


この記事の結論
- ラツーダ(ルラシドン)は統合失調症と双極性障害におけるうつ症状に使う第二世代抗精神病薬です。
- 国内では2020年6月に販売開始。20mg・40mg・60mg・80mgがあります。
- 1日1回食後が基本で、空腹時では吸収が大きく低下します。
- 統合失調症:通常40mg、最大80mg/日。
- 双極性うつ:20mg開始、20mgずつ調整、最大60mg/日。
- 強いCYP3A4阻害薬・誘導薬は併用禁忌です。
- 中等度以上の腎・肝機能障害では開始量・上限量が変わります。
- アカシジア、眠気、不眠、悪心、起立性低血圧、高血糖、遅発性ジスキネジア、悪性症候群などを確認します。

- ラツーダとは?
- 作用機序|D2・5-HT2Aだけではない
- ラツーダはなぜ食後?
- 空腹時に飲んでしまったら?
- 「寝る前」に変えていい?
- 統合失調症の用量
- 双極性障害におけるうつ症状の用量
- 腎機能低下では用量が変わる
- 肝機能障害でも調整が必要
- CYP3A4が最重要|併用禁忌が多い
- グレープフルーツは?
- アドレナリンとの併用禁忌|例外を知っておく
- 血栓塞栓症にも注意
- アカシジア|実務で拾いたい副作用
- 薬剤性パーキンソニズム
- 遅発性ジスキネジア
- ジストニア
- 悪性症候群
- 高血糖|「代謝負担が比較的小さい」でもゼロではない
- 体重・血糖・脂質は定期確認
- 眠気と運転
- 起立性低血圧
- QT延長
- 痙攣
- 双極性うつ|希死念慮と行動変化
- 双極性うつで漫然投与しない
- 妊娠・授乳
- 高齢者
- 小児は?
- 飲み忘れたら?
- 薬局でよくあるケース
- 処方監査で見落としやすいポイント
- 臨床試験でどんな副作用が多かった?
- 「副作用が少ない薬」と言い切らない
- 統合失調症での効果判定
- 双極性うつでの効果判定
- 食事量が少ない患者ではどうする?
- 朝食後でもいい?
- 夕食後から就寝前へ勝手にずらさない
- 他の抗精神病薬から切り替えるとき
- ラツーダ開始後に不眠が出たら
- 悪心・嘔吐が出たら
- プロラクチン上昇
- 便秘・排尿・抗コリン作用
- 血栓塞栓症の受診目安
- 悪性症候群の受診目安
- 家族に見てもらいたい変化
- 服薬アドヒアランスを「食後条件」まで見る
- 他科受診時に必ず伝える
- 処方医へ伝えるSBAR例
- 治療目標も薬歴に残す
- 薬物動態|1日1回で使う理由
- 開始後1~2週間で確認したいこと
- 「効かない」と言われたときの見直し順序
- 「眠いから夜に」「眠れないから朝に」だけで決めない
- 緊急性が高い症状
- 他剤からの切り替え後は「旧薬が抜けた影響」も見る
- 家族に見てもらうと分かりやすい変化
- 処方変更後は「何が良くなったか」も確認する
- 薬局で使える30秒チェック
- 薬歴に残したい項目
- 服薬指導でそのまま使える説明
- よくある質問
- まとめ|ラツーダは「食後+CYP3A4+適応別用量」が核心
- 参考文献・一次情報
ラツーダとは?
ラツーダは一般名ルラシドン塩酸塩の第二世代抗精神病薬です。国内の効能・効果は「統合失調症」と「双極性障害におけるうつ症状の改善」です。
日本では2020年3月に承認され、2020年6月に販売開始されました。規格は20mg、40mg、60mg、80mgです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 一般名 | ルラシドン塩酸塩 |
| 商品名 | ラツーダ |
| 規格 | 20mg・40mg・60mg・80mg |
| 分類 | 第二世代抗精神病薬 |
| 主な代謝 | CYP3A4 |
| 服用 | 1日1回 食後 |
作用機序|D2・5-HT2Aだけではない
ルラシドンはドパミンD2受容体とセロトニン5-HT2A受容体を遮断します。さらに5-HT7受容体拮抗作用、5-HT1A受容体部分作動作用などを持ちます。
一方、受容体プロファイルだけから「認知機能が必ず改善する」「他剤より必ず眠くならない」と断定するのは適切ではありません。実際の薬剤選択では、症状、過去の反応、副作用、併存疾患、患者の希望を合わせて判断します。
ラツーダはなぜ食後?
ルラシドンは食事の影響を大きく受けます。国内承認資料では、食後投与時は空腹時投与と比べてCmaxが約4倍、AUCが約3倍に増加したことが示されています。
そのため国内添付文書の承認用法は、統合失調症・双極性うつのどちらも1日1回食後です。
国内電子添文には「350kcal以上」という具体的なカロリー数までは記載されていません。メーカーの実臨床向け情報では最低350kcal程度を目安に説明する例がありますが、薬局ではまず処方どおり食後に服用することを基本に案内します。
空腹時に飲んでしまったら?
その回の吸収が低下する可能性がありますが、自己判断で追加でもう1錠飲まないでください。次回から食後へ戻します。
頻繁に欠食する患者では、ラツーダの効果不十分が「薬が弱い」のではなく、食事条件による可能性もあります。生活リズムと服薬状況を処方医へ共有します。
「寝る前」に変えていい?
ラツーダの承認用法は「就寝前」ではなく食後です。夕食後かなり時間が経った就寝前に変更すると、実質的に空腹条件になることがあります。
眠気・不眠のため時間を変えたい場合も、自己判断で食後から離さず、処方医・薬剤師へ相談します。
統合失調症の用量
通常、成人には40mgを1日1回食後に投与します。年齢・症状により適宜増減しますが、1日80mgを超えません。
忍容性が確認され、効果不十分な場合にのみ増量を検討し、必要最小限の用量へ調整します。
双極性障害におけるうつ症状の用量
通常、成人には20~60mgを1日1回食後に投与します。開始用量は20mg、増量幅は20mgです。最大60mg/日です。
古い情報にある「120mgまで」という用量は、現在の国内承認用量ではありません。
| 適応 | 開始・通常量 | 最大量 |
|---|---|---|
| 統合失調症 | 通常40mg 1日1回食後 | 80mg/日 |
| 双極性うつ | 20mg開始、20mgずつ調整 | 60mg/日 |
腎機能低下では用量が変わる
中等度以上の腎機能障害では血中濃度が上昇するため、開始量・維持量・最大量が変わります。
統合失調症
| 腎機能 | 開始 | 増量幅 | 維持 | 最大 |
|---|---|---|---|---|
| 中等度(CLcr 30~<50) | 20mg | 10mg | 40mg | 60mg |
| 重度(CLcr<30) | 20mg | 10mg | 20mg | 60mg |
双極性うつ
中等度・重度腎機能障害ともに、開始10mg、増量幅10mg、最大60mgです。

肝機能障害でも調整が必要
統合失調症
| 肝機能 | 開始 | 増量幅 | 維持 | 最大 |
|---|---|---|---|---|
| Child-Pugh B | 20mg | 10mg | 40mg | 60mg |
| Child-Pugh C | 20mg | 10mg | 20mg | 30mg |
双極性うつ
Child-Pugh B/Cとも開始10mg・増量幅10mg。最大量はBで60mg、Cで30mgです。
CYP3A4が最重要|併用禁忌が多い
ルラシドンは主にCYP3A4で代謝されます。強いCYP3A4阻害薬では血中濃度が大きく上昇し、強い誘導薬では大きく低下するため、添付文書では併用禁忌です。
強いCYP3A4阻害薬の例
- イトラコナゾール
- ボリコナゾール
- ミコナゾール(経口・口腔用・注射)
- フルコナゾール、ホスフルコナゾール
- ポサコナゾール
- リトナビルを含む製剤
- ダルナビル、アタザナビル等
- エンシトレルビル
- コビシスタットを含む製剤
- クラリスロマイシン
強いCYP3A4誘導薬
- リファンピシン
- フェニトイン
- ホスフェニトイン
精神科以外の医療機関から短期処方された抗菌薬・抗真菌薬でも問題になるため、お薬手帳を横断して確認します。
グレープフルーツは?
ラツーダはCYP3A4代謝薬なので、グレープフルーツによるCYP3A4阻害の影響が懸念されます。日常的に摂取している場合は処方医・薬剤師へ伝え、個別に確認するのが安全です。
アドレナリンとの併用禁忌|例外を知っておく
現行添付文書ではアドレナリン併用が禁忌ですが、アナフィラキシーの救急治療や歯科領域の浸潤麻酔・伝達麻酔に使用する場合は例外です。
「ラツーダを飲んでいるからアナフィラキシーにアドレナリンを使えない」という誤解は危険です。
血栓塞栓症にも注意
現行添付文書では、不動状態、長期臥床、肥満、脱水状態などの患者で、肺塞栓症・静脈血栓症などの血栓塞栓症が報告されていることが注意事項に含まれています。
片脚の急な腫れ・痛み、突然の息苦しさ、胸痛などがあれば速やかな医療評価が必要です。
アカシジア|実務で拾いたい副作用
ラツーダではアカシジアが問題になることがあります。「不安」「そわそわ」とだけ訴えることがあり、双極性うつの悪化と区別しにくい場合があります。
- 脚を動かしたい
- 座っていられない
- 歩き回る
- じっとすると苦痛
開始・増量後に出現した場合は薬剤性アカシジアを考えます。
薬剤性パーキンソニズム
D2受容体遮断作用により、振戦、筋固縮、動作緩慢などの薬剤性パーキンソニズムが出ることがあります。
パーキンソン病やレビー小体型認知症では錐体外路症状が悪化するおそれがあり、添付文書でも注意対象です。
遅発性ジスキネジア
長期使用では口・舌・顔面・四肢などの不随意運動が出る遅発性ジスキネジアにも注意します。
ジストニア
首がねじれる、眼球が上を向く、舌が突出するなどの急性ジストニアが出ることがあります。抗精神病薬開始・増量後の急な異常姿勢は見逃さないようにします。
悪性症候群
高熱、筋強剛、意識障害、発汗、頻脈、血圧変動などが出た場合は悪性症候群を疑い、緊急評価が必要です。
高血糖|「代謝負担が比較的小さい」でもゼロではない
ラツーダは他の一部の抗精神病薬と比べ体重・代謝への影響が比較的小さいとされますが、添付文書では高血糖・糖尿病悪化、糖尿病性ケトアシドーシス・昏睡への注意が明記されています。
口渇、多飲、多尿、頻尿などが出た場合は速やかに医師へ相談します。
体重・血糖・脂質は定期確認
- 体重・BMI
- 血糖・HbA1c
- 脂質
- 血圧
「ラツーダだから代謝モニタリング不要」ではありません。
眠気と運転
眠気、注意力・集中力・反射運動能力低下が起こることがあります。添付文書では、自動車運転など危険を伴う機械操作に従事させないよう注意されています。
起立性低血圧
投与初期、再投与時、増量時には起立性低血圧が出ることがあります。高齢者や降圧薬併用患者では、立ちくらみ・転倒に注意します。
QT延長
不整脈の既往や先天性QT延長症候群ではQTが延長する可能性があります。動悸、失神、原因不明の意識消失があれば早めの医療評価が必要です。
痙攣
てんかんなど痙攣性疾患またはその既往がある患者では、痙攣閾値低下のおそれがあるため慎重に使用します。
双極性うつ|希死念慮と行動変化
双極性うつでは、治療開始早期や用量変更時に希死念慮、自殺企図、興奮、攻撃性、易刺激性、不安、焦燥、不眠、アカシジアなどを注意深く観察します。
家族にも「急に落ち着かない」「死にたいと言う」「攻撃的になった」などの変化があれば医療機関へ連絡するよう説明します。
双極性うつで漫然投与しない
添付文書では、うつ症状が改善した場合にはラツーダ継続の要否を検討し、漫然投与しないよう注意されています。双極性障害の維持療法における本剤の有効性は確立していません。
妊娠・授乳
妊娠中は治療上の有益性が危険性を上回る場合にのみ投与します。妊娠後期に抗精神病薬を使用した場合、新生児に哺乳障害、傾眠、呼吸障害、振戦、筋緊張低下、易刺激性などが報告されています。
授乳中は、治療上の有益性と母乳栄養の有益性を考慮して授乳継続・中止を検討します。
高齢者
高齢者では一般に生理機能が低下しているため、眠気、起立性低血圧、転倒、腎肝機能などを確認しながら慎重に使用します。
小児は?
2026年10月時点の国内添付文書では、統合失調症・双極性うつの用法用量は成人が対象です。小児統合失調症の用法・用量追加は2026年3月に申請されていますが、現行国内添付文書にはまだ反映されていません。
飲み忘れたら?
2回分をまとめて飲まないことが基本です。気づいた時間と次回服用までの間隔、食事条件もあるため、迷った場合は薬局へ相談します。
薬局でよくあるケース
ケース1:夕食を抜いてラツーダだけ飲む
吸収低下により効果が不安定になる可能性があります。食事を取れる時間に服用する方法を相談します。
ケース2:クラリスロマイシンが追加
強いCYP3A4阻害薬で併用禁忌です。短期処方でも見逃さず疑義照会します。
ケース3:リファンピシンが開始
強いCYP3A4誘導薬で併用禁忌です。ラツーダの効果が大きく低下する可能性があります。
ケース4:双極性うつ20mg→40mg後にそわそわ
アカシジアを疑い、座っていられるか、脚を動かしたい衝動があるかを確認します。
ケース5:CrCl 35mL/minで統合失調症80mg
中等度腎機能障害では最高用量60mgです。腎機能と処方意図を確認します。
ケース6:Child-Pugh Cで統合失調症60mg
重度肝機能障害では最高用量30mgです。疑義照会が必要です。
処方監査で見落としやすいポイント
- 他院のクラリスロマイシン・抗真菌薬
- フェニトイン・リファンピシン
- 適応が統合失調症か双極性うつか
- 腎機能低下患者で通常量のままになっていないか
- 重度肝機能障害の上限超過
- 欠食が多く「食後」になっていない
臨床試験でどんな副作用が多かった?
統合失調症の国際共同試験では、アカシジア、悪心、嘔吐、傾眠などが比較的よくみられました。40mg群・80mg群ではアカシジアがそれぞれ6.0%・9.7%と報告された試験もあります。
別の40mg試験ではアカシジア4.0%、頭痛4.0%、不眠3.6%、傾眠2.8%などが報告されています。長期投与試験ではアカシジア6.6%、悪心3.5%、血中プロラクチン増加3.5%、パーキンソニズム2.1%などでした。
双極性うつの20~60mg群では、アカシジア13.0%、悪心6.5%が主な副作用として報告されています。
「副作用が少ない薬」と言い切らない
ラツーダは一部の抗精神病薬と比べ、体重増加や代謝系への影響が比較的小さいと評価されることがあります。ただし、患者ごとの副作用は大きく異なります。
アカシジア、悪心、不眠が原因で自己中断する患者もいるため、「副作用が少ないので安心」と説明するより、出やすい症状を先に伝えて、出たら調整できると説明する方が実用的です。
統合失調症での効果判定
国際共同第3相試験では、ラツーダ40mg群でPANSS合計スコアがプラセボより有意に改善しました。
薬局ではPANSSを採点するわけではありませんが、幻覚・妄想だけでなく、不眠、不安、生活機能、外出・仕事などの変化を確認します。
双極性うつでの効果判定
双極I型障害のうつ症状を対象とした国際共同試験では、20~60mg群でMADRS合計スコアがプラセボより有意に改善しました。一方、80~120mg群は国内承認用量ではなく、承認上限は60mgです。
「高用量ならもっと効く」と考えず、国内承認用量内で効果と副作用を評価します。
食事量が少ない患者ではどうする?
ひとり暮らし、抑うつ、食欲低下、高齢者では「夕食後」と処方されていても、実際には飲み物だけ・お菓子だけということがあります。
ラツーダは食事で曝露量が大きく変わるため、「食後に飲んでいますか?」だけではなく、何をどのくらい食べた後に飲んでいるかまで確認すると実態を把握しやすくなります。
メーカーの実臨床向け情報では350kcal程度が一つの目安として紹介されていますが、国内添付文書の文言は「食後」です。患者に数字だけを押し付けるのではなく、安定した食事後服用ができる生活設計を考えます。
朝食後でもいい?
添付文書は「1日1回食後」であり、夕食後に限定されていません。処方が朝食後ならその指示に従います。
ただし、朝食をほとんど取らない患者では食事条件が安定しないことがあります。朝食内容と服薬継続性を確認します。
夕食後から就寝前へ勝手にずらさない
眠気を避けたい、逆に夜飲みたいという理由で服用時間を変えるケースがあります。しかし、夕食後から数時間たった就寝前へ変更すると、食後条件を外れることがあります。
時間変更を希望する場合は、食事との関係も含めて処方医へ相談します。
他の抗精神病薬から切り替えるとき
抗精神病薬の切り替え方法は、現在の薬剤、用量、病状、副作用、再発歴で異なります。「必ずクロスタイトレーション」という一律のルールではありません。
薬局では処方変更を見たら、旧薬が急に中止されていないか、新旧薬が重複する期間の意図、眠気・EPS・血圧低下などが重ならないかを確認します。
ラツーダ開始後に不眠が出たら
ラツーダでは傾眠だけでなく不眠もみられます。睡眠薬を追加する前に、開始・増量との時間関係、アカシジアによる落ち着かなさ、躁症状の有無などを確認します。
双極性うつで睡眠時間が急に短くなり、活動性や易刺激性が上がる場合は、単なる副作用だけでなく病状変化も考えます。
悪心・嘔吐が出たら
悪心・嘔吐は臨床試験でもみられた副作用です。開始直後に軽度の悪心がある場合でも、食事が取れなくなるとラツーダの吸収条件まで崩れます。
食事摂取量、脱水、嘔吐の回数を確認し、症状が強い場合は処方医へ相談します。
プロラクチン上昇
ラツーダでも血中プロラクチン増加が報告されています。無月経、乳汁分泌、性機能障害などがある場合は確認します。
患者から言い出しにくい副作用なので、必要に応じてプライバシーに配慮して聞き取ります。
便秘・排尿・抗コリン作用
ラツーダはムスカリン受容体への親和性が低い薬ですが、便秘などが起こらないわけではありません。併用する抗コリン薬・睡眠薬・抗うつ薬の影響も合わせて確認します。
血栓塞栓症の受診目安
すぐ相談したい症状
- 片脚だけ急に腫れる・痛む
- 突然の息苦しさ
- 胸の痛み
- 原因不明の頻脈・失神
これらは肺塞栓症・静脈血栓症などを疑う症状で、速やかな医療評価が必要です。
悪性症候群の受診目安
高熱、体が強くこわばる、意識がぼんやりする、大量発汗、脈拍・血圧の大きな変化がある場合は、次回予約を待たず医療機関へ相談します。
家族に見てもらいたい変化
- 急にそわそわして座っていられない
- 眠りすぎる・逆に眠れない
- 口や舌が勝手に動く
- 歩き方が遅くなった・体がこわばる
- 水を大量に飲む、トイレが増えた
- 気分の落ち込みや「死にたい」という発言
- 片脚の腫れ、急な息苦しさ
本人が副作用を自覚しにくい場合、家族の観察が重要です。
服薬アドヒアランスを「食後条件」まで見る
「毎日飲んでいる」だけではラツーダの服薬状況として不十分な場合があります。空腹時に毎日飲んでいると、服薬率は100%でも曝露量が不安定になる可能性があります。
薬歴には、服用回数だけでなく「夕食後に服用」「欠食時はどうしているか」まで残すと実務的です。
他科受診時に必ず伝える
CYP3A4強阻害薬・誘導薬は精神科以外から追加されることがあります。歯科、内科、耳鼻科、皮膚科などを受診するときも、ラツーダ服用中であることを伝えます。
クラリスロマイシン、アゾール系抗真菌薬、抗結核薬、抗てんかん薬などが処方されたら、薬局で併用可否を確認します。
処方医へ伝えるSBAR例
S:ラツーダ40mg開始後から強いそわそわがあります。
B:開始5日後から座位保持困難、歩き回る状態です。
A:薬剤性アカシジアを疑います。
R:用量・継続可否、対処の必要性をご確認ください。
治療目標も薬歴に残す
統合失調症なら幻覚・妄想だけでなく、睡眠、仕事、外出、対人関係など何を改善したいかを確認します。
双極性うつでは気分だけでなく、起床、家事、食事、仕事、希死念慮など、本人が一番困っている生活場面を共有すると効果判定がしやすくなります。
薬物動態|1日1回で使う理由
ルラシドンは1日1回投与で使用する薬です。食後投与で吸収が安定し、CYP3A4を中心に代謝されます。
薬物動態は腎・肝機能や併用薬の影響を受けるため、「1日1回だから細かい確認は不要」ではありません。むしろ食事条件・臓器機能・相互作用の3点が血中濃度を大きく左右します。
開始後1~2週間で確認したいこと
- 食後に毎日飲めているか
- アカシジア・そわそわがないか
- 悪心・嘔吐がないか
- 眠気または不眠がないか
- 立ちくらみ・ふらつきがないか
- 双極性うつでは気分・希死念慮の変化
副作用が出た患者では、本人が自己中断する前に早めに相談できるよう、初回服薬指導で具体的な症状を伝えておくことが重要です。
「効かない」と言われたときの見直し順序
- 本当に食後に飲めているか
- 飲み忘れがないか
- CYP3A4誘導薬が追加されていないか
- 適応・症状に対して十分な期間使っているか
- 副作用のため実際には服用できていない日がないか
いきなり増量する前に、吸収条件とアドヒアランスを確認すると原因が見つかることがあります。
「眠いから夜に」「眠れないから朝に」だけで決めない
服用時間を調整する場合も、最優先は食後条件を崩さないことです。眠気・不眠への対応は、服用時刻だけでなく用量、併用薬、アカシジア、病状変化も含めて考えます。
緊急性が高い症状
次の症状がある場合は早めに医療機関へ相談します。
- 高熱・強い筋こわばり・意識変化
- けいれん
- 突然の息苦しさ・胸痛・片脚の腫れ
- 失神・強い動悸
- 自傷・希死念慮
- 著しい高血糖を疑う口渇・多飲・多尿と強い倦怠感
他剤からの切り替え後は「旧薬が抜けた影響」も見る
オランザピンやクエチアピンなどからラツーダへ切り替えた場合、ラツーダの副作用だけでなく、旧薬の鎮静・抗コリン作用が弱くなったことで不眠や不安が目立つことがあります。
処方変更後の症状をすべてラツーダの副作用と決めつけず、旧薬中止の影響、原疾患の変化、新薬の副作用を時系列で整理します。
家族に見てもらうと分かりやすい変化
- 食事を取らずに薬だけ飲んでいないか
- そわそわして歩き回ることが増えていないか
- 眠りすぎ・不眠がないか
- 立ち上がるとふらつかないか
- 口や舌の不随意運動がないか
- 気分の落ち込み・攻撃性・易刺激性が強くないか
本人が副作用を自覚しにくい場合、家族からの情報が処方調整の重要な材料になります。
処方変更後は「何が良くなったか」も確認する
副作用確認だけでなく、ラツーダへ変更したことで本人が何を改善できたかも確認します。たとえば日中の眠気が減った、外出できるようになった、気分の落ち込みが軽くなったなど、生活面の変化は治療継続の重要な情報です。
逆に症状が改善していても、アカシジアや悪心で服薬継続が難しい場合は、効果だけで「成功」と判断せず、患者本人が続けられる治療かを処方医と共有します。
なお、処方が長期間変わっていない患者でも、腎機能・肝機能の低下や他科からの薬剤追加によって適正用量や併用可否が変わることがあります。「いつもの処方」でも定期的に臓器機能と併用薬を見直すことが安全な継続治療につながります。
食後服用を続けられる時間帯を患者本人と決めておくと、飲み忘れだけでなく空腹時服用の防止にもつながります。
服薬状況は毎回同じ聞き方で確認すると変化を追いやすくなります。
薬局で使える30秒チェック
- 適応は統合失調症か双極性うつか
- 食後に飲めているか
- 適応別の上限量を超えていないか
- 腎機能・肝機能
- CYP3A4阻害薬・誘導薬
- アカシジア・EPS
- 眠気・起立性低血圧
- 血糖・体重
- 双極性うつでは希死念慮・行動変化
薬歴に残したい項目
- 適応・用量
- 食事と服用タイミング
- 腎機能・肝機能
- 新規併用薬
- アカシジア・振戦・筋固縮
- 眠気・不眠
- 体重・血糖
- 希死念慮・気分変化
- 患者本人が困っている症状
薬歴記載例
ラツーダ40mg 統合失調症。 夕食後服用を確認。欠食時の空腹服用はなし。 CrCl 72mL/min、肝機能障害なし。 CYP3A4強阻害/誘導薬なし。 アカシジア、振戦なし。眠気軽度。 体重変化なし。今後も食後服用とEPSを継続確認。
服薬指導でそのまま使える説明
「この薬は食事を取った後の方がしっかり吸収されます。食後に飲んでください。」
「脚を動かしたくて座っていられない感じが出たら、副作用の可能性があるので相談してください。」
「抗菌薬や抗真菌薬など、一緒に使えない薬があります。別の病院でもラツーダを飲んでいることを伝えてください。」
よくある質問
Q. 350kcal以上食べないとダメ?
国内添付文書の承認用法は「食後」で、350kcalという具体的数値は記載されていません。実臨床では一定量の食事を確保する目安として350kcal程度が紹介されることがあります。
Q. 夜に飲む薬?
承認用法は1日1回食後であり、夕食後に限定されているわけではありません。処方指示に従います。
Q. 体重が増えにくい?
他の一部抗精神病薬より代謝への影響が比較的小さいとされますが、体重増加・高血糖が起こらないわけではありません。
Q. アカシジアが出たら勝手に中止していい?
自己判断で中止せず、症状の強さを含めて処方医へ相談します。
Q. 双極性障害でずっと飲み続ける?
双極性うつが改善した場合は継続の要否を検討します。維持療法の有効性は確立していないため、漫然継続しないことが添付文書に記載されています。

まとめ|ラツーダは「食後+CYP3A4+適応別用量」が核心
- 国内販売開始は2020年6月
- 統合失調症:通常40mg、最大80mg
- 双極性うつ:20mg開始、最大60mg
- 1日1回食後
- 食後では空腹時よりCmax約4倍・AUC約3倍
- 強いCYP3A4阻害薬・誘導薬は併用禁忌
- 腎・肝機能障害では開始量・上限量が変わる
- アカシジア、眠気、高血糖、起立性低血圧、TD、悪性症候群などに注意
- 双極性うつでは希死念慮・行動変化を特に確認


参考文献・一次情報
※本記事は2026年10月5日時点でPMDAの電子添文(2026年8月改訂・第11版)等を確認して整理しています。個別の処方変更は主治医・薬剤師へ相談してください。



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