


連休明けの薬局は「普段どおり」では回りません
連休明け(年末年始・GW・お盆・祝日連続など)は、薬局の業務負荷が一気に跳ね上がります。理由はシンプルで、受診が集中→処方箋が集中→問い合わせ・在庫負荷・待ち時間が連鎖するからです。
さらに、連休中に体調が悪化した患者さん、入院・転院後に処方が変わった患者さん、在庫が品薄になった薬、冷所品の搬入…。「いつもと違う要素」が重なるため、ヒューマンエラー(取り違い・入力ミス・取り漏れ・疑義照会漏れ)のリスクが上がります。
この記事では、薬局勤務者向けに「連休明けに備える準備」と「当日のチェックポイント」を、手順化・見える化してまとめます。新人〜中堅の方がそのまま使えるよう、チェック表・会話例・具体例も入れています。


連休明け準備の全体像:まずは「3つの柱」で考える
- ① 患者集中への備え(受付・待ち時間・電話・在宅・クレーム対応)
- ② 処方変化への備え(薬歴・疑義照会・減薬/増量・退院処方・ハイリスク薬)
- ③ 供給/設備/ルールの備え(在庫・温度管理・レセコン・掲示物・法令/保険)
この3本柱でチェックすると、「何を見落としているか」が見えやすくなります。
【前日〜当日朝】“開局前”にやることチェックリスト
連休明けは、開局してから準備していると確実に詰まります。できれば前日(最終営業日)に、難しければ当日朝に、最低限ここだけは押さえましょう。
1)人員・動線・役割分担(最優先)
連休明けは「処方箋が多い」だけでなく、電話・問い合わせ・在庫確認・疑義照会が増えます。よって、役割分担が曖昧だと“全員が全部やって全員が中断される”状態になります。
| 役割 | おすすめ担当 | 具体タスク |
|---|---|---|
| 受付・初期対応 | 事務(固定) | 保険確認/医療証/限度額/お薬手帳の確認、優先対応の切り分け |
| 入力・算定 | 事務+薬剤師1 | 入力の二重チェック、算定の取り漏れ防止(特に連休明けは変更多い) |
| 調剤・監査ライン | 薬剤師複数 | ピッキング→監査→交付、ハイリスク薬の別レーン化 |
| 疑義照会・在庫調整 | 薬剤師1(割り切って専任) | 疑義・代替・分割・取り寄せ、医療機関/卸との連絡窓口 |
| 電話・在宅・施設連携 | 状況で固定 | 在宅予定の段取り、施設FAX、臨時訪問の一次受け |

2)レセコン・電子薬歴・プリンタ類の“朝イチ点検”
- レセコン起動/オンライン資格確認(端末・カードリーダー)
- 電子薬歴のログイン、前回の未完了(保留)タスク有無
- ラベルプリンタ、薬袋プリンタ、領収書プリンタ、バーコードスキャナ
- バックアップ・更新通知(勝手に更新が走ると遅延要因)
- FAX/電子処方箋(受信ボックス)
連休明けは「朝から全開」で回す必要があります。プリンタ不調や紙詰まりは“1分で全体を10分遅らせる”ので、消耗品(トナー・ロール紙)もセットで確認します。
3)在庫:まず“欠品しやすい領域”から攻める
在庫確認はキリがありません。だから「連休明けに欠けると致命的」から優先します。
- 冷所品:インスリン、GLP-1関連、バイオ製剤、点眼の一部等(薬局の採用品目に応じて)
- 抗菌薬:小児用散剤/ドライシロップ、セフェム系、マクロライド等(地域流行で変動)
- 鎮咳・感冒系:吸入薬、去痰薬、解熱鎮痛薬
- 糖尿病/循環器:変更処方が出やすい(退院後・検査後)
- 精神科領域:連休で飲み忘れ→調整処方や頓服追加など
- 向精神薬・麻薬:帳簿・残数・鍵管理(後述)
ここでの重要ポイントは、「在庫がある/ない」だけでなく「代替候補を先に決めておく」ことです。代替が決まっていれば、疑義照会が短くなり、患者さんの待ち時間も短縮できます。
代替候補を先に決めるコツ
- 同成分・同規格:先発↔後発、規格違いの調整可否
- 同効薬:例えば同系統(吸入ステロイド/配合剤など)※医師判断が必要
- 剤形:錠→OD→散→シロップ(用量換算・適応年齢・添加物注意)
- 日数分割:入荷見込みがあるなら“つなぎ”の分割案

4)冷所品・温度管理:記録の“穴”を作らない
冷所保管が必要な医薬品は、品質に直結します。連休中は納品や停電など、想定外が起きがち。温度ログの連続性(欠測がないか)を必ず確認しましょう。
- 冷蔵庫温度(上限・下限アラーム、記録)
- 停電・扉開放の痕跡(結露、霜、警告表示)
- 保冷搬入(納品時の温度逸脱チェック)
- 冷所品の期限・ロット(返品や回収の確認がしやすい)
5)麻薬・向精神薬:残数一致と鍵・帳簿
連休明けは忙しさで「後で合わせよう」が起きやすいですが、ここは逆です。忙しい日ほど“最初に一致させておく”のが安全です。
- 金庫/保管庫の施錠確認、鍵の所在
- 麻薬帳簿・向精神薬の管理簿(運用ルールに沿って)
- 残数照合(差異があれば即エスカレーション)
- 期限切れ・破損・返納予定の整理
6)期限・回収(自主回収含む):連休中の通知を拾う
製薬企業の自主回収、PMDAの安全性情報、医療機関からの通達など、連休中に情報が積まれていることがあります。「回収対象をそのまま調剤」は重大リスクなので、朝イチで拾います。
- 回収対象の該当ロット確認
- 該当品の隔離(“使わない場所”へ)
- 患者対応(必要時は連絡手順に従う)
【開局〜午前ピーク】当日の運用ポイント:詰まりを作らない
1)受付で「優先順位」を切り分ける(トリアージ)
連休明けはすべての処方箋が同時に来ます。だから受付で、最低限の切り分けをします。
- 急ぎ:抗菌薬開始、疼痛コントロール、インスリン等の途切れが危険な薬
- 時間がかかる:退院処方(多剤)、施設分包、粉砕・一包化、在庫不安
- 要確認:保険変更、医療証、限度額、ジェネリック希望の変更
ここで大事なのは、「急ぎだから適当に」ではなく「急ぎだからこそ安全に早く」です。つまり、優先するレーンを作っても、監査や確認を省略しない仕組みが必要です。
2)入力段階での“連休明けあるある”注意点
連休明けは処方が変わりやすいです。入力で躓くと、後工程が全滅します。
- 退院後の処方変更(用量・剤形・中止薬):前回薬歴を前提にしない
- 日数のズレ:連休分の調整(例:28日→35日等)
- 頓服の追加:用法指示が曖昧になりやすい
- ジェネリックの銘柄変更:同成分でも規格・剤形・割線の違い
- 保険資格:転職・転居・扶養変更が増える時期は特に注意
3)調剤〜監査:ピーク時ほど「例外」を別レーンへ
忙しいときほど、例外(粉砕、一包化、散剤計量、特殊な用法)を通常ラインに混ぜると事故ります。
- 通常レーン:錠剤・カプセル中心、標準的な流れ
- 例外レーン:一包化・粉砕・散剤・水剤・外用混合・在庫調整
この分離だけで、全体の待ち時間が下がり、監査者の集中力も保てます。“混ぜない”は医療安全の基本です。

4)疑義照会:短く・正確に・記録を残す
連休明けは疑義照会が増えます。長引く理由は「論点が整理されていない」ことが多いです。
電話前の“30秒整理”テンプレ
- 何が問題?(用量?日数?重複?禁忌?在庫?)
- 根拠は?(薬歴・添付文書・検査値・患者申告など)
- 提案は?(代替案A/B、分割案、用法修正案)
- 患者への影響は?(今日中に必要?中断危険?)
そして、疑義照会は「記録」が命です。誰が・いつ・誰に・何を確認し・どう決まったか。忙しい日ほど省略されがちなので、薬局の手順書に沿って確実に残しましょう。医療安全の手順書整備の考え方は日本薬剤師会資料が参考になります。
【午後〜閉局後】翌日以降の安全のための“整流化”
1)未処理タスクの“見える化”(薬歴・疑義・取り寄せ)
- 薬歴:未完了を棚卸し(当日中に完了が難しければ優先順位付け)
- 取り寄せ:入荷予定・患者連絡の要否・代替提案の履歴
- 疑義:対応済みか、処方箋への記載/システム反映は完了か
- クレーム/要望:事実確認と再発防止のメモ
連休明けは「走りながら忘れる」が起きます。未処理が翌日に持ち越されるほど、翌日も詰まるので、閉局前に“タスクの形”にして残します。
2)在庫の戻し・期限・分包機周辺のリセット
- 戻し忘れ(台の上、監査台の脇、分包機周辺)をゼロに
- ヒート/PTPの取り違い防止(似た規格は特に)
- 散剤・水剤の計量器具洗浄、残薬の処理
- 期限間近品を前に出す(先入先出)
3)ヒヤリ・ハットの共有(短くていい)
連休明けは小さなヒヤリが増えます。大事なのは責めることではなく、「次の1件を防ぐ」こと。
- 似た名称/似た規格
- 退院処方での重複
- 一包化の指示誤読
- 在庫逼迫による代替提案の遅れ


連休明けに起きやすい「具体例」と、現場での対処テンプレ
実践例1:退院処方で、外来の継続薬と“重複”していた
状況:連休中に入院→退院。退院処方に新規薬が追加され、外来で飲んでいた薬が中止になっているはずだが、患者さんは「前の薬もまだあるし飲んでる」と申告。
リスク:重複投与(同効薬・同成分)、過量、相互作用。
対処テンプレ:
- 薬歴で外来継続薬を一覧化(患者持参薬も確認)
- 退院時指導書/お薬説明書があれば確認
- 「中止の意図」「併用可否」を疑義照会(論点を1つに絞る)
- 患者へは“いま飲むべきもの”を整理して伝える(紙に書く)
実践例2:欠品で代替が必要だが、医師へ提案がまとまっていない
状況:よく出る薬が欠品。電話したが医師も忙しく、話が長引く。
リスク:患者待ち時間の増大→焦り→入力/調剤ミス
対処テンプレ:
- 電話前に「代替案A(同成分)」「代替案B(同効薬)」「分割案」を用意
- 必要なら添付文書情報をすぐ確認できる導線を作る(PMDA検索)
- 医師へは“結論から”:「欠品です。AかBか、つなぎ分割でいかがですか」
- 決定後、処方変更内容をチーム内に共有(口頭+メモ)
実践例3:オンライン資格確認で資格が通らず、受付が詰まった
状況:連休明けは保険変更が増え、資格確認が通らないケースが重なる。
リスク:受付が滞留→処方箋の山→全体が遅れる
対処テンプレ:
- 受付で「資格確認に時間がかかる可能性」を先に説明(不安を減らす)
- 処方箋の受付だけ先に進め、入力前に保険確定(運用ルールに従う)
- よくある原因(転職・扶養・転居・更新タイミング)を想定し必要書類を案内
まとめ:連休明けは「準備=安全」。仕組みで焦りを減らそう
- 役割分担(疑義・在庫を専任化)で、詰まりを作らない
- レセコン/プリンタ/消耗品は朝イチ点検で遅延を潰す
- 在庫は“欠品しやすい領域”から、代替案まで先に用意
- 冷所・麻薬・回収は忙しい日ほど最初に一致させる
- 閉局前に未処理タスクを見える化して、翌日へ負債を残さない

よくある質問(FAQ)
Q. 連休明け、最優先で確認すべきことは何ですか?
最優先は役割分担です。特に「疑義照会・在庫調整の窓口を誰にするか」を決めると、全体の詰まりが減ります。次点でレセコン周り(プリンタ含む)の朝イチ点検、欠品しやすい領域の在庫確認です。
Q. 欠品が多すぎて追いきれません。現実的な回し方は?
「全部」ではなく、欠けると致命的な領域から優先してください。冷所品・抗菌薬・吸入薬・糖尿病関連・向精神/麻薬など、地域性と処方元の特徴に合わせて“上位20%”を押さえます。さらに代替案(A/B/分割)まで先に準備すると、疑義照会が短くなります。
Q. 退院処方が増える日に、薬歴で見るべきポイントは?
「中止薬の有無」「重複」「用量調整」が軸です。患者さんの自己判断(前の薬も飲んでいる)も起きやすいので、持参薬や残薬状況の聴取もセットで行うと安全です。
Q. 忙しいと、疑義照会の記録が雑になります…
忙しい日ほど記録が大事です。「誰が・いつ・誰に・何を・どう決まったか」の最小要素だけでも必ず残してください。薬局の医療安全体制や手順書整備の考え方は日本薬剤師会資料が参考になります。
Q. 連休明けのクレーム(待ち時間など)が怖いです
待ち時間の不満は“情報不足”で増えます。受付で「混雑が見込まれる」「時間がかかる理由(退院処方・欠品・疑義など)」を簡潔に共有し、可能なら目安を伝えます。重要なのは、安全確認を省略しない姿勢を丁寧に言語化することです。
参考文献(最終確認日:2026-01-04)
- 保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則(e-Gov法令検索)
- 薬剤師法(e-Gov法令検索)
- 医療用医薬品 添付文書等情報検索(PMDA)
- 添付文書情報メニュー(PMDA)
- 医薬品の安全使用のための業務手順書(日本薬剤師会)
- 「医薬品の安全使用のための業務手順書」作成マニュアル(薬局版)(日本薬剤師会 PDF)
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