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結論からいうと、薬局の「欠品率」は、必要な医薬品を必要なタイミングで用意できなかった頻度を見える化するための店舗内KPIとして使えます。ただし、厚生労働省が全国の薬局に統一計算式を義務づけている指標ではありません。まず自店で「何を欠品と数えるか」を決め、同じ定義で継続測定することが重要です。
この記事の重要ポイント
- 欠品率は薬局の在庫管理を見える化するKPIとして便利
- 全国統一の公的な「薬局欠品率」計算式があるわけではない
- おすすめは「欠品件数÷対象件数×100」で店舗内ルールを固定すること
- メーカーの限定出荷・供給停止と、自店の発注ミスは分けて集計する
- 欠品率だけでなく、在庫回転・廃棄・緊急発注もセットで見る
- 2026年は厚生労働省の医薬品安定供給・流通確認システムも活用できる

欠品が多い気がするんですが、『多い』って感覚だけで店長に説明しにくいです。何か数字にできませんか?

欠品率を決めて毎月測るといいよ。ただし公的な統一式ではないから、自店で定義を決めて同じ条件で追うことが大事なんだ。
薬局で働いていると、「また欠品した」「この薬はいつも取り寄せ」「患者さんを待たせてしまった」という場面があります。ところが、欠品のたびに対応して終わりでは、在庫管理が改善しているのか悪化しているのか分かりません。
そこで使えるのが「欠品率」です。欠品を件数化し、処方箋枚数や調剤件数などの母数で割れば、「今月は欠品が多かった」「発注ルール変更後に減った」という評価ができます。
ただし、2026年現在も医療用医薬品では限定出荷や供給停止が発生しており、薬局の努力だけでは防げない欠品もあります。厚生労働省は製造販売業者から供給状況報告を受け、限定出荷・供給停止などを公表しており、2026年3月31日から「医薬品安定供給・流通確認システム」を稼働させています。
この記事では、薬局内で使える欠品率の計算方法、欠品の分類、目標設定、改善策、在庫回転率や廃棄率との組み合わせ方まで、管理薬剤師・若手薬剤師向けに具体的に解説します。

- 薬局の欠品率とは?
- 欠品率の基本的な計算方法
- 最初に「欠品」の定義を決めよう
- 欠品原因は最低でも5分類しよう
- 2026年の供給不足はどう確認する?
- 欠品率の目標は何%にすればいい?
- 欠品率を下げる7つの改善策
- 欠品率と一緒に見るべき指標
- 欠品率だけ改善すると失敗する理由
- 具体例:欠品率4%の薬局を改善する
- 高額薬の欠品は「件数」だけで評価しない
- 一人薬剤師店舗ではどう管理する?
- 欠品時の患者対応で大切なこと
- メーカー限定出荷のときにやってはいけないこと
- 管理薬剤師向け・毎月15分の在庫レビュー
- よくある質問
- まとめ
- 関連記事
- 欠品率を3種類に分けると原因が見えやすい
- 「欠品件数」と「欠品日数」を分ける
- 欠品管理表に最低限入れたい項目
- 欠品上位品目をパレート分析する
- 在庫ABC分析と欠品率を組み合わせる
- 発注点はどう計算する?
- 安全在庫を増やしすぎると何が起きる?
- 診療科ごとの処方パターンを発注へ反映する
- 新薬・新規採用品の欠品を防ぐルール
- 供給不安品は「代替候補リスト」を作る
- 欠品時の待ち時間もKPIにする
- 店舗間移動が多すぎる場合は「隠れ欠品」かもしれない
- 廃棄率と欠品率を同じグラフで見る
- 欠品率レポートを上司へ報告するときの書き方
- 欠品率をスタッフ教育に活用する
- 厚生労働省の供給情報を確認する流れ
- 毎月の在庫ダッシュボード例
- 欠品率改善で一番大切なのは「記録→原因→1つ改善」
- 参考文献
- 欠品率を店舗評価に使うときの注意点
- 処方箋枚数が少ない薬局ほど率がぶれやすい
薬局の欠品率とは?
ここでいう欠品率とは、患者さんに必要な医薬品をその場で用意できなかった割合を、薬局内で数値化したものです。
重要なのは、「欠品率」という言葉だけでは定義が一つに決まらないことです。処方箋単位で数える方法、医薬品品目単位で数える方法、患者単位で数える方法などが考えられます。
そのため他店と単純比較するより、まず自店舗で定義を固定して、前月比・前年同月比・改善施策の前後比較に使うのが現実的です。
欠品率の基本的な計算方法
もっとも分かりやすい店舗内KPIは次の式です。
欠品率(%)=欠品が発生した件数 ÷ 対象件数 × 100
たとえば1か月に処方箋500枚を受け付け、そのうち20枚で何らかの欠品が発生した場合、処方箋ベースの欠品率は4%です。
20 ÷ 500 × 100 = 4%
品目ベースで計算する方法
1枚の処方箋に複数薬がある場合、処方箋ベースでは「1品だけ欠品」も「3品欠品」も1件です。より細かく見るなら、処方された医薬品品目数を母数にします。
たとえば1か月の処方品目数が2,000品目、そのうち欠品が30品目なら、品目ベース欠品率は1.5%です。
患者影響ベースで計算する方法
欠品しても当日中に近隣店舗から取り寄せて患者さんが待たずに受け取れたケースと、翌日配送になったケースでは影響が違います。そこで「当日中に全量交付できなかった患者数」を母数で割る方法もあります。
この指標は、在庫管理の精度というより患者体験を測るKPIとして有効です。
最初に「欠品」の定義を決めよう
欠品率を測り始める前に、店舗内で何を欠品としてカウントするか決めます。
| ケース | 欠品に含める? | 考え方 |
|---|---|---|
| 在庫0で当日渡せない | 含める | 典型的な欠品 |
| 在庫はあるが必要数量に足りない | 含める | 一部欠品として記録 |
| 他店舗から30分で移動して全量交付 | 店舗ルール次第 | 在庫管理上は欠品、患者影響は軽い |
| 卸から当日配送される | 店舗ルール次第 | 発注後に患者を待たせたかも記録 |
| メーカー限定出荷で入手不能 | 含めるが原因を別分類 | 自店責任と分ける |
| 処方変更で代替薬になった | 原因を記録 | 欠品から処方変更へ至った重要ケース |
毎月定義が変わると、数字が改善したのか集計方法が変わったのか分からなくなります。
欠品原因は最低でも5分類しよう
欠品率だけ見ても、原因が分からなければ改善できません。そこで欠品が起きたら、最低限次の5つに分類します。
- 発注点・発注量の設定不足
- 急な処方増・新規処方
- 高額薬・低頻度薬で在庫を絞っていた
- メーカー限定出荷・供給停止・卸在庫不足
- 店舗間移動・棚卸・入力などオペレーション要因
この分類に「その他」を追加しても構いませんが、その他が半分を超えるようなら分類が粗すぎます。
2026年の供給不足はどう確認する?
2026年3月31日から、厚生労働省は「医薬品安定供給・流通確認システム」を稼働させています。製造販売業者から報告された限定出荷、供給停止などの情報を確認できます。
厚生労働省の供給状況報告では、出荷対応を「通常出荷」「限定出荷(自社の事情)」「限定出荷(他社品の影響)」「限定出荷(その他)」「供給停止」などに分けています。また出荷量も、増加・通常・減少・停止などで整理されています。
欠品が起きたときに「発注担当のミス」と決めつける前に、公的な供給情報を確認することが大切です。
欠品率の目標は何%にすればいい?
全国一律の正解はありません。店舗の診療科、備蓄品目数、処方箋枚数、在宅、面分業率、卸の配送頻度などで適正値が変わるからです。
最初は「今月の実績を基準値」にして、3か月平均で改善を追う方法が現実的です。
- 1か月目:まず測る
- 2か月目:原因上位3つを特定
- 3か月目:発注点などを変更
- 4~6か月目:欠品率と廃棄率を同時評価
欠品率だけをゼロにしようとすると、在庫を持ちすぎて廃棄が増える可能性があります。ゼロを目指すことより、患者影響・資金・廃棄のバランスが重要です。
欠品率を下げる7つの改善策
1. 発注点を見直す
発注点とは「在庫がこの数量まで減ったら発注する」という基準です。よく出る薬なのに発注点が低すぎると、次の納品までに在庫切れになります。
直近1~3か月の使用量と卸の納品リードタイムを見ながら、欠品頻発品から優先して修正します。
2. 曜日・診療科の偏りを見る
整形外科門前なら週明けに鎮痛薬や外用薬が増える、糖尿病外来の曜日に特定薬が増えるなど、処方にはパターンがあります。月平均だけで発注すると、ピーク日に足りなくなることがあります。
3. 新規採用品を記録する
初めて出た薬を「今回だけ」と考えて毎回取り寄せにすると、2回目も欠品します。初回処方時に次回来局可能性を考え、採用品にするか都度発注にするか判断します。
4. 高額薬は在庫上限も決める
高額薬は欠品を恐れて過剰在庫にすると、処方変更や転院で大きな不動在庫になります。発注点だけでなく「最大何箱まで持つか」を決めると資金効率が良くなります。
5. 店舗間移動ルールを作る
チェーン薬局なら、近隣店舗に在庫があるかを早く確認できる仕組みが有効です。誰に連絡するか、移動記録をどう残すか、患者への受け渡し時間をどう案内するかまで標準化します。
6. 限定出荷品は通常在庫と分けて管理する
限定出荷中の薬は、通常時と同じ発注点管理ではうまくいかないことがあります。代替候補、採用メーカー、処方医への情報提供、必要最小限の発注など、別ルールを設けます。
7. 欠品記録を月1回レビューする
記録するだけでは改善しません。月末に欠品上位10品目と原因分類を確認し、「来月変えること」を1~3個だけ決めます。
欠品率と一緒に見るべき指標
| 指標 | 意味 | 欠品率との関係 |
|---|---|---|
| 在庫金額 | 薬局が抱えている医薬品の金額 | 欠品を減らすために増えすぎていないか |
| 在庫回転 | 在庫がどの程度入れ替わっているか | 動かない薬が多くないか |
| 廃棄率 | 期限切れ等で廃棄した割合 | 過剰在庫の副作用を確認 |
| 緊急発注件数 | 通常発注以外で急いで手配した件数 | 見えない欠品予備軍 |
| 店舗間移動件数 | 他店から融通した件数 | 実質的な在庫不足を把握 |
| 患者後日渡し件数 | 当日全量交付できなかった件数 | 患者影響を直接確認 |
欠品率だけ改善すると失敗する理由
たとえば欠品率を4%から1%にするため、すべての薬を大量に在庫すれば欠品は減るかもしれません。しかし在庫金額が増え、期限切れ廃棄が増え、棚も圧迫します。
逆に在庫金額だけを減らそうとすれば、欠品が増えて患者さんを待たせることになります。
薬局の在庫管理は「欠品を減らす」「在庫を増やしすぎない」「廃棄を減らす」の3つを同時に見る必要があります。
具体例:欠品率4%の薬局を改善する
月500枚、欠品20件で欠品率4%の店舗を想定します。欠品20件を原因別に分けたところ、発注点不足8件、限定出荷6件、新規処方4件、入力ミス2件でした。
この場合、限定出荷6件は薬局だけでは解決できません。まず発注点不足8件と入力ミス2件を改善対象にします。
- 欠品上位5品目の発注点を1週間分の使用量から再設定
- 棚卸後の在庫数修正をダブルチェック
- 新規処方品は2回目処方の可能性を記録
翌月、欠品が12件になれば欠品率は2.4%です。さらに12件の内訳を見て次の改善を行います。これがKPIを使った改善サイクルです。
高額薬の欠品は「件数」だけで評価しない
1万円未満の薬が1回欠品した場合と、数十万円の高額薬を過剰在庫しないために取り寄せ対応した場合を同じ「1件」と数えると、経営判断を誤ることがあります。
高額薬は「欠品」ではなく「計画取り寄せ」として別区分にする方法もあります。患者さんへ事前説明し、次回来局日が分かっていて必要量を予約発注できているなら、通常の在庫切れとは性質が違います。
一人薬剤師店舗ではどう管理する?
一人薬剤師では、調剤・投薬・電話・疑義照会をしながら発注も行うため、記録項目を増やしすぎると続きません。
最初はExcelやスプレッドシートで、日付・薬品名・欠品数量・原因・患者影響の5項目だけ記録すれば十分です。月末に件数を数え、処方箋枚数で割ります。
自動集計できるレセコンや在庫システムがある場合は、その機能を優先して使い、二重入力を避けましょう。
欠品時の患者対応で大切なこと
在庫管理の数字を改善しても、目の前の患者さんへの対応が雑では意味がありません。欠品が判明したら、できるだけ早く選択肢を提示します。
- 当日中に入荷できるか
- 近隣店舗から用意できるか
- 一部を先に渡し、残りを後日渡せるか
- 医師へ代替薬を相談する必要があるか
- 患者さんの服薬が途切れないか
慢性疾患の薬でも、残薬がある患者と今日から必要な患者では緊急度が違います。薬の重要性と患者状況を踏まえて優先順位をつけます。
メーカー限定出荷のときにやってはいけないこと
供給不安になると、欠品を恐れて必要以上に発注したくなります。しかし、全国的に供給が限られているときの過剰発注は、他の医療機関・薬局への供給にも影響します。
厚生労働省は個別の供給不安時に「当面必要な量のみ購入」などを求めることがあります。限定出荷中は、通常の需要予測に加えて公的情報やメーカー・卸の案内を確認しましょう。
管理薬剤師向け・毎月15分の在庫レビュー
- 今月の処方箋枚数を確認
- 欠品件数と欠品率を計算
- 欠品上位10品目を並べる
- 原因を「自店要因」「供給要因」「需要急増」に分ける
- 緊急発注・店舗間移動・後日渡し件数を確認
- 廃棄予定品・不動在庫も確認
- 来月変更する発注点を3品目だけ決める
すべての在庫を一度に最適化するより、欠品上位から少しずつ改善したほうが継続しやすくなります。
よくある質問
Q1. 欠品率の全国平均はありますか?
薬局が同じ定義で算出する全国統一の公的な欠品率指標が一般的に示されているわけではありません。店舗内KPIとして定義を固定し、自店の推移を見るのがおすすめです。
Q2. 限定出荷で入らない薬も欠品率に入れますか?
患者影響を見るなら含めたほうが実態を把握できます。ただし改善可能性を判断するため、メーカー・流通要因として別分類しましょう。
Q3. 在庫を増やせば欠品率は下がりますか?
一般には下がりやすくなりますが、在庫金額や廃棄リスクが上がります。欠品率だけを目標にしないことが重要です。
Q4. 取り寄せでも当日渡せれば欠品に数えなくていいですか?
店舗の目的によります。在庫管理精度を見たいなら欠品として数え、患者影響指標では「当日全量交付できた」と別管理する方法が分かりやすいです。
Q5. 欠品率は誰が集計するべきですか?
管理薬剤師が責任者でも、記録はスタッフ全員が同じルールで行える仕組みにしたほうが漏れません。集計だけ月末に責任者が確認するとよいでしょう。
Q6. 供給状況はどこで確認できますか?
厚生労働省の「医療用医薬品供給状況報告」や「医薬品安定供給・流通確認システム」で、限定出荷・供給停止などの情報を確認できます。
まとめ
薬局の欠品率は、在庫切れを感覚ではなく数字で把握するための便利なKPIです。ただし全国統一の正解がある指標ではないため、まず「欠品の定義」と「母数」を自店で固定することが重要です。
欠品が起きたら、発注ミス、新規処方、高額薬、メーカー限定出荷など原因を分けて記録します。そして欠品率だけでなく、在庫金額、在庫回転、廃棄率、緊急発注、患者後日渡し件数をセットで見ると、在庫を増やしすぎずに患者さんを待たせにくい薬局へ改善できます。
関連記事
欠品率を3種類に分けると原因が見えやすい
店舗全体の欠品率を1つだけ出すより、原因別に3種類へ分けると改善しやすくなります。
| 指標 | 定義例 | 改善主体 |
|---|---|---|
| 自店要因欠品率 | 発注点不足・発注忘れ・在庫入力ミスなど | 薬局内で改善しやすい |
| 供給要因欠品率 | 限定出荷・供給停止・卸欠品など | 代替や情報収集で影響を減らす |
| 需要急増欠品率 | 急な処方変更・患者集中・新規採用品など | 需要予測と採用ルールを改善 |
全体欠品率が4%でも、自店要因が0.5%なら発注管理はかなり安定しているかもしれません。逆に供給が正常なのに自店要因が3%なら、発注ルールを優先的に見直すべきです。
「欠品件数」と「欠品日数」を分ける
同じ薬が1週間欠品し、その間に5人の患者へ影響した場合、「欠品1品目」と数えるのか「患者5件」と数えるのかで数字が変わります。
そこで、管理目的に応じて次のように複数の指標を持つと便利です。
- 欠品患者件数:患者影響の大きさを見る
- 欠品品目数:在庫管理対象の広がりを見る
- 欠品延べ日数:長期化している薬を見つける
- 後日渡し件数:患者負担を見る
- 処方変更件数:医療機関にも影響したケースを見る
欠品管理表に最低限入れたい項目
| 項目 | 記録例 |
|---|---|
| 日付 | 2026/8/10 |
| 医薬品名・規格 | ○○錠10mg |
| 不足数量 | 20錠 |
| 原因 | 発注点不足/限定出荷など |
| 対応 | 当日卸発注・他店移動・後日渡し |
| 患者影響 | 待ち時間30分/翌日受取など |
| 再発防止 | 発注点を20→40錠へ変更 |
最初から細かすぎる項目を作ると入力されなくなります。まず7項目程度で運用し、必要に応じて追加するのがおすすめです。
欠品上位品目をパレート分析する
欠品は、すべての医薬品で均等に発生するとは限りません。特定の10~20品目が欠品の多くを占めることがあります。
月末に欠品件数を薬品別に並べ、上位から累積件数を見るだけでも「この5品目を直せば全体の半分が改善する」といった重点管理ができます。
全品目の発注点を一気に見直すより、欠品上位から順番に修正するほうが現場負担が少なく、効果を確認しやすいです。
在庫ABC分析と欠品率を組み合わせる
在庫ABC分析では、使用金額や出庫金額が大きい薬をA、次をB、少ない薬をCなどに分類して重点管理します。欠品率と組み合わせると、「高額かつ頻回に出る薬」「低頻度だが欠品すると困る薬」を分けて考えられます。
ただし、金額が低くても救急性や治療継続上の重要性が高い医薬品はあります。ABCランクだけで在庫の要否を決めず、臨床上の重要性も加味しましょう。
発注点はどう計算する?
簡易的には、平均使用量と納品までの時間をもとに発注点を考えます。
発注点の考え方例
発注点 = 納品までに使う見込み数量 + 安全在庫
たとえば1日平均20錠使い、次回納品まで2日かかる薬なら、少なくとも40錠程度は納品までに必要です。そこへ需要変動分の安全在庫を加えます。
ただし、限定出荷中の薬、高額薬、冷所品、使用期限が短い薬などは一律の式ではなく個別判断が必要です。
安全在庫を増やしすぎると何が起きる?
安全在庫を増やせば欠品は減りやすくなります。しかし、すべての薬を「念のため1箱多く」持つと、薬局全体では大きな金額になります。
特に処方が止まった薬、患者が転院した薬、採用メーカーが変更された薬は、不動在庫になりやすいです。安全在庫は欠品履歴と使用量に基づき、必要な品目だけ増やします。
診療科ごとの処方パターンを発注へ反映する
門前診療科が明確な薬局では、曜日や季節で処方が偏ることがあります。
- 整形外科:鎮痛薬、外用薬、骨粗鬆症薬
- 耳鼻科:花粉症シーズンの抗アレルギー薬
- 小児科:感染症流行時の解熱薬や抗菌薬
- 糖尿病内科:特定曜日の定期処方
月平均だけでなく「曜日別」「診療日別」「季節別」で使用量を見ると、ピーク前の欠品を減らしやすくなります。
新薬・新規採用品の欠品を防ぐルール
新しい処方が来たときは、その場で取り寄せて終わりにせず、次回も出る可能性を記録します。処方医の採用傾向、患者の継続予定、次回来局時期を確認できれば、2回目の欠品を防げます。
一方、1回限りの可能性が高い薬を大量採用すると不動在庫になります。「初回は必要量だけ」「2回目確認後に定数在庫化」など店舗ルールを決めるとバランスが取りやすくなります。
供給不安品は「代替候補リスト」を作る
限定出荷や供給停止が発生してから毎回ゼロから調べると、疑義照会や患者説明に時間がかかります。供給不安が長引く品目では、同成分の別メーカー、規格違い、剤形違いなど、医師へ相談可能な候補を整理しておくと対応が早くなります。
ただし、代替の可否は薬剤ごとの適応、用法、添加剤、製剤特性、患者状態などで異なります。薬局判断で勝手に変更できないものは、処方医への疑義照会や必要な手続きを行います。
欠品時の待ち時間もKPIにする
欠品率が同じでも、毎回5分で他店舗から届く薬局と、毎回翌日まで待ってもらう薬局では患者体験が違います。
そこで「欠品発生から薬を用意できるまでの平均時間」を測る方法があります。欠品を完全にゼロにできなくても、復旧時間を短くすることで患者影響を減らせます。
店舗間移動が多すぎる場合は「隠れ欠品」かもしれない
チェーン薬局では他店舗からすぐ薬を移動できるため、表面上は患者さんへ欠品を感じさせずに済みます。しかし、毎週同じ薬を他店から移動しているなら、自店の定数在庫が合っていない可能性があります。
店舗間移動件数を月次で集計し、同じ品目が3回以上続くようなら採用や発注点を見直す、といったルールを作るとよいでしょう。
廃棄率と欠品率を同じグラフで見る
在庫改善の成果を見るときは、欠品率だけを下げるのではなく廃棄率も同時に確認します。
欠品率が下がったのに廃棄率が急上昇していれば、在庫を増やしすぎた可能性があります。反対に廃棄率だけ下がって欠品率が上がったなら、在庫削減が強すぎたかもしれません。
目標は「欠品ゼロ」でも「在庫最小」でもなく、患者さんへ必要な薬を安定して届けながら、過剰在庫を抑えることです。
欠品率レポートを上司へ報告するときの書き方
今月の結果:処方箋500枚、欠品15件、欠品率3.0%
前月:4.2% → 1.2ポイント改善
原因:限定出荷6件、発注点不足5件、新規処方3件、入力ミス1件
対応:欠品上位3品目の発注点を見直し
来月:店舗間移動が多い5品目を採用見直し
数字、原因、実施したこと、次にやることを1枚で示すと、単なる「欠品が多かった」という報告から改善提案へ変わります。
欠品率をスタッフ教育に活用する
若手薬剤師や事務スタッフに在庫管理を教えるとき、「発注を忘れないで」と抽象的に言うだけでは改善しにくいです。欠品率と原因分類を見せると、どの行動が患者さんや店舗へ影響するか理解しやすくなります。
たとえば「今月の自店要因欠品8件のうち5件が発注点不足だった」と共有し、発注点変更の考え方を一緒に確認すれば、教育と改善を同時に進められます。
厚生労働省の供給情報を確認する流れ
欠品が発生したら、まず卸へ在庫確認を行い、同時に厚生労働省の供給状況情報で対象品目の出荷対応を確認します。「通常出荷」なのか、「限定出荷」なのか、「供給停止」なのかで対策が変わるからです。
- 医薬品名・規格・メーカーを正確に確認する
- 厚生労働省の供給状況で出荷対応を確認する
- メーカー案内や卸情報で復旧見込みを確認する
- 自店・近隣店の在庫を確認する
- 患者の残薬と次回服用タイミングを確認する
- 必要なら処方医へ代替可否を相談する
供給情報は更新されるため、一度「限定出荷」と確認した薬でも、数週間後に状況が変わっていることがあります。長期欠品品は定期的に再確認しましょう。
毎月の在庫ダッシュボード例
| 指標 | 今月 | 前月 | 評価 |
|---|---|---|---|
| 欠品率 | 2.8% | 3.6% | 改善 |
| 自店要因欠品率 | 0.9% | 1.5% | 改善 |
| 供給要因欠品率 | 1.3% | 1.2% | ほぼ横ばい |
| 後日渡し件数 | 4件 | 7件 | 改善 |
| 店舗間移動件数 | 12件 | 15件 | 改善 |
| 廃棄金額 | 8,000円 | 5,000円 | 悪化・要確認 |
この例では欠品は改善していますが、廃棄金額が増えています。欠品を減らすために在庫を増やしすぎた可能性があるため、次月は不動在庫と期限切迫品を確認します。このように複数指標を一緒に見ることで、単純な「欠品率ゼロ競争」を避けられます。
欠品率改善で一番大切なのは「記録→原因→1つ改善」
在庫管理は複雑に見えますが、基本はシンプルです。欠品したら記録し、月末に原因を集計し、一番多い原因へ対策を1つ実施します。そして翌月に数字が変わったか確認します。
高価なシステムを導入しなくても、このサイクルを続けるだけで「何となく欠品が多い薬局」から「どこを直せばよいか分かる薬局」へ変わります。管理薬剤師だけで抱えず、事務スタッフや他の薬剤師と共通ルールにすることが継続のコツです。
参考文献
欠品率を店舗評価に使うときの注意点
欠品率をスタッフの人事評価に直結させるのは慎重に考えたほうがよいでしょう。供給停止や限定出荷のように、発注担当者が努力しても防げない要因があるからです。
店舗評価に使うなら、欠品率そのものより「自店要因の欠品率」「欠品原因の記録率」「改善施策の実施率」など、コントロールできる指標を組み合わせる方法が公平です。
処方箋枚数が少ない薬局ほど率がぶれやすい
月100枚の薬局で欠品が2件なら2%ですが、翌月0件なら0%です。一方、月2,000枚の薬局では数件の変動で率は大きく変わりません。小規模店舗では1か月だけの欠品率に一喜一憂せず、3か月移動平均で見ると傾向をつかみやすくなります。
また、門前診療科の処方変更や新薬採用があった月は一時的に欠品が増えることがあります。数字が悪化したら、背景まで確認して解釈しましょう



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