


この記事の結論
- SDAは「セロトニン・ドパミン拮抗薬」という薬理学的な呼び方で、厳密な公的分類ではありません。
- 代表的にはリスペリドン、パリペリドン、ペロスピロン、ブロナンセリンなどが実務上まとめて扱われます。
- 共通点はD2受容体と5-HT2A受容体への拮抗作用ですが、実際の副作用・代謝・剤形はかなり違います。
- 高プロラクチン血症は特にリスペリドン・パリペリドンで重要です。
- EPS・アカシジアはSDAでも起こり、用量が増えるほど注意が必要です。
- パリペリドンは腎機能、ペロスピロン・ブロナンセリンはCYP3A4相互作用を意識します。
- 飲み忘れや再発が問題になる場合、リスペリドン・パリペリドンのLAIが選択肢になります。
- 現行ガイドラインでは「SDAを選ぶ」というより、個々の薬剤を患者ごとのリスク・ベネフィットで選ぶ考え方が中心です。

- SDA薬とは?
- 2026年は「SDAだから」ではなく薬剤ごとに考える
- 代表的なSDA薬
- 共通する薬理|D2遮断+5-HT2A遮断
- リスペリドン|使いやすい一方、高プロラクチンに注意
- パリペリドン|リスペリドンの活性代謝物
- パリペリドンのLAI
- ペロスピロン|CYP3A4と投与回数を見る
- ブロナンセリン|経口薬と貼付剤がある
- SDA薬の比較表
- 「SDAはEPSが少ない」は半分正しい
- 薬剤性パーキンソニズム
- 遅発性ジスキネジア
- 高プロラクチン血症をどう見る?
- 体重・血糖・脂質
- 起立性低血圧
- 眠気・鎮静
- 悪性症候群
- QT延長
- リスペリドンとパリペリドンの違い
- どんな患者でLAIを検討する?
- SDA・DPA・MARTAの違い
- ラツーダ・シクレスト・レキサルティはどう扱う?
- 症例1|若年男性・リスペリドン開始後に性機能低下
- 症例2|高齢者・パリペリドン継続中に腎機能低下
- 症例3|ブロナンセリン中に抗真菌薬追加
- 症例4|服薬忘れで再発を繰り返す
- 症例5|「不安で落ち着かない」
- 高プロラクチン血症は「数値」だけでなく症状を見る
- 長期の高プロラクチンでは骨への影響も意識
- 腎機能低下で特に注意したいパリペリドン
- 「インヴェガを割って飲む」は避ける
- 便に殻のようなものが出る理由
- CYP3A4相互作用|ペロスピロン・ブロナンセリン
- 他院処方が一番の見落としポイント
- ブロナンセリン経口剤とテープは同じように考えてよい?
- ロナセンテープの貼付部位
- テープを貼ったまま入浴できる?
- LAI導入で確認すること
- LAIにしたら副作用はなくなる?
- アカシジアを「不安」と片付けない
- 薬剤性パーキンソニズムを見つける質問
- 遅発性ジスキネジアの定期観察
- 体重が増えていなくても血糖・脂質を見る
- 高齢者では転倒・嚥下・せん妄も見る
- 「副作用対策薬」が増えすぎていないか
- 切り替え時に注意すること
- 症例6|リスペリドンで無月経
- 症例7|インヴェガ服用中に腎機能が悪化
- 症例8|ロナセンテープで皮膚炎
- 患者さんへの説明例
- 処方医へ伝えるSBAR例
- 定期モニタリング|何を繰り返し見る?
- 妊娠を希望している場合
- 授乳中は?
- 副作用がつらくても自己中断しない
- 薬を変える判断は「副作用がある=即変更」ではない
- 患者本人の治療目標を確認する
- 家族からの情報も重要
- 服薬支援は“飲めたか”だけで終わらせない
- 薬局で使える30秒チェック
- 薬歴に残したい項目
- よくある質問
- まとめ|SDAは「分類」より薬剤ごとの差を見る
- 参考文献・一次情報
SDA薬とは?
SDAはSerotonin-Dopamine Antagonistの略で、日本語では「セロトニン・ドパミン拮抗薬」と呼ばれます。
一般には、ドパミンD2受容体とセロトニン5-HT2A受容体を遮断する第二世代抗精神病薬の一群を指します。
ただし「SDA」は添付文書上の正式な薬効分類ではなく、教育・実務で使われる便宜的な呼び方です。薬剤によって受容体プロファイルは異なり、分類の境界も文献によって多少異なります。
2026年は「SDAだから」ではなく薬剤ごとに考える
2025年12月に改訂された統合失調症薬物治療ガイドラインでは、特定のサブクラス名だけで薬を選ぶのではなく、個々の抗精神病薬の有効性、副作用、患者の希望、過去の反応などを踏まえて治療を選択する考え方が重視されています。
そのため薬剤師も「SDAだからEPSが少ない」「SDAだから代謝異常が少ない」とまとめて考えるのではなく、薬ごとの違いを見る必要があります。
代表的なSDA薬
| 一般名 | 商品名例 | 実務で意識する特徴 |
|---|---|---|
| リスペリドン | リスパダール | 高プロラクチン、EPS、剤形が多い |
| パリペリドン | インヴェガ | 腎排泄主体、徐放錠、LAI |
| ペロスピロン | ルーラン | CYP3A4、1日複数回投与、眠気・起立性低血圧 |
| ブロナンセリン | ロナセン | D2/D3作用が強め、CYP3A4、貼付剤あり |
共通する薬理|D2遮断+5-HT2A遮断
抗精神病作用の中心はD2受容体遮断です。一方、5-HT2A受容体遮断は黒質線条体でのドパミン放出に影響し、第一世代抗精神病薬と比べてEPSを減らす方向に働くと考えられています。
ただし、実際のEPSリスクは薬剤、用量、患者背景で変わります。5-HT2A遮断がある=EPSが起こらないではありません。
リスペリドン|使いやすい一方、高プロラクチンに注意
リスペリドンは統合失調症で広く使われる抗精神病薬で、錠剤、OD錠、内用液、細粒、LAIなど複数の剤形があります。
活性代謝物は9-ヒドロキシリスペリドン、すなわちパリペリドンです。
リスペリドンで見たい副作用
- 高プロラクチン血症
- アカシジア
- 薬剤性パーキンソニズム
- 起立性低血圧
- 体重・血糖・脂質の変化
- 眠気
高プロラクチン血症
リスペリドンではD2遮断によりプロラクチンが上昇しやすく、無月経、乳汁分泌、性欲低下、勃起・射精障害などが問題になります。
患者から相談しにくい副作用なので、長期投与では必要に応じてプライバシーに配慮しながら確認します。
パリペリドン|リスペリドンの活性代謝物
パリペリドンはリスペリドンの主要活性代謝物です。インヴェガ錠は徐放性製剤で、血中濃度を比較的安定させるよう設計されています。
リスペリドンと副作用プロファイルは似ていますが、腎排泄の割合が高いため、腎機能が処方監査で重要です。
インヴェガ錠は徐放錠
インヴェガは徐放性製剤なので、噛んだり砕いたりせずそのまま服用します。
便中に錠剤の外殻様のものが見えることがありますが、製剤設計上起こり得る現象です。患者が「薬がそのまま出た」と心配することがあります。
腎機能を確認
パリペリドンは腎機能低下で曝露量が増えるため、用量調整が必要です。
長期処方であっても、年齢や病気によって腎機能が低下していないか定期的に確認します。
パリペリドンのLAI
パリペリドンには持効性注射剤(LAI)があり、服薬アドヒアランス低下による再発が問題になる場合や、患者本人が希望する場合に選択肢になります。
LAIは「薬を飲めない人に強制する治療」ではなく、患者本人の希望を含めて共同意思決定で選ぶ治療です。
ペロスピロン|CYP3A4と投与回数を見る
ペロスピロンはD2・5-HT2A受容体拮抗作用に加えて、5-HT1A受容体部分作動作用を持つ抗精神病薬です。
代謝にはCYP3A4が関与するため、強い阻害薬・誘導薬が追加された場合は相互作用を確認します。
ペロスピロンで確認したいこと
- 眠気
- 起立性低血圧
- アカシジア・EPS
- CYP3A4相互作用
- 服薬回数が生活に合っているか
薬理学的に5-HT1A部分作動作用を持ちますが、「不安が強いならペロスピロン」と機械的に選ぶものではありません。
ブロナンセリン|経口薬と貼付剤がある
ブロナンセリンはD2/D3受容体と5-HT2A受容体に高い親和性を持つ抗精神病薬です。
経口製剤のロナセン錠・散に加え、ロナセンテープがあります。経口服薬が負担になる患者にとって貼付剤は選択肢ですが、皮膚症状や貼付部位の管理が必要です。
ブロナンセリン経口剤の相互作用
主にCYP3A4で代謝されるため、強いCYP3A4阻害薬・誘導薬との相互作用が重要です。
他院から抗真菌薬、抗菌薬、抗てんかん薬などが追加された場合は、お薬手帳全体を確認します。
ロナセンテープの特徴
- 貼付による持続的な薬物送達
- 毎日の内服が難しい患者で選択肢
- 皮膚炎、紅斑、そう痒など貼付部位反応に注意
- 貼付枚数・貼付部位・貼り替え時間を確認
SDA薬の比較表
| 薬剤 | 高プロラクチン | EPS | 代謝・排泄 | 剤形の特徴 |
|---|---|---|---|---|
| リスペリドン | 高め | 注意 | CYP2D6等 | 錠・OD・液・LAI |
| パリペリドン | 高め | 注意 | 腎排泄主体 | 徐放錠・LAI |
| ペロスピロン | 注意 | 注意 | CYP3A4 | 経口剤 |
| ブロナンセリン | 注意 | 注意 | CYP3A4 | 錠・散・貼付剤 |
この表は「どの薬が優れているか」の順位ではなく、処方監査で見るポイントの違いを整理したものです。
「SDAはEPSが少ない」は半分正しい
第一世代抗精神病薬と比較してEPSが少ない傾向はありますが、SDAでもアカシジア、振戦、筋固縮、動作緩慢、ジストニアなどは起こります。
特にD2遮断が強い薬剤や高用量では、EPSを丁寧に評価します。
薬剤性パーキンソニズム
振戦、筋固縮、動作緩慢、歩幅の減少などがみられます。高齢者ではもともとのパーキンソン病と区別しにくいことがあります。
症状を抑えるために抗コリン薬を追加するだけでなく、原因薬の用量・必要性を見直すことが重要です。
遅発性ジスキネジア
長期使用後に、口をもぐもぐする、舌を出す、手足が勝手に動くなどの不随意運動が出ることがあります。
本人が気づいていないこともあるため、家族からの情報も重要です。
高プロラクチン血症をどう見る?
- 月経不順・無月経
- 乳汁分泌
- 性欲低下
- 勃起・射精障害
- 不妊
長期的には骨代謝への影響も問題になる可能性があります。
リスペリドン・パリペリドンを使っている患者で、こうした症状が出ていないか確認します。
体重・血糖・脂質
SDAはMARTA系より代謝系副作用が少ないと一括りにされることがありますが、体重増加・高血糖・脂質異常はどの抗精神病薬でも確認します。
- 体重・BMI
- 血糖・HbA1c
- 脂質
- 血圧
起立性低血圧
α1受容体遮断作用の影響で、立ちくらみ・ふらつきが出ることがあります。
高齢者、降圧薬併用、脱水時では転倒リスクを確認します。
眠気・鎮静
薬剤によって程度は異なりますが、眠気・鎮静が服薬継続の負担になることがあります。
「眠いですか?」だけでなく、仕事中に眠る、朝起きられない、転倒したなど生活への影響を確認します。
悪性症候群
抗精神病薬ではまれに悪性症候群が起こります。高熱、筋強剛、意識障害、発汗、頻脈、血圧変動などがあれば緊急評価が必要です。
QT延長
抗精神病薬ではQT延長にも注意します。心疾患、低K血症、他のQT延長薬併用などがある患者ではリスクが高まります。
リスペリドンとパリペリドンの違い
| 項目 | リスペリドン | パリペリドン |
|---|---|---|
| 関係 | 親化合物 | 主要活性代謝物 |
| 代謝・排泄 | CYP2D6等が関与 | 腎排泄主体 |
| 経口剤 | 複数剤形 | 徐放錠 |
| LAI | あり | あり |
| プロラクチン | 上昇に注意 | 上昇に注意 |
どんな患者でLAIを検討する?
LAIは飲み忘れが多い患者だけでなく、毎日の服薬負担を減らしたい患者にも選択肢です。
- 飲み忘れによる再発を繰り返す
- 毎日の内服を負担に感じる
- 患者本人が希望する
- 治療継続を安定させたい
注射への抵抗感や通院負担、副作用が出たときにすぐ中止できない点も含めて説明します。
SDA・DPA・MARTAの違い
| 呼び方 | 代表例 | 薬理のイメージ | 実務上の特徴 |
|---|---|---|---|
| SDA | リスペリドン等 | D2+5-HT2A遮断 | EPS・プロラクチンを薬剤ごとに確認 |
| DPA | アリピプラゾール、ブレクスピプラゾール | D2部分作動 | アカシジア・不眠などに注意 |
| MARTA | オランザピン、クエチアピン | 多受容体作用 | 鎮静・体重・代謝異常に注意 |
この分類は学習には便利ですが、現在の薬物治療ではサブクラス名だけで薬剤を選びません。
ラツーダ・シクレスト・レキサルティはどう扱う?
近年の抗精神病薬は複数の受容体作用を持ち、古典的な「SDA/DPA/MARTA」だけでは説明しきれません。
ラツーダはD2・5-HT2A遮断に加え5-HT7作用、シクレストは多受容体作用、レキサルティはD2部分作動作用を持ちます。
分類よりも、食事条件・剤形・相互作用・副作用など、実際の処方監査に直結する特徴を優先して覚えます。
症例1|若年男性・リスペリドン開始後に性機能低下
統合失調症の症状は改善している一方、性欲低下や勃起障害が出ているケースです。
服薬継続に影響しやすい副作用なので、プロラクチン関連症状を疑い、処方医へ共有します。
症例2|高齢者・パリペリドン継続中に腎機能低下
長年同じ用量でも、加齢や腎疾患で腎機能が低下すると曝露量が増える可能性があります。
「いつもの処方」でもCrCl・eGFRなどを確認し、用量が適切か見直します。
症例3|ブロナンセリン中に抗真菌薬追加
ブロナンセリンはCYP3A4相互作用が重要です。他科からアゾール系抗真菌薬などが追加された場合は、併用可否を確認します。
症例4|服薬忘れで再発を繰り返す
毎日の内服が安定しない場合、リスペリドン・パリペリドンのLAIが治療選択肢になります。
ただし、本人の希望を確認し、注射のメリット・デメリットを共有します。
症例5|「不安で落ち着かない」
抗精神病薬開始後の「不安」はアカシジアの可能性があります。
心理的な不安だけでなく、脚を動かしたい、座っていられないといった身体的な運動衝動がないか確認します。
高プロラクチン血症は「数値」だけでなく症状を見る
リスペリドン・パリペリドンでは、プロラクチン値が上がることがあります。数値が高いだけでなく、患者本人にどんな症状が出ているかが重要です。
- 月経不順・無月経
- 乳汁分泌
- 乳房の張り
- 性欲低下
- 勃起・射精障害
- 不妊への不安
こうした副作用は治療継続に直結します。患者が自己中断する前に相談できるよう、初回から「言いにくい副作用も相談してよい」と伝えておきます。
長期の高プロラクチンでは骨への影響も意識
長期間の高プロラクチン血症では、性腺機能低下を介して骨量への影響が問題になる可能性があります。
若年者でも長期治療が予定される場合は、月経・性機能の変化を漫然と放置しないことが大切です。
腎機能低下で特に注意したいパリペリドン
パリペリドンは腎排泄の割合が高いため、腎機能低下時には用量調整が必要です。
高齢者や慢性腎臓病患者では、数年前と同じ用量が現在も適正とは限りません。
薬局ではeGFRだけでなく、可能なら処方設計に使われるクレアチニンクリアランスも意識し、腎機能低下が進んでいないか確認します。
「インヴェガを割って飲む」は避ける
インヴェガ錠は徐放性製剤です。噛む、砕く、割ると製剤設計が崩れるため、原則としてそのまま服用します。
錠剤が大きくて飲みにくい患者では、自己分割を勧めず、別規格・剤形・薬剤変更を含めて相談します。
便に殻のようなものが出る理由
徐放性製剤では、有効成分が放出された後の外殻様のものが便中に見えることがあります。
患者が「薬が効かず、そのまま出てしまった」と心配することがありますが、製剤設計上起こり得る現象です。
CYP3A4相互作用|ペロスピロン・ブロナンセリン
ペロスピロンとブロナンセリンではCYP3A4が重要です。薬局で問題になりやすいのは、精神科以外から短期で追加される薬です。
- アゾール系抗真菌薬
- マクロライド系抗菌薬
- 抗てんかん薬
- 抗結核薬
- 一部の抗ウイルス薬
具体的な併用禁忌・併用注意は薬剤ごとの現行電子添文で確認します。
他院処方が一番の見落としポイント
精神科処方だけ見れば問題がなくても、耳鼻科や皮膚科から抗菌薬・抗真菌薬が追加されていることがあります。
相互作用リスクのあるSDAを使っている患者では、お薬手帳・マイナポータル等で他科処方まで確認できると安全性が上がります。
ブロナンセリン経口剤とテープは同じように考えてよい?
同じ有効成分ですが、経口剤と貼付剤では投与経路・薬物動態・使用方法が異なります。
経口剤からテープへ切り替える場合は、自己判断で同じ「mg数」に置き換えるのではなく、承認用量と処方医の切替計画に従います。
ロナセンテープの貼付部位
貼付剤では、皮膚状態と貼付部位管理が重要です。毎回同じ場所へ貼り続けると皮膚トラブルが起こりやすくなるため、貼付部位をずらします。
剥がれ、紅斑、そう痒、かぶれがないか確認します。
テープを貼ったまま入浴できる?
貼付剤では、入浴・発汗・衣類との摩擦で剥がれやすくなることがあります。製剤の使用方法に従い、剥がれやすい場所を避けます。
貼付部位に強い皮膚症状が出た場合は我慢して同じ場所へ貼り続けません。
LAI導入で確認すること
リスペリドン・パリペリドンのLAIを検討するときは、単に「飲み忘れが多いから」だけで決めません。
- 本人が注射を希望するか
- 通院間隔が生活に合うか
- 過去の経口薬で忍容性が確認できているか
- 副作用が出た場合の対応を理解しているか
- 注射部位の負担を許容できるか
患者の希望と治療継続のしやすさを合わせて考えます。
LAIにしたら副作用はなくなる?
いいえ。投与経路が変わっても、抗精神病薬としての副作用は残ります。
プロラクチン上昇、EPS、体重・代謝異常などを継続的に確認します。
アカシジアを「不安」と片付けない
抗精神病薬開始・増量後に「落ち着かない」「不安になった」と訴える場合、アカシジアが隠れていることがあります。
「じっとしているのがつらいですか?」「脚を動かすと楽ですか?」と具体的に聞きます。
薬剤性パーキンソニズムを見つける質問
- 歩幅が小さくなった
- 動作が遅くなった
- 手が震える
- 表情が乏しくなった
- 着替え・食事に時間がかかる
陰性症状や加齢と誤認されることがあるため、開始・増量との時間関係を確認します。
遅発性ジスキネジアの定期観察
口・舌・顎・指・足の反復運動を確認します。
本人が自覚していなくても、家族が「最近口を動かす」と気づくことがあります。
体重が増えていなくても血糖・脂質を見る
体重がほとんど変わらなくても、血糖・脂質異常が起こる可能性があります。
「太っていないから大丈夫」ではなく、採血結果も含めて長期モニタリングします。
高齢者では転倒・嚥下・せん妄も見る
高齢者では、起立性低血圧・眠気・EPSが転倒やADL低下につながります。
嚥下機能が低下している患者では、鎮静やパーキンソニズムが食事摂取に影響していないか確認します。
「副作用対策薬」が増えすぎていないか
抗精神病薬によるEPSに対して抗コリン薬、眠気に対して刺激的な対策、便秘に下剤など、対症療法薬が増えている場合は原因薬の見直しも必要です。
副作用を別の薬で隠し続けるより、抗精神病薬の用量・種類を再評価できないか処方医へ情報提供します。
切り替え時に注意すること
抗精神病薬の切り替えでは、新薬の副作用だけでなく、旧薬を減らしたことによる不眠・不安・再燃にも注意します。
クロスタイトレーションの方法は薬剤・病状で異なり、薬局から自己流の切替を指示するものではありません。
症例6|リスペリドンで無月経
若年女性でリスペリドン開始後に月経が止まった場合、高プロラクチン血症を考えます。
妊娠可能性など他の原因も確認しつつ、処方医へ症状を共有します。
症例7|インヴェガ服用中に腎機能が悪化
高齢患者で腎機能が低下してきた場合、パリペリドン曝露量が増える可能性があります。
EPSや眠気が増えていないかを確認し、用量の妥当性を見直します。
症例8|ロナセンテープで皮膚炎
貼付部位に紅斑・かゆみが出ている場合、毎回同じ場所へ貼っていないか確認します。
強い炎症、水疱、広範囲の症状がある場合は処方医へ相談します。
患者さんへの説明例
「月経の変化、乳汁が出る、性機能の変化などがあれば、副作用の可能性があるので相談してください。」
「落ち着かないだけでなく、脚を動かしたくて座っていられない感じが出たら教えてください。」
「毎日の服薬負担を減らす注射剤という選択肢もあります。希望があれば主治医に相談できます。」
処方医へ伝えるSBAR例
S:リスペリドン服用中で無月経が続いています。
B:開始後3か月で月経停止。乳汁分泌はありません。
A:高プロラクチン血症を疑います。
R:プロラクチン測定および治療薬・用量の再評価をご検討ください。
定期モニタリング|何を繰り返し見る?
長期の抗精神病薬治療では、開始時だけでなく定期的な副作用評価が重要です。
- 体重・BMI
- 血糖・HbA1c
- 脂質
- 血圧
- EPS・アカシジア
- 遅発性ジスキネジア
- プロラクチン関連症状
- 服薬状況・治療継続の負担
検査頻度は患者背景や使用薬剤で異なりますが、「前回問題なかったから今後も不要」ではありません。
妊娠を希望している場合
妊娠を希望する患者や妊娠が判明した患者では、自己判断で抗精神病薬を中止しません。
精神症状の再燃も母体・胎児に影響する可能性があるため、精神科・産婦人科と連携して薬剤選択と継続可否を検討します。
授乳中は?
乳汁移行や乳児への影響は薬剤ごとに異なります。授乳を続けるか、薬剤を変更するかは個別判断です。
「SDAだから授乳可・不可」とクラスで一括りにしないことが重要です。
副作用がつらくても自己中断しない
眠気、性機能障害、アカシジア、体重増加などは服薬中断の大きな理由になります。
ただし急な自己中断は再発につながる可能性があります。患者が「もう飲みたくない」と話したときは、まず理由を聞き、用量・薬剤・剤形の調整余地を処方医と共有します。
薬を変える判断は「副作用がある=即変更」ではない
副作用の重症度、精神症状の安定性、過去の治療歴、患者の希望を合わせて判断します。
軽い副作用なら経過観察で済む場合もあれば、生活に大きく影響する副作用なら早めの調整が必要です。
患者本人の治療目標を確認する
幻覚・妄想が減ることだけでなく、仕事へ戻りたい、家族と生活したい、眠気を減らしたいなど、本人の目標を薬歴に残すと治療評価がしやすくなります。
家族からの情報も重要
抗精神病薬の副作用は、本人が気づきにくいことがあります。家族から「最近歩き方が遅い」「口をもぐもぐする」「日中ずっと眠っている」といった変化を聞くことで、EPSや遅発性ジスキネジア、過鎮静を早く拾えることがあります。
本人の同意とプライバシーに配慮しながら、必要に応じて家族・支援者の観察も治療評価に活用します。
服薬支援は“飲めたか”だけで終わらせない
飲み忘れの有無に加えて、「なぜ飲みにくいのか」を確認します。眠気、性機能障害、体重増加、服薬回数、剤形への不満など、理由によって支援方法は変わります。
経口薬の工夫で難しい場合は、LAIや貼付剤を含む別の選択肢があることを主治医と相談できます。
長期治療では、薬が効いていることと同じくらい「患者本人が続けられる治療か」が重要です。副作用や服薬負担が小さく、本人の生活目標に合っているかを定期的に確認すると、再発予防と治療継続の両方につながります。
薬剤ごとの特徴を薬歴で継続して比較すると、次回の処方変更時にも安全性を判断しやすくなります。
継続評価が重要です。
重要です。
薬局で使える30秒チェック
- 薬剤名と用量
- EPS・アカシジア
- プロラクチン関連症状
- 体重・血糖・脂質
- 眠気・ふらつき
- 腎機能(特にパリペリドン)
- CYP3A4相互作用(ペロスピロン・ブロナンセリン)
- 飲み忘れ・服薬負担
- LAIへの希望
薬歴に残したい項目
- 現在の症状と治療目標
- 抗精神病薬の効果
- アカシジア・振戦・筋固縮
- 口舌部の不随意運動
- プロラクチン関連症状
- 代謝指標
- 腎機能・肝機能
- 併用薬・相互作用
- 服薬できない理由
薬歴記載例
リスペリドン継続。 幻聴は減少。服薬忘れなし。 アカシジア・振戦なし。 性欲低下あり、乳汁分泌なし。プロラクチン関連副作用疑い。 体重変化軽度。次回採血予定。 副作用と治療継続の希望を主治医へ共有。
よくある質問
Q. SDAは第二世代抗精神病薬と同じ?
同じではありません。SDAは第二世代抗精神病薬の一部を説明する便宜的な分類です。
Q. SDAならEPSは出ない?
出ます。第一世代より少ない傾向はありますが、用量や薬剤によってアカシジア・薬剤性パーキンソニズムなどが問題になります。
Q. リスペリドンとパリペリドンはほぼ同じ?
薬理や副作用は近いですが、代謝・排泄、経口製剤の設計、LAI製剤などに違いがあります。特に腎機能はパリペリドンで重要です。
Q. プロラクチンが高いとどうなる?
無月経、乳汁分泌、性機能障害などが起こることがあります。長期的な影響も考えて評価します。
Q. SDAで体重増加は少ない?
薬剤差があります。SDAという分類だけで代謝リスクを判断せず、体重・血糖・脂質を定期的に確認します。
Q. LAIは飲み忘れる人だけ?
いいえ。本人が毎日の服薬負担を減らしたい場合なども選択肢です。

まとめ|SDAは「分類」より薬剤ごとの差を見る
- SDAはD2・5-HT2A遮断を中心とする便宜的な薬理分類
- リスペリドン・パリペリドンでは高プロラクチンに特に注意
- パリペリドンは腎機能が重要
- ペロスピロン・ブロナンセリンはCYP3A4相互作用を確認
- ブロナンセリンには貼付剤がある
- SDAでもEPS・アカシジア・遅発性ジスキネジアは起こる
- 体重・血糖・脂質は薬剤ごとにモニタリング
- LAIはアドヒアランスと患者希望を踏まえて選択
- 2026年の実務では「SDAだから」ではなく個別薬剤で考える


参考文献・一次情報
- 日本神経精神薬理学会|統合失調症薬物治療ガイドライン2022(2025年12月5日改訂)
- PMDA|リスパダール錠・細粒
- PMDA|インヴェガ錠
- PMDA|ルーラン錠
- PMDA|ロナセン錠・散
- PMDA|ロナセンテープ
※本記事は2026年10月6日時点で、現行ガイドラインおよびPMDA公開情報を確認して整理しています。個別の処方変更は主治医・薬剤師へ相談してください。



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