「メトホルミンとジャディアンス、どちらも糖尿病薬だけど何が違う?」
「一緒に飲める?」「腎機能が悪いときは?」「体重はどうなる?」「シックデイではどちらを止める?」「心不全・CKDがあるとジャディアンスが選ばれる理由は?」
メトホルミンとジャディアンス(一般名:エンパグリフロジン)は、どちらも2型糖尿病でよく使われる薬ですが、作用機序も、注意すべき副作用も、処方意図も大きく異なります。
さらに、両剤は競合する薬というより併用されることも多い組み合わせです。薬剤師実務では「どちらが強いか」より、腎機能・脱水・心不全・CKD・体重・シックデイ・併用薬を見て処方意図を考えることが重要です。
この記事の結論
- メトホルミンはビグアナイド薬。肝臓での糖新生抑制などにより血糖を下げる
- ジャディアンスはSGLT2阻害薬。腎臓で糖の再吸収を抑え、尿中へ糖を排泄する
- メトホルミン:成人は通常500mg/日から開始、2〜3回分割、最大2,250mg/日
- ジャディアンス:2型糖尿病では10mg 1日1回、効果不十分なら25mgへ増量可
- ジャディアンス10mgには慢性心不全・慢性腎臓病の適応もある
- メトホルミンは乳酸アシドーシス・腎機能・脱水・造影剤が重要
- ジャディアンスは脱水・尿路/性器感染・ケトアシドーシスが重要
- どちらも単独では低血糖を起こしにくいが、SU薬・インスリン併用では注意
- 両剤は併用可能だが、脱水がメトホルミンの乳酸アシドーシスリスクも高めるため体調不良時の確認が重要



※図は比較ポイントを簡略化したものです。実際の選択・休薬・増減量は腎機能、脱水、心不全・CKD、感染症、併用薬などを踏まえて判断し、最新の電子添文・ガイドラインを優先してください。
- メトホルミンとジャディアンスの違いを比較
- 作用機序|最大の違いは「肝臓」か「腎臓」か
- 用法用量|メトホルミンは分割、ジャディアンスは1日1回
- ジャディアンス10mgを見るときは「糖尿病だけ」と思わない
- 腎機能|両剤とも重要だが「見る理由」が違う
- メトホルミン最大の注意点|乳酸アシドーシス
- ジャディアンス最大の注意点① 脱水
- ジャディアンス最大の注意点② ケトアシドーシス
- ジャディアンス最大の注意点③ 尿路・性器感染
- シックデイ|この2剤併用では特に重要
- 造影CT・造影検査|メトホルミンは休薬確認
- 体重への影響|ジャディアンスは体重減少を起こすことがある
- 低血糖|単独では起こりにくいが併用薬を見る
- メトホルミンとジャディアンスは併用できる?
- 処方意図|メトホルミンにジャディアンスが追加されたら?
- 処方意図|ジャディアンスからメトホルミンが追加されたら?
- 薬剤師が確認したいチェックリスト
- 疑義照会・確認を考えたい症例
- 服薬指導|患者さんへの説明例
- よくある質問
- まとめ|「血糖」だけでなく腎臓・心臓・脱水を見る
- 参考文献・一次情報
メトホルミンとジャディアンスの違いを比較
| 項目 | メトホルミン | ジャディアンス |
|---|---|---|
| 分類 | ビグアナイド薬 | SGLT2阻害薬 |
| 主な作用 | 肝糖新生抑制・末梢での糖利用改善など | 腎での糖再吸収を抑え尿糖排泄を増やす |
| 2型糖尿病の開始量 | 500mg/日 | 10mg 1日1回 |
| 最大量 | 2,250mg/日 | 25mg/日(血糖改善目的) |
| 服用回数 | 1日2〜3回に分割 | 1日1回 |
| 食事 | 食直前または食後 | 朝食前または朝食後 |
| 心不全適応 | なし | 10mgにあり |
| CKD適応 | なし | 10mgにあり |
| 重要副作用 | 乳酸アシドーシス | 脱水、ケトアシドーシス、尿路・性器感染 |
作用機序|最大の違いは「肝臓」か「腎臓」か
メトホルミン:肝臓から出る糖を抑える
メトホルミンは主に肝臓での糖新生を抑え、末梢組織での糖利用も改善することで血糖を下げます。
インスリン分泌を直接刺激する薬ではないため、単独では低血糖を起こしにくい特徴があります。
ジャディアンス:尿から糖を捨てる
ジャディアンスは腎臓の近位尿細管にあるSGLT2を阻害し、いったん濾過されたブドウ糖の再吸収を抑えます。
その結果、尿中への糖排泄を増やして血糖を下げます。
覚え方:メトホルミンは「糖を作りすぎない」、ジャディアンスは「糖を尿へ逃がす」。作用点が違うので併用する意味があります。
用法用量|メトホルミンは分割、ジャディアンスは1日1回
メトホルミン
2型糖尿病では通常、成人に1日500mgから開始し、1日2〜3回に分けて食直前または食後に服用します。
通常の維持量は750〜1,500mg/日、最大2,250mg/日です。
胃腸症状が出やすいため、少量から開始し、忍容性をみながら徐々に増量する処方がよく行われます。
ジャディアンス
2型糖尿病では通常、10mgを1日1回、朝食前または朝食後に服用します。
血糖コントロールが不十分な場合は、経過を観察しながら25mgへ増量できます。
ただし、慢性心不全・慢性腎臓病に対する承認用量は10mg 1日1回です。25mgに増やして心不全・CKDへの効果を上乗せする、という使い方ではありません。
ジャディアンス10mgを見るときは「糖尿病だけ」と思わない
ジャディアンス10mgには、2型糖尿病だけでなく慢性心不全・慢性腎臓病の適応があります。
そのためHbA1cがそれほど高くない患者や、糖尿病がない患者で処方されていても、心不全・CKD治療が処方意図の可能性があります。


腎機能|両剤とも重要だが「見る理由」が違う
メトホルミン:蓄積による乳酸アシドーシス
メトホルミンは主に腎臓から未変化体で排泄されます。
腎機能が低下するとメトホルミンが蓄積し、重篤な乳酸アシドーシスのリスクが高くなります。
- eGFR 30未満:禁忌
- eGFR 30以上45未満:有益性が危険性を上回る場合にのみ慎重投与
- eGFR 30以上45未満:1日最高750mgが目安
- eGFR 45以上60未満:1日最高1,500mgが目安
ジャディアンス:適応によって腎機能の意味が違う
ジャディアンスは腎機能低下に伴って血糖降下作用が弱くなる一方、10mgには心不全・CKDの適応があります。
糖尿病の血糖コントロール目的では、高度腎機能障害では十分な血糖降下作用が期待できません。
一方、慢性心不全・慢性腎臓病ではeGFR 20mL/min/1.73m²未満の場合、投与の必要性を慎重に判断することとされています。
メトホルミン最大の注意点|乳酸アシドーシス
乳酸アシドーシスはまれですが、重篤で死亡例もあるためメトホルミンで最も重要な副作用です。
リスクを高める状態
- 腎機能障害
- 肝機能障害
- 脱水
- 重症感染症
- 低酸素状態
- 心不全の急性増悪など
- 過度の飲酒
- 高齢者
疑う症状
- 強い倦怠感
- 吐き気・嘔吐・腹痛
- 筋肉痛
- 過呼吸
- 意識状態の変化
ジャディアンス最大の注意点① 脱水
ジャディアンスは尿糖排泄を増やすと同時に、尿量を増やすことがあります。
そのため、口渇、多尿、頻尿、血圧低下、脱水に注意します。
特に注意したい患者
- 高齢者
- 利尿薬使用中
- 腎機能障害
- 暑い時期
- 発熱・下痢・嘔吐
- 食事・水分が取れていない
ジャディアンス最大の注意点② ケトアシドーシス
SGLT2阻害薬では、血糖値が著しく高くなくてもケトアシドーシスを起こすことがあります。
注意する症状
- 悪心・嘔吐
- 食欲低下
- 腹痛
- 強い口渇
- 倦怠感
- 呼吸困難
- 意識障害
過度な糖質制限、食事摂取不良、感染症、脱水、インスリンの減量・中止などはリスクを高めます。
重要:「血糖値が高くないからケトアシドーシスではない」とは判断できません。症状があれば直ちに受診が必要です。
ジャディアンス最大の注意点③ 尿路・性器感染
尿中の糖が増えることで、尿路感染や性器感染が起こりやすくなることがあります。
さらに、まれですが腎盂腎炎、敗血症、外陰部・会陰部の壊死性筋膜炎(フルニエ壊疽)など重篤な感染症に至ることがあります。
確認したい症状
- 排尿時痛
- 頻尿・残尿感
- 発熱
- 陰部のかゆみ・痛み
- 会陰部の強い痛み・腫れ
シックデイ|この2剤併用では特に重要
発熱、下痢、嘔吐、食事摂取不良などのシックデイでは、脱水が起こりやすくなります。
メトホルミン
電子添文では、シックデイで脱水が懸念される場合はいったん服用を中止し、医師に相談するよう指導することが明記されています。
ジャディアンス
食事摂取不良、感染症、脱水はケトアシドーシスのリスク因子です。状態に応じて休薬等が必要になるため、自己判断で通常どおり続けず医療機関へ相談します。
両剤併用中は、ジャディアンスの利尿作用による脱水がメトホルミン側の乳酸アシドーシスリスクにもつながり得るため、体調確認が特に重要です。
造影CT・造影検査|メトホルミンは休薬確認
ヨード造影剤を使う検査では腎機能が一時的に低下し、メトホルミンの排泄が低下することで乳酸アシドーシスのリスクが高まります。
メトグルコ電子添文では、原則として検査前に一時中止し、ヨード造影剤投与後48時間は再開しないこととされています。
体重への影響|ジャディアンスは体重減少を起こすことがある
ジャディアンスでは尿中へ糖を排泄するため、体重減少がみられることがあります。
一方、メトホルミンはSU薬やインスリンのように体重増加を起こしやすい薬ではありません。
ただし、ジャディアンスで過度の体重減少が起きる場合は、脱水・食事摂取・全身状態も含めて確認します。
低血糖|単独では起こりにくいが併用薬を見る
メトホルミンもジャディアンスも、単独では低血糖を起こしにくい薬です。
ただし、インスリン製剤やSU薬などと併用すると低血糖リスクが上がります。
「この2剤だから低血糖は起きない」ではなく、糖尿病薬全体を確認します。
メトホルミンとジャディアンスは併用できる?
はい。両剤は作用機序が異なるため併用されることがあります。
メトホルミン電子添文でもSGLT2阻害薬との併用は併用注意として記載されており、低血糖だけでなく脱水から乳酸アシドーシスへつながるリスクに注意します。
併用時に薬剤師が確認したいこと
- 水分摂取はできているか
- 下痢・嘔吐・発熱がないか
- 食事が取れているか
- 体重が急に減っていないか
- 腎機能が悪化していないか
- 尿路・性器感染症状がないか
処方意図|メトホルミンにジャディアンスが追加されたら?
処方意図として次のような背景が考えられます。
- メトホルミン単独でHbA1cが目標に届かない
- 作用機序の異なる薬を追加したい
- 体重も含めた治療を考えている
- 心不全を合併している
- CKDを合併している
- 低血糖をできるだけ避けたい
特にジャディアンス10mg追加時は、血糖値だけでなく心不全・CKDの既往を確認すると処方意図が見えやすくなります。
処方意図|ジャディアンスからメトホルミンが追加されたら?
逆にジャディアンス使用中にメトホルミンが追加された場合、血糖コントロールの強化が主目的と考えられます。
この場合も腎機能・脱水・食事摂取状況を確認し、両剤を安全に継続できる状態かを見ます。
薬剤師が確認したいチェックリスト
- □ 2型糖尿病・心不全・CKDのどの適応で使われているか
- □ eGFRはいくつか
- □ メトホルミン量は腎機能に対して適切か
- □ 発熱・下痢・嘔吐・食事摂取不良がないか
- □ 水分摂取できているか
- □ 利尿薬を併用していないか
- □ 尿路・性器感染症状がないか
- □ ケトアシドーシスを疑う症状がないか
- □ 造影CT・造影検査予定がないか
- □ 過度な飲酒をしていないか
- □ SU薬・インスリン併用による低血糖がないか
- □ 過度な糖質制限をしていないか
疑義照会・確認を考えたい症例
ケース1:eGFR 28でメトホルミン継続
eGFR 30mL/min/1.73m²未満は禁忌です。最新の腎機能と処方意図を確認します。
ケース2:eGFR 38でメトホルミン1,500mg/日
eGFR 30以上45未満では1日最高750mgが目安です。腎機能と用量を確認します。
ケース3:メトホルミン+ジャディアンス服用中に嘔吐・下痢
脱水により乳酸アシドーシス・ケトアシドーシス双方のリスクが高まります。シックデイ対応を案内し、医療機関へ相談します。
ケース4:ジャディアンス服用中、血糖160mg/dLだが悪心・腹痛・息苦しさ
著明な高血糖がなくてもケトアシドーシスは否定できません。速やかな受診が必要です。
ケース5:明日造影CTだがメトホルミン継続予定
ヨード造影剤使用の有無と休薬指示を確認します。原則、検査前に一時中止し、投与後48時間は再開しません。
服薬指導|患者さんへの説明例
メトホルミン
「肝臓から作られる糖を抑えるなどして血糖を下げる薬です。下痢や嘔吐、発熱で食事や水分が取れないときは、脱水による重大な副作用を防ぐため一旦中止して医療機関へ相談してください。造影CTを受ける予定があるときも必ず伝えてください。」
ジャディアンス
「尿から余分な糖を出す薬です。尿量が増えて脱水することがあるので、普段から適度に水分を取りましょう。発熱・嘔吐・食事が取れないとき、吐き気・腹痛・息苦しさがあるときは早めに相談してください。」
よくある質問
Q1.メトホルミンとジャディアンスはどちらが強い?
単純な強弱では比較できません。作用機序や適応が異なり、患者背景に応じて単独または併用されます。
Q2.一緒に飲んでもいい?
併用されることがあります。ただし脱水時には、ジャディアンスの影響に加えてメトホルミンの乳酸アシドーシスリスクも高まるため注意が必要です。
Q3.腎機能が悪い場合はどっちを止める?
一律ではありません。メトホルミンはeGFR 30未満で禁忌です。ジャディアンスは適応が糖尿病か心不全・CKDかで腎機能の考え方が異なります。
Q4.ジャディアンス25mgの方が心不全に効く?
いいえ。慢性心不全・慢性腎臓病で承認されている用量は10mg 1日1回です。25mgは2型糖尿病の血糖改善目的で増量する用量です。
Q5.メトホルミンは造影CTの何日前から止める?
電子添文では検査前に一時中止し、ヨード造影剤投与後48時間は再開しないとされています。具体的な中止開始時期は検査施設・医師の指示を確認します。
Q6.ジャディアンス服用中は尿糖が出たら効いていない?
むしろSGLT2阻害作用により尿へ糖を出す薬なので、尿糖は薬理作用によって陽性になります。尿糖だけで血糖コントロールを判断しません。

※図は実務上の要点を整理したものです。単純な強弱ではなく、処方目的・腎機能・体調・脱水リスクを含めて使い分けます。
まとめ|「血糖」だけでなく腎臓・心臓・脱水を見る
- メトホルミンは肝糖新生抑制など、ジャディアンスは尿糖排泄促進
- メトホルミンは500mg/日から開始、ジャディアンスは10mg 1日1回
- ジャディアンス10mgには慢性心不全・慢性腎臓病の適応もある
- メトホルミンは乳酸アシドーシス・eGFR・造影剤・シックデイが重要
- ジャディアンスは脱水・ケトアシドーシス・尿路/性器感染が重要
- 両剤併用時は特に脱水と腎機能を確認
- 単純な「強さ」ではなく患者背景と処方目的で使い分ける
参考文献・一次情報
※本記事は2026年10月時点のPMDA電子添文等をもとに作成しています。糖尿病薬の選択・増減量・休薬は患者ごとに異なるため、実際の調剤・服薬指導では最新の電子添文・ガイドライン・処方医の指示を確認してください。


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