この記事で分かること
- 薬局の熱中症対策について、法令上の対象と日常的な予防策を区別できる
- WBGT(暑さ指数)を、調剤室・倉庫・在宅訪問・屋外業務でどう使うか分かる
- エアコン、休憩、水分補給、緊急連絡のルールを店舗で標準化できる
- スタッフや高齢患者に異変があるときの初動と受診・救急要請の目安を確認できる
- 管理薬剤師・薬局長が本部へ改善を求める文面、点検表、教育例をそのまま使える


前書き:薬局の熱中症対策は「屋外職場だけの話」ではない
厚生労働省は2026年5月1日から9月30日まで「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」を実施し、7月を重点取組期間としています。2026年は、新たに策定された「職場における熱中症防止のためのガイドライン」に基づき、WBGTの把握、早期発見体制、重篤化を防ぐ手順、疾病を持つ労働者への配慮などが呼びかけられています。【[1]】【[2]】
薬局は、通常は空調のある屋内職場です。しかし、次の仕事は暑熱へのばく露が増えます。
- 在宅訪問の移動、車内での待機、駐車場から患者宅までの歩行
- 医薬品・飲料・衛生材料の荷受け、屋外倉庫やバックヤードでの整理
- 開店前の清掃、のぼりや看板の設置、駐車場の誘導
- エアコンの故障、直射日光が入る待合室、熱源が近い休憩室
- 夏祭りや健康相談会などの屋外イベント
- 冷房を嫌がる患者宅での訪問業務
さらに薬局には、高齢者、糖尿病・心疾患・腎疾患などの患者、利尿薬や抗コリン作用を持つ薬などを使用している患者が来局します。職員の労務管理と患者への安全な声かけを、同じ「熱中症」という言葉で混同せず、役割別に設計する必要があります。
熱中症対策の法的責任を管理薬剤師個人だけに負わせるのは適切ではありません。労働者の安全に配慮する主体は使用者・事業者です。管理薬剤師や薬局長は、現場の危険を把握し、手順化・教育・報告・改善要求を担いますが、空調更新や人員配置など権限を超える対策は法人・経営者へ具体的に上げる必要があります。
結論:管理者が最初に整えるのは「測る・止める・つなぐ」の3点
薬局の熱中症対策は、経口補水液を置くだけでは不十分です。最優先は次の3点です。
- 測る:実際に人が作業する場所・時間のWBGTまたは気温を把握する
- 止める:異常値や体調不良時に、本人が遠慮せず作業を中断できる
- つなぐ:報告先、応急対応、医療機関・119への連絡手順を決め、全員に周知する
2025年6月1日施行の改正労働安全衛生規則では、WBGT28度以上または気温31度以上の場所で、連続1時間以上または1日4時間を超えて行うことが見込まれる作業について、熱中症のおそれがある者を早期に発見する報告体制、重篤化を防ぐ実施手順、関係者への周知が求められます。屋内外を問わず、移動中や出張先も含む趣旨です。【[3]】
「患者が来なかったから休憩できた」「今日は倒れなかったから対策不要」では評価できません。作業前に予測される環境と時間で対象を判断し、対象外でも安全配慮の観点から合理的な予防策を続けます。
WBGT(暑さ指数)とは?薬局での正しい使い方
WBGTは気温だけでなく、湿度・日射・放射熱を反映する
WBGT(湿球黒球温度、暑さ指数)は、熱ストレスを評価する指標です。気温が同じでも、湿度が高い、日射が強い、熱い壁や路面から放射熱を受ける場所ではWBGTが上がります。環境省は、日常生活の目安としてWBGT25以上を「警戒」、28以上を「厳重警戒」、31以上を「危険」と示しています。【[4]】
ただし、この区分は日常生活の目安です。職場では、作業強度、衣服、連続作業時間、暑熱順化、持病、睡眠不足なども合わせて判断します。「WBGT27.9だから安全」「28を超えたら全員一律に同じ対応」という機械的な線引きは避けます。
気象情報だけでなく、作業場所で測る
薬局で測定する候補は、調剤室の中央だけではありません。
| 測定場所 | 見落としやすい理由 | 確認する時間 |
|---|---|---|
| 調剤室・待合室 | 西日、出入口の開閉、混雑で変動 | 開局前、正午、午後のピーク |
| 倉庫・バックヤード | 空調が届かず、段ボール作業で発熱 | 荷受け・棚入れ前 |
| 駐車場・建物外周 | 照り返しと直射日光 | 誘導・清掃・掲示物交換前 |
| 在宅訪問先・移動経路 | 気象台と患者宅の室内環境が違う | 出発前の予測、到着時の体感・実測 |
| 休憩室 | 休憩場所自体が暑いことがある | 休憩開始前 |
黒球付きのJIS適合・準拠機器などを選び、説明書に従って設置します。直射日光の有無、測定高さ、風の影響で数値が変わるため、毎回同じ条件で記録することが大切です。環境省も、個々の場所のWBGTは周囲の環境で大きく異なるとして、身近な場所での実測を勧めています。【[5]】
薬局用WBGT運用表の例
| 状態 | 店舗内ルール例 | 管理者の判断 |
|---|---|---|
| 通常時 | 空調、飲水、体調申告を継続 | 気象予報と故障情報を確認 |
| WBGT25以上 | 屋外・倉庫作業を短時間化、休憩を前倒し | 体調・作業強度・服装を再確認 |
| WBGT28以上または気温31度以上 | 対象作業の時間を確認し、報告体制・手順を発動 | 作業中止、時間変更、応援配置を優先検討 |
| 異変あり | 数値にかかわらず直ちに中断・冷却・報告 | 一人にせず、救急要請を判断 |
この表は店舗内のたたき台です。WBGT基準値は作業強度や衣服で異なるため、2026年ガイドラインの選択肢と自局の作業内容を照合して決めます。【[6]】
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薬局で整えるエアコン・休憩・水分補給のルール
エアコン:設定温度ではなく「作業場所の実測」で管理する
「設定温度26度」でも、出入口付近、調剤棚の奥、二階倉庫、日射が入る窓際では実際の環境が違います。管理では、設定値より室温・湿度・WBGTと、スタッフの訴えを重視します。
- 開局前に空調が正常に動くか確認する
- 出入口の熱気、窓の日射、室外機周辺の障害物を点検する
- 空調故障時の連絡先、修理までの代替場所、営業時間変更の権限者を決める
- 冷風が医薬品へ直接当たり、保管条件を外れないよう温度管理を分ける
- 患者の寒さへの訴えには座席・ひざ掛け等で個別対応し、職場全体を過度に高温にしない
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休憩:時間を決めるだけでなく、業務から離れられる体制にする
暑熱作業では、連続時間を短くし、涼しい場所で回復することが重要です。薬局では「来局が途切れたら休む」方式にすると、患者が続いた日に休憩が消えます。次のように運用を具体化します。
- 在宅訪問は最も暑い時間帯を避け、訪問間に冷房の効いた場所で休む
- 荷受けは複数人で分け、屋外・倉庫作業を連続させない
- 休憩中の電話、来客、疑義照会返答を誰が受けるか決める
- 一人薬剤師店舗は昼休み閉局、応援者、転送電話、訪問時間変更を組み合わせる
- 異変があれば「予定の休憩まで待つ」のではなく即時中断する
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水分・塩分:一律ノルマではなく、取りやすさと個別配慮を両立する
飲料水をすぐ取れる場所に用意し、「忙しいから飲めない」をなくします。水分補給の記録を過度な監視にせず、声かけや休憩のきっかけにします。大量発汗がある場合は塩分補給も選択肢ですが、心不全、腎機能低下、高血圧などで水分・塩分制限がある人に一律の摂取を強制してはいけません。個別の健康情報は必要最小限に扱い、産業医・主治医等の意見を踏まえて勤務を調整します。
経口補水液は「熱中症を治す飲み物」ではありません。意識障害、けいれん、自力で飲めない、応答がおかしい、急速に悪化している場合は、飲ませることに固執せず119番通報を優先します。嘔吐や誤嚥の危険がある人へ無理に飲ませません。
2025年からの熱中症対策義務化を薬局向けに整理
対象作業を判定する4項目
- 作業場所のWBGTが28度以上か、気温が31度以上か
- その場所での作業が連続1時間以上見込まれるか
- または1日合計4時間を超えることが見込まれるか
- 定常業務だけでなく、臨時作業・移動・出張先を含め該当しないか
一般的な空調下の調剤室が直ちに対象になるとは限りません。一方、在宅訪問が連続する日、空調のない倉庫で棚卸しをする日、冷房故障中に営業を続ける日などは、実測と作業時間の確認が必要です。
義務化された中心は「重篤化防止の仕組み」
| 必要な仕組み | 薬局での具体例 |
|---|---|
| 報告体制 | 本人・同僚が管理者へ即報告。管理者不在時はエリア責任者へ連絡 |
| 実施手順 | 作業中断、涼しい場所への移動、衣服を緩め冷却、意識・呼吸確認、119・家族・本部連絡 |
| 関係者への周知 | 朝礼、掲示、研修、連絡先カード、在宅用携帯への手順保存 |
「体調が悪ければ言ってください」だけでは、誰に・何を・どの順番で伝えるかが不明です。新人、派遣、応援、配送補助者にも分かる形にします。
熱中症が疑われるスタッフを見つけたときの対応フロー
- 作業中断:処方監査中でも代替者へ引き継ぎ、暑い場所から離す
- 一人にしない:転倒、意識低下、嘔吐に備えて見守る
- 状態確認:意識、呼吸、会話、自力歩行、自力飲水、症状の進行を見る
- 冷却:冷房のある場所へ移動し、衣服を緩め、皮膚を濡らして送風し、頸部・腋窩・鼠径部等を冷やす
- 救急判断:意識がおかしい、自力で飲めない、けいれん、呼吸異常、改善しない・悪化する場合は119番
- 記録と連絡:発生時刻、場所、WBGT・室温、作業、症状、対応、搬送先を記録し、本部へ報告する
厚生労働省は、現場で使える熱中症ガイドを公開し、水分補給、休憩、異変時の対応、救急車が来るまでの対応等を教育に活用できるようにしています。【[7]】
熱中症が疑われる人を「少し休めば大丈夫」と一人で帰宅させないでください。判断力が落ちている可能性があります。救急要請の要否を確認し、帰宅させる場合も家族等の付き添い、移動手段、受診先、再悪化時の対応まで調整します。
高齢患者への対応:薬局で確認したい5項目
厚生労働省は、熱中症患者のおよそ半数が65歳以上の高齢者であると注意喚起しています。高齢者は暑さやのどの渇きを感じにくく、体内水分量が少ないため、本人が「平気」と話しても周囲の確認が重要です。【[8]】
- 自宅でエアコンを使えているか、夜間も室温が上がっていないか
- 食事・水分摂取、尿量、体重、下痢・嘔吐、発熱の有無
- めまい、ふらつき、頭痛、倦怠感、反応の鈍さ、転倒の有無
- 利尿薬、抗コリン作用を持つ薬、向精神薬等を使用していないか
- 心不全・腎疾患等による水分や塩分の制限がないか
薬剤は熱中症リスクの一因になり得ますが、自己判断で中止・減量するよう勧めてはいけません。処方医の治療意図、脱水所見、血圧、腎機能、体重変化等を確認し、必要なら疑義照会や情報提供を行います。
患者への説明例
「暑い日は、のどが渇く前に少しずつ水分を取ることが大切です。ただし、心臓や腎臓の病気で水分量を指示されている場合は、その範囲を優先してください。ふらつき、いつもと違う強いだるさ、受け答えがおかしいなどがあれば、涼しい場所へ移動し、家族や医療機関へ早めに相談してください。意識がおかしい、自分で飲めない場合は救急要請が必要です。」
医師への情報提供文例
〇月〇日、患者本人より、猛暑日が続く中で食事・水分摂取低下、立ちくらみ、尿量減少があるとの申告を受けました。服用中:〇〇。家庭血圧〇/〇mmHg、体重は1週間で〇kg変化(患者申告)。水分制限の認識は〇〇です。脱水・熱中症リスクおよび薬物療法継続の安全性について評価をご検討ください。緊急症状は現時点で〇〇、受診目安を説明済みです。
スタッフ教育は10分でよい。毎月繰り返せる形にする
朝礼・ミニ研修の構成
- 今日の予測WBGTと、薬局内で暑くなる場所を共有する
- 初期症状を3つ挙げる:めまい、頭痛、いつもと違う強いだるさ等
- 報告先と代行者を確認する
- 119番をためらわない症状を復唱する
- 在宅訪問・荷受け担当の休憩時刻と飲料を確認する
スタッフに伝える禁止事項
- 根性や慣れで乗り切らせない
- 体調不良を人事評価と結びつけない
- 本人の許可なく持病や服薬情報を全員へ共有しない
- 具合の悪い人を一人で休憩室・車内へ置かない
- 経口補水液を飲めたことだけで業務へ戻さない
労災リスクと安全配慮義務
労働契約法第5条は、使用者が労働者の生命・身体等の安全を確保しつつ働けるよう必要な配慮をすることを定めています。必要な配慮は一律ではなく、職種、業務内容、場所など具体的状況に応じて判断されます。【[9]】
2025年の職場での熱中症による死亡・休業4日以上の死傷者は確定値で1,803人となり、統計開始以来最多でした。薬局が多発業種でないとしても、発生可能性がゼロになるわけではありません。【[10]】
就業中の熱中症が労働災害に該当する可能性がある場合、事業者は治療・休業状況を確認し、労災保険給付や労働者死傷病報告の要否を判断します。死亡または休業が生じた場合の報告義務があり、2025年1月から労働者死傷病報告の電子申請が原則義務化されています。【[11]】
日時/作業場所/WBGT・気温/作業内容と時間/本人の症状/目撃者/応急対応/医療機関・救急への連絡/会社への報告/勤務・休業状況/再発防止策。労災かどうかを現場だけで断定せず、会社の労務担当・産業保健職・労働基準監督署等へ確認します。
症例・具体例・実践例


事例1:空調が弱い倉庫で棚卸し中に頭痛
状況:34歳女性、薬局事務。午後2時からバックヤードで棚卸し。室温32度、WBGT28.4。50分経過後に頭痛、吐き気、発汗を訴えた。既往歴は片頭痛。朝食摂取少なめ。
確認点:意識、会話、自力歩行・飲水、症状の進行、作業時間、直前の体調、室温・WBGT、服装、服薬。
対応例:棚卸しを即時中断し、涼しい休憩場所へ複数名で移動。衣服を緩め冷却し、状態を継続観察。吐き気が強く自力飲水が難しい、症状が改善しない場合は医療機関・119へつなぐ。棚卸しは夕方へ変更し、以後は20~30分単位で交代する。
記録例:「14:52、倉庫棚卸し中に頭痛・悪心。WBGT28.4、室温32.0℃。意識清明、会話可、自力歩行〇、飲水〇。作業中断・冷房室移動・冷却。15:10時点症状〇。責任者・本部へ報告。翌日の体調確認、倉庫作業時間と交代制を見直す」
片頭痛との鑑別を現場で断定せず、熱中症を含め安全側で対応します。これは唯一の正解ではなく、症状・経過に応じて救急判断が変わります。
事例2:在宅訪問中の薬剤師がふらつく
状況:46歳男性薬剤師。自動車で午後に4件訪問。患者宅の冷房が弱く、訪問間の休憩なし。帰局時にふらつきと強い倦怠感。高血圧治療中。
処方監査・労務上の判断:体調不良の薬剤師に、そのまま監査・投薬を担当させない。別薬剤師へ業務を引き継ぎ、帰宅させる前に状態を確認する。高血圧薬の中止を自己判断させず、必要に応じて受診を勧める。
再発防止:訪問を午前と夕方へ分散、1件ごとに冷房下で休憩、社用車へ飲料と冷却材を配置、WBGTが高い日は応援者を設定する。患者宅の暑熱環境も訪問記録へ残し、多職種と共有する。
事例3:高齢患者が待合室で反応不良
状況:82歳女性。フロセミド等を服用。家族と徒歩で来局。待合室で「だるい」と話し、返答が遅い。朝から水分摂取が少なく、尿量減少。
薬剤師が確認する点:意識・会話・歩行、自力飲水、胸痛・呼吸困難・片麻痺等、体温、血圧・脈拍(測定できる場合)、水分制限、服薬、下痢・発熱、受診可能性。
対応例:涼しい場所で横になれる体制を取り、一人にしない。反応不良が続く、自力飲水困難、呼吸・循環・神経症状がある場合は119番。軽快しても家族へ再悪化時の対応を説明し、必要に応じて処方医へ情報提供する。
服薬指導の注意:「利尿薬が原因だから今日は飲まないで」と断定しない。心不全等では中断が悪化につながる可能性があるため、医師へ評価をつなぐ。
薬局で使える熱中症対策チェックリスト
- □ 調剤室だけでなく倉庫・休憩室・屋外作業場所のWBGTを把握した
- □ WBGT計の設置・記録方法を統一した
- □ 在宅訪問・荷受け・棚卸しの連続作業時間を決めた
- □ 飲料をすぐ取れ、飲水のために業務を止められる
- □ 冷房のある休憩場所と冷却用品を用意した
- □ 空調故障時の営業縮小・臨時休業・応援要請ルートがある
- □ 異変の報告先と、管理者不在時の代替連絡先を掲示した
- □ 救急要請の基準と、救急車到着までの冷却手順を共有した
- □ 派遣・応援・新人を含む全員へ周知した
- □ 高リスク者への配慮を、本人のプライバシーに配慮して決めた
- □ 発生記録と再発防止会議の様式を用意した
- □ 高齢患者へエアコン・水分・緊急症状を説明できる
本部へ改善を依頼する文面例
〇月〇日、店舗バックヤードでWBGT28度以上(最高〇度)を記録しました。荷受け・棚入れ作業は1日合計〇時間となる見込みで、現行体制では連続作業の回避と十分な休憩確保が困難です。2026年職場向け熱中症ガイドラインおよび改正労働安全衛生規則を踏まえ、①空調・遮熱設備、②作業時間変更、③応援配置、④体調不良時の代替要員、⑤緊急手順の承認について、〇月〇日までにご検討ください。測定記録を添付します。
口頭の「暑いです」だけでなく、測定場所、日時、WBGT、作業時間、既に行った対策、残るリスク、希望する措置をセットで伝えると、会社が判断しやすくなります。
管理薬剤師・薬局長として知識を体系化したい方へ
熱中症対策は、薬事上の管理だけでなく、人員配置、教育、事故報告、本部との役割分担まで含む店舗運営です。管理者としての基本業務や法令順守を体系的に確認したい方は、選択肢の一つとして拙著『はじめての管理薬剤師完全ガイド』も参考にしてください。
著書一覧:ゆずまるの著書・執筆した本
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まとめ:明日から行う7つの対策

- 実際に働く場所と時間でWBGT・気温を測る
- WBGT28度以上または気温31度以上となる作業の時間を洗い出す
- 報告先、作業中断、冷却、救急要請の手順を紙とスマホで共有する
- 空調、休憩、飲水を「忙しさに左右されないルール」にする
- 在宅訪問・荷受け・棚卸しは高温時間帯を避け、交代制にする
- 高齢患者には服薬中断を勧めず、脱水所見と受診目安を確認する
- 管理者権限を超える設備・人員問題は、記録を添えて法人へ改善要求する
よくある質問
Q1. エアコンがある薬局でも熱中症対策の義務はありますか?
あります。職場の安全配慮は業種を問いません。ただし、改正労働安全衛生規則の具体的な重篤化防止措置の対象は、WBGT・気温と作業時間の要件で判断します。調剤室が対象外でも、倉庫、屋外、在宅訪問、空調故障時は別に評価してください。
Q2. WBGT28未満なら作業を続けても安全ですか?
安全とは断定できません。作業強度、衣服、睡眠不足、暑熱順化、持病、服薬でリスクは変わります。症状があれば数値にかかわらず中断し、状態を確認します。
Q3. 管理薬剤師が熱中症対策の法的責任者ですか?
労働安全衛生上の措置を講じる主体は事業者です。管理薬剤師・薬局長は現場運用を担いますが、法人の設備・人員・予算責任まで個人に置き換わるわけではありません。権限外の問題は記録して本部へ上げます。
Q4. スポーツドリンクや経口補水液を全員へ配れば十分ですか?
十分ではありません。空調、作業時間、休憩、報告体制、冷却、救急手順が必要です。また、心不全・腎疾患等で水分・塩分制限がある人へ一律に勧めないでください。
Q5. 熱中症が疑われるスタッフを自宅で休ませてもよいですか?
状態確認なしに一人で帰宅させるのは危険です。意識、会話、自力飲水、歩行、症状の推移を確認し、必要なら119番や医療機関へつなぎます。帰宅時も付き添い等を検討します。
Q6. 高齢患者の利尿薬は暑い日に止めた方がよいですか?
自己判断の中止は勧めません。利尿薬の適応、心不全の状態、体重、血圧、腎機能、脱水所見を踏まえて医師が判断します。異変があれば薬局から処方医へ情報提供してください。
Q7. 熱中症は労災になりますか?
就業中の環境や業務との関連が認められれば、労災保険給付の対象になり得ます。個別判断が必要なため、会社の労務担当、労働基準監督署等へ相談し、発生状況を記録してください。
Q8. WBGT計がない日はどうすればよいですか?
環境省の予測・実況値や気温を参考にしつつ、安全側で作業を短縮します。ただし薬局内外の実際の環境とは差があるため、継続的な管理には測定機器を準備するのが望ましいです。
参考文献
- 厚生労働省「令和8年『STOP!熱中症 クールワークキャンペーン』を実施します」URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/coolwork_2026.html(最終確認日:2026年7月24日)
- 厚生労働省「『職場における熱中症防止対策のためのガイドライン』の策定について」URL:https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc9896&dataType=1&pageNo=1(最終確認日:2026年7月24日)
- 厚生労働省「労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行等について」URL:https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc9174&dataType=1&pageNo=1(最終確認日:2026年7月24日)
- 環境省「環境省熱中症予防情報サイト 暑さ指数とは?」URL:https://www.wbgt.env.go.jp/sp/wbgt.php(最終確認日:2026年7月24日)
- 環境省「熱中症警戒情報とは」URL:https://www.wbgt.env.go.jp/about_alert.php(最終確認日:2026年7月24日)
- 厚生労働省「職場における熱中症防止のためのガイドライン」URL:https://neccyusho.mhlw.go.jp/pdf/2026/r8_neccyusho_guidelines.pdf(最終確認日:2026年7月24日)
- 厚生労働省「働く人の今すぐ使える熱中症ガイド」URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000116133_00001.html(最終確認日:2026年7月24日)
- 厚生労働省「熱中症を防ぎましょう」URL:https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/nettyuu/nettyuu_taisaku/prevent.html(最終確認日:2026年7月24日)
- 厚生労働省「労働契約法」URL:https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=73aa9536&dataType=0(最終確認日:2026年7月24日)
- 厚生労働省「令和7年『職場における熱中症による死傷災害の発生状況』(確定値)」URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_73330.html(最終確認日:2026年7月24日)
- 厚生労働省「労働災害が発生したとき」URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/rousai/index.html(最終確認日:2026年7月24日)
本記事は薬局の職場管理と健康相談に関する一般的な情報です。個別の法的判断、労災認定、就業制限、診断・治療は、所轄労働基準監督署、産業医、医師、社会保険労務士、弁護士等へご確認ください。



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