
なぎさちゃん、この前「双極性障害」について質問してたよね。今日は「なぜ気分のムラが出るのか」を、薬剤師視点でしっかり解説していくよ!

はい!患者さんから「元気すぎたり落ち込みすぎたりして自分でも怖い」って聞いて…。うつ病とは違うのかなって気になってました!
前書き:気分の波の正体を理解することが第一歩
躁うつ病(双極性障害)は、気分の高まり(躁状態)と気分の落ち込み(うつ状態)を繰り返す精神疾患です。
単なる気分の変化ではなく、脳内の神経伝達物質バランスの異常や、前頭葉・扁桃体の機能変化が関係しています。
薬剤師として関わる際に重要なのは、「躁うつ病=気分の波があるうつ病」ではないという認識です。
抗うつ薬単独投与はむしろ危険で、気分安定薬(リチウム・バルプロ酸・ラモトリギンなど)が治療の中心になります。
躁うつ病の病態と薬理を徹底解説
躁うつ病の分類
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| 双極Ⅰ型 | 躁状態が明確で、社会生活に支障をきたすほどの高揚・逸脱行動が見られる。うつ状態も出現。 |
| 双極Ⅱ型 | 軽躁状態(ハイだけど社会生活は保てる)とうつ状態を繰り返す。うつが主体。 |
軽躁(hypomania)は本人や周囲が気づかないことも多く、「長引くうつ病」として誤診されやすい点に注意が必要です。
気分のムラの正体:神経伝達物質の不安定さ
脳内では、ドパミン・セロトニン・ノルアドレナリンが気分を調整しています。
躁状態ではこれらが過剰活性化し、うつ状態では逆に低下します。
| 状態 | 神経伝達物質の動き | 症状例 |
|---|---|---|
| 躁状態 | ドパミン↑ セロトニン↑ ノルアドレナリン↑ | 多弁、多動、浪費、睡眠欲低下、自信過剰 |
| うつ状態 | ドパミン↓ セロトニン↓ ノルアドレナリン↓ | 抑うつ、倦怠感、集中力低下、希死念慮 |
躁うつ病の本質は、「神経伝達物質のシーソーが激しく揺れてしまう脳の病気」なのです。
前頭前皮質と扁桃体の異常
近年の脳画像研究では以下のような特徴が報告されています。
- 扁桃体(感情の司令塔)が過敏に反応する
- 前頭前皮質(理性や判断の中枢)が抑制できなくなる
- 結果として、感情のブレーキが利かなくなる
この脳機能の不均衡が「気分の波」を生む原因と考えられています。
薬剤師が気づくサイン
「最近寝なくても平気なんです」
「妙にやる気が出て買い物しすぎちゃって…」
「すぐに泣いてしまう」
これらは軽躁エピソードのサインであることもあります。
抗うつ薬を漫然と服用している患者さんに見られる場合、双極性障害の可能性を考え、医師へ情報提供することが薬剤師の重要な役割です。
気分安定薬の基本薬理
| 薬剤 | 主な作用機序 | 特徴 |
|---|---|---|
| リチウム(LIMIA®など) | セロトニン・ドパミン系の安定化、細胞内シグナル(GSK-3β抑制) | 再発予防に最もエビデンスが高い。血中濃度モニタリングが必要。 |
| バルプロ酸ナトリウム(デパケン®) | GABA活性化、神経過興奮の抑制 | 躁状態に有効。肝機能・催奇形性に注意。 |
| カルバマゼピン(テグレトール®) | Naチャネル遮断、興奮抑制 | 急性躁に有効だが相互作用が多い。 |
| ラモトリギン(ラミクタール®) | グルタミン酸放出抑制 | うつ期予防に有用。皮疹に注意。 |
これらの薬は「気分の波を穏やかに保つ」ことを目的に用いられます。
抗うつ薬単独投与が危険な理由
双極性障害を「うつ病」と誤診して抗うつ薬単独で投与すると、躁転(そうてん)リスクが高まります。
ドパミン・セロトニンが急上昇し、脳が「ハイ状態」に切り替わるからです。
このため、抗うつ薬を使用する場合は必ず気分安定薬を併用します。
薬剤師が意識したい服薬指導ポイント
- リチウム:定期的な血中濃度測定(0.6〜1.2 mEq/L)
- 脱水・NSAIDs併用・利尿薬併用で中毒リスク上昇
- バルプロ酸:肝機能・血小板減少に注意
- ラモトリギン:皮疹出現時は即中止し再開不可
- 服薬忘れ・中断は再発リスク大
④ 症例・実践例:薬剤師が関わるリアルなケース
症例1:うつ病だと思っていたが、実は双極Ⅱ型だったケース
40代女性。長年「うつ病」と診断されSSRIを服用していたが、時々「ハイテンションで買い物を繰り返す」「夜眠らなくても元気」という時期があった。
薬剤師がその点を確認し、医師へ情報共有。再評価の結果、双極Ⅱ型障害と診断され、ラモトリギン+バルプロ酸併用へ変更。
半年後には気分の波が落ち着き、日常生活が安定した。

このケースのように、「うつ症状しか見えない」患者さんでも、過去に軽躁が隠れていることは本当に多いの。薬剤師の観察力が診断のきっかけになることもあるんだよ!
症例2:リチウム中毒の早期発見
70代男性。慢性腎臓病の既往あり。リチウムを服用していたが、夏場に脱水を起こしてふらつきと震えが出現。
薬局で「水分摂取が少ない」と聞き取った薬剤師が、リチウム中毒を疑い医師へ連絡。採血で血中濃度が1.8 mEq/L(高値)と判明し入院治療へ。
早期対応により重篤化を防げた。

なるほど…!リチウムの血中濃度管理って、ほんと大事ですね。季節や併用薬にも注意が必要なんですね!
⑤ まとめ:躁うつ病を「波のある脳の疾患」と理解しよう
- 躁うつ病(双極性障害)は、神経伝達物質のバランス異常により気分の波が生じる疾患。
- うつ病との違いは「躁(または軽躁)」エピソードの有無。
- 抗うつ薬単独投与は躁転リスクがあるため注意!
- 治療の中心は気分安定薬(リチウム・バルプロ酸・ラモトリギンなど)。
- 薬剤師は患者の気分変動・服薬状況・生活環境を丁寧に把握することが重要。
💡ワンポイント
躁うつ病は「性格の問題」ではなく、「脳の働きの問題」。
患者さんが罪悪感を持たないような声かけが大切です。
⑥ よくある質問(FAQ)
Q1. 躁うつ病とうつ病はどう見分ければいい?
過去にテンションが上がりすぎた時期があるかを確認します。
買い物のしすぎ、睡眠時間が減ったのに元気、急に自信過剰などの軽躁エピソードがあれば双極性障害の可能性が高いです。
Q2. 薬は一生飲み続けないといけませんか?
再発を防ぐためには、気分安定薬の長期維持療法が推奨されています。
ただし、症状が長期に安定すれば医師判断で減量・中止もあり得ます。
勝手な中止は再発リスクが高く、必ず医師・薬剤師と相談してください。
Q3. サプリや漢方で良くなりますか?
現時点で有効性が科学的に確立されたサプリはありません。
ただし、睡眠やストレス管理には「グリシン」「L-テアニン」などの軽いサポート成分を活用するケースもあります。
併用時は相互作用(特にセロトニン関連)に注意。
Q4. 家族が躁うつ病と診断されました。どう接すればいい?
家族は「病気の波に一喜一憂しない」姿勢が大切です。
躁状態のときは否定せず、危険行動(浪費・睡眠不足)を穏やかに見守る。
うつ状態のときは無理に励まさず、静かに寄り添うサポートを。
⑦ 参考文献・出典
- 日本うつ病学会 気分障害の治療ガイドライン作成委員会『Ⅰ.双極性障害 2020』(PDF版)
(最終確認日:2025年11月4日) - Japanese Society of Clinical Neuropsychopharmacology. Pharmacological management of bipolar disorder: Japanese expert consensus.
J Clin Psychopharmacol. 2020. PMCID: PMC7818260.
(最終確認日:2025年11月4日) - Japanese Society of Mood Disorders. Practice Guidelines for Bipolar Disorder.
Psychiatry Clin Neurosci. 2024.
(最終確認日:2025年11月4日) - National Institute of Mental Health (NIMH). Bipolar Disorder.
(最終確認日:2025年11月4日)
薬剤師向け転職サービスの比較と特徴まとめ


今日は、特徴をわかりやすく整理しつつ、読んでくださる方が自分の働き方を見つめ直しやすいようにまとめていきましょう。
働く中で、ふと立ち止まる瞬間は誰にでもあります
薬剤師として日々働いていると、忙しさの中で気持ちに余裕が少なくなり、
「最近ちょっと疲れているかも…」と感じる瞬間が出てくることがあります。
- 店舗からの連絡に、少し身構えてしまう
- 休憩中も頭の中が業務のことでいっぱいになっている
- 気づけば仕事中心の生活になっている
こうした感覚は、必ずしも「今の職場が嫌い」というわけではなく、
「これからの働き方を考えてもよいタイミングかもしれない」というサインであることもあります。
無理に変える必要はありませんが、少し気持ちが揺れたときに情報を整理しておくと、
自分に合った選択肢を考えるきっかけになることがあります。
薬剤師向け転職サービスの比較表
ここでは、薬剤師向けの主な転職サービスについて、それぞれの特徴を簡潔に整理しました。
各サービスの特徴(概要)
ここからは、上記のサービスごとに特徴をもう少しだけ詳しく整理していきます。ご自身の希望と照らし合わせる際の参考にしてください。
・薬剤師向けの転職支援サービスとして、調剤薬局やドラッグストアなどの求人を扱っています。
・面談を通じて、これまでの経験や今後の希望を整理しながら話ができる点が特徴です。
・「まずは話を聞いてみたい」「自分の考えを整理したい」という方にとって、利用しやすいスタイルと言えます。
・全国の薬局・病院・ドラッグストアなど、幅広い求人を取り扱っています。
・エリアごとの求人状況を比較しやすく、通勤圏や希望地域に合わせて探したいときに役立ちます。
・「家から通いやすい範囲で、いくつか選択肢を見比べたい」という方に向いているサービスです。
・調剤薬局の求人を多く扱い、条件の調整や個別相談に力を入れているスタイルです。
・勤務時間、休日日数、年収など、具体的な条件について相談しながら進めたい人に利用されています。
・「働き方や条件面にしっかりこだわりたい」方が、検討の材料として使いやすいサービスです。
・調剤系の求人を取り扱う転職支援サービスです。
・職場の雰囲気や体制など、求人票だけではわかりにくい情報を把握している場合があります。
・「長く働けそうな職場かどうか、雰囲気も含めて知りたい」という方が検討しやすいサービスです。
・薬剤師に特化した職業紹介サービスで、調剤薬局・病院・ドラッグストアなど幅広い求人を扱っています。
・公開されていない求人(非公開求人)を扱っていることもあり、選択肢を広げたい場面で役立ちます。
・「いろいろな可能性を見比べてから考えたい」という方に合いやすいサービスです。
・調剤薬局を中心に薬剤師向け求人を取り扱うサービスです。
・研修やフォロー体制など、就業後を見据えたサポートにも取り組んでいる点が特徴です。
・「現場でのスキルや知識も高めながら働きたい」という方が検討しやすいサービスです。
気持ちが揺れるときは、自分を見つめ直すきっかけになります
働き方について「このままでいいのかな」と考える瞬間は、誰にでも訪れます。
それは決して悪いことではなく、自分の今とこれからを整理するための大切なサインになることもあります。
転職サービスの利用は、何かをすぐに決めるためだけではなく、
「今の働き方」と「他の選択肢」を比較しながら考えるための手段として活用することもできます。
情報を知っておくだけでも、
「いざというときに動ける」という安心感につながる場合があります。


「転職するかどうかを決める前に、まずは情報を知っておくだけでも十分ですよ」ってお伝えしたいです。
自分に合う働き方を考える材料が増えるだけでも、少し気持ちがラクになることがありますよね。
無理に何かを変える必要はありませんが、
「自分にはどんな可能性があるのか」を知っておくことは、将来の安心につながることがあります。
気になるサービスがあれば、詳細を確認しながら、ご自身のペースで検討してみてください。
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