

薬局での調剤業務の中でも、特に医師の処方意図をくみ取る力と薬剤師の技術が問われるのが「自家製剤加算」です。
これは、市販されている剤形や規格では対応できない処方に対して、薬剤師が工夫を加えて調製した場合に算定できる加算で、調剤報酬の一部を担っています。
しかし、その算定要件は非常に細かく、条件を満たしていなければ審査で却下されることも少なくありません。
「割線のある錠剤を半分に割っただけで加算していいのか?」や、「供給不足時の対応は?」など、現場では迷う場面も多くあります。
この記事では、自家製剤加算の基本から具体的な算定条件、点数の計算方法、そして実際のケーススタディまで、薬局薬剤師がすぐに実務に活かせるよう詳しく解説します。

自家製剤加算とは?制度の背景と目的
薬局での調剤業務では、市販されている剤形では対応できない処方に対し、薬剤師が医師の指示に基づいて調製した場合に算定できる加算が「自家製剤加算」です。
代表的な例としては「錠剤を粉砕して散剤とする」「主薬を溶解して点眼剤を無菌に製する」「基剤を加えて坐剤にする」などがあります。単に既製剤を分包するだけでは算定対象外です。
算定要件は?どんなケースで算定できるのか?
- 医師の明確な指示に基づくこと(剤形変更、粉砕、無菌処理等)
- 市販の同一剤形・同一規格が薬価収載されていない場合。ただし供給不足時には例外として算定可能)
- 既製剤を単に分包・小分けする操作では対象外(調剤録にもその旨記録)
- 錠剤割線分割の場合は、所定点数の20%(100分の20)を算定。ただし、分割後に同一規格製剤が薬価収載されている場合は算定不可)
- 自家製剤加算を算定した場合には、計量混合調剤加算は原則併算定不可(服用時点が異なる薬が別剤であれば併算定可能)
- 調剤録には、使用した賦形剤の名称・分量、粉砕・加温・滅菌の作業内容などを明記する必要あり
点数表(令和7年4月施行)
以下が最新の自家製剤加算点数です(令和7年4月1日施行)。
| 区分 | 剤型 | 点数 |
|---|---|---|
| 内服薬(錠・散・顆粒等) | 一調剤につき(7日分ごと) | 20点(割線分割は4点) |
| 屯服薬(同剤形) | 一調剤につき | 90点(割線分割は18点) |
| 液剤(内服・屯服共通) | 一調剤につき | 45点 |
| 外用薬(錠・軟膏・坐剤等) | 一調剤につき | 90点(割線分割は18点) |
| 点眼・点鼻・点耳・浣腸剤 | 一調剤につき | 75点 |
| 外用液剤 | 一調剤につき | 45点 |
※内服薬は「7日分ごとに20点」。端数は切り上げされます。
制度改定のポイント:供給不足時の対応
令和6年度改定により、薬価収載されている同一規格製剤があっても、薬剤供給に支障があり必要数量を確保できない場合は自家製剤加算を算定可能となりました。
ただし、その場合は摘要欄へ「●●剤供給不足のため調製」など明確な理由と医薬品名を記載することが必須です。
割線がない錠剤でも自家製剤加算は取れるの?
割線(かっせん)がない錠剤を分割して調製した場合でも、自家製剤加算の算定は可能です。
① 点数は「所定点数の100分の20」
2022年度(令和4年)の改定で、割線の有無に関係なく錠剤の分割には20%の点数が適用されることになりました。
| 剤形 | 通常点数 | 分割時点数(20%) |
|---|---|---|
| 内服薬(7日分ごと) | 20点 | 4点 |
| 屯服薬 | 90点 | 18点 |
| 外用薬(坐剤など) | 90点 | 18点 |
② 同一規格が薬価収載されている場合は対象外
例えば、1mg錠を半分にして0.5mgにした場合、0.5mgの製剤が薬価収載されているなら、自家製剤加算は算定できません。代替製剤がある場合はそちらを優先使用する必要があります。
③ 摘要欄への記載例
- 「医師指示により〇〇錠(割線なし)を1/2分割調製。0.5mg製剤は薬価未収載」
- 「嚥下困難対応として割線なし錠剤を分割(医師了解あり)」

どんなときに算定される?具体的なケーススタディ
ケース①:カプセル剤から散剤への調製
医師から「ドライシロップが供給できないため、代わりにカプセル剤を粉砕し散剤に」との指示。薬局ではカプセルを開封し、賦形剤を加えて1日量ごとに調製。
→ この場合、薬価収載品の供給が不安定であったことから、自家製剤加算の算定が可能です。
ケース②:錠剤の割線分割で半錠処方
ワーファリン錠0.5mgを医師指示で半錠に割って調剤。割線ありの錠剤で、薬価収載には0.25mg製剤も存在する。
→ この場合は、割線分割による加算は20%の点数(通常4点)ですが、0.25mg錠が薬価収載されており調達可能であれば加算不可となります。
ケース③:服用時点が異なる薬剤の粉砕混合
朝食後と夕食後に内服する2剤を、それぞれ粉砕混合調製した処方。
→ この場合、服用時点が異なるため、2剤のそれぞれに対して自家製剤加算と計量混合調剤加算の併算定が可能です。剤ごとに調製録の記録が必要です。

算定の際の注意点とレセプト記載例
- 調剤録への記載:粉砕、滅菌、加温など調製操作の詳細、使用した賦形剤と量を記録
- レセプト摘要欄:「〇〇剤供給不足のため、医師の指示により粉砕調製」「割線分割により半錠調製」など
- 供給不足の証明:社内在庫状況や卸への確認履歴を残しておく(審査時のエビデンス)
- 嚥下困難者用製剤加算は廃止され、現在はすべて自家製剤加算に一本化
- 外来服薬支援料2とは併算定不可(重複請求防止)

レセプト摘要欄に記載するコメント例
自家製剤加算を算定する場合、審査での確認対象となるため、以下のような理由や処方意図を明確に記載する必要があります。
供給不足による散剤調製
- 「〇〇DS供給不能のため、同成分〇〇Cap脱カプセル・賦形散調製」
- 「〇〇細粒製剤が流通困難のため、〇〇錠を粉砕・散剤として調製」
錠剤の割線分割
- 「医師の指示により〇〇錠を割線にて1/2分割調製」
- 「0.5mg錠剤供給不安定のため、1mg錠を割線分割し調製」
嚥下困難患者への剤形変更
- 「嚥下困難のため、〇〇錠を粉砕調製(医師指示あり)」
- 「医師依頼により坐剤調製、〇〇末加賦形・成形(外用加算対象)」
点眼剤・点鼻剤などの無菌調製
- 「医師依頼により〇〇注を無菌調製し点眼剤とした」
- 「処方指示に基づき、〇〇原薬を希釈し点鼻剤とした(滅菌操作実施)」
摘要記載は必ず「理由+医師の指示+調製操作内容」を含めることで、審査対応がスムーズになります。

粉砕調製時のレセプト摘要コメント例
錠剤・カプセル剤を粉砕して散剤や混合製剤として調製した場合、以下のようなコメントをレセプト摘要欄に記載します。
医師の指示による粉砕
- 「医師指示により〇〇錠を粉砕し散剤として調製」
- 「嚥下困難のため〇〇Capを脱カプセル・粉砕(医師依頼)」
供給不足による粉砕対応
- 「〇〇DS供給停止のため、〇〇錠を粉砕し散剤として調製」
- 「同成分散剤が流通困難なため、錠剤粉砕調製(薬価収載品不足対応)」
剤形変更による粉砕
- 「粉砕指示あり、錠剤を粉砕し1日1回分混合製剤として調製」
- 「服薬コンプライアンス改善目的で、粉砕混合調製(医師同意)」
服用時点が異なる複数薬剤の粉砕混合
- 「朝食後内服薬:2剤粉砕混合調製、自家製剤加算および計量混合加算」
- 「夕食後薬:服用時点異なる2剤を粉砕調製(加算併算定)」
レセプト摘要には「なぜ粉砕したのか」「どの剤をどう調製したのか」の具体記述が重要です。粉砕が指示ベースか供給対応かを明記しましょう。

まとめ
「自家製剤加算」は、薬剤師がその専門性を発揮して行う調製に対して正当に評価される重要な加算です。
特に近年の薬剤供給不安や多剤併用による服薬困難など、患者ごとのニーズに合わせた調剤が求められる中で、この加算の正しい理解と活用は薬局業務の質向上に直結します。
算定には「医師の指示」「剤形の調整」「薬価未収載や供給困難の状況」など明確な根拠が必要であり、記録・レセプト摘要記載が重要な審査ポイントになります。
また、令和6年度改定で「薬剤の供給不安定時に限り例外的に算定できる」制度が明確化され、薬剤師の裁量がさらに問われる時代になりました。
日々の業務で「これは算定対象かな?」と迷ったときには、添付文書・供給状況・医師指示の有無・剤形の妥当性を総合的に確認し、正しい情報をもとに判断しましょう。

クイズで確認!自家製剤加算の理解度チェック
Q1. 自家製剤加算を算定できるのはどのケース?
- ① 錠剤をそのまま分包しただけ
- ② 散剤が流通停止中のため、カプセル剤を脱カプセル・散剤調製した
- ③ 点眼薬を薬局で分注した
- ④ 医師の指示なく自宅で錠剤を半分にした
正解:②
散剤が流通していないため、代替剤形を薬剤師が調製することは自家製剤加算の要件を満たします。①は通常調剤で加算対象外、③は分注のみでは対象外、④は患者の行為であり加算対象外です。
Q2. 以下のうち、自家製剤加算の点数が「一調剤につき75点」である剤形は?
- ① 内服液剤
- ② 点眼剤
- ③ 散剤
- ④ 坐剤
正解:②
点眼・点鼻・点耳・浣腸剤の自家製剤加算は「一調剤につき75点」と定められています。①は45点、③は7日分ごとに20点、④は90点です。
Q3. 医師の指示がなくても自家製剤加算が認められる場合として正しいのは?
- ① 医師の処方内容と異なる剤を調製した
- ② 添付文書に粉砕可とあり、嚥下困難患者に対応した
- ③ 薬剤師の独断で服薬日数を変更した
- ④ 処方と無関係の薬を調剤した
正解:②
添付文書に粉砕が可能とあり、患者の状態(嚥下困難)に対応する目的であれば、医師の明示がなくても合理性があるとされるケースがあります。その他は違法調剤または不適切行為です。

よくある質問(Q&A)
Q1:粉砕して自家製剤加算を算定したが、同成分の散剤が薬価収載されていれば算定できませんか?
A1:原則として薬価収載されている散剤が存在する場合は算定不可です。ただし、散剤では服用量が多すぎる、粒形が合わないなど患者ごとに「散剤より粉砕した錠剤の方が適切」と判断できるまれなケースでは、調剤録にその根拠を明記すれば算定可能な場合があります。
Q2:割線なしの錠剤を分割して加算する場合、割線付きと同様に20%の点数で算定できますか?
A2:はい。令和4年度の改定以降は、割線の有無にかかわらず錠剤分割による自家製剤加算は所定点数の20%に統一されています。ただし、分割後と同一規格の薬が薬価収載されていれば算定不可となる点は変わりません。
Q3:計量混合調剤加算とは併算定できますか?
A3:原則として併算定はできません。同一剤の中で自家製剤加算を算定した場合には、計量混合加算は対象外となります。ただし服用時点が異なる別剤の場合に限り、両方の加算が可能となるケースがあります。
Q4:6歳未満の乳幼児へ矯味剤を加えて調製した場合は加算できますか?
A4:はい。乳幼児向けに適用する場合、成人や6歳以上の処方には不要な矯味剤や賦形剤を加える調製であれば、医師の了解を得たうえで自家製剤加算の対象となります。
参考文献
- 自家製剤加算の解説と最新疑義解釈(Pharmacist‑M3)
- 令和6年度版 自家製剤加算の解説(Medical‑Peer)
- 自家製剤加算とは?算定要件・点数解説(Yakuyomi)
- 厚生労働省 告示:調剤報酬点数表に関する事項
薬剤師向け転職サービスの比較と特徴まとめ


今日は、特徴をわかりやすく整理しつつ、読んでくださる方が自分の働き方を見つめ直しやすいようにまとめていきましょう。
働く中で、ふと立ち止まる瞬間は誰にでもあります
薬剤師として日々働いていると、忙しさの中で気持ちに余裕が少なくなり、
「最近ちょっと疲れているかも…」と感じる瞬間が出てくることがあります。
- 店舗からの連絡に、少し身構えてしまう
- 休憩中も頭の中が業務のことでいっぱいになっている
- 気づけば仕事中心の生活になっている
こうした感覚は、必ずしも「今の職場が嫌い」というわけではなく、
「これからの働き方を考えてもよいタイミングかもしれない」というサインであることもあります。
無理に変える必要はありませんが、少し気持ちが揺れたときに情報を整理しておくと、
自分に合った選択肢を考えるきっかけになることがあります。
薬剤師向け転職サービスの比較表
ここでは、薬剤師向けの主な転職サービスについて、それぞれの特徴を簡潔に整理しました。
各サービスの特徴(概要)
ここからは、上記のサービスごとに特徴をもう少しだけ詳しく整理していきます。ご自身の希望と照らし合わせる際の参考にしてください。
・薬剤師向けの転職支援サービスとして、調剤薬局やドラッグストアなどの求人を扱っています。
・面談を通じて、これまでの経験や今後の希望を整理しながら話ができる点が特徴です。
・「まずは話を聞いてみたい」「自分の考えを整理したい」という方にとって、利用しやすいスタイルと言えます。
・全国の薬局・病院・ドラッグストアなど、幅広い求人を取り扱っています。
・エリアごとの求人状況を比較しやすく、通勤圏や希望地域に合わせて探したいときに役立ちます。
・「家から通いやすい範囲で、いくつか選択肢を見比べたい」という方に向いているサービスです。
・調剤薬局の求人を多く扱い、条件の調整や個別相談に力を入れているスタイルです。
・勤務時間、休日日数、年収など、具体的な条件について相談しながら進めたい人に利用されています。
・「働き方や条件面にしっかりこだわりたい」方が、検討の材料として使いやすいサービスです。
・調剤系の求人を取り扱う転職支援サービスです。
・職場の雰囲気や体制など、求人票だけではわかりにくい情報を把握している場合があります。
・「長く働けそうな職場かどうか、雰囲気も含めて知りたい」という方が検討しやすいサービスです。
・薬剤師に特化した職業紹介サービスで、調剤薬局・病院・ドラッグストアなど幅広い求人を扱っています。
・公開されていない求人(非公開求人)を扱っていることもあり、選択肢を広げたい場面で役立ちます。
・「いろいろな可能性を見比べてから考えたい」という方に合いやすいサービスです。
・調剤薬局を中心に薬剤師向け求人を取り扱うサービスです。
・研修やフォロー体制など、就業後を見据えたサポートにも取り組んでいる点が特徴です。
・「現場でのスキルや知識も高めながら働きたい」という方が検討しやすいサービスです。
気持ちが揺れるときは、自分を見つめ直すきっかけになります
働き方について「このままでいいのかな」と考える瞬間は、誰にでも訪れます。
それは決して悪いことではなく、自分の今とこれからを整理するための大切なサインになることもあります。
転職サービスの利用は、何かをすぐに決めるためだけではなく、
「今の働き方」と「他の選択肢」を比較しながら考えるための手段として活用することもできます。
情報を知っておくだけでも、
「いざというときに動ける」という安心感につながる場合があります。


「転職するかどうかを決める前に、まずは情報を知っておくだけでも十分ですよ」ってお伝えしたいです。
自分に合う働き方を考える材料が増えるだけでも、少し気持ちがラクになることがありますよね。
無理に何かを変える必要はありませんが、
「自分にはどんな可能性があるのか」を知っておくことは、将来の安心につながることがあります。
気になるサービスがあれば、詳細を確認しながら、ご自身のペースで検討してみてください。



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