【2026年10月23日更新】この記事は、地方公務員災害補償基金・神奈川県支部・厚生労働省・人事院の一次資料を照合して整理した薬局実務向け解説です。制度や提出先は所属先・実施機関・基金支部によって異なります。
結論|公務災害患者の処方箋が来たら、まず5点を確認
- 勤務先と身分:国家公務員・地方公務員・非常勤職員等のどれか
- 対象:公務上の災害か、通勤による災害か
- 認定済みか認定申請中か(認定通知書の有無)
- 補償を担当する実施機関・基金支部はどこか
- 薬局はその基金支部の指定医療機関等に該当するか
薬局が労災保険指定薬局であっても、地方公務員災害補償基金の指定施設とは限りません。また、公務(通勤)災害として認定された傷病は、原則として通常の健康保険の請求では処理しません。


公務災害・通勤災害・「公務労災」の意味は?
「公務労災」は一般に公務員の仕事中などの災害を指して使われる通称です。制度上は、公務による災害(公務災害)と、合理的な通勤の途上で生じた災害(通勤災害)を分けて認定します。通勤災害を公務災害そのものの一種と説明するのは正確ではありません。
地方公務員については、原則として地方公務員災害補償基金が、国家公務員については国家公務員災害補償法に基づく実施機関が認定・補償を担当します。ただし非常勤職員などは、勤務先や身分によって条例による補償・労災保険など別の制度に該当することがあります。
公務上の災害では公務遂行性と公務起因性、通勤災害では通勤遂行性と通勤起因性が認定上のポイントです。勤務中・通勤中の出来事すべてが自動的に認定されるわけではありません。
根拠:地方公務員災害補償基金東京都支部FAQ/人事院Q&A。
公務災害と民間の労災の違い【比較表】


最も重要なのは、「労災と似た内容の補償でも、請求の制度・窓口・様式が違う」という点です。手続の流れを取り違えると、受付や入金管理が滞る原因になります。
| 比較項目 | 地方公務員の災害補償 | 一般の労災保険 |
|---|---|---|
| 根拠法 | 地方公務員災害補償法など | 労働者災害補償保険法 |
| 主な担当 | 地方公務員災害補償基金の担当支部等 | 労働基準監督署等 |
| 指定の確認先 | 該当する基金支部の指定医療機関等 | 労災保険指定薬局 |
| 書類例 | 基金の様式第5号・第6号など(支部の指定や運用による) | 労災保険の第5号・第7号等(業務災害・指定状況による) |
| 薬局が確認すること | 所属・認定通知・基金支部・指定・支払状況 | 業務/通勤災害・労災指定・労災の様式 |
※国家公務員には国家公務員災害補償制度があり、地方公務員の基金様式をそのまま当てはめません。上表の「地方公務員」についても、実際の提出先・書式は支部案内を優先してください。
公務災害の認定から療養補償までの流れ


- 災害発生と所属先への報告:事故の日時・場所・職務との関係を記録し、所属先の補償担当へ申し出る。
- 認定請求:地方公務員災害補償基金の対象なら、原則として任命権者を経由して担当支部へ認定請求する。勤務形態で経路が異なる場合は要確認。
- 認定結果の通知:対象の傷病・公務災害か通勤災害かを確認する。
- 療養費・薬剤費の請求:基金指定施設かどうか、患者が既に支払ったかで請求方法を決める。
- 審査・支払・記録:請求書の控え、対象月、振込先、入金を照合する。
地方公務員災害補償基金の公式説明では、被災職員は任命権者を経由して基金支部へ認定請求を行います。国家公務員は原則として所属府省の補償事務担当・実施機関が窓口で、人事院がすべての新規認定を直接行うわけではありません。基金:認定・補償の手続/人事院:災害補償審査申立て
非常勤職員・会計年度任用職員の場合
「公立学校勤務だから全員が基金対象」「会計年度任用職員は全員が一般の労災」という判断は避けましょう。所属する自治体・勤務形態・職員区分で適用する補償制度が変わるため、所属先の担当課に確認します。神奈川県支部も勤務先と勤務形態の確認を案内しています。
どのような傷病が対象になる?
業務中の転倒や公務に起因する感染症、勤務による精神疾患、合理的な通勤経路での事故などが認定対象となり得ます。ただし認定要件の確認が必要です。薬局は傷病の認定を代行せず、認定通知書の記載と処方目的の対応関係を確認します。
補償内容と請求期限
療養・休業・障害・遺族・介護などの補償が設けられています。地方公務員災害補償制度では、認定請求そのものに時効はありませんが、補償を受ける権利には原則2年(障害補償・遺族補償は5年)などの時効があります。本人には速やかな所属先への相談を案内します。基金東京都支部FAQを参照。

公務災害の処方箋が薬局に来たら?受付から請求までの5ステップ
ここからは地方公務員災害補償基金の対象であることを確認できたケースを中心に解説します。国家公務員や労災保険対象者では手続が異なるため、混同しないようにしましょう。


ステップ1|勤務先・認定状況・担当支部を確認
- 勤務先の正式名称と職員区分、担当する基金支部(政令指定都市の職員は別支部となることがあります)
- 公務災害か通勤災害か、認定通知書に記載された傷病と災害発生日
- 公務災害認定済みか、所属先で認定請求中か
- 患者がすでに支払った薬剤費があるか、健康保険で誤って請求済みの期間があるか
- 患者の薬局が当該基金支部の指定医療機関等に該当するか
神奈川県支部では横浜市・川崎市・相模原市の職員は各市支部が実施機関となる場合があると案内しています。神奈川県支部:医療機関の皆様へを参照。
ステップ2|認定前は窓口精算方法を相談
認定前に「労災だから0円ですね」と決めてはいけません。神奈川県支部の案内では、請求を一時留保する/患者と相談して10割相当額や預り金を受けるなどの対応が示されています。制度適用が確定する前に、通常の健康保険を当然に使えるものとして扱わないようにします。
どの方法を採る場合も、患者の同意、所属先・支部への確認内容、入金・返金の履歴を記録しておきましょう。すでに保険請求した場合は、自己判断で二重請求せず支部へ確認します。
ステップ3|指定施設か非指定施設かで書類を分岐
| 区分 | 一般的な手続の例 | 最終的な支払先 |
|---|---|---|
| 基金支部の指定医療機関等 | 神奈川県支部の例では、初回に基金の「療養の給付請求書(様式第5号)」を確認し、薬剤費請求書など所定の書類を支部へ送付 | 薬局 |
| 非指定・受領委任(未払い、または患者へ返金して薬局が受領する) | 基金の「療養補償請求書(様式第6号)」の必要欄と調剤費明細を薬局が記入。患者へ返し、所属・任命権者経由で基金に提出 | 薬局 |
| 非指定・本人請求(患者が支払済みで返金しない) | 患者が様式第6号等を提出。 |
注意:この表は主に神奈川県支部の公開案内を参考にした例です。広島県支部では薬局用の様式第6号を案内しているなど、薬局に求められる具体的書類が支部によって異なります。「薬局なら必ず第5号」などと全国一律に判断しないでください。
広島県支部:医療機関・薬局の療養補償請求/基金本部:様式一覧


ステップ4|請求明細・対象薬・薬剤費を点検
基金の補償対象は、原則として認定された傷病に必要な療養です。同じ処方箋に事故と無関係な慢性疾患の薬が含まれる場合は、一括して公務災害として請求せず、処方医・所属先・基金支部に区分を確認します。
- 薬品名、規格、用法・用量、調剤日、調剤費の明細を確認
- 被災職員の氏名、認定通知の傷病、支部名、支払済み額と返金の有無を照合
- レセプトの写しが明細の代用として認められるか、提出先と原本要否を確認
- 基金の制度に関する請求書であっても、通常の健康保険レセプト請求そのものではない点に注意
ステップ5|提出・入金確認まで管理する
指定施設では所定の窓口へ提出し、非指定施設の受領委任・本人請求では患者が所属・任命権者経由で提出する方式が案内されることがあります。請求月、書類提出日、金額、振込先、入金日、照会対応を残しておくと未入金や重複請求を防ぎやすくなります。
公務災害のレセプト請求はどう扱う?


検索で多い疑問が「通常のレセプトで請求するの?」という点です。健康保険としてレセプト送信することと、基金請求の内訳資料としてレセプトの写しを添付することは別です。神奈川県支部では様式第6号の調剤費明細欄についてレセプトの写しで代用できる場合を明示しています。
保険を利用してしまった過去の期間については、基金と共済組合等の調整が必要なことがあります。薬局が独断で全額を再請求すると重複につながるため、担当支部の案内に従ってください。
長期収載品の特別の料金は公務災害でも必要?


必要となる場合があります。基金の公務(通勤)災害に係る調剤でも、医療上の必要性が認められる場合や後発医薬品の供給状況による例外等を除き、長期収載品の選定について「特別の料金」に相当する額を患者が負担する取扱いが案内されています。「公務災害=薬局窓口の支払いが常に完全に0円」と断定しないことが大切です。対象品目・計算方法・例外は最新の公的案内で確認してください。
参考:神奈川県支部:長期収載品の案内/人事院:医療機関向けQ&A
神奈川県の調剤薬局で実際に確認する窓口
神奈川県支部の指定医療機関案内には薬剤費請求書(薬局用)が掲載されています。ただし同県内でも担当支部が異なる市があります。実際に請求する際は患者の所属先・担当基金支部と突き合わせてください。
薬局用の受付チェックリスト
- □ 補償制度と支部が判明した
- □ 公務災害/通勤災害の区分と認定通知を確認した
- □ 薬局の指定状況を確認した
- □ 対象の傷病と処方内容が一致する
- □ 患者支払・返金の有無を記録した
- □ 様式・調剤費明細・提出先を確認した
- □ 長期収載品の特別の料金を確認した
- □ 請求控えと入金管理の担当を決めた
民間の労災との混同を防ぐには、労災患者の短期・長期の違いと、労災指定薬局と様式第7号の扱いも参考にしてください。
制度対応をひとりで抱え込んでいませんか?
薬局での請求や患者対応が負担になっている方は、薬剤師向けの職場負担チェック(無料・登録不要)も利用できます。制度の解説と転職サービスの案内は区別してご覧ください。
薬局の公務災害対応|2つの事例


症例1:公立学校教員が膝を痛めた(非指定薬局・認定済み)
患者:40代の公立学校教員。体育授業中に膝を負傷し、所属先から担当基金支部の認定通知書と薬局用の書類を受け取り来局。薬局は当該支部の指定施設ではない。
- 勤務先、職員区分、支部、認定傷病、認定通知を確認する。
- 痛み止めの処方が認定された傷病に対応しているか確認する。
- 患者が未払いなら受領委任の可否を支部・所属先に確認する。可能なら様式第6号等の所定欄と調剤費明細を記入。
- 薬局が基金へ直接送付してよいかは支部の案内で判断。神奈川県支部の非指定施設の例では、書類を患者に渡して所属・任命権者を経由する。
- 書類控え、請求金額、入金予定・実績を記録する。
症例2:認定前の消防職員が来局、すでに3割負担で調剤済み
患者:消防職員。「通勤中の事故で、まだ認定待ち。前回は健康保険を使った」と申告。
対応:「通勤災害」として対象になるか・所属先と支部はどこかを最初に確認します。健康保険で調剤した期間の取扱いや患者に返金するかどうかを、本人・支部・所属先に確認します。既請求分を独断で二重請求しないことが重要です。
薬局実務のポイントまとめ
- 公務災害と通勤災害は区別して認定される。
- 公務員でも勤務形態で適用制度が変わることがある。
- 労災指定薬局と基金支部の指定施設は別である。
- 地方公務員の基金では指定施設・受領委任・本人請求で提出手順と支払先が異なり得る。
- 支部ごとの薬局用書式、患者支払状況、対象傷病、入金を忘れずに照合する。
- 長期収載品の特別の料金など、患者負担が生じる場合もある。
薬局管理に関する書類保存・記録の基本は薬局の管理に関する帳簿の解説、交通事故時の保険確認は自賠責の薬局対応も参考になります。
公務災害の薬局請求でよくある質問(FAQ)
Q1. 公務労災と公務災害は同じですか?
A.「公務労災」は通称として使われることがあります。正式な制度・適用窓口は国家公務員、地方公務員、非常勤職員などで異なるため、勤務先と担当機関を確認しましょう。なお「公務災害」と「通勤災害」は制度上区別されます。
Q2. 労災指定薬局なら、地方公務員の公務災害も第5号で受けられますか?
A.自動的には決まりません。労災保険の指定と地方公務員災害補償基金の指定は別です。同じ番号の様式でも制度が異なるため、担当する基金支部の案内で確認してください。
Q3. 非指定薬局の公務災害請求はどうする?
A.基金の様式第6号等を使用し、支部指定の調剤費明細・証明を作成する場合があります。患者への返金を伴う受領委任か、患者が支払った費用を本人請求するかで支払先が異なります。実際の用紙と提出経路は支部に確認してください。
Q4. 公務災害は健康保険レセプトで請求できますか?
A.認定された公務(通勤)災害の対象傷病については、原則、通常の健康保険請求とは別の取扱いです。基金向けの明細にレセプトの写しが使える支部もありますが、健康保険に請求するという意味ではありません。
Q5. 公務災害認定前の薬局窓口負担は何割?
A.一律に「0割」「3割」とは決められません。神奈川県支部では、一時的な請求留保や10割相当額・預り金等の対応が案内されています。本人と相談し、担当支部・所属先に確認して対応します。
Q6. 長期収載品を選んだ患者の窓口負担は本当に0円?
A.医療上の必要性などの例外に該当しない場合、特別の料金に相当する額が発生する取扱いが案内されています。公務災害だから必ず無料と案内しないようにしてください。
Q7. 公務災害患者の慢性疾患の薬も基金へ請求できる?
A.原則として対象になるのは認定された傷病と必要な療養です。事故と無関係な慢性疾患の処方は区別し、処方医・支部等に確認します。
Q8. 国公立病院・市立学校の非常勤職員も全員基金対象?
A.いいえ。勤務先の組織形態や職員区分によって適用制度が変わります。本人の申告だけで判断せず、勤務先の補償担当から確認してください。
Q9. 申請から補償まで何日かかる?
A.必要資料や災害の認定状況により異なり、一律の所要日数は案内できません。患者本人から所属先・実施機関・基金支部に進捗を確認してもらうのが確実です。
理解度チェック|どちらが正しい?
問題:基金支部の非指定薬局なら、健康保険レセプトを通常どおり送ればよい?
答え:いいえ。受領委任・本人請求等の取扱いを確認し、支部指定の書類を使用します。
問題:処方した長期収載品の特別の料金は、公務災害では常に免除?
答え:いいえ。医療上の必要性等の例外を除き、特別の料金が発生する場合があります。

まとめ|薬局では「制度・支部・指定・支払い」を確認


公務災害患者への調剤は、医薬品の知識に加えて、適用制度・認定傷病・基金支部・薬局の指定・患者の支払状況を確認することが欠かせません。書類番号だけで判断せず、担当支部の最新様式と提出先を確認しましょう。
参考資料・改訂履歴
最終改訂:2026年10月23日。神奈川県支部・基金本部・広島県支部・厚生労働省・人事院の公表内容を照合。特に地域差がある請求様式は全国共通と断定しない構成に改めました。
- 地方公務員災害補償基金 神奈川県支部:医療機関の皆様へ(請求手順、支部、長期収載品)
- 地方公務員災害補償基金 広島県支部:療養補償の請求手続(薬局用様式)
- 地方公務員災害補償基金:様式一覧
- 地方公務員災害補償基金:認定・補償の手続
- 地方公務員災害補償基金 東京都支部:よくあるご質問(時効・認定・請求)
- 厚生労働省:労災保険主要様式(民間労災との区別)
- 人事院:国家公務員災害補償制度Q&A
- 人事院:病院等からよくある質問(長期収載品等)
この記事は薬局実務の一般的な情報提供を目的としています。個別事案の補償可否、指定医療機関契約の有無、支払条件、提出先は、所属先と担当する基金支部・実施機関へ必ず確認してください。



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