薬局の在庫回転率を改善する方法|不動在庫・期限切れを見える化


薬局の在庫は、患者へ必要な医薬品を確実に供給するための資産です。一方、過剰在庫は資金を固定し、期限切れ、薬価改定差、保管スペース、棚卸工数、紛失・破損のリスクを増やします。したがって「在庫金額を一律に下げる」だけではなく、在庫回転率、在庫日数、不動在庫率、廃棄率、欠品率を同時に見る必要があります。
本記事では、在庫金額・平均在庫・在庫回転率・在庫日数の計算式、ABC分析と最終出庫日を組み合わせた不動在庫の抽出、高額薬・冷所品・散剤・外用薬の管理、店舗間移動・返品・採用品整理の優先順位を解説します。月次管理シートと、平均在庫800万円から650万円へ改善する架空事例も示します。

在庫回転率は「年間医薬品売上原価÷平均医薬品在庫」、在庫日数は「平均在庫÷年間医薬品売上原価×365日」で計算します。目標は全国一律に置かず、自局の処方構成、調達リードタイム、供給状況、保管条件ごとに設定します。不動在庫は金額×未出庫日数×期限で優先順位を付け、欠品率と廃棄率を悪化させない範囲で減らします。
- 前書き:在庫管理は利益だけでなく患者安全の仕事
- 在庫金額・平均在庫・在庫回転率・在庫日数の違い
- 架空例:平均在庫800万円をどう読むか
- 薬局の在庫回転率に一律の目標を置けない理由
- 不動在庫・デッドストックを定義する
- ABC分析×最終出庫日で優先順位を付ける
- デッドストック抽出の実務手順
- 高額薬・冷所品・散剤・外用薬の管理
- 発注点・安全在庫・最大在庫を設定する
- 返品・店舗間移動・採用品整理の優先順位
- 実践例1:平均在庫800万円から650万円へ
- 実践例2:高額な冷所品が処方中止になった
- 実践例3:散剤の帳簿在庫と実在庫が合わない
- 月次で見る在庫KPI
- 管理薬剤師・薬局長の月次会議の進め方
- 廃棄金額を月次で管理するシート例
- 在庫回転率改善でよくある失敗
- スタッフ教育に在庫KPIを活用する
- まとめ:在庫を減らすのではなく、必要在庫を説明できる状態にする
- よくある質問
- 参考文献
前書き:在庫管理は利益だけでなく患者安全の仕事
医薬品在庫には、正しい品名、剤形、規格、数量、包装単位、製造販売業者、使用期限などを把握し、温度・湿度・遮光といった保管条件を守ることが求められます。厚生労働省の「医薬品の安全使用のための業務手順書作成マニュアル」でも、納品時の確認、在庫の定期点検、保管条件、使用期限、先入れ先出し・期限の近い製品からの使用などが示されています。【[1]】
在庫を減らすことで欠品が増え、患者が治療を継続できない、他薬局を探し回る、急な銘柄変更が必要になるなら、適正在庫とはいえません。逆に、供給不安を理由にすべてを多めに持つと、不動在庫と期限切れが増えます。安全性、供給継続、資金効率を同じ管理表に載せることが重要です。
本記事の数値は管理会計上の例です。棚卸資産の評価方法、税務、会計処理、返品・値引・廃棄の扱いは法人の会計方針に従い、必要に応じて経理担当者、税理士、公認会計士へ確認してください。
関連記事:在庫金額はなぜ見る?薬局の計数管理を超初心者向けにやさしく解説
在庫金額・平均在庫・在庫回転率・在庫日数の違い
| 指標 | 計算式 | 何が分かるか |
|---|---|---|
| 期末在庫金額 | 棚卸時点の在庫原価 | その時点で固定された資金 |
| 平均在庫金額 | (期首在庫+期末在庫)÷2 | 期間中の代表的な在庫量 |
| 在庫回転率 | 年間売上原価÷平均在庫 | 在庫が年に何回入れ替わったか |
| 在庫日数 | 平均在庫÷年間売上原価×365 | 平均何日分を持っているか |
| 不動在庫率 | 不動在庫金額÷総在庫金額×100 | 動いていない在庫の比率 |
| 廃棄率 | 廃棄原価÷医薬品売上原価×100 | 使用されず失った割合 |
中小企業庁の資料では、棚卸資産回転率を売上原価÷棚卸資産、回転期間を棚卸資産÷月当たり売上原価などで捉える考え方が示されています。【[2]】 薬局では、分子を売上高にする資料もありますが、薬剤料には原価が大きく含まれるため、医薬品売上原価と取得原価ベースの医薬品在庫を対応させると比較しやすくなります。
企業会計基準委員会の棚卸資産の評価に関する会計基準では、個別法、先入先出法、平均原価法などの考え方が示されています。店舗の独自計算で評価方法を月ごとに変えると、実際の数量が同じでも在庫金額が変わります。法人で採用している方法を確認してください。【[3]】
月次で計算するときの注意
月間回転率を年率と混同しないようにします。月間売上原価600万円、平均在庫800万円なら、月間回転は0.75回です。年換算するときは季節変動を無視して単純に12倍せず、原則として直近12か月の売上原価と月次平均在庫を使います。
年間在庫回転率 = 直近12か月の医薬品売上原価 ÷ 直近12か月の平均在庫金額
在庫日数 = 直近12か月の平均在庫金額 ÷ 直近12か月の医薬品売上原価 × 365
架空例:平均在庫800万円をどう読むか
- 期首在庫:760万円
- 期末在庫:840万円
- 平均在庫:(760万円+840万円)÷2=800万円
- 直近12か月の医薬品売上原価:7,200万円
在庫回転率=7,200万円÷800万円=9.0回
在庫日数=800万円÷7,200万円×365=約40.6日
この40.6日が良いか悪いかは、数字だけでは決まりません。週1回しか納品がない地域、供給制限品が多い店舗、面応需で採用品目が広い店舗、施設調剤の定期セットを抱える店舗では必要在庫が増えます。一方、毎日複数便で納品される門前店舗で、180日出庫がない品目が多いなら改善余地があります。
650万円まで適正化した場合
売上原価が7,200万円のまま、平均在庫を650万円へ適正化できたと仮定します。
- 在庫回転率:7,200万円÷650万円=約11.1回
- 在庫日数:650万円÷7,200万円×365=約33.0日
- 資金の固定減少:800万円-650万円=150万円
150万円分の資金が動きやすくなりますが、これは「150万円の利益が出た」という意味ではありません。在庫資産が現金などへ置き換わる資金効率の改善です。廃棄の減少は費用改善につながりますが、在庫削減額と利益を混同しないでください。
薬局の在庫回転率に一律の目標を置けない理由
在庫回転率を店舗ランキングにすると、現場は「数字を上げるために持たない」方向へ動きやすくなります。しかし、医薬品は一般商品と違い、処方変更、供給停止、緊急性、代替困難、保存条件、患者継続性を考える必要があります。
| 回転率を押し下げる要因 | 悪いとは限らない理由 | 確認すべきこと |
|---|---|---|
| 面応需で品目数が多い | 地域の処方へ対応する備蓄 | 最終出庫日と地域需要 |
| 供給制限品の安全在庫 | 治療継続のために必要 | 使用患者・入荷見通し |
| 施設の定期処方準備 | サイクル調剤に必要 | 次回使用日と数量 |
| 高額な患者専用品 | 次回来局が確定する場合 | 継続確認・中止リスク |
| 冷所・麻薬等の備蓄 | 緊急・専門対応に必要 | 期限・保管・記録 |
目標は、全体在庫だけでなくカテゴリー別に置きます。「通常品」「高額薬」「冷所品」「供給制限品」「麻薬」「施設定期」「散剤・水剤」「外用薬」へ分けると、必要在庫と改善対象を混同しにくくなります。
厚生労働省の薬局業務運営ガイドラインでは、地域の処方箋へ応じるための備蓄や、卸・備蓄センター・薬局間の連携など、供給体制を整える考え方が示されています。【[4]】
不動在庫・デッドストックを定義する
「デッドストック」は便利な言葉ですが、店舗ごとに定義が違うと比較できません。最終出庫から90日、180日、365日などの時間基準、金額、期限、使用患者の有無を組み合わせます。
| 区分例 | 条件例 | 最初の対応 |
|---|---|---|
| 要確認 | 最終出庫90日超 | 採用理由・患者・次回処方を確認 |
| 不動候補 | 180日超かつ次回予定なし | 返品・移動・採用整理を検討 |
| 高優先 | 高額かつ期限12か月以内 | 責任者と期限を決めて処置 |
| 期限迫る | 期限6か月以内 | 安全に使用可能な需要を確認 |
| 使用不可 | 期限切れ・品質疑義 | 隔離し、誤使用を防止 |
90日・180日は法令上の一律基準ではなく、社内管理の例です。季節性医薬品、年1回使用、希少疾患、災害備蓄などは除外理由を記録します。除外を無期限にせず、次回見直し日を設定してください。
ABC分析×最終出庫日で優先順位を付ける
ABC分析は、在庫金額や年間使用金額の大きい順に並べ、重要度を分ける方法です。A品目は少数でも金額影響が大きく、C品目は数が多く管理工数がかかります。薬局では、金額だけでなく使用頻度、期限、代替性、保存条件を重ねます。
| 区分 | 例 | 管理の重点 |
|---|---|---|
| A:高額・高影響 | 高額薬、冷所の患者専用品 | 患者ごとの次回日・発注単位 |
| B:中額・中頻度 | 慢性疾患の規格違い | 規格重複と発注点 |
| C:低額・多品目 | 低頻度の外用・小包装 | 品目数と期限確認の効率化 |
優先スコアの作り方
複雑なAIは不要です。次の4項目へ0~3点を付け、合計点の高い順に確認するだけでも効果があります。
- 在庫金額:高いほど加点
- 最終出庫日:経過日数が長いほど加点
- 期限残月数:短いほど加点
- 次回使用予定:ない、または不明なら加点
期限切れ・品質疑義の隔離 > 期限迫る高額品 > 高額で長期未出庫 > 重複規格・採用中止 > 低額の長期未出庫
期限切れや品質に疑義がある製品は「売り切る対象」ではありません。直ちに通常在庫から隔離し、社内手順と関係法令に従って処理します。

デッドストック抽出の実務手順
- レセコン・在庫システムから品名、規格、数量、取得原価、使用期限、最終出庫日を出す。
- 患者取置き、施設定期、供給制限、災害備蓄などの除外フラグを付ける。
- 90日・180日・365日未出庫で色分けする。
- 在庫金額の高い順、期限の近い順に並べる。
- 次回処方予定、採用医療機関、代替性、返品条件を確認する。
- 返品、店舗間移動、発注停止、採用整理、廃棄の候補を責任者が決める。
- 担当者、期限、処置日、結果金額を記録する。
月次管理シートの列例
| 列 | 入力内容 | 用途 |
|---|---|---|
| 品名・規格 | 正式名称 | 取り違え防止 |
| 数量・単位 | 錠、g、mL、本等 | 包装単位と区別 |
| 取得原価 | 社内評価額 | 金額影響を算出 |
| 在庫金額 | 数量×単価 | 優先順位 |
| 使用期限 | 年月日 | 期限迫りを抽出 |
| 最終出庫日 | 最後に使用した日 | 不動期間を算出 |
| 次回予定 | 患者・施設の予定 | 必要在庫を除外 |
| 処置 | 返品・移動・停止等 | 行動管理 |
| 担当・期限 | 人と期日 | 放置防止 |
患者名など個人情報を一般の在庫一覧へ不用意に記載しないでください。患者との対応関係が必要な場合は、アクセス権を限定した別管理や患者IDを使い、社内規程に従います。
高額薬・冷所品・散剤・外用薬の管理
高額薬
高額薬は「1箱あるだけ」で在庫金額を大きく動かします。患者の次回来局、処方継続、用量変更、転院、入院、検査結果で中止になる可能性を確認し、必要に応じて患者単位の発注計画を作ります。予約があるからといって処方確定前に過剰発注しないよう、医療機関との連携可能範囲と社内ルールを確認します。
冷所品
冷所品は、温度逸脱、結露、凍結、停電、移送中の温度管理が重要です。店舗間移動では、単に保冷バッグへ入れるだけでなく、許容温度、移送時間、記録、受け渡し、製品の品質情報を確認します。温度履歴を説明できない製品を安易に再流通させてはいけません。
散剤・水剤
散剤・水剤は開封後の品質、秤量誤差、容器残量、実在庫差、少量採用の増加が課題です。開封日、使用期限、秤量単位、棚卸方法を統一し、同効薬や規格の採用が増えすぎていないか見直します。
外用薬
軟膏・クリーム・貼付剤・点眼剤は、包装単位や規格違いが多く、処方変更で残りやすい品目です。採用医療機関、季節性、規格の重複を見て、低頻度品は小包装や取り寄せ運用が可能か卸と確認します。
GDPガイドラインでは、先に使用期限が切れる製品を先に出庫するFEFO(First Expired, First Out)、定期的な在庫照合、期限切れ・期限間近品の分離などの考え方が示されています。これは主に医薬品流通を対象とする指針ですが、薬局の保管・期限管理を設計する際にも参考になります。【[5]】
発注点・安全在庫・最大在庫を設定する
感覚発注を減らすには、平均使用量、納品までのリードタイム、供給変動を分けます。
発注点 = 平均1日使用量 × 調達リードタイム + 安全在庫
最大在庫 = 発注点 + 発注後から次回見直しまでの予定使用量
平均1日使用量が10錠、通常リードタイム2日、安全在庫30錠なら、発注点は50錠です。ただし供給制限、連休、卸の締切、患者の処方周期、包装単位、代替性で調整します。すべての品目へ同じ「○日分」を設定しないでください。
| 状況 | 安全在庫 | 判断 |
|---|---|---|
| 毎日複数便・代替容易 | 小さくできる | 欠品率を見ながら調整 |
| 週1便・遠隔地 | 厚くする | 連休と天候を反映 |
| 供給制限・代替困難 | 患者分を優先 | 過剰確保は避ける |
| 高額・患者専用 | 次回予定と連動 | 中止リスクを確認 |
| 季節性 | 季節前後で変更 | 前年同月と流行を確認 |
返品・店舗間移動・採用品整理の優先順位
1.返品条件を確認する
卸、製品、期限、包装状態、納品履歴によって返品可否や控除が異なります。「返品できるはず」と決めつけず、契約と卸の条件を確認します。開封品、冷所品、麻薬、特定生物由来製品などは特に慎重に扱います。
2.店舗間移動は品質と記録を先に確認する
移動先で需要があっても、ロット、期限、数量、保管履歴、温度、受け渡しを追跡できなければ安全な移動とはいえません。移動元・移動先の双方で在庫台帳を更新し、二重計上や所在不明を防ぎます。
3.採用品を整理する
医療機関の採用変更、後発品銘柄の統一、重複規格、既に来局しない患者専用品を確認します。採用停止しても在庫を放置せず、残量の処置と発注マスタ停止をセットにします。
4.期限切れは隔離して適切に処理する
期限切れ品を通常棚へ置いたままにせず、誤使用できない状態で隔離します。麻薬、向精神薬、毒薬・劇薬などは、一般在庫と同じ処理にせず、法令と社内手順に従って記録・廃棄・届出を確認します。
実践例1:平均在庫800万円から650万円へ
架空薬局の状況
- 直近12か月の医薬品売上原価:7,200万円
- 平均在庫:800万円
- 在庫回転率:9.0回
- 在庫日数:約40.6日
- 180日以上未出庫:110万円
- 期限12か月以内の不動在庫:45万円
- 月平均廃棄:8万円
- 欠品率:受付処方箋の1.8%
管理薬剤師は「在庫150万円削減」を全品目へ同じ割合で割り振らず、180日未出庫、期限12か月以内、高額品、重複規格から確認しました。
1か月目:数字をそろえる
- 在庫評価方法と集計日を経理・本部と統一
- 最終出庫日、期限、在庫金額の欠損を修正
- 患者取置き、施設定期、供給制限品をフラグ化
- 廃棄を期限切れ、破損、温度逸脱、棚卸差異へ分類
2か月目:高優先品を処置する
- 期限12か月以内45万円を卸返品・店舗間移動候補へ
- 180日未出庫110万円のうち、次回予定なし82万円を発注停止
- 重複規格・重複銘柄を医師の処方状況と照合
- 高額患者専用品は次回予定と中止リスクを確認
3~6か月目:発注点を調整する
よく動く品目は欠品を増やさないよう発注点を維持し、リードタイムが短く代替容易な品目の最大在庫を下げました。供給制限品は別枠で管理し、通常品の削減目標から除外しました。
| 指標 | 開始時 | 6か月後 | 評価 |
|---|---|---|---|
| 平均在庫 | 800万円 | 650万円 | 150万円適正化 |
| 在庫日数 | 40.6日 | 33.0日 | 回転改善 |
| 180日未出庫 | 110万円 | 38万円 | 候補処置が進んだ |
| 月平均廃棄 | 8万円 | 3万円 | 期限管理改善 |
| 欠品率 | 1.8% | 1.7% | 悪化なし |
結果は架空です。重要なのは、平均在庫だけでなく欠品率と廃棄額を同時に追った点です。欠品率が大きく上がった場合は、発注点、安全在庫、納品リードタイムの仮定を見直します。
実践例2:高額な冷所品が処方中止になった
70代患者へ継続していた高額な冷所品が、入院により中止となりました。未開封1箱、期限は14か月後です。薬剤師は次の順に確認します。
- 返品条件と納品履歴を卸へ確認する。
- 保管温度記録、停電・逸脱の有無、包装状態を確認する。
- 同一法人の他店舗で需要があるかを確認する。
- 移動する場合、品質・ロット・期限・数量・温度・受け渡しを記録する。
- 移動できない場合、発注停止と定期的な期限確認を設定する。
別店舗に患者がいるからといって即移動が唯一の正解ではありません。流通条件、製品特性、社内手順、移動先の処方継続性を確認します。品質を担保できない場合は、金額だけを理由に移動してはいけません。


実践例3:散剤の帳簿在庫と実在庫が合わない
小児科を応需する架空薬局で、散剤の帳簿残量が1,200g、実在庫が1,120gで80gの差が見つかりました。原因は期限切れだけではなく、秤量ロス、容器残、登録単位、返品・廃棄入力、棚卸方法が考えられます。
- 仕入・入庫の包装単位が正しいか
- 調剤時の使用量と賦形を区別しているか
- 予製・分包機清掃・こぼれの記録があるか
- 開封容器の風袋と残量測定が統一されているか
- 廃棄・回収・返品が在庫へ反映されているか
帳簿を実在庫へ合わせるだけで終わらず、差異理由、是正、再発防止を記録します。薬局の管理帳簿や安全管理の手順とつなげ、定期棚卸の許容差と確認者を決めます。
あわせて読みたい:薬局の管理帳簿完全ガイド|記載例・保存期間・監査対策まで徹底解説
月次で見る在庫KPI
| KPI | 集計 | 管理の問い |
|---|---|---|
| 平均在庫金額 | 期首・期末平均 | 増加は必要分か |
| 在庫回転率 | 売上原価÷平均在庫 | 前年同月と比べたか |
| 在庫日数 | 平均在庫÷売上原価×365 | カテゴリー別に違うか |
| 90・180日未出庫 | 金額・品目数 | 次回予定があるか |
| 期限12・6・3か月以内 | 金額・品目数 | 処置期限があるか |
| 廃棄額・廃棄率 | 理由別 | 期限・破損・差異のどれか |
| 欠品率 | 欠品処方箋÷受付 | 削減の副作用はないか |
| 緊急発注・配送 | 件数・費用 | 発注点が低すぎないか |
在庫回転率だけでは、期限切れの予兆や欠品の悪化を捉えられません。金額、日数、不動、期限、廃棄、欠品を1ページにまとめます。前月比に加えて前年同月比を見ると、花粉症、感染症、皮膚科外用、学校休暇など季節性を誤認しにくくなります。
管理薬剤師・薬局長の月次会議の進め方
1.変化の大きい3項目だけを選ぶ
全品目を会議で読み上げず、在庫金額増加、不動在庫、期限迫りの上位を選びます。原因を「患者予定」「供給制限」「採用変更」「発注単位」「入力差異」に分けます。
2.担当者と期限を決める
「確認する」で終わらせず、卸へ返品確認、他店需要確認、医療機関採用確認、マスタ停止など具体的な行動と期限を決めます。
3.処置結果を金額と品質で確認する
返品・移動できた金額だけでなく、欠品、緊急配送、温度逸脱、患者負担への影響を確認します。削減目標の達成が品質悪化を伴うなら、目標または方法を修正します。
4.手順書と教育へ戻す
同じ不動在庫が繰り返す場合は個人の注意力ではなく、発注点、採用開始・終了、患者専用品、返品確認、期限確認の手順を変えます。厚生労働省のマニュアルは、手順書の周知、定期確認、改善を重視しています。【[1]】
廃棄金額を月次で管理するシート例
| 月 | 期限切れ | 破損・逸脱 | 棚卸差異 | 回収等 | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|
| 4月 | 35,000円 | 5,000円 | 12,000円 | 0円 | 52,000円 |
| 5月 | 18,000円 | 0円 | 8,000円 | 4,000円 | 30,000円 |
| 6月 | 12,000円 | 3,000円 | 5,000円 | 0円 | 20,000円 |
合計だけでは対策が曖昧です。期限切れなら最終出庫日と発注点、破損・逸脱なら保管と搬送、棚卸差異なら入力・計量・権限、回収なら隔離と返品可否を改善します。廃棄額が減っても、期限切れ品を処理せず残して数字を良く見せることは許されません。
在庫回転率改善でよくある失敗
全品目を10%ずつ削る
使用頻度、リードタイム、代替性を無視します。A品目の患者専用品と毎日使う低額品では、削減方法が違います。
月末だけ発注を止める
期末在庫は下がっても、翌月の欠品・緊急発注が増えるだけなら改善ではありません。平均在庫と欠品率を見ます。
在庫回転率が高い店舗をそのまま真似る
納品便、応需科、面応需、在宅、供給制限、地域が違います。自局のリードタイムと処方構成で発注点を作ります。
返品・店舗間移動を急ぎすぎる
品質、保管履歴、契約、移送条件、トレーサビリティを欠くと安全上の問題になります。金額より先に品質を確認します。
廃棄を担当者のミスで終わらせる
発注点、採用管理、患者予定、マスタ、棚卸、教育の仕組みを見直さなければ再発します。
スタッフ教育に在庫KPIを活用する
在庫管理を管理薬剤師1人の仕事にすると、休暇・異動で止まり、発注判断の根拠も共有されません。日次、週次、月次の担当と確認者を分け、誰が行っても同じ判断になる手順を作ります。
| 頻度 | 主な業務 | 教育ポイント |
|---|---|---|
| 入出庫時 | 品名・規格・数量・期限・外観 | 取り違えと破損を止める |
| 日次 | 冷所温度、期限切れ隔離、欠品 | 異常時の連絡先を明確にする |
| 週次 | 発注点、患者専用品、供給制限 | 過剰発注と不足を区別する |
| 月次 | 回転率、不動、期限、廃棄、差異 | 原因と次の行動を決める |
| 四半期 | 採用品、重複規格、手順書 | 仕組みの再発防止へ戻す |
新人教育では、在庫回転率の計算より先に、期限切れ・回収品・品質疑義品を通常在庫から隔離すること、冷所や麻薬などの保管手順、在庫を勝手に廃棄・移動しないことを教えます。その後、発注点とKPIの意味を学ぶ順番が安全です。
月次レビューの記載例
直近12か月売上原価7,200万円、平均在庫800万円、在庫日数40.6日。180日未出庫110万円のうち、期限12か月以内45万円を優先確認した。返品可15万円、移動候補18万円、患者次回予定あり8万円、処置保留4万円。担当者と期限を設定。次月は欠品率1.8%、緊急発注件数、平均在庫を併記し、削減による供給影響を確認する。
このように「数字→原因→処置→担当→期限→次回確認」を1セットにすると、在庫会議が報告だけで終わりません。
在庫回転率だけでなく、売上、粗利益、処方箋、人件費、損益分岐点を一緒に学びたい方は、著書一覧の『はじめての薬局計数管理』も選択肢になります。自局の月次データへ置き換え、少数のKPIから始めてください。

まとめ:在庫を減らすのではなく、必要在庫を説明できる状態にする


- 在庫回転率は売上原価と平均在庫を同じ原価基準で計算する。
- 在庫日数、不動在庫率、廃棄率、欠品率を同じ表で見る。
- 不動在庫は金額、最終出庫日、期限、次回予定で優先順位を付ける。
- 高額薬・冷所品は患者予定と品質記録を優先し、安易に移動しない。
- 発注点は使用量×リードタイム+安全在庫で品目別に設定する。
- 返品・移動・採用停止は担当者、期限、結果を記録する。
- 明日から、180日未出庫かつ期限12か月以内の上位10品目を抽出する。
よくある質問
薬局の在庫回転率は何回が適正ですか?
全国一律の適正回数はありません。応需科、面応需、在宅、納品便、供給制限、地域で必要在庫が異なります。自局の前年同月、カテゴリー別、欠品率と併せて判断します。
在庫回転率は売上高で計算してもよいですか?
社内で定義を固定すれば補助指標にはなりますが、原価基準が基本です。医薬品売上原価÷平均医薬品在庫のように、分子と分母の評価基準を対応させると比較しやすくなります。
平均在庫は月末在庫だけでよいですか?
月末だけでは偏ることがあります。簡易には期首・期末平均、より精密には各月末や日次在庫の平均を使います。月末だけ発注を止める運用を見抜くためにも平均を使います。
不動在庫は何日動かなければ該当しますか?
一律の法定日数はありません。90日、180日、365日など社内区分を決め、季節品、希少疾患、患者予定、災害備蓄は理由と見直し日を記録します。
高額薬は患者の次回来局分だけ持てばよいですか?
処方継続が確定するとは限りません。次回予定、用量変更、中止、入院、供給状況、包装単位、納期を確認し、社内手順に沿って発注します。
期限が近い薬を別店舗へ移動してよいですか?
品質と記録を担保できる場合に限って検討します。ロット、期限、数量、保管履歴、温度、移送条件、受け渡し、移動先需要を確認し、対象薬の法令・契約・社内手順に従います。
冷所品を移動するときの注意点は?
許容温度と全移送時間の温度管理を確認します。温度逸脱、凍結、結露、包装、記録、受け渡しを管理し、品質を説明できない場合は安易に移動しません。
在庫を減らしたら欠品が増えました。どう直しますか?
発注点と安全在庫を見直します。品目別の使用量、リードタイム、納品便、連休、供給制限、代替性を確認し、削減率を一律に戻すのではなく原因品目を調整します。
廃棄率の分母は仕入額と売上原価のどちらですか?
社内で目的に合わせて固定します。本記事では廃棄原価÷医薬品売上原価を例示しました。仕入額を使う場合も期間と評価方法をそろえ、店舗間で同じ定義にします。
管理シートは毎日更新すべきですか?
日次と月次を分けます。温度、期限切れ隔離、入出庫など安全管理は定めた頻度で実施し、回転率・不動在庫・廃棄・欠品のKPIは月次で集計する方法が実務的です。
参考文献
- 厚生労働省「医薬品の安全使用のための業務手順書作成マニュアル」URL:https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb6171&dataType=1&pageNo=1(最終確認日:2026年07月23日)
- 中小企業庁「中小PMIガイドライン」URL:https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/download/pmi_guideline.pdf(最終確認日:2026年07月23日)
- 企業会計基準委員会「棚卸資産の評価に関する会計基準」URL:https://www.asb-j.jp/jp/accounting_standards_system/details.html?topics_id=24(最終確認日:2026年07月23日)
- 厚生労働省「薬局業務運営ガイドライン」URL:https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta7194&dataType=1(最終確認日:2026年07月23日)
- 厚生労働省「医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン」URL:https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/000466215.pdf(最終確認日:2026年07月23日)
- 厚生労働省「薬局、医薬品販売業等監視指導ガイドライン」URL:https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta6895&dataType=1&pageNo=1(最終確認日:2026年07月23日)


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