



この記事では、小児特定加算の算定条件・対象・点数・実務上の注意点について、薬局薬剤師向けにわかりやすく解説します。
医療的ケア児に関わる機会がある薬局なら、誰でも関係がある加算ですので、ぜひ実務で活用できる知識を身につけましょう!
小児特定加算とは?
小児特定加算とは、医療的ケア児(障害児)に対して薬局薬剤師が服薬指導等を行った場合に算定できる加算です。2022年度の診療報酬改定で新設されました。
この加算の目的は、医療的ケア児に対する薬学的支援の重要性を評価することにあります。薬剤師の関与が適切に評価されるよう、特別な対応を行った際に350点〜450点が算定されます。
対象となる患者は?
小児特定加算の対象は、以下の条件を満たす患者です。
- 18歳未満の小児であること
- 児童福祉法における「医療的ケア児」に該当すること
たとえば、以下のような医療的ケアが必要な小児が対象になります:
- 人工呼吸器を使用している
- 胃瘻や経鼻経管栄養を行っている
- 喀痰吸引が日常的に必要
制度創設の背景
日本では、医療の進歩により重度障害を抱えながらも在宅療養する小児が増えています。
しかし、これまで薬剤師の支援は診療報酬上で十分に評価されていませんでした。
そのため、厚生労働省は、地域で暮らす医療的ケア児とその家族を薬局薬剤師が支える体制を強化するべく、小児特定加算を創設しました。

小児特定加算の点数・算定条件は?
小児特定加算は、対応の内容や方法によって点数と算定条件が異なります。ここでは外来・在宅・オンラインでのそれぞれの算定要件を詳しく解説します。
外来での算定
- 点数:350点(1回/月)
- 対象:医療的ケア児に対して服薬指導等を行った場合
必要な対応内容:
- 医療的ケア児であることの確認(手帳や医師確認)
- 患児または保護者への服薬状況の聴き取り
- 調剤方法の工夫・変更
- 服薬指導の実施
- 薬剤服用歴等にその内容を記録
※「乳幼児服薬指導加算」との併算定は不可です。
在宅・訪問での算定
- 点数:450点(1回ごと)
- 対象:訪問により服薬指導等を行った場合
必要な対応内容は外来と同様ですが、医師の指示に基づいて訪問指導を行ったことが前提となります。
オンラインでの算定
- 点数:350点(1回ごと)
- 対象:電話や情報通信機器を用いて対応した場合
緊急時の対応や、急変時の連絡を受けて薬学的管理を行った場合なども含まれます。
算定上の注意点
- 月1回のみ算定可能(外来の場合)
- 訪問・オンラインでは「1回ごとに」算定可能
- 乳幼児加算との併算定は不可
- 記録の保存・聴き取りの実施が必要
| 対応区分 | 点数 | 算定頻度 |
|---|---|---|
| 外来 | 350点 | 月1回 |
| 在宅訪問 | 450点 | 1回ごと |
| オンライン | 350点 | 1回ごと |

医療的ケア児とは?簡単に見分ける方法は?
医療的ケア児ってどんな子?
医療的ケア児とは、日常生活において継続的な医療的処置(ケア)を必要とする18歳未満の児童のことを指します。
法律上は、児童福祉法第56条の6第2項に定義されており、医学的には以下のような処置が必要な児童が該当します。
- 気管切開管理・吸引
- 経管栄養(胃ろう、経鼻経管)
- 酸素療法(在宅酸素)
- 人工呼吸器の使用
- 導尿、膀胱洗浄などの排泄管理
このような処置を家庭で日常的に受けている小児が「医療的ケア児」とされます。
簡単に見分ける方法は?
薬局業務で対応する際、どのように医療的ケア児かどうかを見極めるかが重要になります。
以下のポイントで判断するのが実務的です。
- 手帳や証明書の確認
自治体が交付する「医療的ケア児支援証」や、障害者手帳(身体障害者手帳など)で確認可能です。 - 処方内容の傾向
経腸栄養剤、去痰薬、在宅酸素関連、気管切開用カニューレ、吸引器、ネブライザーなどが処方されている場合、医療的ケアの可能性が高いです。 - 主治医への確認
疑わしい場合は、主治医に「医療的ケア児に該当するか」を確認することで、正確に判断できます。 - 保護者からの聴き取り
「毎日吸引しています」「食事は胃ろうです」など、日常の医療ケアに関する発言も重要な情報源になります。
判断が不明確な場合は、加算を算定せず医師に確認するのが安全です。

医師に確認したら「患者を見てない」と思われない?
小児特定加算を算定するためには、「この患者さんが医療的ケア児に該当するか」を薬剤師が判断する必要があります。
でも、判断材料が不十分なときに医師へ確認すると、「薬剤師は患者の状態を把握していないのか」と思われるのでは?と不安になりますよね。
確認の仕方で信頼が変わる!
実は、聞き方や姿勢を工夫すれば、むしろ「丁寧で熱心な薬剤師だな」と好印象を持ってもらうことも可能です。
例:医師への確認の言い方
いつも処方ありがとうございます。〇〇ちゃんの処方に関しまして、小児特定加算の対象かどうか確認させていただきたいのですが、
ご家庭で医療的ケア(吸引や在宅酸素など)を日常的に受けていらっしゃる状況でしょうか?
このように「加算の可否」ではなく、「薬学的支援に必要な情報」として聴く姿勢を見せるのがコツです。
医師からの信頼を高める一言メモ
- 「ご家族からこのように伺っておりますが、念のため医師の先生に確認を…」
- 「支援体制を整える目的でお伺いしております」
- 「今後の服薬支援にも役立てたく…」
こうした言葉を添えることで、薬剤師の専門的配慮として自然に受け止められることが多いです。

地域支援体制加算の要件に小児特定加算が?それって不公平?
2022年度の診療報酬改定により、地域支援体制加算の算定要件に「小児特定加算などの実績(直近1年間で1回以上)」が含まれるようになりました。
なぜこの要件が追加されたのか?
厚労省の狙いは、重度の医療的ケア児を地域で支える薬局体制を評価するためです。
つまり「小児特定加算が算定できる=地域で高度な患者対応ができる薬局」とみなす仕組みです。
でも現場はこう思っている…
- 医療的ケア児なんて、年に1人も来ない…
- 対応したくても在宅患者中心の薬局じゃないと難しい
- たった1件の実績のために要件に組み込むのは不公平
- 地域差があり、都市部と地方で格差が大きい
結果として「小児特定加算が取れない=地域支援体制加算が取れない」薬局が多数出現し、現場で不満が噴出しています。
この要件、どう対策すればいい?
現実的な対応方法は以下の通りです。
- 地域の訪問看護・小児科クリニックと連携
「医療的ケア児の処方が出る可能性のある医療機関」にアプローチし、協力体制を築く - 自治体・福祉窓口と連携
医療的ケア児支援センターや行政との連携も重要 - 実績が1回でもあれば要件クリア
年1回でも対象児の服薬支援を行えば要件は満たせるため、チャンスがあれば積極的に加算算定
薬剤師会などの現場からの声も
日本薬剤師会や各地の薬剤師会からも「小児特定加算の実績を地域支援体制加算に含めるのは非現実的」という意見が出ており、今後の診療報酬改定で見直しの可能性も指摘されています。

薬局での具体的な対応手順と記録のポイント
小児特定加算を正しく算定するためには、一定のフローに沿って対応し、必要な情報を記録に残すことが必須です。
薬局での対応フロー(外来対応時)
- 医療的ケア児であるかを確認
手帳・保護者の申告・処方内容・医師確認などから対象かどうかを見極めます。 - 服薬状況のヒアリング
保護者に以下のような項目を聞き取ります:- 服薬時の困りごと
- 嚥下や吸引の有無
- 医療機器との相互作用の懸念
- 調剤方法の工夫・提案
・粉砕、シロップ変更、服薬補助具の提案など、患者ごとに調剤の工夫を行う必要があります。 - 服薬指導の実施
・保護者や本人に対して、服薬のポイントや注意事項を丁寧に説明します。 - 記録
・薬剤服用歴、服薬指導記録に以下を記載:- 医療的ケア児である根拠
- 聴き取った内容
- 調剤方法の工夫とその理由
- 指導内容の要約
記録のポイント
- 「〇〇だから医療的ケア児である」と明記
例:「経管栄養(胃ろう)を常時使用しており、日常的な医療ケアが必要」 - 調剤変更や服薬支援の理由づけ
例:「嚥下困難のため、粉砕後に服薬補助ゼリーを併用」 - 加算算定理由を記載
例:「医療的ケア児対応として服薬状況を聴取・工夫を実施したため、小児特定加算算定」
在宅やオンラインの場合の追加対応
訪問や電話での対応の場合も、聴き取り・調剤工夫・指導・記録の原則は変わりません。ただし、「医師の指示に基づいて実施」であることを必ず確認しましょう。

どんな病名が多い?
小児特定加算の対象となる医療的ケア児は、先天性疾患や神経・呼吸系の重度障害などを抱えるケースが多いです。以下に、該当頻度が高い代表的な疾患を紹介します。
小児特定加算の対象となりやすい疾患一覧
| 疾患名 | 特徴・医療的ケアの例 |
|---|---|
| 脳性麻痺 | 嚥下障害・呼吸障害 → 経管栄養、吸引、呼吸管理が必要 |
| 先天性心疾患 | 術後の在宅酸素療法や利尿薬管理 |
| 神経筋疾患(SMA、ミトコンドリア病など) | 筋力低下 → 人工呼吸器管理、吸引、胃ろう |
| 染色体異常症(13・18・21トリソミーなど) | 多臓器障害 → 医療機器・栄養管理の併用が多い |
| 重症てんかん(ウエスト症候群など) | 発作管理・呼吸管理が必要、PEGや経腸栄養の併用例あり |
| 脊髄性筋萎縮症(SMA) | 人工呼吸器使用、栄養サポートが必要 |
| 喉頭軟化症・気道閉塞症 | 気管切開・吸引・酸素療法が日常的に必要 |
| 新生児仮死・重度低酸素脳症 | 在宅での人工呼吸器・経管栄養が中心 |
複数の医療的ケアを併用するケースが多い
1つの疾患に対して複数の医療機器・処置が必要になるケースが大半です。
- 胃ろう+吸引+在宅酸素
- 気管切開+人工呼吸器+経腸栄養
- 嚥下障害+服薬困難+リハビリ併用
このように、「多機能支援が求められる状態」が小児特定加算の判断基準となります。

症例・実践例で学ぶ!小児特定加算の活用ケース
ここでは、実際に薬局で対応したことを想定した症例を通して、小児特定加算がどのように算定されるのかを学びましょう。
症例1:胃ろう管理が必要な脳性麻痺児(7歳男児)
- 疾患:脳性麻痺(重度運動障害)
- 医療的ケア:胃ろうによる経管栄養、喀痰吸引、吸入薬
- 来局者:母親
薬局での対応内容
- 母親から「胃ろうに詰まりやすい」と相談を受けた
- 経管投与可能な薬剤への変更可否を医師に照会
- 粉砕+水懸濁の方法を提案し、指導
- 薬剤服用歴に「経管投与管理、服薬困難、加算対象である旨」を記録
→ 小児特定加算(外来350点)を算定
症例2:在宅酸素を使用する先天性心疾患児(5歳女児)
- 疾患:ファロー四徴症術後
- 医療的ケア:酸素療法、気道クリアランスのための吸入
- 対応方法:医師の指示により在宅訪問で薬剤交付
薬局での対応内容
- 訪問時、在宅酸素使用中であることを確認
- 吸入薬の使用法、管理法、薬残確認などを実施
- 家庭環境(酸素ボンベ設置、安全管理)も確認し指導
- 記録に加算理由と実施内容を詳細に記載
→ 小児特定加算(訪問450点)を算定
症例3:経鼻栄養の低酸素脳症児(3歳男児)・電話相談
- 疾患:低酸素性虚血性脳症(HIE)
- 医療的ケア:経鼻経管栄養、発作の薬物療法
- 対応内容:母親から「チューブが詰まりやすい」と電話相談
薬局での対応内容
- 薬の粘性、粉砕の程度、懸濁液の管理方法をアドバイス
- 主治医へ「剤形変更の可否」について情報提供
- 電話での内容・改善策・指導結果を記録
→ 小児特定加算(オンライン対応350点)を算定

まとめ
小児特定加算は、医療的ケア児に対する薬局薬剤師の支援を正当に評価する制度として、2022年からスタートしました。
対象は限られているものの、医療機器の使用や経管栄養などが必要な児童にとって、薬剤師の関与は不可欠です。
算定にあたっては:
- 患者が医療的ケア児かどうかの正確な判断
- 服薬状況の聴き取りと工夫
- 記録・指導内容の明確な記載
が求められます。
また、この加算の実績は、地域支援体制加算の算定要件にも関わる重要な指標となっており、薬局経営の戦略にも大きく影響します。
今後、医療的ケア児の地域生活を支える体制が強化される中で、薬剤師の役割はさらに大きくなっていくことは間違いありません。
目の前の1件を丁寧に対応することが、信頼と実績につながります。積極的に情報収集し、薬局全体で支援体制を構築していきましょう!

クイズで確認!小児特定加算の理解度チェック
第1問:小児特定加算の対象患者として正しいのはどれ?
- A. 6歳未満の健康な小児
- B. 在宅酸素療法中の15歳の小児
- C. 経口薬を自己管理している18歳の大学生
- D. 母子健康手帳を持っている小児
正解:B
医療的ケア児とは、18歳未満で在宅酸素や経管栄養など医療的処置が日常的に必要な児童。Bは該当します。
第2問:小児特定加算の外来算定における点数は?
- A. 100点
- B. 250点
- C. 350点
- D. 450点
正解:C
小児特定加算は外来で350点、月1回まで算定可能です。在宅訪問時は450点となります。
第3問:小児特定加算を算定する上で必要な対応として誤っているのは?
- A. 患児または家族への聴き取り
- B. 調剤方法の工夫と提案
- C. 服薬指導の実施と記録
- D. 医師の同意書の取得
正解:D
小児特定加算に医師の同意書は不要です。ただし、医療的ケア児であるかの確認は医師への確認が推奨されます。
よくある質問(Q&A)
Q1: 小児特定加算の対象となる「医療的ケア児」とは、具体的にどのような患者ですか?
医療的ケア児とは、18歳未満で、日常的に医療的ケア(人工呼吸器、胃ろう、吸引など)を必要とする児童を指します。具体的には、NICU等に長期入院した後、退院して在宅で医療的ケアを受けている患者が該当します。
Q2: 小児特定加算を算定する際、医師の同意書は必要ですか?
医師の同意書は不要ですが、患者が医療的ケア児であることを確認する必要があります。確認方法としては、医療機関からの情報提供や、福祉手帳の確認などがあります。
Q3: 小児特定加算を算定する際、乳幼児服薬指導加算との併算定は可能ですか?
いいえ、併算定はできません。小児特定加算を算定する場合、乳幼児服薬指導加算や乳幼児加算との併算定は不可となっています。
参考文献
- 【令和6年度版】小児特定加算の解説と行政資料・疑義解釈等まとめ
- 小児特定加算の疑義解釈・事務連絡まとめ
- 小児特定加算とは?算定要件や対象者となる「医療的ケア児」について解説
- 【2024改定版】小児特定加算の算定要件や薬剤師ができる支援を解説



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