「テルミサルタンとオルメサルタン、どちらもARBだけど何が違う?」
「ミカルディスとオルメテックはどちらが強い?」「腎機能が悪い患者では?」「高カリウム血症や脱水では?」「長期の下痢は薬が原因?」
テルミサルタン(先発:ミカルディス)とオルメサルタン メドキソミル(先発:オルメテック)は、どちらもアンジオテンシンII AT1受容体を遮断するARBです。
作用機序は共通していますが、開始量・最大量、排泄経路、肝機能・腎機能での注意、長期投与時に見る副作用には違いがあります。
この記事の結論
- どちらもAT1受容体を遮断するARBで、高血圧症に使用
- テルミサルタン:通常40mg 1日1回、20mgから開始、最大80mg
- オルメサルタン:通常10〜20mg 1日1回、5〜10mgから開始、最大40mg
- テルミサルタンは胆汁排泄型で、肝障害では血中濃度上昇に注意
- オルメサルタンは腎機能低下でAUCが上昇しやすい
- どちらも高K血症・腎機能悪化・低血圧に注意
- 妊婦・妊娠している可能性のある女性は禁忌
- 手術前24時間は投与しないことが望ましい
- オルメサルタンでは長期投与による体重減少を伴う重度下痢・腸絨毛萎縮が重要
- 単純な「強さ」ではなく、患者背景・腎肝機能・継続性で使い分ける



※図は比較ポイントを簡略化したものです。実際の用量・継続・変更は血圧、腎機能、肝機能、K値、併用薬、妊娠可能性などを踏まえて判断し、最新の電子添文を優先してください。
- テルミサルタンとオルメサルタンの違いを比較
- 作用機序|どちらもAT1受容体を遮断する
- 用量|数字だけを横並びにしない
- テルミサルタンの特徴|胆汁排泄型ARB
- オルメサルタンの特徴|腎機能低下で曝露上昇
- 半減期|1日1回でも薬物動態は違う
- テルミサルタンの薬物動態は「非線形」
- 食事の影響|テルミサルタンは食事条件をそろえる
- 高カリウム血症|どちらも共通の重要ポイント
- 腎動脈狭窄|腎機能が急に悪化することがある
- NSAIDs併用|腎機能悪化に注意
- 妊娠|どちらも禁忌
- 手術前24時間|ARBは止めることが望ましい
- オルメサルタン特有の注意|長期投与中の重度下痢
- 処方意図|テルミサルタンからオルメサルタンへ変更されたら?
- 薬剤師が確認したいチェックリスト
- 疑義照会・確認を考えたい症例
- 服薬指導|患者さんへの説明例
- よくある質問
- まとめ|同じARBでも「排泄・用量・長期副作用」が違う
- 参考文献・一次情報
テルミサルタンとオルメサルタンの違いを比較
| 項目 | テルミサルタン | オルメサルタン |
|---|---|---|
| 先発品 | ミカルディス | オルメテック |
| 分類 | ARB | ARB |
| 通常量 | 40mg 1日1回 | 10〜20mg 1日1回 |
| 開始量 | 20mgから開始 | 5〜10mgから開始 |
| 最大量 | 80mg/日 | 40mg/日 |
| 排泄・代謝の特徴 | 胆汁排泄型、主にグルクロン酸抱合 | プロドラッグから活性体へ加水分解 |
| 肝機能 | 重篤な肝障害・胆汁分泌不良は禁忌 | 肝障害で血中濃度上昇に注意 |
| 腎機能 | 重篤腎障害では悪化に注意 | 腎機能低下でAUC上昇 |
| 薬物動態 | 非線形(用量増加以上にCmax・AUCが上昇) | 比較的用量比例的 |
| 食事の影響 | あり(空腹時は食後より血中濃度が高い) | 影響は小さい |
| 特徴的な副作用 | 高K、腎不全、低血圧など | 高K、腎不全、重度下痢など |
作用機序|どちらもAT1受容体を遮断する
アンジオテンシンIIはAT1受容体を介して血管収縮、アルドステロン分泌、ナトリウム・水分貯留などを起こし、血圧を上げます。
テルミサルタンとオルメサルタンはいずれもAT1受容体を遮断し、血管を拡張して血圧を下げます。
そのため作用機序そのものは共通で、「ARBの中で片方だけ全く別の働きをする」わけではありません。
用量|数字だけを横並びにしない
テルミサルタン
通常、成人には40mgを1日1回投与します。ただし20mgから開始し、最大80mgまで増量できます。
オルメサルタン
通常、成人には10〜20mgを1日1回投与します。通常は5〜10mgから開始し、最大40mgです。
実務ポイント:「40mgだからオルメサルタンよりテルミサルタンの方が強い」という比較はできません。薬ごとに用量設定が違うため、mg数で強弱を判断しないことが大切です。
テルミサルタンの特徴|胆汁排泄型ARB
テルミサルタンは主にグルクロン酸抱合を受け、胆汁中に排泄されます。
そのため腎排泄型の薬と比べると、腎機能だけでなく肝機能・胆汁排泄を意識する薬です。
電子添文では、胆汁の分泌が極めて悪い患者や重篤な肝障害患者は禁忌。肝機能障害患者では血中濃度が上昇することがあり、最大40mg/日とされています。
オルメサルタンの特徴|腎機能低下で曝露上昇
オルメサルタン メドキソミルはプロドラッグで、消化管や肝臓などで加水分解されて活性体オルメサルタンになります。
腎機能障害患者では血中曝露が上昇し、健康成人と比べてAUCは軽度・中等度・重度腎機能障害でそれぞれ約1.6倍、1.8倍、2.8倍となったデータがあります。
重篤な腎機能障害では有効性・安全性の十分な臨床試験がなく、腎機能悪化に注意します。
半減期|1日1回でも薬物動態は違う
オルメサルタンの単回投与時の半減期はおおむね7〜11時間程度、反復投与時では約6時間前後というデータがあります。
一方、テルミサルタンは長時間作用型ARBとして1日1回投与されます。
臨床では半減期だけで優劣を決めず、24時間血圧、早朝高血圧、服薬アドヒアランスなどを総合して評価します。
テルミサルタンの薬物動態は「非線形」
テルミサルタンの特徴のひとつが、用量と血中濃度が単純な比例関係にならない非線形の薬物動態です。
本態性高血圧症患者に20mg、40mg、80mgを食後単回投与したデータでは、Cmaxはそれぞれ約33.8、78.5、365.8ng/mL、AUC(0-24h)は約424.7、807.4、2304.5ng・h/mLでした。
40mgから80mgへ用量が2倍になっても、CmaxとAUCは単純な2倍ではなく、それ以上に増加しています。
実務ポイント:テルミサルタンは「20→40→80mgだから血中濃度も比例して2倍ずつ」とは考えません。増量後は血圧低下、めまい、腎機能、K値などを改めて確認します。
食事の影響|テルミサルタンは食事条件をそろえる
テルミサルタン
テルミサルタンは食事の影響を受ける薬です。電子添文では、空腹時投与では食後投与より血中濃度が高くなることが報告されています。
そのため、普段から食後に服用している患者には、毎日食後に服用するよう服薬条件をそろえることが推奨されています。
「食前でも食後でも全く同じ」と説明するのではなく、普段どのタイミングで飲んでいるかを確認し、自己判断で頻繁に切り替えないよう案内します。
オルメサルタン
オルメサルタン20mgを空腹時・低脂肪食後・高脂肪食後に投与した試験では、CmaxとAUCに大きな差はなく、食事の影響は認められていません。
そのためオルメサルタンでは、食事条件そのものよりも毎日同じ時間帯に継続できるかが実務上は重要です。
比較すると:テルミサルタンは食事の影響を受けるため服用条件をそろえることが重要。一方、オルメサルタンは食事の影響が小さい、という違いがあります。
高カリウム血症|どちらも共通の重要ポイント
ARBはアルドステロン作用を抑える方向に働くため、高カリウム血症を起こすことがあります。
特に確認したい患者
- 腎機能障害
- 糖尿病
- 高K血症の既往
- カリウム保持性利尿薬使用中
- カリウム製剤使用中
- ACE阻害薬・他のRAAS阻害薬併用
採血でK値と腎機能を追うことが重要です。
腎動脈狭窄|腎機能が急に悪化することがある
両側性腎動脈狭窄、または片腎で腎動脈狭窄がある患者では、ARBにより糸球体ろ過圧が低下し、腎機能が急速に悪化する可能性があります。
ARB開始後・増量後にCrが急上昇した場合は、脱水やNSAIDs併用とともに腎動脈狭窄も鑑別に入ります。
NSAIDs併用|腎機能悪化に注意
ARBにNSAIDsが加わると、腎血流低下が重なり腎機能悪化リスクが高まることがあります。
さらに利尿薬も併用している場合は、いわゆる「トリプルワーミー」と呼ばれる組み合わせになり、脱水時の急性腎障害リスクを特に意識します。
妊娠|どちらも禁忌
ARBは妊娠中に使用すると、胎児・新生児の腎障害、羊水過少、頭蓋・肺・腎の形成不全、死亡など重大な影響を及ぼす可能性があります。
テルミサルタン、オルメサルタンともに妊婦または妊娠している可能性のある女性には禁忌です。
妊娠可能年齢の女性では、妊娠予定・妊娠の可能性を確認することが重要です。
手術前24時間|ARBは止めることが望ましい
両剤とも電子添文では、手術前24時間は投与しないことが望ましいとされています。
麻酔中にRAAS抑制が重なることで高度な血圧低下を起こす可能性があるためです。
患者から「明日手術だけど薬は全部いつも通り?」と相談された場合は、ARB服用中であることを確認し、医療機関の休薬指示を確認します。
オルメサルタン特有の注意|長期投与中の重度下痢
オルメサルタンでは、長期投与によって体重減少を伴う重度の下痢が起こることがあります。
腸生検で腸絨毛萎縮などが認められた報告もあり、電子添文上も重大な副作用として記載されています。
薬剤師実務:数か月〜年単位でオルメサルタンを服用している患者が「原因不明の下痢と体重減少」を訴えた場合、感染症や消化器疾患だけでなく薬剤性も疑います。
処方意図|テルミサルタンからオルメサルタンへ変更されたら?
変更理由は処方箋だけでは断定できませんが、次のような可能性があります。
- 血圧コントロールを再調整した
- 用量設計を変更した
- 副作用や検査値を考慮した
- 配合剤を含めた治療設計を変えた
- 服薬継続性や剤形を考慮した
「効かなかったから変更」と決めつけず、家庭血圧、朝の血圧、腎機能、K値、ふらつきなどを確認します。
薬剤師が確認したいチェックリスト
- □ 家庭血圧・診察室血圧はどうか
- □ 開始量・増量が患者背景に合っているか
- □ Cr/eGFRは悪化していないか
- □ K値は上昇していないか
- □ めまい・立ちくらみ・失神がないか
- □ NSAIDs・利尿薬・K製剤を併用していないか
- □ 脱水・下痢・嘔吐がないか
- □ 妊娠予定・妊娠可能性がないか
- □ 手術予定がないか
- □ オルメサルタン長期服用中に体重減少を伴う下痢がないか
疑義照会・確認を考えたい症例
ケース1:テルミサルタン80mg+重度肝障害
重篤な肝障害は禁忌で、肝障害患者では最大40mg/日です。最新の肝機能と処方意図を確認します。
ケース2:オルメサルタン長期服用中、原因不明の下痢と体重減少
薬剤性の重度下痢・腸絨毛萎縮を考慮し、処方医へ情報提供します。
ケース3:ARB+NSAIDs+利尿薬、夏場に食事水分低下
急性腎障害リスクが高まるため、脱水症状、Cr/eGFR、服薬状況を確認します。
ケース4:ARB開始後にK 5.8mEq/L
高K血症を疑い、腎機能・併用薬・サプリメントまで確認します。
ケース5:妊娠が判明
ARBは妊娠中禁忌です。自己判断で継続せず、速やかに処方医へ連絡します。
服薬指導|患者さんへの説明例
テルミサルタン
「血管を収縮させるホルモンの働きを抑えて血圧を下げる薬です。立ちくらみが強い、脱水している、手術予定がある場合は相談してください。妊娠の可能性がある場合も必ず申し出てください。」
オルメサルタン
「血管を広げて血圧を下げるARBという薬です。長く飲んでいる中で、原因不明の強い下痢や体重減少が続く場合は薬が関係することもあるので相談してください。」
よくある質問
Q1.テルミサルタンとオルメサルタンはどちらが強い?
単純な強弱では比較できません。承認用量、患者背景、24時間血圧、腎肝機能などを踏まえて選択します。
Q2.テルミサルタン80mgは多すぎる?
成人の最大投与量は80mg/日です。ただし肝障害患者では最大40mg/日です。
Q3.オルメサルタン40mgは最大量?
はい。通常10〜20mg/日で、最大40mg/日です。
Q4.ARBは腎臓を守る薬なのに腎機能が悪化することがある?
あります。特に脱水、腎動脈狭窄、NSAIDs併用などではCrが上昇することがあります。
Q5.オルメサルタンで下痢が続くことはある?
まれですが、長期投与で体重減少を伴う重度下痢や腸絨毛萎縮が報告されています。

※図は実務上の要点を整理したものです。mg数の大小だけでなく、テルミサルタンの非線形PK・食事の影響、腎肝機能、長期副作用まで含めて使い分けます。
まとめ|同じARBでも「排泄・用量・長期副作用」が違う
- テルミサルタン、オルメサルタンともAT1受容体を遮断するARB
- テルミサルタンは20mg開始、通常40mg、最大80mg
- オルメサルタンは5〜10mg開始、通常10〜20mg、最大40mg
- テルミサルタンは胆汁排泄型で肝機能を特に意識
- テルミサルタンは非線形PKで、用量増加以上に血中濃度が上昇する
- テルミサルタンは食事の影響を受けるため、服用条件をそろえる
- オルメサルタンは腎機能低下でAUC上昇
- どちらも高K血症・腎機能悪化・低血圧・妊娠禁忌に注意
- 手術前24時間は休薬確認
- オルメサルタン長期服用では重度下痢・体重減少を見逃さない
- mg数の大小ではなく、患者背景と処方目的で使い分ける
参考文献・一次情報
※本記事は2026年10月時点のPMDA電子添文等をもとに作成しています。ARBの選択・増減量は血圧、腎機能、K値、肝機能、併用薬、妊娠可能性などにより異なります。実際の調剤・服薬指導では最新の電子添文と処方医の指示を確認してください。


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