


夜勤・交代勤務の悩みを“睡眠術”で乗り越えよう!
夜勤や交代勤務に従事する薬剤師・看護師にとって、睡眠不足は「仕事の効率低下」や「健康リスク増加」の原因になります。
体内時計のズレ、眠りの質の低下、昼夜逆転による自律神経の乱れ……こうした問題を抱えながらも、多くの医療従事者が毎日を頑張っています。
本記事では、科学的根拠に基づいた夜勤対応の睡眠改善法を、現場の声をもとにわかりやすく解説します。
睡眠環境の整え方、仮眠の取り方、リズムの作り直し方、さらにはメラトニンなどの補助策まで網羅。
「夜勤でもちゃんと眠れる」知識を身につけて、明日からの体調管理をラクにしていきましょう!

夜勤勤務者が直面する睡眠問題とは?
夜勤や交代勤務をしている薬剤師・看護師は、日勤者と比べて睡眠時間が短く、睡眠の質も低下しやすいという傾向があります。
これは単なる「生活リズムの乱れ」ではなく、れっきとした医学的状態——交代勤務睡眠障害(Shift Work Sleep Disorder:SWSD)と呼ばれることもあります。
交代勤務睡眠障害(SWSD)とは?
SWSDは、「夜勤やシフト勤務などで体内時計(概日リズム)がズレてしまい、眠れなくなる、日中に過剰な眠気が起こる」といった症状を持つ状態を指します。

主な症状は?
- 帰宅しても眠れない(入眠困難)
- 眠りが浅く、途中で目が覚めやすい(中途覚醒)
- 睡眠時間が短く、起きても疲労感が抜けない
- 昼間の活動中に強い眠気がある(過眠)
放置するとどうなる?
交代勤務の睡眠問題をそのままにすると、次のようなリスクが高まります:
- 医療ミス・判断ミスのリスク増加
- 慢性疲労、集中力の低下
- 情緒不安定、うつ傾向
- 生活習慣病(高血圧、糖尿病など)のリスク上昇
特に医療職は、瞬時の判断とミスの許されない現場。
睡眠の質が仕事の安全にも直結するため、対策は急務といえます。

このような問題に悩んでいる方は少なくありません。
でも大丈夫!次のセクションでは、夜勤勤務でも質の良い睡眠を確保する具体的な対策をご紹介します。

夜勤勤務者でも質の良い睡眠を確保する方法は?
夜勤でもぐっすり眠るためには、「生活リズムの工夫」「環境調整」「体内時計へのアプローチ」の3点がカギとなります。
以下に、効果が高いとされる具体策を紹介します。
① 睡眠スケジュールの固定化
夜勤や交代制でも、できるだけ一定の起床・就寝時刻を保つことが体内時計の安定に有効です。
夜勤明けも「昼12時に寝て夜7時に起きる」など、毎回異なるスケジュールにせず、似たパターンを保つようにしましょう。

② 完全遮光+静音の寝室環境
日中の睡眠を質の高いものにするためには、光と音の遮断がとても重要です。
- 遮光カーテン・アイマスクを活用し、昼でも夜のような暗さを演出
- 耳栓やホワイトノイズ(雨音・換気扇音)で外音をシャットアウト
- 冷暖房で室温調整(夏:26℃前後/冬:20℃前後が目安)
③ 光を味方につける(光コントロール)
体内時計を調整する最大のスイッチは「光」です。
- 起床時・夜勤中:白色LEDや日光で目を覚ます
- 帰宅時:サングラスや遮光眼鏡で朝日をカット
- 就寝前:ブルーライト(スマホ・PC)は極力避ける
④ 夜勤中や前後の仮眠を活用
仮眠は眠気のリセットにとても有効ですが、長すぎると逆効果。
- 勤務前の仮眠:60~90分(深い眠りまで含む)
- 勤務中の仮眠:10~30分以内のパワーナップ(深い眠りに入らない)

⑤ 睡眠前のルーティンを作る
「眠るスイッチ」を脳に伝えるために、就寝前の習慣化された行動(ルーティン)を持ちましょう。
- ぬるめのシャワーや足湯
- カフェインレスのハーブティー
- 照明を暗くし、ゆったり読書や音楽
- 寝る直前のスマホは控える
⑥ 食事・カフェイン・水分の調整
眠りの質に影響するため、摂取タイミングに注意を。
- 夜勤前の食事:消化の良いタンパク質・野菜中心で軽めに
- カフェイン:夜勤中は可、ただし就寝の4時間前以降は避ける
- 水分:寝る直前の大量摂取は夜間頻尿の原因に
これらの対策を組み合わせることで、夜勤中でも“自分に合った眠りのリズム”を見つけることが可能です。

メラトニンと光療法は夜勤者に効果あるの?
「生活リズムを整えたい」「眠る時間を意図的にずらしたい」——そんな夜勤従事者にとって、メラトニンと光療法は体内時計のリセットに有効なツールです。
メラトニンとは?
メラトニンは松果体という脳の部位から分泌される「睡眠ホルモン」で、光が少なくなると分泌が増え、眠気を誘う性質があります。
夜勤者のメラトニン活用法
- 日中睡眠の導入補助:夜勤明けの午前中に服用すると、昼の眠りが深くなりやすい
- 体内時計のシフト:出勤数時間前に服用することで、リズムを“夜型”に調整しやすくなる
ただし、日本ではメラトニンは基本的に医師の処方が必要な医薬品に分類されており、使用は薬剤師・医師と相談のうえで慎重に行いましょう。

光療法(ライトセラピー)とは?
光療法とは、強い人工光を一定時間浴びることで、体内時計をリセットする方法です。
夜勤者におすすめの使い方
- 夜勤前:勤務2〜3時間前に10,000ルクスの光を30分〜1時間浴びる
- 夜勤中:深夜1〜3時の「眠気ピーク時」に短時間浴びると集中力が復活
- 帰宅後:朝日を浴びないよう遮光眼鏡を着用(メラトニン分泌の妨げを防ぐ)
LEDタイプのライトボックスや光目覚まし時計など、家庭用に使える製品も多数販売されています。

併用することでより効果的に!
メラトニン+光療法の併用は、体内時計の調整により強力な効果を発揮します。
ただし、タイミングの調整が非常に重要であり、自己流で続けるよりも睡眠専門医や薬剤師との相談をおすすめします。
夜勤勤務者への服薬指導のポイントは?
夜勤や交代勤務をしている患者さんに対しては、「服用タイミング」や「副作用の影響時間帯」に注意を払った服薬指導が求められます。

① 眠前薬の「眠前」が指す時間帯に注意
夜勤者の場合、「眠前」が必ずしも“夜21時以降”とは限りません。
- 夜勤明けに眠る場合:午前8時や10時が「眠前」になる
- 日勤・夜勤が交互にある場合:服用時間が毎日変わる可能性あり

② 持続時間と副作用リスクを考慮
夜勤中や明けの活動時間に眠気が残ると、業務ミスや事故の原因にもなりかねません。
- ベンゾジアゼピン系の長時間作用型は避ける
- 短時間作用型や非ベンゾ系(ゾルピデムなど)を選択
- 翌朝の眠気・ふらつき・集中力低下を説明
③ メラトニン製剤や漢方の選択肢も提示
薬に対する不安がある場合や軽度の不眠症状には、メラトニン製剤(ロゼレム等)や漢方(抑肝散加陳皮半夏、加味逍遥散など)を提案するのも有効です。

④ 時間帯での薬物動態の変化にも配慮
交代勤務では、食事の時間・代謝のリズム・酵素活性が不規則になりやすく、薬の吸収や代謝にも影響が出ます。たとえば、
- 夜間の胃酸分泌低下 → 胃腸障害リスク低減または効果低下
- CYP酵素活性の変化 → 代謝の個人差増大
可能であれば、少量から開始し、効果と副作用を見ながら調整することが推奨されます。
⑤ 情報提供とセルフモニタリングの支援
夜勤勤務の睡眠問題は、薬だけでなく生活リズムの工夫も重要。患者さんには、
- 光・音・温度などの環境整備のアドバイス
- 仮眠の取り方やブルーライト対策
- 服薬後の症状変化を日記に記録するセルフモニタリング
を指導し、“眠れた体験”を一つずつ積み上げていくことが大切です。
夜勤勤務者の睡眠改善事例とは?
ここでは、実際に夜勤や交代勤務で睡眠問題を抱えていた医療従事者が、どのような方法で改善できたのかを3つのケースで紹介します。

事例①:看護師Aさん(30代女性)
悩み:夜勤明けでも眠れず、翌日も疲労感が残る
背景:週に2回の夜勤あり、夜勤中はカフェインを多く摂取
対応策:
- 夜勤中のコーヒー摂取を0時までに制限
- 仮眠は夜勤中に20分間のみ実施
- 帰宅後は遮光カーテンと耳栓を使用
- 帰宅時は遮光眼鏡を着用し、朝日を避ける
- 寝る前にホットミルク+読書のルーティンを習慣化
結果:日中の入眠がスムーズになり、睡眠時間が5時間→7時間に改善。翌日の疲労感も軽減。

事例②:病棟薬剤師Bさん(40代男性)
悩み:夜勤の仮眠後に頭がぼーっとして業務に集中できない
背景:夜勤中に1時間以上の仮眠をとっていた
対応策:
- 仮眠時間を30分以内に調整(睡眠慣性を回避)
- 起床直後に冷水で顔を洗い、光を浴びる
- 夜勤後はメラトニン(医師処方)を使用し日中に入眠
結果:仮眠後の眠気が軽減し、夜勤中の業務効率が向上。日中の睡眠も2時間→4時間半に改善。
事例③:外来勤務の薬剤師Cさん(50代女性)
悩み:週ごとに早番・遅番・夜勤が入り乱れ、慢性不眠に
背景:睡眠時間が日によってバラバラ、生活習慣の乱れ
対応策:
- 起床・就寝時間を「勤務後○時間後」に固定する
- 光療法(家庭用ライトボックス)を朝に15分実施
- 短時間運動(10分のストレッチ)を寝る前に取り入れ
- 内科受診→抑肝散加陳皮半夏を処方
結果:睡眠の質が徐々に向上。睡眠効率(寝つきや途中覚醒の回数)が改善し、体調管理がしやすくなった。

夜勤勤務者の睡眠に関する失敗事例とは?
睡眠対策をしているつもりでも、間違った工夫や自己流の対応で逆効果になってしまうケースもあります。
ここでは実際にあった失敗事例を紹介しながら、改善のヒントを探っていきましょう。

失敗事例①:夜勤中の仮眠を「熟睡」してしまった
薬剤師Dさん(30代男性)
問題点:夜勤中に1時間以上の仮眠をとっており、仮眠後の業務で集中力が大幅に低下。意識がぼんやりする“睡眠慣性”が抜けず、薬の取り違えミス寸前に。
原因:
- 仮眠時間が長すぎて深いノンレム睡眠に突入
- 起床後すぐに業務再開していた(準備時間がゼロ)
教訓:仮眠は10~30分以内を目安に。深い睡眠に入る前に目覚めることで、パフォーマンスが維持できます。

失敗事例②:「夜勤明けは眠いからすぐ寝よう」とカーテンを開けたまま就寝
看護師Eさん(20代女性)
問題点:帰宅後すぐに寝ようとするも、光が差し込む環境で睡眠が浅く、1時間おきに目が覚める状態が続いた。原因:
- 遮光対策をしていなかった(遮光カーテン・アイマスク不使用)
- 朝日がメラトニン分泌を阻害
教訓:「光=覚醒スイッチ」。夜勤明けの帰宅時はサングラスや遮光眼鏡を活用し、寝室は真っ暗に保つのが鉄則。
失敗事例③:メラトニン製剤を自己判断で夜勤前に服用
病棟勤務の薬剤師Fさん(40代男性)
問題点:「夜勤でも眠気が欲しい」と自己判断でメラトニンを勤務前に服用した結果、夜間の強い眠気で業務に支障。ヒヤリハットを記録。
原因:
- メラトニンの服用タイミングを誤認
- 医師や薬剤師の相談なしで使用
教訓:メラトニンは「体内時計を後ろにずらす」用途であり、服用タイミングには専門的な判断が必要です。自己判断での使用は絶対NG。

まとめ
夜勤・交代勤務において 質の良い睡眠 を確保するには、以下のポイントが鍵となります。
- 生活リズムの固定化
同じ起床・就寝時間を繰り返すことで体内時計を安定化。 - 環境整備
遮光・遮音・適温(夏は約26℃/冬は約20℃)に調整。 - 光コントロール
起床時や夜勤中は強い光を浴び、帰宅後はサングラスや遮光眼鏡で朝日を遮断。 - 仮眠の時間管理
「10~30分以内」のパワーナップで深い眠りを避け、業務の切り替え準備も。 - 就寝前ルーティン
スマホを控えてシャワー・読書・ハーブティーなどでリラックス。 - 服薬指導での留意点
眠前薬やメラトニン製剤などの服用タイミング、作用時間を「いつ寝るか」に合わせて調整。必要なら医師・薬剤師との相談を推奨。 - メラトニン・光療法の併用
体内時計リセットに効果的。特に光療法は夜勤前後の導入が効果的だが、自己判断での使用・服用タイミングには注意。
夜勤中的な勤務スタイル下でも、スモールステップで生活リズムを整える工夫の積み重ねが、結果として「眠れる体」を作り、日々のパフォーマンスと健康を守ります。
よくある質問(Q&A)
Q. 夜勤明けでも布団に入ってしばらく眠れない時の対処法は?
A. 帰宅後はまず遮光眼鏡で光を遮断し、遮光カーテンやアイマスク、耳栓で暗さ・静寂を確保。ぬるめシャワーやストレッチ・読書などで気持ちを落ち着けることから始めましょう。
Q. 仮眠はいったいどれくらいが理想?
A. 10〜30分以内が効果的。30分以上は深い睡眠に入ってしまい、起きた後にだるさ・眠気(睡眠慣性)が残るリスクがあります。
Q. メラトニン製剤は自分で準備して使っても大丈夫?
A. 日本ではほとんどの場合処方薬のため、自己判断で飲むのは危険です。専門家(医師・薬剤師)と相談して、正しいタイミング・用量で使用することが大切です。
Q. 光療法って具体的にどうやって行うの?
A. 夜勤前に10,000ルクス程度の光を30分以上浴びると体内時計がリセットされやすくなります。帰宅後には遮光眼鏡を使い、明るさを避けることも重要です。
参考文献
- A systematic review and meta-analysis on light therapy for sleep disorders in shift workers – PubMed (2024)
- Effects of lighting interventions to improve sleepiness in night‑shift workers – PubMed (2023)
- Melatonin for Sleep Quality and Occupational Cognitive Performance – Wiley (2024)
- Current sleep interventions for shift workers: a mini review – Frontiers in Sleep (2024)
- Melatonergic agents influence the sleep‑wake and circadian rhythms – Nature Neuropsychopharmacology (2022)








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