結論からいうと、災害時にマイナ保険証がないときや、資格確認書を持参できないときでも、対象地域の医療機関・薬局で「緊急時医療情報・資格確認機能」がアクティブ化されていれば、患者の氏名・生年月日・性別・住所などを使って資格情報や薬剤情報等を確認できる場合があります。
ただし、全国すべての薬局で常時使える機能ではありません。厚生労働省が災害の状況に応じて対象となる医療機関・薬局と利用期間を指定してアクティブ化します。2026年9月10日時点では、令和8年熊本地震に伴う対応として、対象の医療機関・薬局で災害時医療情報閲覧が可能とされ、厚生労働省はアクティブ化期間を2026年9月14日までと案内しています。

避難するときに保険証もお薬手帳も持ってこられなかったら、薬局では薬を出せないんですか?

災害時には通常時とは違う特例的な確認方法が使われることがあるよ。大事なのは「カードがない=確認不能」と決めつけないことだね。

この記事の重要ポイント
- 災害時には「緊急時医療情報・資格確認機能」がアクティブ化されることがある
- マイナンバーカードがなくても、氏名・生年月日・性別・住所等で検索できる場合がある
- 資格情報だけでなく、薬剤情報・診療情報・特定健診情報の確認に役立つ
- 常時・全国一律で使えるわけではなく、厚労省が対象施設と期間を指定する
- 2026年9月10日時点の熊本地震対応では、アクティブ化期間は9月14日までと案内されている
- 患者の同意や本人確認など、所定の運用に沿って利用する
- 緊急時医療情報・資格確認機能とは?
- 2026年9月時点で何が起きている?
- 通常時と災害時の資格確認はどう違う?
- 災害時にマイナ保険証がないとき、何を確認できる?
- 誰でも自由に検索できるわけではない
- 薬局での実務手順を6ステップで確認
- 具体例|お薬手帳もマイナ保険証もない患者が来局
- 間違いやすいケース
- 薬局が平時に準備しておきたいこと
- 停電や通信障害でオンライン資格確認そのものが使えない場合は?
- 薬剤師が知っておきたい「資格確認」と「安全な調剤」は別の話
- 一般の人が災害前にしておくと安心なこと
- 関連するゆずまるブログの記事
- 2026年9月10日時点の確認ポイント
- 「資格情報」と「医療情報」は分けて考える
- 本人を特定するときに確認する情報
- 同意はどう取る?会話できない緊急時は?
- 対象外の地域・期間だったときの対応
- 薬局受付で使える確認手順
- 3つの場面で考える災害時対応
- 閲覧履歴と個人情報を守る
- 平時に準備したいBCPチェック
- 患者・家族への説明テンプレート
- 誰が何をするかを決めておく
- 災害時モード終了後に行うこと
- 検索できないときの切り分け
- FAQ|災害時のマイナ保険証と薬局対応
- まとめ|災害時にマイナ保険証がないときも相談を諦めない
- 参考文献・一次情報
緊急時医療情報・資格確認機能とは?
緊急時医療情報・資格確認機能は、大規模災害などで通常どおりの資格確認が難しくなったときに、オンライン資格確認等システムを利用して被災者の資格情報や医療情報を確認しやすくする仕組みです。厚生労働省の案内では、オンライン資格確認を導入している被災地域の医療機関・薬局で「災害時医療情報閲覧機能(災害時モード)」を利用することで、患者がマイナンバーカードを持参していない場合でも、氏名、生年月日、性別、住所等から情報を確認できるとされています。
普段のオンライン資格確認は、マイナンバーカードのICチップや資格確認書の記号番号等を使って資格情報を確認します。一方、災害ではカードや資格確認書を自宅に残したまま避難する人、家屋被害で持ち出せない人もいます。そのため、通常の受付方法だけでは必要な医療・調剤につながりにくくなることから、緊急時の仕組みが用意されています。
2026年9月時点で何が起きている?
厚生労働省は令和8年熊本地震に伴い、「緊急時医療情報・資格確認機能」をアクティブ化しています。厚生労働省のオンライン資格確認ページは、2026年9月7日時点のアクティブ化医療機関・薬局リストを掲載し、利用期間を2026年9月14日までと案内しています。
また、地方厚生局の通知一覧でも、2026年8月31日、9月2日付などで対象となる医療機関・薬局の範囲・期間に関する事務連絡が掲載されています。災害の状況により対象範囲や期間は更新されるため、店舗では「以前の通知を見たから今も使える」と判断せず、厚生労働省・地方厚生局の最新版を確認する必要があります。
通常時と災害時の資格確認はどう違う?
| 項目 | 通常時 | 災害時モードが有効な場合 |
|---|---|---|
| 主な確認方法 | マイナ保険証、資格確認書等 | 氏名・生年月日・性別・住所等による検索が可能な場合 |
| マイナンバーカード | 主要な資格確認手段 | 持参していなくても確認できる場合がある |
| 資格情報 | オンライン資格確認で確認 | 災害時機能で確認できる場合がある |
| 薬剤情報等 | 本人同意等のもと閲覧 | 所定の運用で災害時閲覧に活用 |
| 利用範囲 | オンライン資格確認対応施設 | 厚労省がアクティブ化した対象施設・期間 |
災害時にマイナ保険証がないとき、何を確認できる?
厚生労働省は、災害時モードにより、患者がマイナンバーカードを持参していない場合でも、患者を特定したうえで薬剤情報、診療情報、特定健診情報を閲覧できると案内しています。また資格情報の一部として、保険者番号、記号・番号、枝番を確認できる場合があります。
薬局にとって特に重要なのが薬剤情報です。避難先では「いつもの薬の名前が分からない」「白い血圧の薬」「朝に3錠飲んでいる」といった情報しか得られないことがあります。お薬手帳や薬袋を持ち出せなかった場合、過去の薬剤情報を確認できれば、重複投与や相互作用の回避、継続薬の確認に役立ちます。

資格確認のためだけじゃなくて、飲んでいた薬を調べるためにも使えるんですね。

そう。災害時の薬局では「保険が確認できるか」だけでなく、安全に薬物治療を続けられるかが重要なんだ。
誰でも自由に検索できるわけではない
災害時モードは、患者の医療情報を無制限に閲覧する仕組みではありません。医療情報には機微な個人情報が含まれるため、利用目的を災害時の診療・調剤に必要な範囲に限定し、本人確認や同意など所定の運用に沿って利用することが必要です。
「災害だから何でも見てよい」という理解は誤りです。店舗では平時からオンライン資格確認端末の操作権限、閲覧者、端末管理、個人情報の利用目的などを整理しておくことが重要です。
薬局での実務手順を6ステップで確認
STEP1 厚労省のアクティブ化情報を確認する
まず、自局が対象となる医療機関・薬局に含まれるか、利用期間内かを確認します。対象は災害ごとに変わるため、SNSや古い通知ではなく厚生労働省・地方厚生局の最新資料を確認します。
STEP2 患者の状況を確認する
マイナ保険証、資格確認書、お薬手帳、薬袋、スマートフォンのマイナポータル画面など、手元に使える情報がないか確認します。持参できなかった事情も含めて整理します。
STEP3 本人を特定するための情報を確認する
氏名、生年月日、性別、住所等を確認します。同姓同名や住所変更などもあり得るため、1項目だけで安易に本人と判断しないことが重要です。
STEP4 必要な資格情報・薬剤情報等を確認する
災害時の診療・調剤に必要な範囲で情報を確認します。薬剤情報を確認した場合も、それだけを唯一の根拠にせず、患者本人や家族からの聞き取り、残薬、薬袋、医療機関への照会など複数の情報を組み合わせます。
STEP5 処方内容との整合性を確認する
過去の服用薬と今回処方を比較し、重複、相互作用、用量、アレルギー、副作用歴などを確認します。不明点があれば処方医へ疑義照会します。
STEP6 確認内容を記録する
どの情報を用いて本人・資格・服薬歴を確認したか、必要に応じて薬歴等へ記録します。災害時は担当者が交代しやすいため、後から経緯を追える記録が重要です。
具体例|お薬手帳もマイナ保険証もない患者が来局
例えば、被災した70代の患者が避難先近くの薬局に「血圧と糖尿病の薬がなくなった」と相談したとします。マイナンバーカード、資格確認書、お薬手帳はいずれも自宅に置いたままです。
この場合、対象地域・対象期間で災害時モードが利用できる薬局なら、本人を特定するための情報を確認し、必要な資格情報や過去の薬剤情報を確認できる可能性があります。過去の薬剤情報から候補薬が分かっても、現在も継続中とは限りません。直近の処方変更、入院、腎機能変化などが反映されるタイミングにも注意し、患者への聞き取りや処方医との連携を組み合わせます。
間違いやすいケース
「災害が起きたら全国の薬局で自動的に使える」
違います。厚生労働省が対象となる医療機関・薬局の範囲と期間を示します。
「マイナ保険証がなければ10割負担しかない」
災害時には通常と異なる資格確認・請求上の取扱いが示されることがあります。個別の災害について発出された事務連絡を確認してください。
「災害時モードなら本人同意なしで自由に薬歴を見られる」
医療情報は必要な診療・調剤のために所定の運用で扱います。個人情報保護の観点を忘れてはいけません。
「薬剤情報に載っている薬は全部いま飲んでいる」
薬剤情報は非常に有用ですが、休薬・中止・処方変更などを含め、現在の服用状況は患者への聞き取り等で再確認します。
「9月14日を過ぎても同じ設定で使える」
2026年9月10日時点の厚労省案内では熊本地震対応の期間は9月14日までです。延長・終了など最新情報を必ず確認します。
薬局が平時に準備しておきたいこと
- □ オンライン資格確認端末の操作担当者を複数人決める
- □ 災害時医療情報閲覧機能の手順書の保管場所を共有する
- □ 厚生労働省・管轄厚生局の通知ページをブックマークする
- □ 停電・通信障害時の代替手順を確認する
- □ 患者の本人確認に使う情報をスタッフ間で共有する
- □ 個人情報の利用目的・閲覧権限を確認する
- □ 災害時の処方箋・レセプト請求に関する通知を確認できる体制を作る
- □ 地域の医療機関・避難所・薬剤師会との連絡方法を確認する
停電や通信障害でオンライン資格確認そのものが使えない場合は?
災害時は、薬局側の電源や通信回線が止まることもあります。災害時モードがアクティブ化されていても、端末やネットワークが利用できなければ通常どおりのオンライン操作はできません。その場合は、その災害について厚生労働省から示される被災者の資格確認や診療報酬請求の取扱いを確認し、患者が持つ情報、聞き取り、医療機関への照会などを組み合わせます。
また厚生労働省は、災害時モードを利用できない場合でも、患者がスマートフォン等を利用できる状況なら、マイナポータルから自身の服薬履歴等を確認して医療関係者に共有する方法も案内しています。
薬剤師が知っておきたい「資格確認」と「安全な調剤」は別の話
資格が確認できたからといって、薬を安全に交付できることが自動的に保証されるわけではありません。災害時には普段と違う医療機関を受診し、処方内容が変更されることもあります。薬剤師は、資格確認と同時に、服薬状況、アレルギー、副作用歴、腎機能・肝機能に関する情報、残薬、重複薬などを可能な範囲で確認する必要があります。
特にインスリン、抗凝固薬、抗てんかん薬、ステロイドなど、中断による影響が大きい薬では、薬剤名だけでなく規格・用法・最終使用時点を丁寧に確認します。災害時だからこそ「いつもの薬だと思う」で進めず、情報源を増やす意識が大切です。
一般の人が災害前にしておくと安心なこと
薬局側の制度だけでなく、患者側の備えも重要です。スマートフォンでお薬手帳を利用している場合はログイン方法を確認し、紙のお薬手帳なら最新ページをスマートフォンで撮影しておく方法もあります。薬の名前・規格・飲み方が分かる写真があるだけでも、避難先での確認に役立ちます。
ただし、自己判断で多量の薬を備蓄したり、古い処方薬を長期間保管して使ったりすることは避け、必要な備えはかかりつけ医・薬剤師に相談してください。
関連するゆずまるブログの記事
資格確認や災害時の薬については、管理薬剤師の引き継ぎノートの作り方、夜間休日加算の実績を増やす方法、保険薬局の遡及指定が2026年9月1日から変更、調剤物価対応料とは?もあわせて確認してください。
2026年9月10日時点の確認ポイント
令和8年熊本地震への対応は、厚生労働省の2026年9月7日更新リストで9月14日までと案内されています。ただし、災害の状況によって対象施設や終了日は延長・変更されることがあります。実際に操作する直前に厚生労働省「オンライン資格確認について」の最新リストと、管轄地方厚生局の事務連絡を確認してください。
通知の日付が違う資料を見つけたときは、古い資料だけで判断しません。災害発生直後の通知では短い利用期間が設定され、その後の被災状況に応じて期間が更新されることがあります。店舗内で確認した資料の更新日、対象地域、利用終了日を記録しておくと、交代勤務でも認識をそろえやすくなります。
「資格情報」と「医療情報」は分けて考える
初めて災害時モードを扱う人が混同しやすいのが、保険の資格を確認することと、過去の薬や診療内容を確認することです。目的も確認項目も異なります。
| 情報の種類 | 主な内容 | 薬局での使い道 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 資格情報 | 保険者番号、記号・番号・枝番、資格状態など | 患者が加入している医療保険を確認する | その災害に関する請求の取扱いも別途確認する |
| 薬剤情報 | 過去に保険診療で処方・調剤された薬 | 薬名、規格、重複、継続薬を確認する参考にする | 直近の処方が未反映の場合や、実際には飲んでいない薬もある |
| 診療情報 | 受診歴や診療に関する情報 | 避難先での治療継続に役立てる | 閲覧できる範囲と目的を守る |
| 特定健診情報 | 健診結果など | 患者の状態を把握する一つの資料にする | 現在の検査値・病状とは限らない |
画面に薬剤情報が出たとしても、それだけで「現在も服用中」と決めつけないでください。患者・家族への聞き取り、薬の現物、紙や電子のお薬手帳、かかりつけ医療機関への照会を組み合わせます。
本人を特定するときに確認する情報
マイナンバーカードがない場合、氏名、生年月日、性別に加え、住所などを使って患者を検索します。保険者番号や記号・番号が分かる場合は、それらも患者特定に役立ちます。同姓同名や旧住所の可能性もあるため、一つの情報だけで決めません。
- 氏名の漢字・読み方を確認する
- 生年月日と性別を確認する
- 現在または被災前の住所を確認する
- 分かれば保険者名、勤務先、記号・番号を確認する
- 検索結果と本人の申告が一致するか複数項目で照合する
家族が代理で来局した場合は、患者本人の情報と代理人の関係を分けて記録します。検索結果が複数ある、住所が一致しないなど特定できない場合は、無理に一人へ絞らず、責任者や保険者、関係機関へ確認してください。
同意はどう取る?会話できない緊急時は?
災害時に医療情報を閲覧するときも、原則として患者本人から利用目的を説明し、同意を確認します。厚生労働省の災害時運用資料では、通常は口頭で同意を得る運用が示されています。薬局では「安全に薬をお渡しするため、過去の薬剤情報を確認してよいですか」のように、何を見るのかを具体的に伝えると分かりやすくなります。
意識がないなど、本人の同意を得ることが難しく、生命・身体・財産の保護に必要な緊急場面では例外的な取扱いがあります。ただし、単に忙しい、説明を省きたいという理由ではありません。なぜ同意が難しかったか、何の目的で誰が閲覧したかを記録し、施設の手順に従ってください。
対象外の地域・期間だったときの対応
災害が起きた地域にあるというだけで、すべての薬局が災害時モードを使えるわけではありません。対象施設リストにない、利用期間が終了した、通常のオンライン資格確認ができる場合は、勝手に災害時モードを使わず、通常の資格確認やその災害について発出された別の取扱いに従います。
- 資格確認書、マイナポータルの資格情報画面、保険者への照会など通常の代替手段を確認する
- 停電・通信障害なら、災害ごとの資格確認・請求に関する事務連絡を確認する
- 処方内容が不明なら、処方元、かかりつけ薬局、家族、お薬手帳の情報を照合する
- 患者には、制度上確認中であることと次の連絡方法を分かりやすく説明する
薬局受付で使える確認手順
慌ただしい災害時こそ、受付から記録までを短い順番に固定しておくと抜けを防げます。
- 最新通知を確認:災害名、対象地域、対象施設、利用期間を確認する
- 通常手段を確認:カード、資格確認書、スマートフォン、お薬手帳の有無を聞く
- 本人を特定:氏名・生年月日・性別・住所等を複数項目で照合する
- 目的と同意を確認:必要な医療情報と利用目的を説明する
- 情報を照合:薬剤情報だけでなく、現物、患者の話、処方元情報を合わせる
- 安全性を評価:アレルギー、副作用、重複、最終服用、腎・肝機能に関する情報を確認する
- 対応を記録:閲覧者、日時、目的、同意、確認結果、照会先を記録する
画面を開けたことがゴールではありません。資格確認、薬歴確認、処方内容の妥当性確認、患者への説明を別々の工程として行います。
3つの場面で考える災害時対応
場面1|カードもお薬手帳もない
まず対象施設・期間を確認し、氏名、生年月日、性別、住所等で本人を特定します。薬剤情報が確認できても、最後に飲んだ時刻や残薬は本人・家族へ聞き取ります。薬名が似ている、規格が複数ある場合は処方元への照会も検討します。
場面2|スマートフォンは使える
本人がマイナポータルや電子お薬手帳を利用できれば、資格情報や服薬履歴を見せてもらえる場合があります。画面のスクリーンショットだけでは更新日や本人情報が不足することがあるため、表示元と更新時点も確認します。薬局側で不要な写真保存をせず、施設の個人情報取扱いに従います。
場面3|停電・通信障害で端末が動かない
災害時モードが有効でも通信できなければ照会できません。紙の記録様式、患者の申告、薬の写真・現物、医療機関や保険者への連絡など、災害ごとに示された代替手順へ切り替えます。復旧後に必要な確認・記録・請求処理が残ることも申し送りしてください。
閲覧履歴と個人情報を守る
災害時モードは、興味本位で病歴を見るための機能ではありません。システム上の閲覧履歴が残ることを前提に、必要な患者の必要な情報だけを、医療提供の目的で閲覧します。共用アカウントの使い回し、ログインしたまま離席、画面を患者待合から見える状態にすることは避けます。
口頭同意を得た場合も、薬歴や災害時対応記録に、説明内容、同意の有無、閲覧した情報、判断に使った内容を残します。後から別の職員が見ても「なぜ閲覧したか」が分かる記録が大切です。
平時に準備したいBCPチェック
- 災害時モードの操作手順と厚生労働省の確認ページをブックマークする
- 管理者だけでなく、複数の職員が対象施設リストを確認できるようにする
- 停電時に使う紙の受付票・服薬聞き取り票を用意する
- 端末、ルーター、予備電源、携帯回線の動作を定期的に確認する
- 薬剤師会、近隣医療機関、保険者、システムベンダーの連絡先を紙でも保管する
- 閲覧・同意・照会内容を記録する様式を決める
- 年1回は「カードなし・通信なし」の受付を想定して短い訓練を行う
制度を知っているだけでは、停電や人員不足の中で動けません。誰が最新情報を確認し、誰が患者対応をし、誰が記録を残すかまで決めておくと、災害時にも安全性を保ちやすくなります。
患者・家族への説明テンプレート
制度名だけを伝えても、初めて聞く患者には「マイナンバーを全部見られるのでは」と不安が残ることがあります。短く、目的・見る情報・同意・結果を順番に説明します。
説明文例
「この災害では、対象の薬局で緊急時の資格確認機能が使えます。安全にお薬を用意するため、氏名・生年月日・住所などでご本人を確認し、保険資格と過去のお薬の情報を確認してもよいですか。確認した情報は今回の医療・調剤に必要な範囲で使います」
確認できなかったときは、「保険に入っていない」という意味ではないことも説明します。入力情報の違い、旧住所、システム障害、データ反映の時差などが考えられるため、別の方法で確認すると伝えれば、患者の不安を減らせます。
誰が何をするかを決めておく
| 担当 | 主な役割 | 申し送りする内容 |
|---|---|---|
| 受付・事務 | 持参物と本人情報を確認し、対象通知を確認する | カード等の有無、住所、連絡先、検索状況 |
| 薬剤師 | 同意、薬剤情報、服薬状況、安全性を確認する | 最終服用、残薬、アレルギー、疑義照会結果 |
| 管理者 | 利用判断、権限管理、通知・請求方法を確認する | 対象期間、例外対応、未処理事項 |
| 次の勤務者 | 未完了の照会と記録を引き継ぐ | 連絡待ちの相手、再確認日、患者への案内 |
少人数の店舗では一人が複数の役割を担当します。その場合も、頭の中だけで処理せず、どの工程まで終わったかをチェック欄で残してください。
災害時モード終了後に行うこと
アクティブ化期間が終わったら、通常運用へ戻すだけでなく、期間中の未処理を確認します。資格情報を後日確認する必要がある患者、処方元から返答待ちの照会、仮の記録、請求上の確認事項が残っていないかを点検します。
- 期間中に対応した患者の記録が完成しているか
- 同意、本人特定、閲覧目的が記録されているか
- 未確認の資格情報や照会結果を追記したか
- 通常時のアカウント・端末設定へ戻っているか
- 現場で困った点をBCPと手順書へ反映したか
患者が避難先から戻った後も、薬の変更、重複、残薬が起こっていることがあります。かかりつけ薬局へ情報を引き継ぎ、災害中に交付された薬と従来薬をもう一度整理すると安全です。
検索できないときの切り分け
患者が見つからないときは、同じ操作を何度も繰り返す前に原因を分けて考えます。対象施設・期間が正しいか、氏名の表記や旧姓、住所が被災前の登録になっていないか、通信と端末が動いているかを確認します。
- 厚生労働省の最新リストで対象施設と期間を再確認する
- 氏名の漢字・カナ、旧姓、生年月日、住所を患者と再確認する
- 別の患者を検索せず、候補が複数なら追加情報で照合する
- 端末や回線の障害情報を確認する
- 解決しなければ管理者、保険者、システム窓口へ連絡する
検索失敗の画面を個人のスマートフォンで撮影するなど、個人情報が不要に残る方法は避けます。必要なエラー番号や発生時刻だけを施設のルールで記録してください。
FAQ|災害時のマイナ保険証と薬局対応
Q1.災害時、マイナ保険証がなくても薬局を利用できますか?
利用できる場合があります。被災状況に応じた資格確認・診療報酬請求の特例が示されることがあるため、カードがないことだけを理由に受診・相談を諦めず、医療機関や薬局に相談してください。
Q2.緊急時医療情報・資格確認機能は全国の薬局で使えますか?
常時全国一律に使うものではありません。厚生労働省が災害ごとに対象施設と期間をアクティブ化します。
Q3.マイナンバーカードがなくても薬剤情報を確認できますか?
災害時モードが利用可能な対象施設では、氏名・生年月日・性別・住所等で患者を特定し、所定の運用のもと薬剤情報等を確認できる場合があります。
Q4.2026年の熊本地震ではいつまで使えますか?
2026年9月10日時点の厚生労働省案内では、アクティブ化期間は2026年9月14日までです。変更される可能性があるため最新版を確認してください。
Q5.お薬手帳がなくても過去の薬は分かりますか?
オンラインの薬剤情報等が参考になる場合があります。ただし現在の服用状況と完全に一致するとは限らないため、患者・家族への聞き取りなども必要です。
Q6.停電していたらどうしますか?
オンラインシステムが利用できない場合は、その災害について示された別の資格確認・請求方法を確認します。患者のスマートフォンでマイナポータルの服薬履歴を確認できる場合もあります。
Q7.薬局はどこで最新情報を確認すればいい?
厚生労働省のオンライン資格確認ページ、厚生労働省の通知、管轄地方厚生局の医療保険関係通知を優先してください。
まとめ|災害時にマイナ保険証がないときも相談を諦めない

- 災害時には緊急時医療情報・資格確認機能がアクティブ化されることがある
- 対象薬局ではカードがなくても患者情報から資格・医療情報を確認できる場合がある
- 薬剤情報は避難先での安全な薬物治療継続にも役立つ
- 対象地域と期間は厚生労働省が災害ごとに指定する
- 2026年9月10日時点の熊本地震対応は9月14日までと案内されている
- 個人情報保護、本人確認、現在の服薬状況の再確認が重要

カードがない患者さんが来ても、まず最新の災害対応を確認することが大切なんですね。

そうだね。制度を知っておけば、被災した患者さんを必要な医療につなげやすくなるよ。平時に手順を確認しておこう。
参考文献・一次情報
- 厚生労働省「オンライン資格確認について(医療機関・施術所等、システムベンダ向け)」
- 厚生労働省「マイナンバーカードの健康保険証利用(マイナ保険証)について」
- 九州厚生局「保険医療機関等に関する通知について(令和8年度)」
※2026年9月10日時点の公表情報をもとに作成しています。災害対応は対象地域・期間が随時変更されることがあります。実務では必ず厚生労働省・管轄地方厚生局の最新通知をご確認ください。


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