口腔内細菌とプラークと腸内細菌

口腔ケア

皆様こんにちは

薬局薬剤師のゆずまるです

本編では口腔内の細菌について解説していきます

というのもお店で口腔ケアについて質問される機会が多かったのでまとめてみました

ここ数回腸内細菌の記事の記載を中心に行ってきましたが、口腔内細菌も関連性があると言われています

本記事では主に口腔内の細菌叢と腸内細菌との関わりについて記載していきたいと思います

口腔内細菌

口腔内には、約700種の細菌が存在し腸内フローラに匹敵するほどの常在細菌が生息していいます

特にプラーク(歯垢)中には球菌や桿菌など多くの細菌が生息しており、その種類も多岐にわたります

1g中のプラークには1000億以上の菌が生息しているといわれ、糞便1g当たりの細菌数より多いともいわれています

また、唾液中にも細菌は多く存在し、1mLあたり1~10億個検出されるといわれています、

口腔内の構成菌は歯周疾患の進行や歯の喪失および年齢によっても変化します

プラーク(歯垢)とは

デンタルプラーク(歯垢)は歯の表面に付着した細菌のかたまりのことです

歯の表面、歯と歯ぐきの境目、歯と歯の間などに付着している白いや黄色のネバネバしたかたまりのことを指します

プラークには口の中で繁殖したたくさんの種類の細菌が住み着いており、1g中に1000億個以上の細菌が生息しています

プラーク自体は、水には溶けにくく歯にしっかりと付着する性質のため、うがいなどでは簡単にはとれません

歯ブラシや歯間ブラシを用いて落とす必要があります

プラークが出来るまで

プラークが生成されるまでの流れを記載します

生成までの時間は目安です

生活習慣などで変化し、個人差があるため参考程度でご覧ください

プラーク〜歯石形成まで
  • 歯磨き後 2〜3分
    ペリクル付着

    ペリクルという唾液成分が歯の表面を覆うことで酸蝕からエナメル質を保護する

  • 約8時間以内
    プラーク形成初期

    ペリクルが好きな善玉菌(好気性)が歯を覆いプラークを形成。健全なプラークができる

  • 8〜48時間
    歯がザラザラし始める

    歯周病菌である悪玉菌(嫌気性)が善玉菌の上に付着し、歯の全体を覆ってくる

    プラークが黄色くなり歯の表面もザラザラしてくる

  • 2〜3日
    バイオフィルム形成

    嫌気性菌が増え、ネバネバしたバイオフィルムをつくるため、歯磨きでも取れなくなる

    歯肉や血管が炎症し始める

  • 3日以降
    歯石形成

    唾液中のカルシウムやリンなどと結合し結晶化し歯石が出来る

歯磨きを毎日行うことでプラークを擦り落とす必要があります

特に磨き残しがあると気づかないうちに歯石まで進んでしまうなんてこともあるので注意が必要です

バイオフィルム

バイオフィルムは、微生物が固相表面に形成した集合体のことです

細菌や細菌が産生する菌体外の粘性多糖が固相表面に形成。その集合体をバイオフィルムといいます

水のあるところに作られることが多くぬるぬる、ぬめぬめしているのも特徴です

細菌が熱や乾燥、薬剤やヒトの免疫反応などの外的要因から身を守るためにバイオフィルムを作るといわれています

台所のシンクやお風呂場のぬめりは菌がバイオフィルム形成した状態と言われています

口腔内でも同様の現象が起こり得ます

歯石

歯石とは、プラークが唾液の中のカルシウムやリンと結びついて歯の間や歯ぐきの間で石灰化した硬いかたまりのことをいいます

歯石も歯周病の原因となります

歯石が存在するとプラークの停留を助長したり、口腔内の清掃がしにくくなるため注意が必要です

上の奥歯の外側や下の前歯の内側などは特に歯石がつきやすい場所です

口腔内の悪玉菌の増加は、虫歯や歯周病、口臭などの原因になるためより歯石にならないための対策が必要です

歯石になってしまうと自分では取り除くことが出来ないので、歯医者で特殊な専門の器具を用いて除去することになります

歯石になる前のプラークの段階で、正しいブラッシング方法や歯間ブラシなどのセルフケアによって、しっかり取り除くことが重要となります

プラークの種類

プラークは付着する場所によって歯肉縁上プラークと歯肉縁下プラークに分類されます

歯肉縁上プラークは、歯肉より上の歯の表面に付着する歯垢を指します

歯肉縁下プラークは、歯肉より下(歯周ポケット内)に溜まる歯垢を指します

歯肉縁下プラークは歯肉の下(歯周ポケット内)に隠れていますので、自分ではよく歯を磨いていたとしても気づかないで残ってしまうケースは良くあります

口腔内の細菌叢

口腔内関連の虫歯や歯周病は細菌感染が原因と言われています

主に歯や口腔粘膜に付着できる菌が口腔内で生き残ることができます

生息場所は主に歯周プラーク内に生息する。定着後はバイオフィルムを形成し増殖していく

特にプラーク形成菌は凝集性が強いため、異菌種間でも存在することができます

口腔内の細菌の中には生き残る力が強い菌株もいるため、食事と共に体内へ流入し、腸内でも生存することもあります

上記記載の歯肉縁上と歯肉縁下のプラークによって菌の種類も異なると言われているため簡単にまとめました

歯肉縁上プラーク菌

プラーク形成初期は歯の表面から徐々に菌が付着します

そのため酸素が好きな好気性菌が多いですが、徐々に嫌気性菌が増えていきます

歯肉縁上プラークは通性嫌気性菌(酸素あっても無くても大丈夫)が多い

特にグラム陽性レンサ球菌を中心にグラム陽性桿菌が共存します

以下に代表な菌を載せます

歯肉縁上プラーク菌
  • ストレプトコッカス属(Streptococcus)
  • ノカルディア属(Nocardia)
  • アクチノマイセス属(Actinomyces)
  • コリネバクテリウム属(Corynebacterium)
  • フソバクテリウム属(Fusobacterium)
  • ナイセリア属(Neisseria)

代表的な菌〜ミュータンス菌〜

ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)は、グラム陽性で通性嫌気性のレンサ球菌です

ヒトの口腔内などに存在し虫歯(う蝕)の原因菌のひとつと言われています

ミュータンス菌は、砂糖をエサにしてネバネバした不溶性の「グルカン」という物質をつくり歯の表面に付着します

グルカンは粘着性が強いので、多くの細菌がくっつき歯垢をつくります

歯の表面に強固な歯垢が形成されると、砂糖をエサにして乳酸発酵を行うようになります

歯垢の中に乳酸が蓄積されると歯の表面のカルシウムが溶け出し虫歯ができます

歯肉縁下プラーク

歯肉縁下プラークは歯肉縁上プラークと同様に通性嫌気性グラム陽性レンサ球菌や桿菌が検出されます

それに加えて偏性嫌気性(酸素ない状態を好む)グラム陰性桿菌も生息するのが特徴です

歯肉縁下プラーク菌
  • ポルフィロモナス属(Porphyromonas)
  • プレボテラ属(Prevotella)
  • アクチノマイセス属(Actinomyces)
  • フソバクテリウム属(Fusobacterium)
  • バクテロイデス属(Bacteroides)
  • トレポネーマ属(Treponema)
  • アグレゲイティバクター属(Aggregatibacter)
  • タンネレラ属(Tannerella)

歯肉縁下プラークでは歯周病の発症に関与する嫌気性グラム陰性菌が増加します

歯肉縁下プラークにはプロフィロモナス・ジンジバリスやプレボテラ・インターメディアやスピロヘータが多数を占めます

代表的な歯肉縁下菌〜ジンジバリス〜

Porphyromonas gingivalis(ジンジバリス)は非運動性のグラム陰性の偏性嫌気性で病原性の桿菌である

歯周ポケットの中は嫌気度が高い(酸素が少ない)ため偏性嫌気性菌が生息しやすくなります

本菌は歯周病の原因菌の代表格のひとつと考えられプロテアーゼ(たんぱく質分解酵素)とコラゲナーゼ(コラーゲン分解酵素)活性をもつのが特徴です

たんぱく質の分解産物を栄養源としたり、ヒトのコラーゲン組織等を分解するなど歯周組織の破壊に関わると言われています

また、イオウ化合物のメチルメルカプタン(CH3SH)や硫化水素(H2S)などの特有の臭いのガスを発生させるため、口臭のもとにもなっています

義歯に付きやすい菌〜カンジダ菌〜

舌や口蓋にはカンジダ菌(Candida albicans)が常在しています

カンジダ菌は義歯の材料であるレジン(合成樹脂)へよく付着するため、義歯中から多く検出します

そのため義歯内面のぬめりはカンジダ菌が原因である場合が多いです

カンジダ菌は義歯性の口内炎の発症を引き起こしたり、その他にもミュータンス菌と共に増減するため歯垢形成にも影響すると言われています

特にカンジダは日和見感染の真菌症の原因菌となることが多いため、嚥下機能の低下した患者では誤嚥性肺炎の主因菌の一つとして考えられます

口腔内細菌と腸内細菌の関係性

口腔細菌は唾液とともに毎日大量に腸管に流入しますが、胃を通過するときの胃酸によって殺菌されるので基本的には腸内まで到着しません

たとえ口腔細菌が胃内を安全に通過したとしても、腸管上皮細胞よって分泌される抗菌タンパク質によって小腸の上皮細胞と細菌との接触を妨ぎます

そのため唾液の流入で腸管に影響を与えることは基本的にはないと考えられています

しかしながら、腸管の免疫力が落ちてくると口腔内細菌が腸内で増えやすい環境になると言われています

唾液から流入〜歯周病菌〜

口腔内でディスバイオーシスを起こすと、毎日唾液を通じて有害菌を飲み込むことになります

そのことから腸内細菌叢も乱れる原因になり様々な影響をヒトの体へ引き起こすことになります

特に歯周病菌といわれているジンジバリス菌は一度腸内へと流入すると腸のバリア機能を低下させることもあり、ヒトの体にとって有害作用が多く注意が必要な菌です

人は1日1〜1.5Lもの唾液を産生して飲み込んでいます

ジンジバリス菌は口腔内細菌の割合では約1%にも満たないと言われていますが、歯周病患者の唾液1mL中にはジンジバリス菌が約100万ほど含まれると言われています

1日換算では、歯周病患者はジンジバリス菌のみで約100億

口腔細菌全体で考えると1〜10兆ほどの細菌を毎日飲み込んでいる計算になります

一つの歯周病菌だけで約100億毎日飲んでると仮定すると、ちょっと怖いですよね

じゃあ頑張ってプロバイオティクスで乳酸菌をとろう!と頑張ったとして

有名なヤクルトでも1本に150億

乳酸菌の高含有製品、ヤクルト1000でも1000億です

結構大変ですよね…

まとめ

今回は口腔内細菌と腸内細菌の関わりについて記載しました

普段コマーシャルなどで見かける歯の話なので馴染みがあったと思います

毎日の口腔ケアが大切なんだなーくらい感じていただけたら幸いです

別記事で虫歯の流れや歯周病についてなど記載する予定なので今後の続記事もお待ち頂けると幸いです

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他にもたくさん記事を書いていく予定ですのでよろしければご覧いただけてたら幸いです★

参考文献

口腔常在微生物叢の構成と健康との関連 竹下 徹、山下 喜久 九州大学大学院 歯学研究院口腔保健推進学講座 口腔予防医学分野

「口腔内細菌の全身疾患への関わり」 日本大学歯学部 細菌学教授 落合 邦康

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