JACDSミステリーショッパーは何を見る?薬局・ドラッグストアの確認項目と患者対応を初心者向けに解説


- 前書き|ミステリーショッパーは「接客力」より「医薬品販売ルール」を見に来る
- この記事でわかること
- まず結論|ミステリーショッパーが見に来る可能性が高い項目
- JACDSのミステリーショッパーとは?超初心者向けに説明
- 「JACDSが来る」と聞いたときに混同しやすい3つの調査
- ミステリーショッパーが特に見そうなテーマ1|名札と資格者の区別
- ミステリーショッパーが特に見そうなテーマ2|医薬品の陳列
- ミステリーショッパーが特に見そうなテーマ3|濫用リスクのある医薬品への声かけ
- ミステリーショッパーが特に見そうなテーマ4|18歳未満・若年者への対応
- ミステリーショッパーが特に見そうなテーマ5|複数購入・大容量購入の理由確認
- ミステリーショッパーが特に見そうなテーマ6|一般従事者から資格者への引き継ぎ
- ミステリーショッパーが特に見そうなテーマ7|「説明はいらない」と言われたときの対応
- ミステリーショッパーが特に見そうなテーマ8|「家族の分も買いたい」と言われた場合
- ミステリーショッパーが特に見そうなテーマ9|販売してよい場合・見合わせる場合
- 患者向け対応|怒らせない・怖がらせない・でも確認は省かない
- 実践例1|咳止めを2個買おうとするお客さん
- 実践例2|若く見える人が風邪薬を買おうとする
- 実践例3|「眠れる薬がほしい」と相談された場合
- 実践例4|同じ人が短期間で何度も買いに来る場合
- 店長・管理薬剤師向け|ミステリーショッパー前に確認するチェックリスト
- まとめ|ミステリーショッパー対策は「普段の安全対応」を整えること
- 現場でそのまま使える患者対応テンプレート集
- よくある質問
- Q1. JACDSのミステリーショッパーは本当に来るのですか?
- Q2. ミステリーショッパーを見抜く方法はありますか?
- Q3. 一般従事者はどこまで説明してよいですか?
- Q4. お客さんが急いでいる場合は確認を省略してもよいですか?
- Q5. 18歳未満かどうか微妙な場合、年齢確認しても失礼になりませんか?
- Q6. 複数購入を希望されたら、必ず販売を断るべきですか?
- Q7. 咳止めや風邪薬は、どの商品でも確認が必要ですか?
- Q8. レジが混んでいるときも資格者を呼ぶべきですか?
- Q9. 販売を断るとクレームになりそうで不安です。どうしたらよいですか?
- Q10. 店舗スタッフ全員に教育するには、何から始めればよいですか?
- Q11. ミステリーショッパー対策をすると、売上が下がりませんか?
- Q12. 自分の職場の教育体制が不安です。どうすればよいですか?
- 職場環境・学び直し・資格取得へ
- この記事の最終チェックリスト
- 参考文献
前書き|ミステリーショッパーは「接客力」より「医薬品販売ルール」を見に来る
JACDSとは、一般社団法人日本チェーンドラッグストア協会のことです。ドラッグストア業界における医薬品販売、登録販売者制度、セルフメディケーション、適正販売などに関わる団体です。 店舗で「JACDSのミステリーショッパーが来るらしい」と聞くと、接客態度や笑顔、あいさつだけを評価されるように感じるかもしれません。しかし、薬局・ドラッグストアの医薬品売場で特に重要なのは、薬機法に基づく医薬品販売ルールを守れているかです。 厚生労働省の医薬品販売制度実態把握調査では、一般消費者の立場の調査員が店舗を訪問し、医薬品の陳列状況、店内掲示、名札、医薬品販売時の対応などを確認しています。令和6年度調査では、薬局・店舗販売業あわせて3,028件の店舗販売調査が行われています。[1] さらに、令和8年5月1日からは、従来の「濫用等のおそれのある医薬品」対策をさらに実効性のあるものにするため、「指定濫用防止医薬品」に関する販売制度が始まっています。JACDS版ガイドラインでは、指定濫用防止医薬品の販売において、薬剤師・登録販売者がゲートキーパーとして声かけ、情報提供、状況確認、頻回購入・多量購入の防止に努めることが重要とされています。[2]
この記事でわかること
- JACDSのミステリーショッパーで見られやすい項目
- 厚労省の医薬品販売制度実態把握調査で確認される内容
- 指定濫用防止医薬品で注意すべき声かけ
- 患者さん・お客さんに嫌がられにくい説明方法
- レジ担当、一般従事者、登録販売者、薬剤師の役割分担
- 店長・管理薬剤師が準備すべきチェックリスト
- ミステリーショッパー対策記事で収益化する導線設計
この記事は、超初心者でもわかるように、難しい法律用語をできるだけかみ砕いて説明します。ただし、医薬品販売ルールは店舗形態、自治体指導、会社マニュアル、最新通知によって運用が変わることがあります。実務では、必ず勤務先の手順書、管理薬剤師・店舗管理者の指示、所管自治体の指導を確認してください。

まず結論|ミステリーショッパーが見に来る可能性が高い項目
最初に、現場で押さえるべき結論をまとめます。
| 見られやすい項目 | 具体的に見られる内容 | 初心者が意識すること |
|---|---|---|
| 名札・資格者の区別 | 薬剤師、登録販売者、一般従事者が区別できるか | 名札を正しく着用する |
| 医薬品の陳列 | 指定濫用防止医薬品、第一類、要指導などが適切に陳列されているか | 勝手に棚移動しない |
| 声かけ | 購入前に必要な確認ができているか | 「確認させてください」を自然に言う |
| 年齢確認 | 若年者、18歳未満が疑われる場合の確認 | 迷ったら資格者に引き継ぐ |
| 複数購入・大容量購入 | 購入理由、他店購入状況、適正使用目的の確認 | 理由を聞かずに販売しない |
| 情報提供 | 書面、フリップ、POP、包装表示などを使って説明したか | 説明ツールの場所を覚える |
| 理解確認 | 説明後に「わかりましたか」「質問はありますか」を確認したか | 説明して終わりにしない |
| 販売謝絶 | 適正使用が確認できない場合に販売を止められるか | 一人で抱えず資格者・責任者へ |
JACDSのミステリーショッパーとは?超初心者向けに説明


ミステリーショッパーとは、調査員が一般のお客さんのように来店し、通常の買い物や相談の流れの中で、店舗スタッフの対応を確認する調査方法です。 ドラッグストア・薬局の場合は、飲食店やアパレルの覆面調査とは違い、単純な接客点数だけではなく、医薬品販売制度に沿った対応ができているかが重要になります。 たとえば、以下のような場面が想定されます。
- 咳止めを複数個買おうとする
- 風邪薬をまとめて買おうとする
- 若く見える人が対象商品を買おうとする
- 第1類医薬品について相談する
- 指定第2類医薬品や濫用リスクのある成分を含む商品を買おうとする
- 「急いでいるので説明はいらない」と言う
- 「家族の分も買いたい」と言う
- 「いつも使っているから大丈夫」と言う
このとき、店舗スタッフが何も確認せず販売してしまうと、適正販売の面で問題になる可能性があります。
「JACDSが来る」と聞いたときに混同しやすい3つの調査
現場では「JACDSが来る」「覆面調査が来る」「保健所が来る」「本部チェックが来る」など、いろいろな言い方がされます。初心者さんは混乱しやすいので、まず種類を分けて考えましょう。
| 種類 | 誰が見るか | 見られやすい内容 | 現場の対応 |
|---|---|---|---|
| ミステリーショッパー・覆面調査 | 調査員 | 普段の接客、声かけ、販売時確認、資格者への引き継ぎ | 普段通り、必要事項を確認する |
| 行政の立入検査 | 自治体、保健所など | 許可、掲示、帳簿、構造設備、管理体制、手順書 | 管理者・責任者が書類も含め対応 |
| 本部・社内チェック | 本部、エリア担当、社内監査 | 会社マニュアル、レジ運用、売場、教育記録 | 社内ルール通りに運用する |
JACDSの過去資料では、医薬品情報提供の声かけ強化キャンペーンにおいて、覆面調査や立入調査の時期を考慮した記載がありました。つまり、業界全体としても「店頭での声かけ」「対面での情報提供」「濫用のおそれのある医薬品への対応」は重要視されてきたテーマです。[3]
- 覆面調査なら、普段の売場対応が見られる
- 立入検査なら、掲示・帳簿・手順書も見られる
- 社内監査なら、会社マニュアル通りにできているか見られる
ミステリーショッパーが特に見そうなテーマ1|名札と資格者の区別
まず見られやすいのが、スタッフの名札です。 厚生労働省の令和6年度医薬品販売制度実態把握調査では、「従事者の名札等により専門家の区別ができたか」という項目があり、薬局・店舗販売業の店舗販売調査で確認されています。[1] なぜ名札が大切かというと、お客さんから見ると、薬剤師、登録販売者、一般従事者の違いがわかりにくいからです。
- 薬剤師の名札が正しく表示されているか
- 登録販売者の名札が正しく表示されているか
- 研修中の登録販売者の表示が会社ルール通りか
- 一般従事者が医薬品の専門家のように見えていないか
- 名札が裏返っていないか
- 白衣や制服と資格表示が矛盾していないか
初心者さんがまずやるべきことは、とてもシンプルです。
- 出勤時に名札を確認する
- 名札が裏返っていたら直す
- 資格区分が古いままになっていないか確認する
- 一般従事者は、医薬品の判断を一人でしない
- わからない相談は「薬剤師・登録販売者に確認します」とつなぐ
名札は、医薬品販売における「誰が説明したか」を明確にする基本中の基本です。
ミステリーショッパーが特に見そうなテーマ2|医薬品の陳列


医薬品の陳列は、ミステリーショッパーでも行政チェックでも見られやすい項目です。 JACDS版の指定濫用防止医薬品ガイドラインでは、第二類医薬品や第三類医薬品に該当する指定濫用防止医薬品について、顧客の手の届かない場所への陳列、または情報提供設備から7メートル以内で、薬剤師・登録販売者を継続的に配置する方法などが示されています。[2]
| 陳列方法 | 具体例 | 注意点 |
|---|---|---|
| 手の届かない場所 | 空箱陳列、カウンター内保管、鍵付きケース | 実物を自由に取れる状態にしない |
| 情報提供設備から7m以内 | 資格者の目が届く範囲の棚 | 柱・高い棚・死角の裏側は避ける |
| レジ・カウンター連動 | 空箱を持参して資格者が実物と交換 | 一般従事者だけで販売完結しない |
初心者さんがやりがちなミスは、「棚が空いたから、とりあえず近くに補充する」ことです。指定濫用防止医薬品、要指導医薬品、第1類医薬品、指定第2類医薬品などは、会社の売場ルールや法令上の陳列ルールがあります。
ミステリーショッパーが特に見そうなテーマ3|濫用リスクのある医薬品への声かけ
現在、もっとも見られやすいテーマのひとつが、濫用リスクのある医薬品への対応です。 JACDS版ガイドラインでは、指定濫用防止医薬品の対象成分として、エフェドリン、コデイン、ジヒドロコデイン、ジフェンヒドラミン、デキストロメトルファン、プソイドエフェドリン、ブロモバレリル尿素、メチルエフェドリンが示されています。外用剤を除く医薬品が対象となります。[2] これらの成分は、風邪薬、咳止め、鼻炎薬、解熱鎮痛薬、睡眠改善薬など、身近なOTC医薬品に含まれることがあります。
- 咳止め売場
- 風邪薬売場
- 鼻炎薬売場
- 解熱鎮痛薬売場
- 睡眠改善薬売場
- 鎮静成分を含む一部OTC売場
ミステリーショッパーが来た場合、以下のような買い方をする可能性があります。
- 同じ咳止めを2個買おうとする
- 複数の風邪薬をまとめて買おうとする
- 若く見える人が咳止めを買おうとする
- 「家族の分も」と言って複数購入しようとする
- 「前にも買ったから説明はいらない」と言う
- 質問にあいまいに答える
- 急いでいる雰囲気を出して確認を省かせようとする
ここで大切なのは、疑うような言い方ではなく、全員に同じルールとして確認することです。
患者さん・お客さんに嫌がられにくい声かけ例
このように、相手を疑うのではなく、「ルールとして」「安全のために」「皆さまにお願いしている確認です」という形にすると、患者さん・お客さんも受け入れやすくなります。
ミステリーショッパーが特に見そうなテーマ4|18歳未満・若年者への対応
指定濫用防止医薬品では、18歳未満への対応が重要になります。 JACDS版ガイドラインでは、18歳未満に対しては対面等による情報提供が必要であり、大容量製品または複数個となる数量については販売できないと整理されています。また、若年者で18歳未満であることが疑われる場合には、身分証明書等による年齢確認に努めることも示されています。[2] つまり、若く見える人が対象医薬品を買おうとしたときに、何も確認せず販売するのは危険です。
| 場面 | 対応の考え方 | 声かけ例 |
|---|---|---|
| 明らかに成人 | 通常の確認へ進む | 「使用される方と症状を確認します」 |
| 若く見える | 年齢確認を検討 | 「年齢確認をお願いする場合がございます」 |
| 18歳未満 | 大容量・複数個は販売不可 | 「法律上、この数量では販売できません」 |
| 年齢確認できない | 小容量1個の提案や資格者判断 | 「確認できる範囲で販売方法を相談します」 |
ミステリーショッパーが特に見そうなテーマ5|複数購入・大容量購入の理由確認
次に大切なのが、複数購入・大容量購入の理由確認です。 JACDS版ガイドラインでは、18歳以上の人が大容量製品または複数個を購入する場合、その理由を確認すること、適正な使用目的であることを確認することが示されています。また、疑問点が解消されない場合には販売を見合わせ、販売が適当でないと判断した場合は販売を謝絶するとされています。[2] ここは、ミステリーショッパーで非常に見られやすいポイントです。
- 誰が使うのか
- 何の症状に使うのか
- いつから症状があるのか
- 他の薬を使っていないか
- 他店でも同じような薬を買っていないか
- なぜ複数個必要なのか
- 受診が必要な状態ではないか
ただし、聞き方には注意が必要です。「なんでそんなに買うんですか?」と詰問調に聞くと、患者さん・お客さんは不快に感じます。
よい聞き方
「こちらのお薬は、複数購入の場合に使用目的を確認することになっています。ご家族分でしょうか?それともご本人が継続して使う予定でしょうか?」
避けたい聞き方
「こんなに買って何に使うんですか?」
さらに安全な聞き方
「症状によっては、同じ薬を続けるより受診をおすすめした方がよい場合があります。何日くらい症状が続いていますか?」
ミステリーショッパーが特に見そうなテーマ6|一般従事者から資格者への引き継ぎ


ミステリーショッパーでは、レジ担当者が対象商品をスキャンしたとき、資格者を呼ぶかどうかも見られやすいポイントです。 JACDS版ガイドラインでは、好取組事例として、指定濫用防止医薬品をスキャンすると画面にポップアップが表示されるレジシステム、一般従事者が薬剤師・登録販売者を呼ぶことができる仕組み、インカム等が挙げられています。[2] 初心者さんは、対象商品をすべて暗記する必要はありません。まずは、次の動きを徹底しましょう。
- レジアラートが出たら止まる
- 対象商品か迷ったら資格者を呼ぶ
- お客さんに「確認が必要な商品です」と伝える
- 説明を自分だけで完結しない
- 資格者が来るまで販売を進めない
レジで使える一言
「こちらの商品は、販売時に薬剤師または登録販売者から確認が必要です。少々お待ちください。」 この一言があるだけで、一般従事者が勝手に販売した印象を避けられます。
- JACDSのミステリーショッパー対策は、調査員を見抜くことではない
- 普段から医薬品販売ルールに沿った対応をすることが最重要
- 名札、資格者区分、医薬品陳列は基本項目
- 指定濫用防止医薬品では、声かけ、年齢確認、複数購入理由の確認が重要
- 一般従事者は自己判断せず、薬剤師・登録販売者に引き継ぐ
- 患者さんには「安全のため」「ルールとして」「皆さまにお願いしている確認です」と伝えると角が立ちにくい
ミステリーショッパーが特に見そうなテーマ7|「説明はいらない」と言われたときの対応


ミステリーショッパーが来た場合、「説明はいらない」「急いでいる」「前に買ったことがある」と言って、スタッフが確認を省略するかを見る可能性があります。 特に指定濫用防止医薬品では、購入者の状況確認、使用目的の確認、適正使用に必要な情報提供が重要です。JACDS版ガイドラインでも、薬剤師・登録販売者がゲートキーパーとして、過量服薬や頻回購入などのリスクに気づき、必要な確認・情報提供を行うことが示されています。[2]
患者さん・お客さんに嫌がられにくいトーク例
| お客さんの言葉 | NG対応 | おすすめ対応 |
|---|---|---|
| 説明いらないです | 「でも決まりなので聞いてください」 | 「ありがとうございます。安全確認のため、短く2点だけ確認させてください」 |
| 急いでます | 「じゃあ大丈夫です」 | 「お急ぎのところ恐れ入ります。こちらは販売時確認が必要なお薬ですので、要点だけ確認します」 |
| いつも飲んでます | 「ではそのままお会計します」 | 「いつもご使用ですね。念のため、今回は何日分くらいのご予定か確認させてください」 |
| 前にも買いました | 「はい、わかりました」 | 「ありがとうございます。体調や併用薬が変わっていないかだけ確認しますね」 |
ミステリーショッパーが特に見そうなテーマ8|「家族の分も買いたい」と言われた場合
「家族の分も買いたい」は、現場でよくある言葉です。 この言葉自体が悪いわけではありません。実際に家族が風邪をひいている、子どもと親の分を買いたい、週末に備えたいというケースもあります。 しかし、指定濫用防止医薬品や濫用等のおそれのある医薬品では、複数購入・頻回購入・大容量購入が問題になることがあります。そのため、「家族の分です」と言われたら、そのまま販売するのではなく、誰が・何の症状で・どのくらい使うのかを確認することが大切です。
確認すること
- 使用する人は本人か、家族か
- 使用する人の年齢
- 症状の内容
- 症状が始まった時期
- 現在使っている薬の有無
- 医療機関を受診しているか
- なぜ複数個必要なのか
- 他店でも同じような薬を購入していないか
自然な聞き方
少し注意が必要な返答
| お客さんの返答 | 注意点 | 次の対応 |
|---|---|---|
| 家族全員で使います | 人数、年齢、症状が不明 | 何名分か、年齢、症状を確認 |
| 友達に頼まれました | 使用者の状態が確認しにくい | 使用者本人への確認を提案 |
| 詳しくはわかりません | 適正使用か判断しにくい | 販売見合わせや小容量提案を検討 |
| とにかく多めにほしい | 多量購入の理由が不明 | 資格者が理由確認し、必要に応じて謝絶 |
ミステリーショッパーが特に見そうなテーマ9|販売してよい場合・見合わせる場合


医薬品販売では、「買いたいと言われたら必ず売る」わけではありません。 JACDS版ガイドラインでは、購入希望者の状況を確認し、適正な使用目的であることに疑問がある場合には販売を見合わせ、販売が適当でないと判断した場合には販売を謝絶する考え方が示されています。[2]
販売しやすいケース
| ケース | 確認できていること | 対応 |
|---|---|---|
| 本人が短期間の咳で使用 | 年齢、症状、用法用量、併用薬に大きな問題なし | 適正使用を説明して販売 |
| 家族1名分を代理購入 | 使用者の年齢・症状が明確 | 必要事項を説明して販売 |
| 旅行用に1個だけ購入 | 予備目的で少量、過量使用の疑いが低い | 使用時の注意を説明 |
見合わせを検討するケース
| ケース | 気になる点 | 対応の例 |
|---|---|---|
| 理由があいまいな複数購入 | 適正使用か判断しにくい | 小容量1個にする、販売見合わせ |
| 頻繁に同じ商品を購入 | 過量使用、依存、症状悪化の可能性 | 責任者へ共有、受診勧奨 |
| 18歳未満が複数個希望 | 制度上、販売できない数量に該当する可能性 | 大容量・複数個は販売しない |
| 使用者が不明 | 年齢、症状、禁忌確認ができない | 本人確認または販売見合わせ |
| 受診が必要そうな症状 | 高熱、長引く咳、息苦しさ、血痰、強い眠気など | 医療機関受診を提案 |
販売を見合わせるときの言い方
販売を断る場面では、言葉選びがとても重要です。相手を否定する言い方ではなく、医薬品の安全性と制度上の確認を理由に説明します。
患者向け対応|怒らせない・怖がらせない・でも確認は省かない
患者さん・お客さんへの対応では、次の3つを意識するとトラブルを減らしやすくなります。
- 理由を先に言う:「安全確認のため」「販売時確認が必要な薬のため」
- 短く聞く:質問は一度に詰め込まず、必要な順番で確認する
- 代替案を出す:小容量、別成分、受診勧奨、相談窓口などを提案する
患者さんが不機嫌になったときの対応
現場では、確認をすると不機嫌になるお客さんもいます。特に急いでいる人、何度も同じ薬を買っている人、以前は何も聞かれずに買えた人は、「なぜ今日は聞かれるの?」と感じることがあります。 このときに大切なのは、スタッフ個人の判断ではなく、店舗として同じルールで確認していると伝えることです。
| 患者さんの反応 | 避けたい対応 | おすすめ対応 |
|---|---|---|
| 前は聞かれなかった | 「前の人が間違っています」 | 「現在は安全確認をより丁寧に行っています」 |
| 面倒くさい | 「決まりなので仕方ないです」 | 「短く確認しますので、ご協力お願いします」 |
| 早くして | 焦って確認を省く | 「要点だけ確認してすぐご案内します」 |
| なんで売れないの | 「そういうルールです」だけで終わる | 「安全に使用できる確認が取れないためです。代わりにこちらの方法をご提案します」 |
実践例1|咳止めを2個買おうとするお客さん


場面設定
- お客さん:30代くらい
- 商品:咳止めを2個
- 発言:「家族も咳が出ているので、2個ください」
- 状況:レジが少し混んでいる
対応の流れ
- レジ担当が対象商品であることに気づく
- 薬剤師・登録販売者に引き継ぐ
- 使用者、症状、年齢、使用目的を確認する
- 適正使用が確認できれば販売
- あいまいな場合は小容量・1個販売・受診勧奨・販売見合わせを検討する
実際のトーク
この対応のポイント
- 複数購入の理由を確認している
- 使用者が本人と家族であることを確認している
- 症状と受診勧奨の必要性を確認している
- 眠気など注意点を説明している
- 一般従事者だけで販売完結していない
実践例2|若く見える人が風邪薬を買おうとする
場面設定
- お客さん:高校生か大学生くらいに見える
- 商品:指定濫用防止医薬品に該当する可能性のある風邪薬
- 発言:「これください」
- 状況:年齢が18歳以上か判断しにくい
18歳未満への指定濫用防止医薬品販売では、対面等による確認・情報提供が重要です。また、18歳未満に大容量製品または複数個となる数量を販売しないこと、18歳未満であることが疑われる場合は年齢確認に努めることがガイドラインで示されています。[2]
実際のトーク
18歳未満だった場合の対応
- 大容量や複数個の販売は避ける
- 症状、年齢、併用薬を確認する
- 必要に応じて保護者への相談を促す
- 症状が重い場合は医療機関受診をすすめる
- 販売できる場合でも、用法用量を丁寧に説明する
実践例3|「眠れる薬がほしい」と相談された場合
睡眠改善薬には、ジフェンヒドラミンなどの成分が含まれる製品があります。ジフェンヒドラミンは、指定濫用防止医薬品の対象成分として示されています。[2]
場面設定
- お客さん:40代
- 相談:「眠れる薬がほしい」
- 状況:「最近ずっと眠れない」と話している
確認すること
- 一時的な不眠か、長期間続く不眠か
- 日中の眠気や生活への支障
- 他に服用している薬
- アルコールとの併用予定
- 妊娠・授乳の有無
- 緑内障、前立腺肥大、排尿困難などの確認が必要な状態
- 医療機関受診の必要性
実際のトーク
この対応のポイント
- 市販薬の対象が「一時的な不眠」であることを伝えている
- 長期間続く不眠を受診勧奨につなげている
- ただ売るのではなく、患者さんの背景を確認している
- 眠気、併用、基礎疾患など安全確認につなげている
実践例4|同じ人が短期間で何度も買いに来る場合
指定濫用防止医薬品の販売では、頻回購入への対応も重要です。 JACDS版ガイドラインでは、頻回購入・多量購入が疑われる購入希望者への対応手順、社内での情報共有、レジシステムや記録の活用などが好取組事例として示されています。[2]
場面設定
- 同じお客さんが数日おきに咳止めを購入
- 毎回「自分用」と説明
- 症状は詳しく話したがらない
- 店舗スタッフの間で気になっている
対応の流れ
- 前回購入の情報を店舗内で共有する
- 資格者が対応する
- 症状が続いている理由を確認する
- 過量使用や不適切使用が疑われる場合は販売を見合わせる
- 必要に応じて受診勧奨や相談窓口を案内する
実際のトーク
販売見合わせのトーク
このような場合、スタッフ個人だけで抱え込まないことが重要です。店舗内で情報共有し、管理薬剤師、店舗管理者、エリア担当、会社の医薬品販売管理部門などに相談しましょう。
店長・管理薬剤師向け|ミステリーショッパー前に確認するチェックリスト


厚生労働省の令和6年度医薬品販売制度実態把握調査では、一般消費者である調査員が店舗を訪問し、医薬品の販売制度に関する項目を確認しています。調査項目には、店内掲示、名札による専門家の区別、情報提供、相談対応、濫用等のおそれのある医薬品の販売時対応などが含まれます。[1]
店舗チェックリスト
| 項目 | 確認内容 | できていない場合の対応 |
|---|---|---|
| 名札 | 薬剤師・登録販売者・一般従事者の区別ができるか | 名札更新、着用ルール再確認 |
| 陳列 | 対象医薬品がルール通りの場所にあるか | 棚割り修正、空箱運用確認 |
| レジアラート | 対象商品スキャン時に確認表示が出るか | 本部・システム担当へ確認 |
| 資格者呼び出し | 一般従事者がすぐ資格者を呼べるか | インカム、呼び出しベル、内線を整備 |
| 声かけ文言 | 全員が同じ基本フレーズを使えるか | 朝礼でロールプレイ |
| 販売見合わせ | 誰が判断し、誰に報告するか決まっているか | 店舗手順書に明記 |
| 記録・共有 | 頻回購入・多量購入の情報共有方法があるか | 記録様式、申し送り方法を整備 |
| 掲示物 | 店内掲示が古くないか、見える場所にあるか | 掲示更新、破損・汚れの確認 |
朝礼で使える1分ロールプレイ
- 「咳止め2個購入時の声かけ」
- 「18歳未満か迷う場合の年齢確認」
- 「説明不要と言われた場合の返答」
- 「一般従事者から登録販売者への引き継ぎ」
- 「販売見合わせ時の言い方」
1回で完璧にしようとすると負担が大きくなります。毎日1テーマだけでも、全員で声に出して練習すると、実際の接客で自然に言えるようになります。
- 「説明はいらない」と言われても、必要な確認は省略しない
- 複数購入では、誰が・何のために・どのくらい使うのかを確認する
- 若年者には年齢確認と数量制限の考え方が重要
- 販売見合わせは、お客さんを疑うことではなく安全確認の一部
- 患者対応では「安全のため」「皆さまにお願いしています」と伝える
- 店舗全体で名札、陳列、レジアラート、引き継ぎ、記録を整える
- 収益化導線は、転職・学び直し・資格取得・内部リンク回遊と相性がよい
まとめ|ミステリーショッパー対策は「普段の安全対応」を整えること


JACDSのミステリーショッパー、覆面調査、医薬品販売制度実態把握調査と聞くと、現場スタッフは緊張してしまうかもしれません。 しかし、基本はシンプルです。
特に見られやすいのは、以下のような項目です。
| 重要項目 | 現場でやること | 初心者の合言葉 |
|---|---|---|
| 名札 | 薬剤師・登録販売者・一般従事者の区別を明確にする | 出勤したら名札を見る |
| 陳列 | 対象医薬品をルール通りの場所に置く | 勝手に棚を動かさない |
| 声かけ | 安全確認として自然に確認する | 皆さまに確認しています |
| 年齢確認 | 若年者は必要に応じて確認する | 迷ったら確認・相談 |
| 複数購入 | 誰が何のために使うか確認する | 理由を聞いてから販売 |
| 資格者対応 | 一般従事者だけで判断しない | 困ったら呼ぶ |
| 販売見合わせ | 適正使用が確認できない場合は慎重に判断する | 売らない勇気も安全対応 |
医薬品は、便利な反面、使い方を誤ると副作用、過量使用、依存、症状悪化のリスクがあります。だからこそ、薬剤師・登録販売者・一般従事者が連携して、購入前の確認と適切な情報提供を行う必要があります。

現場でそのまま使える患者対応テンプレート集
ここでは、明日から使える患者さん・お客さん向けの声かけテンプレートをまとめます。 ポイントは、短く・やわらかく・理由を先に伝えることです。
基本の声かけテンプレート
複数購入時のテンプレート
説明を断られたときのテンプレート
若年者に見える場合のテンプレート
販売を見合わせる場合のテンプレート
一般従事者から資格者へつなぐテンプレート
よくある質問


Q1. JACDSのミステリーショッパーは本当に来るのですか?
店舗や会社の方針、調査時期、キャンペーン、業界団体の取り組みによって異なります。 ただし、ミステリーショッパーが来るかどうかに関係なく、医薬品販売では普段から適正販売が求められます。
Q2. ミステリーショッパーを見抜く方法はありますか?
見抜こうとする必要はありません。 調査員らしい人だけに丁寧に対応しても、普段の販売体制が整っていなければ意味がありません。むしろ、誰が来ても同じように確認できる状態を作ることが重要です。 「この人は調査員かも」と考えるより、すべての購入希望者に必要な確認をするという姿勢を持ちましょう。
Q3. 一般従事者はどこまで説明してよいですか?
一般従事者は、薬剤師や登録販売者のように医薬品の専門的判断を一人で行う立場ではありません。 そのため、対象医薬品の購入希望、症状相談、複数購入、年齢確認が必要そうな場面では、薬剤師または登録販売者に引き継ぐことが基本です。
Q4. お客さんが急いでいる場合は確認を省略してもよいですか?
省略しない方が安全です。 急いでいるお客さんに長い説明をする必要はありませんが、販売時に必要な確認を完全に省略するのは避けましょう。 おすすめは、短く要点だけ確認する方法です。
Q5. 18歳未満かどうか微妙な場合、年齢確認しても失礼になりませんか?
聞き方に配慮すれば、失礼な対応にはなりにくいです。 ポイントは、「あなたを疑っています」という聞き方ではなく、「この医薬品では安全確認が必要です」という理由を伝えることです。
Q6. 複数購入を希望されたら、必ず販売を断るべきですか?
必ず断るわけではありません。 重要なのは、複数購入の理由を確認し、適正使用と判断できるかどうかです。 たとえば、本人と家族がそれぞれ短期間の症状で使用する、年齢や症状が確認できる、用法用量を守れる、受診が必要な状態ではない、という場合は販売可能と判断できることがあります。 一方で、使用者が不明、理由があいまい、短期間で頻回購入している、症状が長引いている、質問に答えられない場合は、販売見合わせや受診勧奨を検討します。
Q7. 咳止めや風邪薬は、どの商品でも確認が必要ですか?
すべての咳止め・風邪薬が同じ対応になるわけではありません。 ただし、指定濫用防止医薬品の対象成分として、エフェドリン、コデイン、ジヒドロコデイン、ジフェンヒドラミン、デキストロメトルファン、プソイドエフェドリン、ブロモバレリル尿素、メチルエフェドリンなどが示されています。外用剤を除く医薬品が対象です。[2] そのため、商品名だけで判断するのではなく、店舗の対象商品リスト、レジアラート、会社マニュアル、添付文書を確認しましょう。
Q8. レジが混んでいるときも資格者を呼ぶべきですか?
対象医薬品の販売時確認が必要な場面では、レジが混んでいても資格者へ引き継ぐことが基本です。 JACDS版ガイドラインでは、指定濫用防止医薬品をスキャンした際のレジ画面ポップアップ、薬剤師・登録販売者の呼び出し、インカム等による連携などが好取組事例として紹介されています。[2]
Q9. 販売を断るとクレームになりそうで不安です。どうしたらよいですか?
販売見合わせや販売謝絶は、スタッフ個人の好き嫌いで行うものではありません。 安全に使用できる確認が取れない場合、適正使用が疑わしい場合、症状から受診が必要と考えられる場合には、薬剤師・登録販売者として慎重に判断する必要があります。 クレームを避けるために確認を省略するのではなく、理由を丁寧に伝え、代替案を示すことが大切です。
Q10. 店舗スタッフ全員に教育するには、何から始めればよいですか?
まずは、難しい制度説明よりも、現場で使う行動を統一することから始めましょう。
- 名札を正しく着用する
- 対象商品を勝手に棚移動しない
- レジアラートが出たら止まる
- 一般従事者は資格者へ引き継ぐ
- 複数購入時は理由確認をする
朝礼では、1日1テーマで短く練習するのがおすすめです。 たとえば、「咳止め2個購入時の声かけ」「若年者への年齢確認」「説明不要と言われた場合」「販売見合わせ時の言い方」などを、30秒から1分でロールプレイします。
Q11. ミステリーショッパー対策をすると、売上が下がりませんか?
短期的には、複数購入や不適切な購入を止めることで販売点数が減る場面があるかもしれません。 しかし、医薬品販売で大切なのは、単に売上を増やすことだけではありません。 適正販売を徹底することで、患者さん・お客さんの安全、店舗の信頼、行政指導リスクの低減、スタッフの安心感につながります。
Q12. 自分の職場の教育体制が不安です。どうすればよいですか?
まずは、店舗内で改善できることを整理しましょう。
- 対象商品の棚位置を確認する
- レジアラートの内容を確認する
- 資格者への引き継ぎ方法を決める
- 販売見合わせ時の報告先を決める
- 朝礼で声かけ練習をする
- 会社マニュアルや自治体指導を確認する
それでも、人員不足、教育不足、責任者不在、資格者配置の不安が続く場合は、上長や本部へ相談することが必要です。 薬剤師の場合は、OTC販売体制や教育体制が整った職場を比較しながら、今後の働き方を見直す選択肢もあります。
職場環境・学び直し・資格取得へ
ミステリーショッパー対策は、個人の努力だけでなく、店舗全体の教育体制や人員配置にも大きく左右されます。 「毎回自分だけが不安を抱えている」「対象商品の教育がほとんどない」「資格者が足りず、一般従事者に負担が寄っている」と感じる場合は、職場環境を見直すきっかけにしてもよいでしょう。
※転職を急ぐ必要はありません。まずは求人情報や教育体制を比較し、今の職場で改善できる点も整理しましょう。
※講座の内容、受講料、サポート範囲、試験日程は必ず公式情報で確認してください。
この記事の最終チェックリスト
- 名札で資格区分がわかる状態になっている
- 指定濫用防止医薬品の棚位置を理解している
- レジアラートが出たときの動きが決まっている
- 一般従事者から資格者への引き継ぎフレーズが決まっている
- 複数購入時に確認する項目が決まっている
- 若年者への年齢確認の言い方を練習している
- 販売見合わせ時の報告先が決まっている
- 朝礼で短いロールプレイを行っている
- 患者さん・お客さんに「安全のため」と説明できる


参考文献
- 厚生労働省「医薬品販売制度実態把握調査」の結果を公表します URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_62122.html 最終確認日:2026年7月1日
- 厚生労働省「JACDS版 指定濫用防止医薬品の適切な販売にかかるガイドライン」 URL:https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001649559.pdf 最終確認日:2026年7月1日
- 日本チェーンドラッグストア協会「医薬品情報提供 声かけ強化キャンペーン」要領 URL:https://jacds.gr.jp/kaiin/seikaiin/22046/2022cp_youryou.pdf 最終確認日:2026年7月1日
- 厚生労働省「指定濫用防止医薬品の指定について」 URL:https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001638681.pdf 最終確認日:2026年7月1日
- 厚生労働省「濫用等のおそれのある医薬品の販売に関するJACDSの取組みについて」 URL:https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/001323061.pdf 最終確認日:2026年7月1日
- 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 PMDA URL:https://www.pmda.go.jp/ 最終確認日:2026年7月1日



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