


この記事の結論
- コントミン(クロルプロマジン)は第一世代抗精神病薬で、国内では1950年代から使用されています。
- 統合失調症だけでなく、躁病、神経症における不安・緊張・抑うつ、悪心・嘔吐、吃逆、破傷風に伴う痙攣、麻酔前投薬など幅広い適応があります。
- 経口では通常成人1日30~100mgを分割投与、精神科領域では通常1日50~450mgを分割投与します。
- 強い鎮静、起立性低血圧、抗コリン作用、EPS、遅発性ジスキネジア、QT延長、悪性症候群などに注意します。
- アドレナリンは原則併用禁忌ですが、アナフィラキシー救急治療や歯科の浸潤・伝達麻酔では例外があります。
- 中枢神経抑制薬、降圧薬、抗コリン作用を持つ薬、アルコール、メトクロプラミド・ドンペリドン、リチウムなどは併用時に注意します。
- 「古い薬だから悪い」「非定型より必ず劣る」と単純化せず、適応・患者背景・副作用リスクで評価することが大切です。

- コントミンとは?
- 2026年でも「現役」なの?
- コントミンの適応
- 用法・用量
- なぜ今でも使われることがある?
- 「鎮静が強いから使う」と単純化しない
- 作用機序|D2遮断だけではない
- 第一世代抗精神病薬としての位置づけ
- クロルプロマジン換算とは?
- 起立性低血圧|開始時に特に注意
- 眠気と運転
- 抗コリン作用|口渇・便秘・排尿困難
- 麻痺性イレウスに注意
- EPS|第一世代だから特に意識する
- 高プロラクチン血症
- QT延長・心室頻拍・突然死
- 悪性症候群
- 血液障害
- 静脈血栓塞栓症
- 体温調節に注意
- 制吐作用が「病気を隠す」ことがある
- 併用禁忌|アドレナリン
- 中枢神経抑制薬との併用
- アルコール
- 降圧薬との併用
- メトクロプラミド・ドンペリドン
- リチウム
- レボドパなどドパミン作動薬
- 吃逆(しゃっくり)でコントミンが出たとき
- 悪心・嘔吐で使うとき
- 筋注はどんな位置づけ?
- 高齢者では特に慎重に
- 妊娠・授乳
- 小児
- 「古い薬だから変えた方がいい?」
- 薬局でよくあるケース
- 長期投与で定期的に見たい項目
- 処方が長年同じでも再評価する理由
- 「眠気がある=よく効いている」ではない
- 高齢者での抗コリン負荷
- 熱中症シーズンは特に注意
- 自己判断で急に中止しない
- 服薬継続が難しい理由を具体化する
- 抗精神病薬の多剤併用を見たら
- CP換算は「安全な上限値」ではない
- 他科処方を横断して見る
- 飲み忘れたら?
- 処方変更後に確認すること
- 家族からの情報が役立つ
- 治療目標を薬歴に残す
- 疑義照会を考える具体例
- 服用時間はどう考える?
- 高齢者では「転倒していないか」を毎回聞く
- 救急受診を考える症状
- 「効いているから続ける」と「副作用がつらい」を両方見る
- 薬局で使える30秒チェック
- 薬歴に残したい項目
- 患者さんへの説明例
- よくある質問
- まとめ|「古い薬」ではなく、適応とリスクを見て使う
- 参考文献・一次情報
コントミンとは?
コントミンは一般名クロルプロマジン塩酸塩の第一世代抗精神病薬です。フェノチアジン系に分類され、1950年代から長く使われてきました。
現在の国内経口製剤には12.5mg、25mg、50mg、100mgの糖衣錠があり、筋注製剤もあります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 一般名 | クロルプロマジン塩酸塩 |
| 商品名 | コントミン |
| 分類 | 第一世代抗精神病薬/フェノチアジン系 |
| 経口規格 | 12.5mg・25mg・50mg・100mg |
| 主作用 | ドパミンD2受容体遮断ほか |
2026年でも「現役」なの?
はい。使用頻度は新しい第二世代抗精神病薬より少ない場面がありますが、2026年現在も国内で承認・流通している医薬品です。
ただし、統合失調症治療で「第一世代だから必ず選ぶ」「古い薬だから必ず避ける」という考え方ではなく、現在は各抗精神病薬の有効性、副作用、患者の過去の反応、希望、服薬継続性などを考慮して個別に選択します。
コントミンの適応
現行の経口添付文書では次の効能・効果が記載されています。
- 統合失調症
- 躁病
- 神経症における不安・緊張・抑うつ
- 悪心・嘔吐
- 吃逆
- 破傷風に伴う痙攣
- 麻酔前投薬
- 人工冬眠
- 鎮静・催眠
- 鎮痛剤の効力増強


用法・用量
クロルプロマジン塩酸塩として、通常成人では1日30~100mgを分割経口投与します。
精神科領域では通常1日50~450mgを分割経口投与し、年齢・症状により適宜増減します。
「100mgを超えたら過量」ではありません。精神科領域では承認用量の幅が大きいため、適応・患者背景・副作用・処方意図を確認して判断します。
なぜ今でも使われることがある?
大きな理由は、承認適応が広く、鎮静作用を含む多受容体作用があることです。
統合失調症だけでなく、吃逆や悪心・嘔吐など精神科以外の適応でも使われるため、現在も完全に置き換えられた薬ではありません。
また、長年使用して安定している患者では、変更による精神症状再燃や新たな副作用の可能性も考慮して、継続されることがあります。
「鎮静が強いから使う」と単純化しない
クロルプロマジンはヒスタミンH1受容体、α1受容体、ムスカリン受容体などにも作用し、鎮静、血圧低下、抗コリン作用を生じやすい薬です。
鎮静が臨床上役立つ場面がある一方、日中の活動性低下、転倒、嚥下機能低下につながることもあります。したがって、鎮静作用は「メリット」と「副作用」の両面で評価します。
作用機序|D2遮断だけではない
抗精神病作用の中心はドパミンD2受容体遮断です。
一方でクロルプロマジンは複数の受容体にも作用するため、次のような作用・副作用が生じます。
| 受容体・作用 | 期待される作用/主な副作用 |
|---|---|
| D2遮断 | 抗精神病作用、制吐作用/EPS、高プロラクチン |
| H1遮断 | 鎮静/眠気、体重増加 |
| α1遮断 | 鎮静への寄与/起立性低血圧、ふらつき |
| ムスカリン遮断 | -/口渇、便秘、排尿困難、眼圧上昇など |
第一世代抗精神病薬としての位置づけ
現在の統合失調症治療では、薬の「世代」だけで選択を決めるのではなく、個々の薬剤の効果と副作用、患者の価値観を踏まえます。
第一世代ではEPS・遅発性ジスキネジアが課題になりやすい一方、第二世代でもEPSや代謝異常などが起こります。
クロルプロマジン換算とは?
抗精神病薬の用量比較で「クロルプロマジン換算(CP換算)」という言葉が使われます。
これは複数の抗精神病薬の概算的な用量比較に用いる指標で、クロルプロマジンを基準に換算する考え方です。
ただし換算値だけで薬を機械的に置き換えるものではありません。薬剤ごとの半減期、受容体作用、剤形、副作用は異なるため、処方変更は患者ごとに判断します。
起立性低血圧|開始時に特に注意
添付文書では治療初期に起立性低血圧が現れることがあるとされています。
- 立ち上がると目の前が暗くなる
- ふらつく
- 夜間トイレで転びそうになる
- 朝起き上がれない
高齢者、脱水、降圧薬併用では転倒リスクがさらに高まります。
眠気と運転
眠気、注意力・集中力・反射運動能力低下が起こることがあるため、添付文書では自動車運転など危険を伴う機械操作に従事させないよう注意されています。
抗コリン作用|口渇・便秘・排尿困難
クロルプロマジンはムスカリン受容体遮断作用を持ちます。
- 口渇
- 便秘
- 排尿困難
- 頻脈
- 眼圧上昇
- 認知機能への影響
抗コリン薬、三環系抗うつ薬、第一世代抗ヒスタミン薬などが重なると副作用が増強する可能性があります。
麻痺性イレウスに注意
著しい便秘、腹部膨満、悪心・嘔吐、腸管運動低下がある場合は麻痺性イレウスを疑います。
「便秘はいつもの副作用」と放置せず、排便日数、腹部症状、食事摂取を確認します。
EPS|第一世代だから特に意識する
錐体外路症状(EPS)には、急性ジストニア、アカシジア、薬剤性パーキンソニズム、遅発性ジスキネジアなどがあります。
アカシジア
「不安」「落ち着かない」と表現されることがあります。脚を動かしたい、座っていられない、歩き回ると少し楽になるといった症状がヒントです。
急性ジストニア
首がねじれる、眼球が上転する、舌が出るなどの症状です。開始・増量後の早期に起こることがあります。
薬剤性パーキンソニズム
動作緩慢、筋固縮、振戦、小刻み歩行などがみられます。陰性症状や加齢による変化と区別しにくいことがあります。
遅発性ジスキネジア
長期投与後に口・舌・顔面・四肢の不随意運動が起こることがあります。
高プロラクチン血症
D2受容体遮断によりプロラクチンが上昇することがあります。
- 月経不順・無月経
- 乳汁分泌
- 性欲低下
- 性機能障害
長期治療では患者が相談しにくい副作用にも配慮します。
QT延長・心室頻拍・突然死
重大な副作用としてQT延長、心室頻拍(Torsade de pointesを含む)、突然死が記載されています。
大量投与、心疾患、徐脈、低K血症・低Mg血症、他のQT延長薬併用などでは特に注意します。
失神、強い動悸、原因不明の意識消失がある場合は速やかに医療機関へ相談します。
悪性症候群
高熱、強い筋強剛、無動緘黙、意識障害、頻脈、血圧変動、発汗などが出た場合は悪性症候群を疑います。
脱水・身体的疲弊がある患者ではリスクが高まりやすいとされています。
次回受診を待たず、速やかに医療機関へ相談します。
血液障害
再生不良性貧血、溶血性貧血、無顆粒球症、白血球減少などが重大な副作用として記載されています。
発熱、咽頭痛、感染を繰り返すなどの症状がある場合は血液検査が必要になることがあります。
静脈血栓塞栓症
不動状態、長期臥床、肥満、脱水などでは、肺塞栓症・深部静脈血栓症に注意します。
- 片脚だけ急に腫れる・痛む
- 突然の息苦しさ
- 胸痛
これらがあれば速やかな受診が必要です。
体温調節に注意
クロルプロマジンは体温調節中枢へ影響するため、高温環境では体温調節がうまくいかなくなる可能性があります。
夏季、脱水、長時間の屋外作業では熱中症リスクにも注意します。
制吐作用が「病気を隠す」ことがある
クロルプロマジンには制吐作用があるため、薬物中毒、腸閉塞、脳腫瘍などによる嘔吐症状を不顕性化する可能性があります。
「吐かなくなった=原因が解決した」とは限らないため、強い腹痛、意識変化、頭痛などがある場合は原因疾患の評価を優先します。
併用禁忌|アドレナリン
アドレナリンは原則として併用禁忌です。クロルプロマジンのα遮断作用により、アドレナリンのβ2作用が相対的に優位になり、重篤な血圧低下を起こす可能性があります。
ただし、アナフィラキシーの救急治療、または歯科領域の浸潤麻酔・伝達麻酔に用いる場合は禁忌の例外です。
中枢神経抑制薬との併用
睡眠薬、鎮静薬、麻酔薬などと併用すると、中枢神経抑制、眠気、血圧低下が増強する可能性があります。
高齢者や呼吸器疾患がある患者では特に注意します。
アルコール
飲酒により眠気や精神運動機能低下が増強する可能性があります。
服薬中の飲酒は自己判断せず、処方医・薬剤師へ相談します。
降圧薬との併用
クロルプロマジン自体に血圧低下作用があるため、降圧薬と重なると起立性低血圧・転倒リスクが高まります。
メトクロプラミド・ドンペリドン
いずれもドパミン受容体遮断作用があり、クロルプロマジンとの併用で内分泌機能異常やEPSが増強する可能性があります。
制吐薬が複数重なっている場合は、処方意図と副作用を確認します。
リチウム
リチウムとの併用では、心電図変化、重いEPS、持続性ジスキネジア、悪性症候群様症状、脳障害などに注意が必要です。
精神科では併用されることがあるため、神経症状・意識状態の変化を丁寧に確認します。
レボドパなどドパミン作動薬
作用が拮抗し、互いの効果を弱める可能性があります。
パーキンソン病治療中の患者で抗精神病薬が必要になった場合は、薬剤選択を慎重に行います。
吃逆(しゃっくり)でコントミンが出たとき
クロルプロマジンは添付文書上「吃逆」に適応があります。
一方、吃逆の原因は消化器疾患、中枢神経疾患、薬剤など多岐にわたります。長引く吃逆では原因検索も重要です。
高齢者では鎮静・起立性低血圧・抗コリン作用が負担になる可能性があるため、症状改善と安全性を両方確認します。
悪心・嘔吐で使うとき
制吐作用を利用して処方されることがありますが、眠気・血圧低下・EPSのリスクを伴います。
他の制吐薬との重複、原因疾患、投与期間を確認します。
筋注はどんな位置づけ?
筋注製剤の添付文書では、経口投与が困難な場合、緊急の場合、または経口投与で効果不十分と考えられる場合に使用することが示されています。
経口投与が可能となり、効果が十分と判断された場合は、漫然と注射を続けるのではなく経口へ切り替えることが基本です。
高齢者では特に慎重に
高齢者では起立性低血圧、EPS、脱力、運動失調、排泄障害などが起こりやすいとされています。
転倒、嚥下、便秘、排尿、認知機能、日中の活動性まで確認します。
妊娠・授乳
妊娠中は治療上やむを得ない場合を除き慎重に判断します。妊娠後期に抗精神病薬が使用された場合、新生児に哺乳障害、傾眠、呼吸障害、振戦、筋緊張低下、易刺激性などの離脱症状・EPSが報告されています。
授乳中および投与後一定期間は授乳を避けることが望ましいとされています。
小児
幼児・小児ではEPS、特にジスキネジアが起こりやすいとされています。小児等を対象とした臨床試験は実施されていません。
「古い薬だから変えた方がいい?」
薬の新旧だけで変更を決めません。
長年安定していて副作用が許容範囲なら、変更による再燃や新規副作用のリスクもあります。一方、強い鎮静、転倒、抗コリン負荷、EPS、QT延長などが問題になっていれば、治療見直しの余地があります。
薬局でよくあるケース
ケース1:高齢者でふらつき
コントミン開始・増量後なら起立性低血圧や鎮静を疑います。降圧薬や睡眠薬も含めて確認します。
ケース2:吃逆で25mg処方
精神科薬ではなく吃逆目的の可能性があります。適応はありますが、原因疾患、鎮静、血圧低下などを確認します。
ケース3:便秘が5日続いている
抗コリン作用による便秘だけでなく、麻痺性イレウスの前兆がないか、腹部膨満・嘔吐・食欲低下を確認します。
ケース4:メトクロプラミドが追加
ドパミン遮断作用が重なり、EPSや内分泌異常が増える可能性があります。
ケース5:高熱と筋強剛
悪性症候群を疑う緊急ケースです。次回受診を待たず医療機関へつなぎます。
ケース6:長期使用中に口をもぐもぐする
遅発性ジスキネジアを疑います。AIMSなどでの評価や治療見直しにつなげます。
長期投与で定期的に見たい項目
長期でコントミンを使っている患者では、処方が変わっていなくても副作用の評価は続けます。
- 日中の眠気・活動性
- 立ちくらみ・転倒
- 便秘・排尿障害
- アカシジア・振戦・筋固縮
- 口・舌・顎の不随意運動
- 体重・血糖・脂質
- 月経・乳汁分泌・性機能などプロラクチン関連症状
- 失神・動悸などQT延長を疑う症状
「何年も同じ薬だから問題ない」ではなく、年齢、併用薬、脱水、腎・肝機能、生活環境の変化によって安全性は変わります。
処方が長年同じでも再評価する理由
若い頃は問題なく使えていた用量でも、高齢になると起立性低血圧、抗コリン作用、転倒、嚥下機能低下などが目立つことがあります。
新たに降圧薬、睡眠薬、抗ヒスタミン薬などが追加されると、副作用が重なって表面化することもあります。
「眠気がある=よく効いている」ではない
鎮静が強いと、患者・家族が「薬がよく効いている」と感じることがあります。しかし、眠っている時間が増えただけで生活機能が落ちている場合は、治療全体として再評価が必要です。
本人が起きて活動できる時間、会話、食事、仕事・家事への影響まで確認します。
高齢者での抗コリン負荷
コントミン単独だけでなく、抗コリン薬、第一世代抗ヒスタミン薬、三環系抗うつ薬、過活動膀胱治療薬などが重なると、口渇・便秘・排尿障害・認知機能への影響が増える可能性があります。
副作用対策として薬が追加され続けている場合は、原因薬の見直しができないか検討します。
熱中症シーズンは特に注意
クロルプロマジンは体温調節に影響し、さらに鎮静や口渇が重なると水分摂取が減ることがあります。
夏季は次の点を確認します。
- 十分に水分を取れているか
- 長時間屋外にいないか
- 冷房を使えているか
- 発熱・意識変化・強い倦怠感がないか
高温環境で体調が悪化した場合は、薬の影響だけと決めつけず熱中症を含めて評価します。
自己判断で急に中止しない
眠気や便秘がつらくても、統合失調症などの治療で長期使用している患者が自己判断で急に中止すると、精神症状が再燃する可能性があります。
「やめたい」と感じた理由を聞き、用量調整、薬剤変更、副作用対策などを処方医と相談します。
服薬継続が難しい理由を具体化する
飲み忘れがある場合は、単に「ちゃんと飲んでください」で終わらせません。
- 眠気が嫌で飲みたくない
- 便秘がつらい
- 服薬回数が多い
- 病識が乏しい
- 錠数が多い
- 生活リズムと服薬時間が合わない
原因によって支援方法は変わります。
抗精神病薬の多剤併用を見たら
コントミンに別の抗精神病薬が追加されていることがあります。急性期の一時的な併用、切り替え途中、長期多剤併用など背景はさまざまです。
多剤併用では、EPS、鎮静、QT延長、起立性低血圧、抗コリン負荷などが重なる可能性があるため、処方意図と継続必要性を確認します。
CP換算は「安全な上限値」ではない
クロルプロマジン換算は抗精神病薬全体の用量負荷を概算するために便利ですが、換算値が同じなら副作用も同じになるわけではありません。
たとえば、同じCP換算でも鎮静、代謝異常、プロラクチン、EPSなどの出方は薬剤ごとに異なります。
CP換算は処方全体を俯瞰する補助指標として使い、個々の薬の特性を必ず合わせて評価します。
他科処方を横断して見る
コントミン使用中に、別の医療機関からメトクロプラミド、睡眠薬、抗ヒスタミン薬、降圧薬などが追加されることがあります。
精神科処方だけ見て「いつもの薬」と判断せず、お薬手帳や電子的な薬剤情報で全処方を確認します。
飲み忘れたら?
2回分をまとめて服用しないことが基本です。次回服用までの時間や処方回数によって対応が異なるため、迷った場合は薬局へ相談します。
処方変更後に確認すること
増量後は眠気、起立性低血圧、EPS、便秘などが増えていないかを確認します。
減量・切り替え後は副作用改善だけでなく、不眠、不安、幻覚・妄想、興奮など原疾患の再燃がないかも評価します。
家族からの情報が役立つ
患者本人が眠気や不随意運動を自覚していないことがあります。
家族から「最近歩き方が遅い」「昼間ずっと寝ている」「口をもぐもぐする」といった変化を聞くことで、副作用を早く拾えることがあります。
治療目標を薬歴に残す
幻覚・妄想を抑えるだけでなく、眠れるようになりたい、外出したい、仕事へ戻りたい、家族と落ち着いて過ごしたいなど、患者本人の目標を共有します。
薬が症状を抑えていても、副作用で生活目標を妨げていれば治療の見直しが必要です。
疑義照会を考える具体例
例1:高齢者に高用量+降圧薬+睡眠薬
起立性低血圧・鎮静・転倒リスクが重なる可能性があります。処方意図、最近の転倒歴、血圧、眠気を確認して必要に応じて処方医へ情報提供します。
例2:コントミン+メトクロプラミド
D2遮断が重なり、EPSや内分泌異常のリスクが高まります。悪心・嘔吐の原因と、両剤を併用する必要性を確認します。
例3:便秘が強いのに抗コリン薬が追加
便秘・排尿障害・認知機能への影響が強まる可能性があります。EPS対策薬の必要性と、原因薬の見直し余地を確認します。
例4:失神歴がある患者にQT延長薬が追加
心電図異常のリスクを踏まえ、併用薬・電解質異常・心疾患歴を確認します。
服用時間はどう考える?
クロルプロマジンは分割投与されることが多く、眠気の出方や生活リズムに合わせて処方されています。
患者が自己判断で朝の分を夜へまとめる、眠いから昼を飛ばすといった変更をすると、効果や副作用が不安定になる可能性があります。処方どおりに服用し、時間調整を希望する場合は医師・薬剤師へ相談します。
高齢者では「転倒していないか」を毎回聞く
起立性低血圧・鎮静・EPSが重なると、転倒は重要なアウトカムになります。
「めまいはないですか?」だけでなく、「夜トイレへ行くときにつかまりますか?」「最近転びそうになりましたか?」と生活場面で聞くと拾いやすくなります。
救急受診を考える症状
次の症状は早急な医療評価が必要です。
- 高熱・強い筋こわばり・意識障害
- 失神・強い動悸
- 突然の息苦しさ・胸痛・片脚の腫れ
- 著しい便秘+腹部膨満+嘔吐
- 重い感染症状や原因不明の発熱
- けいれん・意識消失
「効いているから続ける」と「副作用がつらい」を両方見る
長期治療では、症状が安定していることだけでなく、その安定をどの程度の副作用負担で維持しているかを確認します。
強い眠気、転倒、便秘、排尿障害、EPSなどが生活を大きく制限しているなら、治療効果があっても見直しの価値があります。一方、長年安定している患者では、薬剤変更そのものが再燃リスクになることもあります。
薬剤師は「古い薬だから変更」「効いているから継続」と単純化せず、患者本人が何を一番困っているか、今の治療で何を守れているかを聞き、処方医へ共有します。
また、処方が長期間変わっていない患者でも、年齢・体重・併用薬・生活環境は少しずつ変化します。前回と同じ確認項目を繰り返すだけでなく、「前回から変わったことはありますか?」と聞くことで、新しい副作用や服薬上の問題を拾いやすくなります。
治療を続けるうえで「眠気を減らしたい」「外出できるようになりたい」など本人の希望も薬歴に残すと、効果と副作用のバランスを評価しやすくなります。
本人が続けられる治療かを、毎回の服薬指導で確認することも大切です。
継続的な確認が重要です。
大切です。
薬局で使える30秒チェック
- 何の適応で使っているか
- 用量・投与回数
- 眠気・日中活動への影響
- 立ちくらみ・転倒
- 便秘・排尿困難・口渇
- アカシジア・振戦・筋固縮
- 口舌部の不随意運動
- QTリスク・失神・動悸
- 中枢抑制薬・降圧薬・制吐薬・リチウムなどの併用
- 体温調節・脱水リスク
薬歴に残したい項目
- 適応
- 1日量
- 服薬後の鎮静
- 起立性低血圧・転倒
- EPS
- 便秘・排尿障害
- プロラクチン関連症状
- 相互作用薬
- 心疾患・QTリスク
- 患者本人が困っている副作用
薬歴記載例
コントミン25mg 1日2回、吃逆目的。 開始3日目で吃逆は軽減。 傾眠軽度、立ちくらみなし。 便秘悪化なし、排尿問題なし。 メトクロプラミド等D2遮断薬併用なし。 高齢のため転倒・鎮静を継続確認。
患者さんへの説明例
「眠気やふらつきが出ることがあります。車の運転は避け、立ち上がるときはゆっくり動いてください。」
「便秘がひどく、腹部が張る・吐くなどがある場合は早めに相談してください。」
「じっとしていられない、手が震える、首が勝手に曲がる、口が勝手に動く症状があれば教えてください。」
よくある質問
Q. コントミンはもう使わない古い薬?
いいえ。使用頻度は変化していますが、現在も承認・流通しており、統合失調症以外の適応もあります。
Q. 統合失調症なら第一選択?
薬の世代だけで一律に第一選択を決める時代ではありません。患者ごとの効果・副作用・希望などで選択します。
Q. 眠気が強いのは普通?
鎮静は起こり得ますが、日中活動や転倒に影響するほど強い場合は処方調整を相談します。
Q. 便秘は我慢していい?
軽度なら対策できますが、著しい便秘、腹部膨満、嘔吐がある場合は麻痺性イレウスを疑い早めの受診が必要です。
Q. 飲酒してもいい?
眠気・精神運動機能低下が増強する可能性があるため、自己判断での飲酒は避け、医師・薬剤師へ相談します。
Q. 長く飲んでいても副作用は出る?
はい。遅発性ジスキネジアなど長期投与後に問題となる副作用もあります。定期的な観察が必要です。

まとめ|「古い薬」ではなく、適応とリスクを見て使う
- コントミン=クロルプロマジン、第一世代抗精神病薬
- 統合失調症だけでなく躁病、不安・緊張、悪心・嘔吐、吃逆などにも適応
- 通常成人1日30~100mg、精神科領域では50~450mgを分割投与
- 鎮静・起立性低血圧・抗コリン作用に注意
- EPS・遅発性ジスキネジア・高プロラクチンを確認
- QT延長・悪性症候群・血液障害・血栓塞栓症は重大な副作用
- アドレナリンは原則併用禁忌だが救急アナフィラキシー等は例外
- メトクロプラミド、ドンペリドン、リチウム、中枢抑制薬などの併用に注意
- 吃逆・制吐目的では精神科以外から処方されることもある
- 薬の新旧ではなく、患者ごとのメリットとリスクで判断する


参考文献・一次情報
- PMDA|コントミン糖衣錠12.5mg/25mg/50mg/100mg
- PMDA|コントミン筋注10mg/25mg/50mg
- 日本神経精神薬理学会|統合失調症薬物治療ガイドライン2022(2025年12月改訂)
※本記事は2026年10月7日時点で、PMDAのコントミン経口剤・筋注製剤および現行の統合失調症薬物治療ガイドラインを確認して整理しています。個別の診断・治療・処方変更は主治医・薬剤師へ相談してください。


コメント