


子どもの癇癪(かんしゃく)は、子育て中の多くの親が経験する悩みのひとつです。
突然怒り出したり、泣き叫んだり、理由がわからず戸惑うことも少なくありません。
「なぜ癇癪を起こすのか?」を知ることで、より適切な対応ができ、親子ともに安心できる時間が増えていきます。
この記事では、子どもが癇癪を起こす背景と、日常生活の中でできる対策方法を、専門的な視点からわかりやすく解説します。
癇癪とは?
癇癪(かんしゃく)とは、子どもが自分の気持ちや要求をうまく伝えられないときに起こる感情の爆発のことを指します。
泣き叫んだり、地面に寝転んで暴れたり、物を投げたりといった行動が見られます。
これは一時的な「わがまま」ではなく、発達段階における自然な反応であり、子どもの脳がまだ感情を上手にコントロールできない状態を表しています。
特に1~3歳頃の「イヤイヤ期」に多く見られますが、4歳以降でも環境やストレスによって起こることがあります。

子どもが癇癪を起こす主な理由とは?
子どもが癇癪を起こす理由はさまざまですが、以下のような要因が複雑に絡み合っていることがほとんどです。
「どうして癇癪を起こすのか?」という視点を持つことが、適切な対応の第一歩になります。
①発達段階によるもの
1〜3歳の子どもは、感情をコントロールする「前頭前野」が未発達です。
そのため、自分の思い通りにならないと怒りの感情を爆発させやすい傾向があります。
②言葉で表現できないフラストレーション
「言いたいことがあるのにうまく伝えられない」──そんなもどかしさが癇癪となって表れることは非常に多いです。
特に言葉の発達が途中段階の幼児では、よく見られる反応です。
③親の注目を引きたい
癇癪は、親や周囲の関心を引こうとする行動でもあります。
構ってもらえない、愛情が足りないと感じたときに起こることがあります。
④環境やストレスの影響
引っ越し、保育園の変更、きょうだいの誕生など、生活環境の変化やストレスが癇癪を引き起こすきっかけになることも。
⑤睡眠不足・空腹・疲労
基本的な生活リズムの乱れも、癇癪の大きな要因です。
空腹や眠気、疲れによって感情のコントロールが難しくなります。

癇癪への具体的な対応方法は?
子どもが癇癪を起こしたとき、親がどのように対応するかが、その後の子どもの行動に大きく影響します。
ここでは家庭で今すぐ実践できる5つの対応方法をご紹介します。
①親が落ち着いて対応する
子どもが癇癪を起こしても、まず親が感情的にならないことが大切です。
子どもは大人の反応を敏感に感じ取ります。
冷静に受け止めることで、子どもも徐々に落ち着きを取り戻します。
②感情を言葉にして代弁する
「○○したかったんだね」「いやだったんだよね」と、子どもの感情を言葉にして伝えることで、子どもは「気持ちを分かってもらえた」と安心します。
③無理に止めようとしない
泣き叫んでいるときに無理にやめさせようとすると、逆効果になることがあります。
まずは気持ちが落ち着くまで待つ姿勢を大切に。
④癇癪が収まったあとに抱きしめる
癇癪が収まったタイミングで、優しくスキンシップをとると、「癇癪を起こしても見捨てられない」という安心感につながります。
⑤生活リズムと安心できる環境づくり
睡眠・食事・遊びのバランスを整えることは、癇癪の頻度を減らす基本です。
また、安心して過ごせる家庭環境をつくることも大切です。

子どもの癇癪が激しくて外出もつらい…そんなときは?
「スーパーで突然泣き叫ぶ」「地面に寝転んで暴れ出す」「周りの視線が怖い」──そんな経験、ありませんか?
他の親も同じような思いをしていること、決してあなただけが悩んでいるわけではないことを知ってほしいです。
癇癪は大人にとって想像以上に音量も迫力もすごく、制御不能に思えるもの。
周囲の目も気になりますが、本当に必要なのは「子どもの気持ちに寄り添うこと」です。
癇癪で白い目を向けられたとき、どうすればいい?
「うるさいな」「しつけがなってない」といった周囲の視線──これほど親にとって辛いものはありません。
でもまず大切なのは、
対処法①:その場を離れて落ち着ける空間へ
子どもが癇癪を起こしたら、可能であればすぐに落ち着ける場所(トイレの近く、店の外、駐車場など)に移動しましょう。
周囲の視線から一度離れることで、自分の気持ちも子どもの気持ちもリセットしやすくなります。
対処法②:子どもを守る意識を持つ
他人の目よりも大切なのは、目の前で苦しんでいるわが子を守ることです。
「この子は今、感情をコントロールする練習中なんだ」と考え、毅然と対応しましょう。
対処法③:「目を合わせない」「気にしない」の練習
人の目が気になるのは自然なことですが、視線をあえて無視する練習をすると気持ちが楽になります。
「今は周りよりも子どもに集中」と決めることで、不安が減っていきます。
対処法④:共感の言葉を自分にかける
「私よくやってるよ」「今日も頑張ってるね」と、自分を励ます言葉を心の中で唱えてください。
見ず知らずの人より、自分の声の方が大切です。

癇癪の治療法はあるの?
基本的に、癇癪は病気ではなく、成長過程で自然に見られる行動です。
そのため、薬や特別な治療を行うことは一般的ではありません。
ただし、以下のような場合は医療的な支援が必要になることもあります。
①癇癪が極端に激しく、生活に支障がある場合
たとえば保育園や家庭生活で他者との関係が築けないほど頻繁に起こる場合、専門機関に相談することが推奨されます。
②発達障害の可能性がある場合
注意欠陥・多動性障害(ADHD)や自閉スペクトラム症(ASD)など、発達障害が関係していることもあります。
癇癪の裏に、感覚過敏やこだわりなどがあるケースです。
このような場合は、小児神経科や児童精神科での評価が有効です。
③療育やカウンセリング
子ども本人や親を対象とした発達支援・心理カウンセリングも癇癪の改善に有効です。
療育センターや発達支援施設では、日常生活に役立つスキルを遊びを通して学ぶことができます。
④癇癪に治療薬はあるの?
癇癪は病気ではないため、基本的に治療薬は存在しません。
多くの場合、生活リズムや親の関わり方を整えることで自然に改善します。
ただし、発達障害などが背景にある場合は例外
注意欠如・多動性障害(ADHD)や自閉スペクトラム症(ASD)などが診断された場合、癇癪の背景にある衝動性や情動調整の困難さに対して、以下のような薬が処方されることがあります。
- メチルフェニデート(コンサータなど):ADHD治療薬、衝動のコントロールに使用
- アトモキセチン(ストラテラ):ADHDの中核症状に作用、イライラ軽減の可能性あり
- グアンファシン(インチュニブ):衝動性・情緒の安定化に有効
これらの薬は、必ず専門医の診断と綿密な評価のうえで使用されます。
その他に使われる可能性のある薬
癇癪が非常に激しく、日常生活に大きく支障がある場合には、
- 非定型抗精神病薬(リスペリドンなど)
- SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
などが併用されることもあります。
ただし、これらは重度の症状に対する例外的な措置であり、長期的な服用には慎重な判断が必要です。
治療薬に頼る前に考えるべきこと
薬物療法を始める前に、まずは
- 生活リズムの見直し
- 親の対応方法の改善
- ペアレント・トレーニングや療育の導入
など、非薬物療法が第一選択とされます。
米国小児科学会や日本の発達支援の現場でも、まず環境調整から始めることが推奨されています。

癇癪への対応に成功した実例・体験談
ここでは、実際に癇癪で悩んでいた家庭の体験談をもとに、どのように乗り越えたかをご紹介します。
読者の皆さんのヒントになるかもしれません。
【体験談①】「気持ちを言葉にする」だけで劇的変化
2歳の男の子を育てているAさんは、毎朝の着替えで大泣きされて困っていました。
そこで、癇癪が始まりそうになったときに、
「シャツを着たくないんだね。暑いのかな?」「気持ち、ママに伝えてくれてありがとうね」
と子どもの気持ちを代弁する声かけを続けたところ、1週間ほどで徐々に癇癪が減少。
「今は笑顔で着替えられることが増えました」と話しています。
【体験談②】生活リズムを整えたら激減!
3歳の女の子を持つBさんは、夜遅くまでテレビを見たり、おやつをだらだら食べたりしていた生活を見直しました。
- 夜8時就寝を徹底
- 朝ごはんを必ず一緒に食べる
- 保育園から帰宅後は30分の親子時間を確保
このように生活リズムと安心できる環境を意識したところ、2週間ほどで「全然泣かなくなった!」と驚いたそうです。
【体験談③】専門機関のサポートで心が軽く
癇癪が1日に何度もあり、外出すら難しかったCさん親子。
小児科医からの勧めで地域の療育センターを受診し、発達支援プログラムを受けることになりました。
現在は専門スタッフと週1回の個別セッションを受けながら、家庭での接し方を少しずつ学んでいます。
「あのとき相談して本当に良かった」と話しています。

スーパーで「お菓子買って!」と癇癪…買ってあげるべき?
よくあるシチュエーションです。
買い物中にお菓子売り場で泣き叫び、「買ってくれないなら帰らない!」と癇癪を起こす──親としては困ってしまいますよね。
結論:癇癪に屈して買うと、次も同じ行動が強化される
癇癪を起こした結果、希望が通ったという体験を積むと、「泣けば買ってもらえる」と学習してしまいます。
これは“報酬強化”と呼ばれる心理学的な現象で、次回以降の癇癪をより強くする可能性があります。
対応のポイント
- 癇癪の最中は要求を叶えない(ただし安全を最優先)
- 落ち着いてから「今日は買わないって言ったよね。わかってくれてありがとう」と落ち着いた行動を肯定する
- 出かける前にルールを共有する(例:「今日はお菓子は買いません」)
- 泣いても買えないことを一貫して伝える
最初は難しいですが、一貫した態度が癇癪を減らす近道です。
どうしても泣き止まないときは、買い物を一度中断して外に出て気持ちを落ち着かせるのも方法のひとつです。
代替案を準備するのも◎
「お菓子は買えないけど、帰ったら一緒にゼリーを作ろうか」など、楽しい代替案を提案することで切り替えやすくなることもあります。

子どもに殴られる・髪を引っ張られる…どうすればいい?
癇癪の延長で、手を出す・叩く・髪を引っ張るなどの行動が出ることがあります。
多くの親が「まさか自分が叩かれるなんて…」とショックを受けます。
ですが、それは“感情の爆発の一形態”であって、親を嫌いになったからではありません。
暴力的な癇癪への適切な対応
- すぐに距離をとる(安全確保が最優先)
- 目を見て「叩かれると悲しい。やめてね」と短く静かに伝える
- 子どもが落ち着いたら改めて言葉で伝える(例:「叩きたくなるくらいイヤだったんだね。でも叩いても伝わらないよ」)
- 暴力では要求が通らないという一貫した姿勢を保つ
暴力をふるったときにすぐにお菓子を与えたり、望みを叶えてしまうと、暴力が“有効な手段”だと誤って学習してしまいます。
感情を言葉で教えることが大切
叩く=「怒ってる」「悔しい」「嫌だ」と言いたい──でも言葉で表現できないから手が出てしまうのです。だからこそ、
「今すごくイヤだったんだよね」「わかるよ。でも叩くのはダメだよ」
と気持ちを代弁しながら、適切な表現方法を教えることが重要です。
癇癪中の子を外に連れ出すのも大変…どうすれば?
「騒ぐから外に出よう」と言っても、床に寝転ぶ・物につかまる・走って逃げるなど、実際には連れ出すことすら困難な場合もありますよね。
その“動けない状態”こそ、癇癪のピークです。
対応①:抱っこ・おんぶではなく“包む”
暴れている子どもを無理に抱っこすると、かえって興奮することがあります。
タオルや上着で包むようにして安心感を与えながら、そっと移動するのがおすすめです。
対応②:その場で少し待つのも選択肢
無理に動かそうとせず、いったん親が近くで静かに座ることで、子どもも落ち着くことがあります。
気持ちを受け止める時間を与えることが、結果的にスムーズな移動につながることも。
対応③:あらかじめ“外で休む場所”を決めておく
買い物前に「ここで泣いたら外のベンチに行こうね」とルールを共有しておくと、癇癪時もその場所に意識が向きやすくなります。
対応④:買い物は“予行演習”スタイルで
最初から買い物を完了させようとせず、「入ってみるだけ」「5分だけ歩く」などの予行演習を重ねることで、徐々に慣れていくことも大切です。

対応が難しいと感じたら迷わず相談を
頻繁に暴力的な行動が見られる場合は、児童発達支援センターや小児科、保健師などの専門機関に早めに相談することをおすすめします。

まとめ
癇癪は、子どもが発達の過程で経験する自然な感情表現です。わがままやしつけの失敗ではなく、「成長の一部」として理解し、適切に対応することが大切です。
この記事では以下のポイントを紹介しました:
- 癇癪の原因は発達や環境、生活リズムなど多岐にわたる
- 親が冷静に対応し、感情を受け止める姿勢が大切
- 生活習慣の見直しや安心できる環境づくりが癇癪予防に有効
- 心配な場合は、医療機関や専門支援を活用することも大事
一人で抱え込まず、子どもと一緒にゆっくり成長していきましょう。

よくある質問(Q&A)
癇癪は成長すれば自然に治る?
多くの場合、子どもの発達とともに徐々に落ち着いていきます。ただし、対応の仕方次第で長引くこともあるため、適切な関わりが大切です。
毎日のように癇癪を起こしていて心配です。
頻度が多く、生活に支障がある場合は、小児科や発達相談センターへの相談をおすすめします。専門家のアドバイスを受けるだけでも気持ちが軽くなります。
癇癪のときに放っておいてもいい?
安全が確保されていれば、子どもが落ち着くまで見守るのもひとつの方法です。ただし、感情を受け止める声かけや、落ち着いた後のフォローが重要です。
薬で癇癪は治せるの?
基本的に薬物療法は推奨されません。発達障害などが明確になった場合にのみ、専門医の判断で使われることがあります。
親の育て方が悪いのでしょうか?
いいえ、癇癪は誰にでも起こり得る自然な発達反応です。親の責任ではなく、成長の一部として受け止めることが大切です。
参考文献
- 厚生労働省 発達のめやすと一覧表(Denver IIなど)
- 厚生労働省 児童発達支援ガイドライン
- 塩野義製薬 神経発達症(ASD/ADHD)の治療指導
- M3 PH-LAB 小児神経発達症の薬物療法(リスペリドンなど)
- LITALICOライフマガジン 癇癪とは?発達障害との関連性や対応方法
- LITALICO発達ナビ 発達障害で不安を強く感じたときの対処法
- 発達ナビ 癇癪と発達障害(ADHD/ASD)に関する小児科医回答



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