

前書き:この記事でわかること
「溶連菌」は、子どもによくある感染症として知られますが、実は大人もかかります。さらに、ニュースなどで耳にする「劇症型溶連菌(STSS)」は、一般的な“のどの溶連菌”とは別物として理解する必要があります。
この記事では、A群溶血性レンサ球菌(GAS)による咽頭炎(いわゆる溶連菌のど風邪)を中心に、症状、検査、治療(抗菌薬の考え方・期間)、家庭内での感染対策、登園登校の目安、注意すべき合併症までを整理します。

本文:溶連菌って何?(まずは全体像)
溶連菌=「レンサ球菌」の仲間。よく話題になるのはA群(GAS)
「溶連菌(溶血性レンサ球菌)」は、血液寒天培地で赤血球を溶かす性質(溶血)をもつレンサ球菌の総称です。学校や家庭でよく遭遇するのは、A群溶血性レンサ球菌(GAS:Group A Streptococcus)による感染症で、代表が溶連菌性咽頭炎(のどの感染)です。潜伏期間はだいたい2〜5日とされます。
また、GASは猩紅熱(しょうこうねつ)(発疹・いちご舌など)や、とびひ(膿痂疹)などの皮膚感染を起こすこともあります。さらに、まれですが重症型として劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS)があります。

厚生労働省も、STSSは突発的に発症して急速に悪化し、多臓器不全に進行することがある重症感染症で、致命率が高い旨を案内しています。一方で、子どもに多い溶連菌性咽頭炎は、適切に診断・治療すれば多くは改善します。「同じ言葉でも別の病態がある」のがポイントです。
どんな症状?「溶連菌っぽい」サイン
典型例では、次のような症状が目立ちます。
- 発熱
- のどの強い痛み
- 倦怠感、頭痛、腹痛、吐き気(子どもで目立つことも)
- 扁桃の腫れ・白い付着物(膿)
- 首(前頸部)のリンパ節の腫れ・痛み
- 猩紅熱:発疹、いちご舌、落屑(回復期に皮がむける)
一方で、咳・鼻水・嗄声(声がれ)・結膜炎などが前面に出る場合は、ウイルス性の可能性が高いとされます。成人では特に、咽頭炎の多くがウイルス性で、抗菌薬が不要なケースが多い点が重要です。

検査は必要?迅速検査(抗原検査)と培養
溶連菌かどうかを見分けるため、医療機関ではのどのぬぐい液を使って検査します。
- 迅速抗原検査(いわゆる“溶連菌の検査キット”):その場で結果が出やすい。感度はおおむね70〜90%、特異度は高い(報告では95%程度)とされ、臨床では広く活用されています。
- 培養検査:結果まで時間がかかるが、確定には有用。
つまり、迅速検査は便利ですが「陰性=絶対に溶連菌ではない」とまでは言い切れないことがあります。症状や流行状況をふまえて医師が判断します。
放置するとどうなる?合併症(まれだが重要)
溶連菌性咽頭炎は自然軽快することもありますが、治療が不十分だと、次の合併症が問題になります。
- 化膿性合併症:扁桃周囲膿瘍など
- 免疫学的合併症:リウマチ熱、急性糸球体腎炎(感染後に発症することがある)
このため、ガイドラインではGASが検出された急性咽頭・扁桃炎に対して、抗菌薬を投与する場合はアモキシシリン(AMPC)を10日間といった基本方針が示されています(成人・小児の基本)。
治療:溶連菌はどう治す?(抗菌薬・期間・家庭ケア)

治療の目的は「早く治す」だけじゃない
抗菌薬の目的は、症状を少し短くするだけでなく、次のような意味があります。
- 症状の改善(罹病期間の短縮)
- 周囲への感染性を下げる(抗菌薬開始後24時間で感染性が低下するとされる)
- 合併症(リウマチ熱など)の予防
第一選択:ペニシリン系(アモキシシリン等)
国内の提言では、GASが検出された急性咽頭・扁桃炎に抗菌薬を投与する場合、アモキシシリン(AMPC)内服10日間が基本として推奨されています。海外(CDC等)でも、ペニシリンまたはアモキシシリンが抗菌薬の第一選択として示されています。
ポイント:症状が良くなっても、医師の指示どおりの期間飲み切ること。自己判断で中止すると、再燃や家庭内・集団内での再拡大につながることがあります。
ペニシリンアレルギーがある場合
ペニシリン系が使えない場合は、医師が状況に応じてマクロライド系などを選択します(耐性状況・病状・既往歴などを踏まえる必要があります)。
薬剤師として特に注意したいのは、「昔、ペニシリンで発疹が出た=本当にアレルギーか」の整理です。蕁麻疹・呼吸苦・アナフィラキシーなどの即時型が疑われる場合は要注意ですが、詳細は医師が評価します。自己申告だけで薬が大きく変わることもあるため、覚えている範囲で経過を伝えると診療の質が上がります。
解熱剤やのどの痛みはどうする?(対症療法)
抗菌薬に加えて、つらい症状は対症療法で和らげます。
- 発熱・痛み:医師の指示で解熱鎮痛薬(アセトアミノフェン等)
- 水分摂取:脱水予防(少量頻回でもOK)
- 食事:刺激の少ないもの(ゼリー、スープ、うどん等)
- 室内:加湿、十分な休養
「抗菌薬を飲んだらいつから人にうつりにくい?」登園・登校の目安
学校関連では、文部科学省の解説資料で、A群溶血性レンサ球菌は適切な抗菌薬療法により24時間以内に感染力が失せる旨が示され、治療開始後24時間以降は登校(園)可能と整理されています(ただし全身状態が前提)。
つまり、目安としては
「抗菌薬を始めて24時間+元気がある」
がポイントです。園・学校のルールや診断書/登園許可証の要否は地域差があるので、最終的には施設の方針に従ってください。
溶連菌を疑うときの実践:受診の目安・家庭内感染対策

受診の目安(とくに早めが良いケース)
以下に当てはまる場合は、医療機関での評価をおすすめします。
- 強いのどの痛み+高熱で、食事・水分がとりづらい
- 扁桃の腫れが強い、口が開けにくい、よだれが増える(扁桃周囲膿瘍などの可能性)
- 発疹(猩紅熱を含む)が出てきた
- 家族やクラスで溶連菌が流行している
- 心臓病・腎臓病など基礎疾患がある、免疫が弱い
家庭内感染対策:うつさない・もらわない
溶連菌は、主に飛沫と接触で広がります。ワクチンは承認されていません。基本はとても地味ですが、効きます。
- 手洗い(石けん+流水)
- 咳エチケット
- タオルの共用を避ける
- コップ・箸・スプーンの共用を避ける
- 抗菌薬開始後24時間までは、できれば距離をとる
「家族も予防で抗菌薬を飲んだほうがいい?」と質問されがちですが、溶連菌性咽頭炎の一般的な家庭内接触で、ルーチンに予防投与をする考え方は一般的ではありません。ただし、家族が強い症状を出したら受診して検査対象になります(同時期に発症しやすい)。
症例・具体例:よくある相談を“薬剤師目線”で整理
ケース1:子ども(7歳)「熱が下がったから抗菌薬をやめたい」

対応の要点:
- 症状が軽くなっても“菌を減らし切る”ために期間が大事
- 飲み忘れが多い場合は、いつ・どれくらい抜けたかを整理して受診先/薬局に相談
- 下痢・発疹など副作用が疑われる場合は自己中断せず、まず相談
ケース2:大人「のどが痛い。溶連菌が心配。検査は必須?」
成人の咽頭炎はウイルスが多く、咳や鼻汁などが強い場合は特にウイルスが疑われます。一方で、発熱・扁桃所見・リンパ節痛などが揃う場合、医師がスコア(Centor/McIsaacなど)を参考にしつつ、迅速検査を検討します。迅速検査は感度が100%ではないため、症状が強い場合は総合判断になります。
ケース3:「溶連菌=人食いバクテリア?」と不安
ニュースで注目されるSTSSは、突然発症して急速にショック・多臓器不全へ進む重症感染症で、厚労省も注意喚起しています。一般的な溶連菌性咽頭炎とは区別して理解しましょう。
ただし、以下のような症状がある場合は、夜間でも救急要請を含めて緊急受診を考えてください。
- 激しい痛み(皮膚や筋肉の痛みが異常に強い等)
- 急な意識障害、息苦しさ、ぐったりして反応が悪い
- 急速に広がる腫れ・紫斑、ショック症状(冷汗、血圧低下)
まとめ:溶連菌でいちばん大事なこと
- 溶連菌(主にA群GAS)は、のどの痛み・発熱が目立つことが多い
- 診断は迅速検査などで確認し、ウイルス性に抗菌薬を使わない
- GAS陽性で治療する場合、基本はペニシリン/アモキシシリンなど
- 症状が良くなっても、指示された日数を飲み切る
- 登園登校の目安は抗菌薬開始後24時間+全身状態
- STSS(劇症型)は別枠の重症感染。疑えば緊急受診

よくある質問
Q. 溶連菌は自然に治りますか?抗生物質は必須?
自然軽快することもありますが、GASが検出された場合に抗菌薬治療を行うのは、症状軽減だけでなく周囲への感染性低下や合併症予防の目的があります。治療の要否は検査結果と臨床判断で決まります。
Q. 抗菌薬を飲み始めたら、いつからうつりにくくなりますか?
資料では適切な抗菌薬療法により24時間以内に感染力が失せる旨が示されています。目安は「開始後24時間」です(全身状態が良いことが前提)。
Q. 家族が感染したら、同居家族も検査や薬が必要?
症状がある家族は受診して検査対象になることがあります。一方、無症状の全員に予防的に抗菌薬を使う考え方は一般的ではありません(状況により医師判断)。家庭内では手洗い、タオルや食器の共用回避が有効です。
Q. 何回も溶連菌になります。体質ですか?
同じシーズンに繰り返す場合、再感染(別株)、家庭・集団内での再曝露、内服の飲み残し、検査のタイミングなど複数の要因があり得ます。回数が多い場合は、医師に経過(いつ・何回・治療薬・飲み切れたか)を整理して相談すると原因が絞れます。
Q. 溶連菌のとき、お風呂は入っていい?
高熱でつらい・ぐったりしているときは無理せず休み、入浴は短時間のシャワー程度が無難です。家族への感染対策として、タオル共用を避け、浴室の換気や手洗いを徹底します。
Q. 劇症型(STSS)って、のどの溶連菌から必ずなるの?
必ずなるわけではありません。STSSは重症感染で、通常無菌部位へ侵入して急速に悪化する病態です。一般的な溶連菌性咽頭炎とは区別して理解し、強い痛みやショック症状など“異常”があれば緊急受診を検討してください。
参考文献
- 気道感染症の抗菌薬適正使用に関する提言(改訂版)(日本感染症学会ほか)
最終確認日:2025-12-18 - A群溶血性レンサ球菌感染症(国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト)
最終確認日:2025-12-18 - 劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS)(厚生労働省)
最終確認日:2025-12-18 - 学校において予防すべき感染症の解説(文部科学省資料)
最終確認日:2025-12-18 - Clinical Guidance for Group A Streptococcal Pharyngitis(CDC)
最終確認日:2025-12-18 - アモキシシリンカプセル/サワシリン 添付文書(JAPIC)
最終確認日:2025-12-18 - クラリスロマイシン錠 添付文書(JAPIC)
最終確認日:2025-12-18
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