

レキサルティOD錠(一般名:ブレクスピプラゾール)は、ドパミンD2受容体・セロトニン5-HT1A受容体への部分作動作用、5-HT2A受容体への拮抗作用などをもつ非定型抗精神病薬です。
この記事の要点
- 現在の主な製剤はOD錠0.5mg・1mg・2mg
- 適応は統合失調症/うつ病・うつ状態の補助療法/アルツハイマー型認知症に伴う特定のアジテーション症状
- うつ病では単独投与ではなくSSRI・SNRI・ミルタザピンとの併用
- 認知症適応は非薬物的介入で不十分な場合に限る
- 薬局で特に見る副作用はアカシジア、眠気、不眠、起立性低血圧、高血糖、体重増加、衝動制御障害
- CYP2D6・CYP3A阻害薬併用では血中濃度上昇に注意
- 飲み忘れ時は2回分をまとめて飲まない
- 服用中は自動車運転等の危険作業を避ける

- レキサルティとは?基本情報
- レキサルティの適応は3つ
- 作用機序|「ドパミンを遮断するだけ」ではない
- 薬局で特に確認したい副作用
- 重大な副作用
- 相互作用|CYP2D6・CYP3A4をチェック
- 腎機能・肝機能低下時は?
- OD錠の飲み方
- 飲み忘れたらどうする?
- 服薬指導でそのまま使える説明
- 症例で考える薬局対応
- 薬歴に残したい項目
- 禁忌・処方監査で見落としたくない点
- 高齢者で特に見るポイント
- 妊娠・授乳、小児では?
- アリピプラゾールとの違いは?
- 開始・増量後の薬局チェック表
- 疑義照会を考えたい具体例
- 患者・家族からよく出る相談への返し方
- よくある質問
- 適応別|次回来局時に何を聞く?
- 薬物動態|半減期が長い薬だから「1日1回」
- 食事の影響は大きくない
- 体重・血糖・脂質|長期投与で定期的に確認したい
- 遅発性ジスキネジア|長期使用で「口の動き」を見る
- アカシジアと不安・焦燥をどう見分ける?
- うつ病で1mgと2mgの効果は同じ?
- CYP阻害薬併用時は「半量」だけでは足りないことがある
- 認知症で「静かになった」は副作用ではない?
- 高齢認知症患者の死亡リスクをどう説明する?
- 嚥下障害・誤嚥性肺炎に注意
- 急にやめても依存になる?
- 飲み忘れが何日も続いた場合
- 普通錠は販売終了、現在はOD錠が中心
- 薬局監査で使える30秒チェック
- まとめ
- 参考文献・一次情報
レキサルティとは?基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 一般名 | ブレクスピプラゾール |
| 薬効分類 | 抗精神病薬 |
| 剤形 | レキサルティOD錠0.5mg・1mg・2mg |
| 服用回数 | 1日1回 |
| 主な代謝 | CYP3A4、CYP2D6 |
| 食事の影響 | 臨床的に大きな影響は認められていない |
従来の普通錠1mg・2mgは2024年3月に販売中止となり、経過措置期間は2025年3月31日に満了しています。現在の薬局実務ではOD錠を中心に考えると分かりやすいでしょう。
レキサルティの適応は3つ
1.統合失調症
統合失調症に対して使用します。通常は1日1回1mgから開始し、4日以上あけて1日2mgへ増量します。
薬局では、初回処方や増量時にアカシジア、眠気、起立性低血圧、精神症状の変化を確認します。
2.うつ病・うつ状態:既存治療で十分な効果が認められない場合
レキサルティは、うつ病に対して「最初から単独で使う薬」ではありません。
添付文書では、SSRI、SNRI等による適切な治療を複数回行っても十分な効果が得られない場合に、アカシジアや遅発性ジスキネジア等の副作用リスク、他の治療選択肢も考慮したうえで使用するとされています。
さらに、SSRI・SNRI・ミルタザピンのいずれかと併用することが求められており、レキサルティ単独での有効性は確認されていません。
用量
- 通常:1日1回1mg
- 忍容性に問題がなく、十分な効果が得られない場合:2mgまで増量可能
- 2mgへの増量を考える場合:1mg開始後6週間を目安に検討
- 2mgへ増量後:より頻回に副作用を確認し、約6週間を目安に継続要否を再検討
「1mgで数日飲んで効かないから2mgへ」という薬ではありません。うつ病適応では、添付文書上、1mg開始後6週間を目安に2mgへの増量要否を検討します。
3.アルツハイマー型認知症に伴う焦燥感・易刺激性・興奮に起因する過活動または攻撃的言動
2024年9月に追加された適応です。いわゆる認知症のBPSDすべてに使えるわけではありません。
対象はアルツハイマー型認知症に限定され、過活動・攻撃的言動が焦燥感、易刺激性、興奮に起因していることを確認します。
また、非薬物的介入で十分な効果が得られない場合に限り、非薬物的介入へ追加して使用します。
用量
- 開始:1日1回0.5mg
- 1週間以上あけて:1日1回1mg
- 忍容性に問題がなく効果不十分なら、さらに1週間以上あけて:1日1回2mgまで増量可能
見直し時期
- 投与開始10週間後までを目安に効果がなければ中止し、治療法を再考
- 効果があっても漫然投与せず、投与期間は必要最小限
- 24週間を超える継続投与の安全性は確立していない
高齢認知症患者への抗精神病薬投与では死亡リスク増加が報告されているため、患者選択と経過観察が特に重要です。
作用機序|「ドパミンを遮断するだけ」ではない
ブレクスピプラゾールは、主に次の受容体へ作用します。
| 受容体 | 作用 | 薬理学的なポイント |
|---|---|---|
| D2 | 部分作動 | ドパミン神経伝達を調節する |
| 5-HT1A | 部分作動 | セロトニン系へ作用 |
| 5-HT2A | 拮抗 | 非定型抗精神病薬にみられる受容体作用 |
| α1B・α2C | 拮抗 | 血圧低下等との関連に注意 |
「アリピプラゾールより○○が必ず少ない」と単純に言い切るのは避けた方が安全です。両剤は同じD2部分作動薬でも受容体プロファイルが異なり、副作用や治療反応には個人差があります。
薬局で特に確認したい副作用
アカシジア
添付文書上、アカシジアは5%以上の頻度区分に記載されている重要な副作用です。
患者さんは「副作用」と表現せず、次のように訴えることがあります。
- じっとしていられない
- 脚を動かしていないと落ち着かない
- 座っているのがつらい
- 理由は分からないがソワソワする
うつ病では原疾患の焦燥感と区別しにくいことがあります。開始後・増量後に症状が出た場合は、服薬開始時期との関連を確認します。
眠気・注意力低下
眠気、注意力・集中力・反射運動能力の低下が起こることがあります。添付文書では、服用中は自動車の運転など危険を伴う機械操作に従事させないよう注意されています。
不眠・激越
眠気だけでなく、不眠、激越、落ち着きのなさなどもみられます。「精神科の薬=眠くなる薬」と決めつけず、眠気と不眠の両方を確認しましょう。
起立性低血圧
投与初期、再投与時、増量時には、α交感神経遮断作用により起立性低血圧があらわれることがあります。
特に高齢者では、ふらつき→転倒→骨折につながるため、家族・介護者にも確認してもらいます。
高血糖・糖尿病悪化
高血糖、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡が重大な副作用として記載されています。
服薬指導では、次の症状を伝えます。
- 強い口渇
- 水を多く飲む
- 尿量・排尿回数が増える
- 強いだるさ
- 原因不明の体重減少
体重増加・脂質異常
体重増加や脂質異常症などの代謝変化が生じることがあります。薬局では「太った・痩せた」だけでなく、急な体重変化がないかを確認します。
衝動制御障害
病的賭博、病的性欲亢進、強迫性購買、暴食などの衝動制御障害が報告されています。
本人が自覚しにくいこともあるため、可能であれば家族にも「急にギャンブル・買い物・食行動が変わっていないか」を確認してもらいます。
重大な副作用
頻度は高くないものの、添付文書では次の重大な副作用が記載されています。
- 悪性症候群
- 遅発性ジスキネジア
- 麻痺性イレウス
- 横紋筋融解症
- 高血糖、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡
- 痙攣
- 無顆粒球症、白血球減少
- 肺塞栓症、深部静脈血栓症
高熱・強い筋こわばり・意識変化、著しい便秘と腹部膨満、息切れ・胸痛・片脚の腫れなどがあれば、通常の副作用相談ではなく速やかな受診につなげます。
相互作用|CYP2D6・CYP3A4をチェック
ブレクスピプラゾールは主にCYP3A4とCYP2D6で代謝されます。
血中濃度が上がる方向
- CYP2D6阻害薬:パロキセチンなど
- CYP3A阻害薬:クラリスロマイシン、イトラコナゾールなど
中程度以上の阻害薬併用では、可能な限り併用を避け、やむを得ない場合は添付文書の用量調節表に従います。
血中濃度が下がる方向
- カルバマゼピン
- リファンピシン
CYP3Aを誘導するため、レキサルティの作用が弱まる可能性があります。
そのほかの併用注意
- アルコール:中枢神経抑制作用増強のおそれ
- 中枢神経抑制薬:鎮静等が強くなる可能性
- 降圧薬:血圧低下が増強する可能性
- レボドパ製剤:ドパミン作動作用を弱める可能性
- アドレナリン:原則併用禁忌。ただしアナフィラキシー救急治療、歯科領域の浸潤麻酔・伝達麻酔での使用は除外

腎機能・肝機能低下時は?
クレアチニンクリアランス30mL/min未満の重度腎機能障害では、クリアランスが低下し血中濃度が上昇するおそれがあるため、減量や投与間隔延長を考慮します。
また、Child-Pugh BまたはCの中等度〜重度肝機能障害でも、減量・投与間隔延長を考慮します。
薬局では腎機能・肝機能の情報がない場合も多いため、高齢者や腎疾患・肝疾患の既往がある患者では処方歴・検査状況を確認できると安心です。
OD錠の飲み方
レキサルティOD錠は口腔内崩壊錠です。
- 舌の上で唾液を含ませ、軽くつぶして唾液で飲み込める
- 飲み込みにくい場合は水またはぬるま湯で服用できる
- 寝たままの状態では、水なしで服用しない
食事によるCmax・AUCへの大きな影響は認められていないため、食事の有無に左右されにくい薬です。
飲み忘れたらどうする?
PMDAの患者向医薬品ガイドでは、次のように案内されています。
- 気づいた時に1回分を服用
- 次の服用時間が近い場合は1回とばす
- 2回分を一度に飲まない
連日飲み忘れている場合は、単純に「今日から再開」だけで済ませず、病状や中断期間を踏まえて主治医へ確認した方が安全です。
服薬指導でそのまま使える説明
「この薬は脳内のドパミンやセロトニンの働きを調整する薬です。1日1回、指示された量を飲んでください。飲み始めや増量後に、じっとしていられない感じ、眠気・不眠、ふらつきなどが出ることがあります。運転は避けてください。強い口の渇きや尿が増える、急な体重変化、ギャンブルや買い物が止められないなど普段と違う変化があれば、早めに医師・薬剤師へ相談してください。」
症例で考える薬局対応
症例1|うつ病でパロキセチンにレキサルティ1mg追加
処方:パロキセチン+レキサルティOD錠1mg。
確認:パロキセチンはCYP2D6阻害作用を有するため、レキサルティの血中濃度上昇に注意します。処方意図や用量が添付文書上の調節に沿っているかを確認します。
服薬指導:アカシジア、不眠、眠気、ふらつきなどを開始早期から確認。
症例2|うつ病で1mg開始2週間後に2mgへ増量
確認ポイント:うつ病適応では、2mgへの増量を考える場合は1mg開始後6週間を目安に増量要否を検討することが添付文書に記載されています。
2週間での増量が処方された場合は、処方医がどのような判断で増量したのか確認対象になります。
症例3|アルツハイマー型認知症、0.5mgから開始
処方:レキサルティOD錠0.5mg 1日1回。
薬局で確認:
- アルツハイマー型認知症であるか
- 焦燥感・易刺激性・興奮に起因する過活動または攻撃的言動が対象か
- 非薬物的介入が行われているか
- 転倒、むせ、嚥下障害、眠気がないか
1mg、2mgへの増量はそれぞれ1週間以上間隔をあけます。
症例4|認知症で10週間継続しているが効果が不明
認知症適応では、投与開始10週間後までを目安に効果が認められない場合、投与中止と治療法の再考が求められます。
薬局からも「開始前と比べて暴言・興奮・攻撃的行動の頻度はどう変わったか」を家族・介護者へ具体的に聞き、効果判定に使える情報を医師へ返す価値があります。
薬歴に残したい項目
- 適応:統合失調症/うつ病補助療法/認知症アジテーション
- 開始・増量日と用量
- アカシジア、眠気、不眠、ふらつき
- 体重・高血糖症状
- 衝動制御障害の有無
- 併用薬:CYP2D6・CYP3A阻害薬/誘導薬
- 運転回避の説明
- 認知症の場合:転倒、嚥下、誤嚥、効果の具体的変化
薬歴記載例
レキサルティOD1mg開始。 適応:うつ病・うつ状態の補助療法。SNRI併用中。 開始後のアカシジア様症状なし。不眠・傾眠なし。 立ちくらみなし。口渇・多尿なし。 自動車運転は避けるよう説明。 CYP2D6/3A4阻害薬の新規併用なし。 次回、そわそわ感・睡眠・体重変化を再確認する。
禁忌・処方監査で見落としたくない点
レキサルティの禁忌は、薬局で処方監査するうえでも重要です。
- 昏睡状態の患者
- バルビツール酸誘導体・麻酔剤など中枢神経抑制剤の強い影響下にある患者
- アドレナリン投与中の患者(アナフィラキシー救急治療、歯科領域の浸潤麻酔・伝達麻酔での使用を除く)
- 本剤成分に対する過敏症の既往がある患者
歯科受診時のアドレナリン含有局所麻酔は例外的に禁忌から除外されていますが、併用注意として血圧低下のおそれがあるため、レキサルティ服用中であることは歯科医師にも伝えてもらうと安心です。
高齢者で特に見るポイント
高齢者では一般に生理機能が低下しているため、若年者より副作用を拾う意識が重要です。とくにアルツハイマー型認知症で使用する場合は、本人だけでなく家族・介護者から情報を取ります。
確認したい5項目
- むせ・嚥下障害:誤嚥性肺炎につながる可能性
- 眠気・ふらつき:転倒・骨折リスク
- 起立性低血圧:立ち上がり時のめまい、失神
- アカシジア・不随意運動:本人が説明できないこともある
- 効果の有無:攻撃的言動や過活動が本当に減ったか
「何となく落ち着いた」ではなく、暴言が1日何回から何回へ減ったか、介護拒否がどう変化したかなど、家族が観察できる具体的な変化を確認すると処方医へ返しやすくなります。
妊娠・授乳、小児では?
妊娠
妊婦または妊娠している可能性がある場合は、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与します。
妊娠後期に抗精神病薬を使用した場合、新生児に哺乳障害、傾眠、呼吸障害、振戦、筋緊張低下、易刺激性などの離脱症状や錐体外路症状が報告されています。
授乳
治療上の有益性と母乳栄養の有益性を考慮して、授乳継続または中止を検討します。患者が自己判断で薬を止めたり授乳を中止したりしないよう案内します。
小児
小児等を対象とした臨床試験は実施されていません。成人用量をそのまま当てはめる薬ではありません。
アリピプラゾールとの違いは?
レキサルティとアリピプラゾールは、どちらもD2受容体部分作動作用をもつ非定型抗精神病薬です。
ただし、受容体に対する作用の強さやバランスは異なります。そのため、「レキサルティの方が必ずアカシジアが少ない」「眠気が少ない」といった単純な優劣で説明しない方が安全です。
| 比較 | レキサルティ | アリピプラゾール |
|---|---|---|
| D2 | 部分作動 | 部分作動 |
| 5-HT1A | 部分作動 | 部分作動 |
| 5-HT2A | 拮抗 | 拮抗 |
| 薬局での考え方 | 副作用歴、併存症、これまでの治療反応などを含め個別に評価 | |
処方変更時には、前薬の減量とレキサルティ開始がどのような意図で設計されているかを確認します。薬局側で独自の「換算量」を決めて患者へ案内するのは避けましょう。
開始・増量後の薬局チェック表
| タイミング | 確認したいこと |
|---|---|
| 初回 | 適応、併用薬、CYP阻害/誘導薬、運転、高血糖リスク、既往EPS |
| 開始後早期 | アカシジア、眠気、不眠、激越、ふらつき、起立性低血圧 |
| 増量後 | 上記副作用が新規出現・増悪していないか |
| 継続時 | 体重変化、高血糖症状、衝動制御障害、不随意運動 |
| 認知症 | 転倒、嚥下、誤嚥、攻撃的言動・過活動の頻度 |
検査値だけでなく、患者・家族が気づける症状を拾うことが薬局では重要です。
疑義照会を考えたい具体例
1.うつ病でレキサルティ単剤
うつ病・うつ状態では、SSRI、SNRIまたはミルタザピンとの併用が前提です。レキサルティ単剤になっている場合は、処方意図や他院処方を確認します。
2.うつ病で1mg開始後すぐ2mgへ増量
添付文書では1mg開始後6週間を目安に2mgへの増量要否を検討します。数日〜数週間で増量されている場合は、経過や医師の判断を確認する価値があります。
3.認知症で最初から2mg
アルツハイマー型認知症の適応では0.5mgから開始し、1週間以上あけて1mg、必要時さらに1週間以上あけて2mgです。初回2mgなら疑義照会を検討します。
4.クラリスロマイシンが追加された
クラリスロマイシンはCYP3A阻害薬です。レキサルティの血中濃度上昇により副作用が増える可能性があるため、併用可否・用量調整を確認します。
5.パロキセチン併用で増量
パロキセチンはCYP2D6阻害作用を有します。とくに他のCYP3A阻害薬も加わる場合は、添付文書の用量調節表を確認します。
患者・家族からよく出る相談への返し方
「飲んだらすぐ効きますか?」
即効性を約束する薬ではありません。適応や症状によって評価期間が異なるため、「数回飲んで効かないから止める」のではなく、処方医が決めた期間継続し、変化を評価します。
「そわそわして落ち着かない」
アカシジアの可能性があります。単なる不安や病状悪化と区別が難しいため、開始・増量との時間関係、脚を動かしたくなる感じ、座っていられるかを確認し、医師へ情報提供します。
「眠くないから運転していい?」
自覚的な眠気がなくても、添付文書上は注意力・集中力・反射能力が低下する可能性があるため、運転など危険作業は避けるよう案内します。
「認知症の母が静かになったからずっと続けたい」
認知症適応では漫然投与を避ける必要があります。効果があっても投与期間は必要最小限とされ、24週間を超える継続投与の安全性は確立していません。定期的な医師の評価が必要です。
よくある質問
Q.朝と夜、どちらに飲むのがいい?
添付文書上は1日1回で、朝・夜の指定はありません。眠気が強い、不眠が出るなど患者ごとの反応もあるため、自己判断で変更せず医師・薬剤師へ相談してください。
Q.食後でないとダメ?
食事による薬物動態への大きな影響は認められていません。処方された用法どおりに服用します。
Q.飲み忘れたら2錠まとめていい?
いいえ。2回分を一度に飲んではいけません。気づいた時に1回分、次の時間が近ければ1回とばします。
Q.車の運転はできますか?
添付文書では、眠気や注意力・反射能力低下のおそれがあるため、自動車運転等の危険を伴う機械操作に従事させないよう注意されています。
Q.認知症なら誰でも使えますか?
いいえ。適応はアルツハイマー型認知症に伴う特定の焦燥・易刺激性・興奮に起因する過活動または攻撃的言動です。他の認知症やBPSD全般に一律に使用する適応ではありません。
Q.レキサルティ2mgは強すぎますか?
「強い・弱い」だけでは判断できません。適応によって2mgの位置づけが異なります。うつ病では1mg開始後6週間を目安に増量要否を検討し、認知症では1mgで不十分な場合に1週間以上あけて2mgを検討します。
適応別|次回来局時に何を聞く?
統合失調症
- 幻覚・妄想や興奮が悪化していないか
- 朝起きられないほど眠くないか
- じっとしていられない感じはないか
- 服薬を飛ばしている日がないか
- 自己判断で減量・中止していないか
統合失調症では「副作用がないですか?」だけでは情報が出にくいことがあります。「脚がムズムズして歩き回りたくなる感じは?」「昼間に寝込むことは?」のように具体的に聞くと拾いやすくなります。
うつ病・うつ状態
- 抗うつ薬を含めて処方どおり継続できているか
- 不安・焦燥が増えていないか
- アカシジアと考えられる「そわそわ」がないか
- 睡眠が悪化していないか
- 希死念慮、自傷・衝動的行動の変化がないか
特に開始早期や用量変更時は、患者本人だけでなく、可能であれば家族からの変化も重要です。
アルツハイマー型認知症
本人からの聞き取りだけで効果・副作用を評価するのが難しいことがあります。家族・介護者には次のように聞きます。
- 暴言・攻撃的言動は何回くらい減ったか
- 介護拒否や落ち着かなさはどう変わったか
- 日中の眠気が増えていないか
- 立ち上がりでふらつく、転倒したことはないか
- むせ・咳き込み・食事量低下はないか
過鎮静や眠気で活動量が落ちている可能性もあります。標的症状が改善したのか、副作用で動けなくなったのかを分けて確認します。
薬物動態|半減期が長い薬だから「1日1回」
ブレクスピプラゾールは半減期が長く、1日1回投与で血中濃度を維持しやすい薬です。健康成人での単回投与後、血中濃度は比較的ゆっくり低下します。
この特徴は「1回飲み忘れても全く影響しない」という意味ではありませんが、短時間作用型の薬とは異なり、服用時刻が多少ずれたからといって自己判断で追加服用する必要はありません。
食事の影響は大きくない
レキサルティは食事の有無で薬物動態に大きな影響を受けにくいため、食前・食後を厳密にそろえる必要はありません。患者さんが継続しやすい時間に、処方された1日1回の用法を守ることが重要です。
ただし眠気・不眠など患者ごとの反応によって、処方医が朝・夕など服用時間を指定している場合はその指示を優先します。
体重・血糖・脂質|長期投与で定期的に確認したい
非定型抗精神病薬では、体重増加、高血糖、脂質異常などの代謝系副作用を定期的に確認することが重要です。
- 体重が急に増えていないか
- 強い口渇・多飲・多尿がないか
- 血糖・HbA1cの推移
- 脂質検査の変化
- 食事量や活動量の変化
糖尿病の既往や肥満がある患者では、開始前からの値と比較できると副作用評価がしやすくなります。
遅発性ジスキネジア|長期使用で「口の動き」を見る
遅発性ジスキネジアは、抗精神病薬を長期間使用した患者で問題になることがある不随意運動です。
口をもぐもぐする、舌が勝手に動く、口をすぼめる、手足が自分の意思と関係なく動くなどの症状がみられることがあります。
「最近、口や舌が勝手に動く感じはありませんか?」「家族から変な口の動きを指摘されていませんか?」
アカシジアと不安・焦燥をどう見分ける?
アカシジアは「不安が強くなった」「落ち着かない」と表現されることがあり、原疾患の焦燥と見分けにくい副作用です。
開始・増量後に、脚を動かしたい、座っていられない、部屋を歩き回る、じっとするとつらいといった特徴が出た場合はアカシジアを疑います。
とくにうつ病でレキサルティが追加された患者では、病状悪化と判断してさらに増量する前に、副作用の可能性を確認することが重要です。
うつ病で1mgと2mgの効果は同じ?
添付文書では、うつ病・うつ状態の臨床試験で1mg群と2mg群の有効性は同程度で、2mg群では1mg群よりアカシジアなど錐体外路症状の発現割合が高くなる傾向が示されたと記載されています。
そのため、2mgは単純に「1mgより効く強い用量」と考えず、1mgを6週間程度使用したうえで、忍容性と効果を見ながら慎重に検討します。
CYP阻害薬併用時は「半量」だけでは足りないことがある
ブレクスピプラゾールはCYP2D6とCYP3A4で代謝されます。両方の経路が強く阻害される場合には、通常用量の単純な半量ではなく、2日に1回投与や0.5mg使用が必要になるケースがあります。
たとえば強いCYP2D6阻害薬と強いCYP3A阻害薬を併用する場合、添付文書の用量調節表ではより大きな減量が示されています。
薬局では「パロキセチン1剤だけ」ではなく、クラリスロマイシンやアゾール系抗真菌薬が同時に追加されていないか、全処方を横断して確認します。
認知症で「静かになった」は副作用ではない?
アルツハイマー型認知症のアジテーション治療では、家族から「静かになったので効いています」と聞くことがあります。
しかし、眠気や過鎮静で活動量が落ちた結果、見かけ上おとなしくなっている可能性もあります。
- 日中の覚醒時間が減っていないか
- 食事量が落ちていないか
- 歩行が不安定になっていないか
- 会話や活動性が極端に減っていないか
- むせ・誤嚥が増えていないか
「問題行動が減った」だけでなく、生活機能と安全性をセットで評価します。
高齢認知症患者の死亡リスクをどう説明する?
PMDA添付文書では、高齢認知症患者に抗精神病薬を投与した海外試験で死亡リスク増加が報告されていること、国内プラセボ対照試験でも因果関係は明らかではないものの死亡例が本剤群のみで報告されたことが注意喚起されています。
このため、認知症適応では「落ち着かせるためにとりあえず使う薬」ではなく、非薬物的介入で不十分な患者を慎重に選び、必要最小限の期間で使います。
嚥下障害・誤嚥性肺炎に注意
抗精神病薬では、錐体外路症状、鎮静、嚥下機能低下などが重なると誤嚥リスクが高くなることがあります。
とくに高齢認知症患者では、むせ、食後の咳、食事時間の延長、食事量低下、発熱などを家族・介護者から聞き取ります。
急にやめても依存になる?
レキサルティはベンゾジアゼピン系のような「依存形成」を主目的に注意する薬ではありませんが、自己判断で急に中止すると原疾患の再燃や症状悪化につながる可能性があります。
また、長期間服用していた薬を中止・切り替えする場合は、病状や併用薬を見ながら医師が計画します。「副作用が心配だから今日からゼロ」にせず相談してください。
飲み忘れが何日も続いた場合
患者向医薬品ガイドでは1回の飲み忘れについて「気づいた時に1回分、次回が近ければ1回飛ばす、2回分をまとめない」と案内されています。
一方、数日〜長期間中断した場合は、以前の用量をそのまま自己判断で再開するのではなく、主治医や薬剤師へ確認します。とくに増量途中や高齢者では慎重に考えます。
普通錠は販売終了、現在はOD錠が中心
大塚製薬の適正使用資料では、レキサルティ錠1mg・2mgは2024年3月に販売中止となり、経過措置期間は2025年3月31日に満了したことが示されています。現在の薬局実務ではOD錠0.5mg・1mg・2mgを中心に考えます。
PMDAには過去の普通錠の添付文書情報も残っているため、検索結果で普通錠が表示されることがあります。
薬局監査で使える30秒チェック
- 何の適応? 統合失調症/うつ病補助/認知症
- 用量は適応に合う?
- 増量間隔は合う?
- パロキセチン・クラリスロマイシン等がない?
- 運転する患者ではない?
- アカシジア・眠気・不眠・ふらつきは?
- 高齢者なら嚥下・転倒は?
- 認知症なら10週・24週の評価時期は?
「レキサルティが処方されている」だけでは監査は終わりません。適応ごとのルールに照らして見ることが、この薬で最も重要なポイントです。

まとめ
レキサルティは、統合失調症・うつ病補助療法・アルツハイマー型認知症に伴うアジテーションという3つの適応を持つ薬です。
薬局で最も大切なのは、適応を確認して、その適応に合った用量・増量間隔・見直し時期を確認することです。
- 統合失調症:1mg開始→4日以上あけて2mg
- うつ病:1mg、2mg検討は開始後6週間を目安
- 認知症:0.5mg→1mg→必要時2mg、各増量は1週間以上あける
- 認知症は10週で効果判定、24週超の安全性は未確立
- アカシジア、眠気、不眠、起立性低血圧、高血糖、体重、衝動制御障害を確認
- CYP2D6・3A4阻害薬、CYP3A誘導薬をチェック
- 飲み忘れ時に2回分をまとめない
- 自動車運転等の危険作業は避ける

参考文献・一次情報
- PMDA|レキサルティOD錠0.5mg/1mg/2mg 医療用医薬品情報
- PMDA|レキサルティOD錠 電子添文
- PMDA|患者向医薬品ガイド
- PMDA|アルツハイマー型認知症適正使用ガイド
- 大塚製薬|うつ病・うつ状態の効能追加
※本記事は2026年10月2日時点でPMDA掲載情報・適正使用資料等を再確認しています。現行の電子添文は2024年9月改訂(第5版)です。実際の処方・用量調節は最新の電子添文と患者個別の状態に基づき、医師・薬剤師が判断してください。



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