みなさまこんにちは
薬局薬剤師のゆずまるです。
骨の記事を書いて思ったことですが、そういえば薬剤師なのに薬のことについての記事は書いてない。
せっかくだし同種同効薬のことでも書こうかな
と思ったのがきっかけです。
エディロールの出荷調整で大ピンチの薬局もあったと思います
そのため骨シリーズの薬の記事を書いてみました。参考にしていただけたら幸いです。
骨治療薬シリーズ第一段カルシウム編
記事作成に参考にした文献はこちら
カルシウムの役割
カルシウムは、体重の1~2%程度体内に含まれており、生体内に最も多く存在するミネラルです。
99%は骨や歯などに、残り1%は血液、筋肉、神経などに存在しています。
骨や歯の主要な構成成分として有名ですが、その他にも筋肉収縮、神経興奮の抑制、血液凝固作用の促進などに関与しています。
- 骨、歯などを形成
- 血液凝固
- 筋肉収縮
- 神経の興奮の抑制
- 細胞の機能調節
- 血圧上昇の防止
骨代謝について
カルシウムは主に小腸で吸収されます。
食事から取り入れられたカルシウムは胃酸で溶解され、カルシウムイオンとなり小腸で吸収され、血液中に移行します。
血液中のカルシウムの濃度は一定に保たれており通常は8.5~10.4㎎/㎗が基準値となっております。
吸収されたカルシウムはいざというときに備えて骨に蓄えられていきます。
血液中のカルシウム濃度が少なくなっていくと骨をとかすことで血液中のカルシウム濃度を一定に保つ働きが備わっています。
この骨の生成と破壊を行う体の仕組みを骨代謝と言います。
血中カルシウム濃度をコントロールするために
体内のカルシウム量をコントロールしていくためには以下のことを気を付けていく必要がある。
- 食事からのカルシウム摂取
- 消化管からのカルシウム吸収率
- 腎臓からのカルシウム排泄
カルシウムを体に多く取り入れるためには、カルシウムを効率よく補給するか、体から抜けてしまうのを防ぐ必要がある。
カルシウム吸収率
カルシウムを骨に蓄える働きが備わっているならカルシウムが多そうなものをガンガン食べればいいじゃないかな。
誰もがそう思うでことでしょう。
残念なことに、補給したカルシウム全てが血液中へ吸収されるわけではありません。
カルシウムの吸収は胃酸と混ざり合いイオン化されることで吸収が高まります。
その一方で、カルシウムを吸収するとき、小腸にリン酸があるとこの2つがくっついてしまい、カルシウムの吸収が阻害されてしまいます。
腸管におけるカルシウムの吸収は小腸の十二指腸から空腸の始まりは能動的輸送により、回腸では受動輸送により吸収されます。
吸収率の計算方法は以下の通り
見かけの吸収率=((摂取量―糞中排泄量)/摂取量)×100
接種したカルシウムの種類、年齢や性別などにもより吸収率は変わります。
一般的なカルシウムの吸収率は食べ物からは約20~30%、牛乳でも約40%と言われています。
また、活性型ビタミンD、パラトルモン、カルシトニンなどもカルシウムの吸収を制御する因子として働きかけております。
カルシウム吸収を促進する因子 | 活性型ビタミンD3、マグネシウム、胃酸、CPP(カゼインホスホペプチド)、乳糖 |
---|---|
カルシウム吸収を 阻害する因子 |
リン酸、シュウ酸、フィチン酸、多量の食物繊維など |
カルシウムの摂取目安量
日本人の食事摂取基準(2020年版)では、カルシウムの摂取推奨量が決められています
1日の推奨量は
- 18~29歳男性で800㎎
- 30歳以上の男性で700㎎
- 18歳以上の女性で650㎎
とされています。
耐容上限量は、18歳以上男女ともに1日2,500㎎と設定されています。
カルシウムの過剰摂取は、高カルシウム血しょうなど健康被害が発生する可能性があります。
その他ビタミン D との併用によっても、より少ない摂取量でも血清カルシウムが高値を示すこともあるので注意が必要です。
血清カルシウム濃度が急激に上昇するのを防ぐため骨粗しょう症治療ガイドラインにも 1回に 500mg 以上を摂取しないように注意喚起されている
高カルシウム血しょうとは
高カルシウム血症の初期症状は様々ですが、無症状のかたもいます。
一般に便秘、吐き気、嘔吐、腹痛、食欲不振、尿量増加、脱水による喉のかわきの症状が現れます。
重度の高カルシウム血症では、錯乱、情動障害、せん妄、幻覚、昏睡、筋力低下、不整脈など
長期間にわたる高カルシウム血症では、カルシウム性の腎結石が生じることもある。
薬の解説~カルシウム製剤~
ひと言にカルシウム治療薬と言ってもその治療目的は様々です。
代表的な医薬品について紹介致します。
作用機序と治療効果
カルシウムは体内で様々な作用をあらわすミネラルです。
カルシウムの働きは誰もが1度は聞いたことあると思いますが、カルシウムは骨の形成に関わり、骨を強くする働きがあります。
その他にもカルシウムは消化管内でリンと結合し体外へ排泄させる働きを持つことから、腎不全などによる高リン血症の改善作用もあります。
また、胃酸を中和する制酸作用、下痢などを改善する作用も持っております。
- カルシウムの補給(骨粗しょう症やテタニー)
- リンの排泄(慢性腎不全)
- 副甲状腺機能低下症
- 胃炎(消化管内の制酸作用)
有機酸系カルシウムと無機系カルシウム
カルシウム製剤は主に有機酸系カルシウム製剤と無機カルシウム製剤に分かれます。
有機酸系のカルシウムは炭素を主成分とする有機化合物
有機酸系カルシウムの代表的な成分は
- Lアスパラギン酸カルシウム
- グルコン酸カルシウム
- 乳酸カルシウム など
無機酸系のカルシウムは有機酸系以外のカルシウムのこと代表的な成分は
- 沈降炭酸カルシウム
- 塩化カルシウム
- リン酸水素カルシウム など
有機酸系と無機酸系カルシウムの吸収率!?
有機酸系と無機酸系では違いがあるのだろうか。
具体的な実験データは見つからなかったがインタビューフォームに有機酸系の吸収率は無機酸系に比べて良いといった文言の記載はあった。
胃腸から吸収される程度は,グルコン酸又は乳酸塩に劣るといわれる。カルシウムのみが必要なときはグルコン酸カルシウムや乳酸カルシウムの方がすぐれている
リン酸水素カルシウム「三恵」より
上皮小体摘出ラットを用いた実験で,L-アスパラギン酸カルシウム水和物は塩化カルシウム水和物,リン酸カルシウム,炭酸カルシウムに比較し,生体内利用率の高いことが認められている。
アスパラCAインタビューフォームより
カルシウムの吸収率の比較はこの引用文だけでは出来ないが、少なくとも 有機酸系カルシウムの方が無機酸系カルシウムより吸収率はよさそうだ。
きっと吸収率は水溶性の高い低いで変わってくるのだろうけど…
それに対しての実験データなどの比較した文献がない。
カルシウム含有量について
有機酸系カルシウムのほうが吸収率は高いといった文言がインタビューフォームのあちこちでみられた。
しかしながらカルシウム含有量だけで考えると無機酸系の方がカルシウム含有量が高いことが分かる。
下記に一部計算例を載せる。
計算例
アスパラCA200㎎1錠中にアスパラギン酸カルシウムとして200㎎
分子量が358.32
Caの分子量は40
40/358.32×200㎎=22.3㎎
1錠に22.3mgのカルシウムが含有していることがわかる
計算例その2
沈降炭酸カルシウム500mg CaCO3
分子量は100.09
40/100.09×500mg=199.8
1錠中にカルシウムは199.8mg含有してることになる
純粋なカルシウム量の比較では圧倒的にアスパラCAの方が少ない。
うーん、どっちがいいの?
純粋に吸収率と含有量から効果の比較ができないのは残念だ。
文献も見あたらない。メーカーへ確認してみるか…
とりあえず、有機酸系でカルシウムの含有量が多いものが一番いいのだろう。
代表的な治療薬~カルシウム製剤~
カルシウム製剤の紹介をしたいと思います。
これから出てくるメック計算式は以下の通りです。
1000 ÷ 分子量 × 電荷 = mEq(1gあたり)
アスパラCA200
- 有機酸系のアスパラギン酸カルシウム製剤
- 低カルシウム血症でのテタニー、骨粗しょう症、骨軟化症などに使用する
カルシウム含有量と吸収率
- 1錠あたりのカルシウム含有量は22.3㎎
- 1錠中1.3mEq
- 上皮小体摘出ラットを用いた実験で,L-アスパラギン酸カルシウム水和物は塩化カルシウム水和物,リン酸カルシウム,炭酸カルシウムに比較し,生体内利用率の高いことが認められている。(インタビューフォーム)
効能・効果
- 低カルシウム血症に起因するテタニー関連症状
- 骨粗鬆症、骨軟化症におけるカルシウム補給
- 発育期におけるカルシウム補給
- 妊娠・授乳時におけるカルシウム補給
用法・用量
- アスパラギン酸カルシウムとして、通常成人1日1.2g(6錠)を2〜3回に分割経口投与する。
- 年齢、症状により適宜増減する。
一言コメント
骨粗しょう症の治療薬として一般的に使われてる印象。
錠剤があるから服用しやすいのが特徴でしょうか
ただカルシウム含有量が圧倒的少ないのが気になる
保険上の上限6錠でも133.8mgだしカルシウムの補給としては心もとない感じ
カルチコール
- 有機酸系のグルコン酸カルシウム製剤
- 散剤、注射剤があり
- 低カルシウム血症でのテタニーや副甲状腺機能低下症などに使用する
カルシウム含有量と吸収率
- カルチコール注射液8.5%は1mlあたり0.39mEq、caは7.85mg含有
- カルチコール末は1gあたり約90mgのCa含有、4.49mEq
- 消化管からのカルシウム吸収率は27%
効能・効果
- 低カルシウム血症に起因する下記症候の改善テタニー,テタニー関連症状
- 小児脂肪便におけるカルシウム補給
用法・用量
- グルコン酸カルシウム水和物として,通常成人1日1~5gを3回に分割経口投与する。なお,年齢,症状により適宜増減する。
一言コメント
注射の剤形があるのでおそらく病院内ではメジャーなのかな?
院外で薬局で勤めてる私は粉末タイプは今までの処方は見たことない。
飲み薬だけの比較では有機酸系の中間に位置する印象。
乳酸カルシウム 乳石錠
- 有機酸系の乳酸カルシウム製剤
- 低カルシウム血症でのテタニー、副甲状腺機能低下症、下痢症状(特に小児における)改善目的などで使用する
- 散剤と錠剤があり(乳石錠は販売中止予定)
カルシウム含有量と吸収率
- 1gあたり130mgのCa含有
- 1gあたり6.49mEq
- 消化管からの吸収率約33%(ケンエー製薬IFより)
効能・効果
- 低カルシウム血症に起因する次記症候の改善:テタニー。
- 次記代謝性骨疾患におけるカルシウム補給:妊婦の骨軟化症・産婦の骨軟化症。
- 発育期におけるカルシウム補給。
用法・容量
- 乳酸カルシウム水和物として、1回1gを1日2〜5回経口投与する。
- 年齢、症状により適宜増減する。
一言コメント
副甲状腺機能低下の人に処方が多いイメージです。
カルシウム含有量、吸収率共にカルチコールよりも高いのでこちらが主流である印象。
沈降炭酸カルシウム カルタン 炭カル錠
- 無機系の沈降炭酸カルシウム製剤
- 消化管内の制酸成分として胃炎などに使用される
- 高リン血症などに使用される場合もある
カルシウム含有量と吸収率
- 500mg1錠中に約200mgのカルシウム含有
- 1錠中に10mEq
- 吸収率に関しての明言はされていない
カルタン錠
- カルタン錠 500 1 錠(沈降炭酸カルシウムとして 500mg)は、317.8mg のリン酸イオンを結合する
効能・効果
- 高リン血症の改善:保存期及び透析中の慢性腎不全患者
用法・容量
- 通常、成人には、沈降炭酸カルシウムとして1日3.0gを3回に分割して、食直後、経口投与する。
- 年齢、症状により適宜増減する。
炭カル錠
- 本品1g は 0.1mol/L 塩酸約 200mL を中和する効力があるとのこと。
- 化学反応式は以下の通り
- CaCO3+2HCl→CaCl2+H2O+CO2
二酸化炭素が発生するから胃が膨らんだりゲップが出そうだ。
効能・効果
下記疾患における制酸作用と症状の改善
- 胃・十二指腸潰瘍、胃炎(急・慢性胃炎、薬剤性胃炎を含む)、上部消化管機能異常(神経性食思不振、いわゆる胃下垂症、胃酸過多症を含む)
用法・容量
- 沈降炭酸カルシウムとして、通常成人1日1〜3gを3〜4回に分割経口投与する。
- 年齢、症状により適宜増減する
カルタン錠以外でもリン吸着できる?
Ca剤は胃酸によって溶解して Caイオンになります。
イオン化されたカルシウムは、周りにリン酸が存在する環境であれば不溶性塩のリン酸Caとなって糞便中に排泄されます。
空腹時に服用すれば周囲にリン酸がないため、Caは吸収されます。
理論上、リン吸着剤、血清Caの上昇のどちらの目的にも使用可能です。
ただし、カルタンは 1g あたりの Ca 含量は 400mgであるのに対して、乳酸 Ca は 1g あたりのCa含量は 149mg しかないので、乳酸Ca をリン吸着剤として用いるには単純計算しても 2.7 倍の多量を服用する必要がある。
保険適応もカルタンのみ。
リン吸着剤として使うなら決められたものを使うのが無難。
デノタスチュアブル配合錠
- 沈降炭酸カルシウム、ビタミンD3、炭酸マグネシウムを配合した製剤
- カルシウムとして305mg
- 天然型ビタミンD3として200IU
- マグネシウムとして15mg
- ヨーグルト風味のチュアブル錠
効能・効果
- RANKL阻害剤(デノスマブ(遺伝子組換え)等)投与に伴う低カルシウム血症の治療及び予防
容量・容量
- 通常、1日1回2錠を経口投与する。なお、患者の状態又は臨床検査値に応じて適宜増減する。
- かみ砕くか、口中で溶かして服用すること。
一言コメント
普通にこれが一番良いのでは?と思うほど骨によさそうなものがたくさん入っている
特殊な薬を使っている場合のみで使用可能な薬のため、そこだけが残念なところ
きっと高カルシウム血しょうになりやすいんだろうな…と思って添付文書を確認。こう書かれている。
本剤は、使用成績調査等の副作用発現頻度が明確となる調査を実施していない。
なんだか良くわからない薬だった。
市販薬として買えるカルシウム製剤
市販で買えるカルシウム製剤はどんなものがあるのだろうか
医療用と比べてみての違いについて一部紹介します。
市販薬でなにかない?と言われたときにしっかり対応できるといいですよね。
ワダカルシューム
特徴
- 第3類医薬品
- ワダカルシューム錠は、骨がもろくなるのを防ぎ、骨や歯の発育を促すカルシウム剤です。
- 15錠(成人1日量)でカルシウムが645mgとれます。
内容成分・成分量
15錠(成人1日服用量)中、カルシウムとして645mg含有
- リン酸水素カルシウム水和物・・・2550mg
- 乳酸カルシウム水和物・・・150mg
- クエン酸カルシウム・・・150mg
効能・効果
次の場合のカルシウムの補給
- 妊娠・授乳期
- 発育期
- 老年期
用法・用量/使用方法
次の量を毎食後に服用して下さい。
- 成人(15歳以上)・・・1回量5錠、1日服用回数3回
- 8歳以上15歳未満・・・1回量3錠、1日服用回数3回
- 5歳以上8歳未満・・・1回量2錠、1日服用回数3回
- 5歳未満・・・服用しないこと
新カルシチュウD3
特徴(特長)
- 1日1回、2錠(15歳以上)で、カルシウム 610mgが摂れる。
- カルシウムの吸収を促進するビタミンD3、さらにマグネシウムを配合。
- 服用しやすい、かみくだけるソフトチュアブル錠。水なしでそのまま服用できる。
- さわやかなヨーグルト風味。
- 第2類医薬品
- 医療用医薬品デノタスチュアブルと同等の内容
内容成分・成分量
本剤は、チュアブル錠で、2錠中に次の成分を含有
- 沈降炭酸カルシウム(カルシウムとして・・・610mg)・・・1525mg
- 炭酸マグネシウム(マグネシウムとして・・・30mg)・・・118.4mg
- コレカルシフェロール(ビタミンD3)・・・400IU
効能・効果
次の場合のカルシウムの補給
妊娠・授乳期、老年期、発育期
用法・用量
必ずかみくだくか口中で溶かして服用して下さい。
- 成人(15歳以上)1日1回 2錠
- 7歳以上15歳未満 1日1回 1錠
- 7歳未満 服用しないこと
まとめ
カルシウムの役割や代表的なカルシウム医薬品について書かせて頂きました。
不足しがちなカルシウムですが食事からの積極的に取り入れたり、医薬品、サプリメントなどの助けも借りれると良いですよね
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