
認知症の中でも最も多いとされるアルツハイマー型認知症は、記憶障害や見当識障害、判断力の低下などを主な症状とし、進行すると日常生活に大きな支障をきたします。
治療法の中心となるのが薬物療法であり、コリンエステラーゼ阻害薬(ChEI)はその中核を担う重要な薬剤群です。
現在、日本で使用されているChEIのうち、特にドネペジル(アリセプト)とガランタミン(レミニール)は広く使用されており、いずれも認知機能の改善に効果があります。
しかし、それぞれの薬剤には作用機序や副作用、剤形、適応範囲などに明確な違いがあり、患者一人ひとりに適した選択が求められます。
この記事では、薬剤師として現場で押さえておきたいドネペジルとガランタミンの特徴を比較し、臨床での使い分けのポイントを徹底的に解説します。
症例や処方対応、服薬指導の場面でも役立つ内容を盛り込んでいますので、ぜひ参考にしてください。
ドネペジルとガランタミンの基本比較
| 特徴項目 | ドネペジル(アリセプト) | ガランタミン(レミニール) |
|---|---|---|
| 作用機序 | アセチルコリンエステラーゼ阻害 | アセチルコリンエステラーゼ阻害 + ニコチン受容体増強 |
| 適応症 | 軽度〜高度のアルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症 | 軽度〜中等度のアルツハイマー型認知症 |
| 投与回数 | 1日1回 | 1日2回 |
| 剤形 | 錠剤、口腔内崩壊錠、ゼリー等 | 錠剤、口腔内崩壊錠、液剤 |
| 代謝経路 | CYP3A4およびCYP2D6 | CYP3A4、CYP2D6、一部腎排泄 |
| 副作用 | 吐き気、下痢、徐脈など | 吐き気、嘔吐、めまいなど |
| 特徴的効果 | 無気力・無反応の改善 | 情緒不安定・攻撃性の改善 |

どうやって使い分ける?
重要なポイント:患者の症状や生活環境、副作用のリスク、服薬管理能力に応じて選択する
- 無気力・反応鈍化が主なら:ドネペジル
- 不安や攻撃性が強ければ:ガランタミン
- 服薬が難しい場合:1日1回で剤形が豊富なドネペジル
- 嚥下困難:液剤対応のガランタミン
具体的な症例と使い分け
ドネペジルが有効だった症例
患者情報:82歳女性。アルツハイマー型認知症(軽度〜中等度)と診断。既往歴に高血圧と骨粗鬆症があるが、認知症以外の精神疾患歴はなし。
主訴:ここ3ヶ月で無気力が著明になり、以前は毎朝行っていた散歩や家族との会話を拒否。テレビにも反応せず、ほとんどの時間をベッドで過ごすようになる。家族から「名前を呼んでも無反応で、心配だ」との訴え。
治療方針:覚醒度を高める目的でドネペジル5mg/日を朝食後に開始。2週間後に10mg/日へ増量。
経過観察:投与後1週間で朝の着替えや食事準備に自発性が見られるようになり、2週間目にはテレビにツッコミを入れる場面も。1ヶ月後のMMSEスコアは21→24に改善。副作用は軽微な下痢のみで、自然軽快。
重要なポイント:無気力・意欲低下が中心症状の場合、ドネペジルによる脳覚醒作用が奏功するケースが多い。
ガランタミンが有効だった症例
患者情報:75歳男性。中等度アルツハイマー型認知症。過去に一過性脳虚血発作(TIA)の既往あり。家族歴に認知症あり。
主訴:最近になって幻視や被害妄想(「財布を盗まれた」「妻が裏切っている」など)が出現。暴言や怒声をあげることが多くなり、介護者が困難を感じている。不眠も顕著。
治療方針:BPSD(行動・心理症状)への効果を期待し、ガランタミン8mg/日を2分割で開始。3週間後に16mg/日に増量。
経過観察:2週間以内に怒声の頻度が明らかに減少。幻視も軽減し、夜間に穏やかに眠るようになる。介護者から「表情が穏やかになり、話を聞いてくれるようになった」とのフィードバック。軽度の吐き気が初期に見られたが、食後服用とすることで回避可能に。
重要なポイント:攻撃性・妄想・幻視などのBPSDが主訴の場合、ガランタミンのニコチン受容体調整作用が奏功する可能性が高い。
まとめ
ドネペジルとガランタミンは、どちらもアルツハイマー型認知症に効果的な薬剤です。
それぞれの特徴を理解し、患者一人ひとりに最適な治療を選びましょう。
よくある質問
Q1. 効果の違いは?
A. 大きな違いはありませんが、症状によって適した薬剤があります。
Q2. 併用できますか?
A. 原則として併用は推奨されていません。
Q3. なぜガランタミンは1日2回?
A. 半減期が短いため、1日2回の投与が必要です。
Q4. ドネペジルはレビー小体型にも?
A. はい、適応があります。
Q5. 高齢者ではどう注意?
A. 少量から開始し、副作用を注意深く観察することが大切です。
参考文献
- 高齢者認知症の薬物療法 – 厚生労働省
- Alzheimer 病を中心とした認知症の最新治療 – J-Stage
- 抗認知症薬の比較 – 国立長寿医療研究センター
- 認知症のケアと薬物治療 – 長寿科学振興財団



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