時服用してはならない!?
添付文書を見てみましょう
添付文書の用法用量の欄をみてみるとこのような記載があります
本剤 2 枚貼付時の全身曝露量がフルルビプロフェン経口剤の通常用量投与時と同程度に達することから、 1 日貼付枚数は 2 枚を超えないこと。
本剤投与時は他の全身作用を期待する消炎鎮痛剤との併用は可能な限り避けることとし、やむを得ず併用する場合に は、必要最小限の使用にとどめ、患者の状態に十分注意すること。
やっぱり内服薬との併用は基本的にダメですよね…
必要最小限という表記は気になりますが、基本的に併用はしないほうがよさそうですね
でもそうなると基本的に痛み止めは飲めないことになりますよね
風邪薬や頭痛の薬を併用するときや内服薬の解熱鎮痛剤へ切り替えるときはロコアテープ剥がして何時間あければ良いのでしょうか…
メーカーへ問い合わせ
とりあえず分からないことはメーカーに確認
主な返答内容は2点
- 頓用服用ならば問題ない
- 剥がしてから2日間間隔開けてください
間隔は2日間空けることで問題ないらしい
なぜロコアテープを2日間空ける?
2日間空ける必要があるのか考えてみたいと思います
私なりの考察なので参考程度にしてください
まずはロコアテープのインタビューフォームより数値を拾います
インタビューフォームから半減期、AUCデータを拾う
薬物動態の項目を参照すると
単回投与40mg(1枚)貼付時
剥がした後の半減期は8.6時間
反復投与時は半減期7.2時間
80mg(2枚)貼付時のデータ
ここから色々と紐解いていきます
剥がしたあと何時間で薬効が消える?半減期から考える
薬の成分が抜けるまでの期間は半減期からおおよそ求めることができます
半減期×5回分の時間=ほぼ体から抜けてる時間
と考えられます
※半減期とは、生体内に入った薬などの物質が、代謝や排泄などによって半分に減るまでに要する時間
半減期1回では1/2=50%
半減期2回では1/2×1/2=25%
このように考えていくと
半減期5回では1/2×1/2×1/2×1/2×1/2=1/32≒3%
と考えられます
今回のロコアテープの半減期は7〜8時間程度のため長めの8時間で考えると
8時間×5=40時間≒2日間
となります。
つまり、大体2日経過もすれば血中濃度がほぼゼロでかつ薬効も無い状態であると考えることができます。
恐らくメーカーがこういう返答をしたのはこのためでしょう
薬局内での会話
とりあえず半減期から考えるとだいたい2日くらいは間隔あけないとダメそうですよね
そうだよね
でも実際には完全に湿布の効果がなくなる前に痛み止め飲みたいよね
そしたらどのくらいで飲んだら良いのだろう
それに先生の真意も分からないし…
(……またやっかいなことを)
私に計算できるか分からないけどやってみますね
こうして少しつっこんだ所まで考えてみることになりました
ここから先は個人的な見解が含みますので参考程度にご覧ください
ロコアテープ考察第2弾〜剥がしたあとどれ位経過したら内服薬飲んでいいの?〜
とりあえずデータをまたインタビューフォームより拾う
先ほど調べたデータと足りなそうなデータを探しつつ、まずは分かっている範囲から紐解いていく
線形型である
主成分であるエスフルルビプロフェンの血中濃度をインタビューフォームから確認してみます
40mg と80mg の7日間連続投与後の Cmax と AUC0-∞の平均値を比較すると下記の表のようになる
Cmax | AUC | |
40mg | 1175.6 | 20800 |
80mg | 2710.0 | 47000 |
40→80mg増量で 何倍になってるか | 2.3倍 | 2.25倍 |
投与量が2倍になるとCmaxやAUCどちらも約2倍になっていますね
このことからロコアテープは容量に応じて血中濃度が増加する線形型の医薬品であることがわかります
薬理作用から考えても、ロコアテープはcoxの競合阻害薬であるため、血中濃度に比例した作用をすると考えて良さそうですね
用量設定試験の項目によると
インタビューフォームを見ていくと臨床治験における用量設定試験の結果がみれます。
椅子から立ち上がるときの痛みの変化量についての第二相用量設定試験のデータです
試験結果には10mg群、20mg群、40mg群と基剤群と少量でのデータ結果も載っています。
ここではどの用量なら効き目が出るのかが一番知りたいポイントです
表の下段の項目である95%信頼区間やP値を確認すると、10mg群と20mg群は基剤群との有意な差が見られず、40mgのみで有効であったことが分かります
仮説検定について
仮説検定は新薬の開発で薬の効き目を確かめるときに使います
帰無仮説:新薬の効き目と基剤群で効き目に差は見られない
対立仮説:新薬の方が基剤群より効き目が良い
として、主張したい説を対立仮説とし、帰無仮説を否定することで主張したい説である対立仮説を立証する方法
p値(P-Value)とは
p値とは、ある実験を繰り返し行い、そこから得られた結果がどの程度、仮説に対して整合しているかを示した指標です。
p値が小さいほど、あまり起こりえないことを意味します。
p値は0~1(0〜100%)の範囲の数値で、p値が有意水準以下の場合、帰無仮説を棄却し、対立仮説を採択します
有意水準は0.05(5%のズレ)を用いられることが多いため、一般的にp値が0.05以下であれば有意差があるということです
※5%程度のズレは仕方ないよねという考え方です
区間推定と信頼区間について
区間推定は、標本の統計量を元に、母集団の平均などを、幅(区間)を持たせて推定する統計学の手法です
母集団が大きくて全て測定するのが難しい場合でも、区間推定を使えば一部の標本データから母集団全体の平均などを推察することができます
例えば、農園Aのみかんの木一本あたり平均どのくらい実がなるかを調べたいので、木のいくつかを標本として調査した結果
農園Aのみかん木一つあたり平均個数は500個から600個であり、95%の確率でその範囲に収まることが分かった。
この様に母集団の統計値を区間と確率で表現します
500個から600個という範囲を信頼区間と言い、95%は信頼係数と言います
この推測を100回やったとき、5回くらいはこの予測(みかんの木一つからみかんが500〜600個できる)はハズレてしまう事がありますよと言うのが95%信頼区間になります
群間で比較をするとき
2 群の差の95%信頼区間が0(帰無仮説で設定した数値)を含まなければ、有意差があると結論されます
図を書いたのでそれを参考にしてみて下さい
ロコアテープの場合、10mg群と20mg群では0をまたいでいるため、有意差なし
40mgのみ0をまたいでいないため有意差ありと判断します
考察第2弾まとめ〜ロコアテープの効果感じなくなる時間は…
以上のことからロコアテープの効果を実感できなくなるのは20mg貼付時と同じ血中濃度のときだと推察できます
ロコアテープは線形型の薬剤ですので20mg投与時の血中濃度は40mgの血中濃度の半分の濃度になります。
ロコアテープ1枚貼付し剥がしてから、1回目の半減期(約8時間)を迎えると20mg貼付したときと同じ血中濃度になると考えられます
すなわち1枚貼付時は半減期1回分である8時間、2枚貼付時は半減期2回分の16時間経過すると、ロコアテープの効果も薄れていき、痛みが出始めるだろうと推察できます
理論上の結論はロコアテープを剥がしてから、約8時間で鎮痛効果は無くなることが分かります
ただし、すぐに内服薬を服用したら他の副作用が生じる可能性は否定できないでしょう
結論
ヤギさん、いろいろとデータを見てみましたが先生の8時間程度っていう意味はおおそらくこういったことじゃないでしょうか
上記の考察内容を伝える
ありがとう
こんなデータも探すと載っているんだね
インタビューフォームに載っていてよかったです。
理論上でも先生の言う8時間という数字も出ましたし。
実際に1日1枚で貼っているんですよね?
そうだと思う
処方箋の通りに使ってるはずだよ!
今患者さんに電話して聞いてみるね
(ふう、ひと段落ついたな)
もしもし、〇〇さんですか?
ロコアテープは剥がしたあともしばらくの間は薬の成分が残っているから飲み薬とは時間空けてほしいのだけど…
今は1日1枚だけですよね?
え?2枚貼っているの?
………
あとがき
実際にこういった悩ましいケースは現場ではよく見かけると思います
よく私は半減期5回分の考え方よく使っています
でも患者の立場で考えると薬の成分が完全に抜けきる前に飲みたいところですよね
久しぶりに統計学を思い返し、薬の効果判定の項目のデータを読み解きました
そしてロコアテープ
大きく1日2枚までと大きく書いてあるため、実際の処方は1日1枚であったとしても、「2枚までは貼れるなら貼ってしまおう」と患者自身で貼付枚数を勝手に増やしてしまうケースも少なくありません
定期的に確認は必要であると思うゆずまるでした
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