薬局の時間帯別処方箋枚数はどう分析する?ピーク時間を見える化して人員配置を改善
薬局の時間帯別処方箋枚数は、「曜日×時間帯」で集計し、待ち時間・勤務人数・処方内容を重ねると人員配置の改善に使えます。
「今日は100枚だったから忙しかった」「1日平均80枚だから、この人数で十分」――。
薬局では処方箋枚数を人員配置の目安にすることがありますが、1日の合計枚数だけでは、本当に人手が不足している時間は分かりません。
同じ1日100枚でも、9時〜18時まで均等に来る薬局と、11時〜13時に40枚が集中する薬局では、現場の負担も必要な勤務体制も大きく異なるからです。


- まず処方箋を1時間単位で集計する
- 次に曜日×時間帯でピークを見つける
- 待ち時間・薬剤師数・事務人数を重ねる
- 一包化・疑義照会など処方内容による業務負荷も確認する
- 最終的には「ピーク時に発生する仕事量」と「配置できている人員」を比較する
- 分析後は休憩・早番・遅番・応援時間を変更し、再測定する
- この記事で分かることは?
- なぜ1日の処方箋枚数だけでは不十分なの?
- 時間帯別処方箋枚数はどう集計する?
- ピーク時間はどう見つける?
- 曜日×時間帯はどう見える化する?
- ExcelやGoogleスプレッドシートではどう作る?
- 処方箋枚数だけで人員不足を判断していい?
- 1枚あたりの業務時間は何分で計算する?
- ピーク時の必要人数はどう考える?
- 待ち時間はどう組み合わせて分析する?
- 法令上の薬剤師数とピーク時の人員配置は同じ?
- シフトはどう改善すればいい?
- 休憩時間はピークを避けて自由にずらしていい?
- 薬剤師と医療事務は分けて分析する?
- 電子処方箋や事前受付は何時として数える?
- どの分析方法が人員配置に役立つ?
- 本部へ増員を相談するときは何を出す?
- 現場ではどんな失敗が起こりやすい?
- 分析後はどうPDCAを回す?
- 時間帯別分析でやってはいけないことは?
- FAQ|時間帯別処方箋枚数でよくある質問は?
- まとめ|時間帯別処方箋枚数を「シフトを変える数字」にしよう
- 薬局の数字をもっと体系的に学ぶには?
- 参考文献
この記事で分かることは?
- 薬局の時間帯別処方箋枚数の集計方法
- ピーク時間の見つけ方
- 曜日×時間帯ヒートマップの作り方
- Excel・Googleスプレッドシートでの分析方法
- 処方箋枚数と待ち時間の組み合わせ方
- 薬剤師・医療事務の人員配置の考え方
- 管理薬剤師・薬局長が本部へ人員配置を相談するときの数字

なぜ1日の処方箋枚数だけでは不十分なの?
結論:1日合計では、処方箋が「いつ集中したか」が分からないからです。
たとえば、どちらも1日100枚の薬局だったとします。
| 薬局 | 1日処方箋 | 来局パターン | 特徴 |
|---|---|---|---|
| A薬局 | 100枚 | 9〜18時まで比較的均等 | 仕事を分散しやすい |
| B薬局 | 100枚 | 11〜13時に40枚集中 | 短時間の人手不足が起こりやすい |
1日の処方箋枚数だけなら、A薬局もB薬局も「100枚」です。
しかしB薬局では、昼前後だけ調剤・監査・服薬指導が集中し、患者さんの待ち時間やスタッフの負担が急激に増える可能性があります。
「処方箋枚数が多い薬局=いつも忙しい薬局」ではありません。
人員配置で見るべきなのは、何時に処方箋が集中しているかです。
処方箋枚数そのものの読み方を先に確認したい方は、
「処方箋枚数から何が分かる?薬局の計数管理を超初心者向けに解説」
も参考にしてください。
時間帯別処方箋枚数はどう集計する?
最初は1時間単位で集計し、ピークが見つかった部分だけ30分単位へ細分化するのがおすすめです。
たとえば、受付時刻から次のようにまとめます。
| 時間帯 | 処方箋枚数 |
|---|---|
| 9:00〜9:59 | 5枚 |
| 10:00〜10:59 | 9枚 |
| 11:00〜11:59 | 18枚 |
| 12:00〜12:59 | 22枚 |
| 13:00〜13:59 | 8枚 |
| 14:00〜14:59 | 6枚 |
| 15:00〜15:59 | 10枚 |
| 16:00〜16:59 | 14枚 |
| 17:00〜17:59 | 20枚 |
| 18:00〜18:59 | 12枚 |
この架空例なら、12時台の22枚と17時台の20枚がピーク候補です。
ただし、1日だけを見てシフトを変更するのはおすすめできません。
まず4週間程度を見る
まず4週間程度集めると、月曜・火曜など曜日ごとの違いを確認できます。
ただし4週間は法的な基準ではなく、あくまで実務上のスタートラインです。
季節変動が大きい薬局では、2〜3か月や前年同月まで比較したほうが実態をつかみやすくなります。
特に次のような薬局では注意しましょう。
- 小児科・耳鼻咽喉科の処方が多い
- 感染症流行の影響を受けやすい
- 門前医療機関の診療曜日が偏っている
- 連休前後の変動が大きい
- 在宅訪問が特定曜日に集中する


ピーク時間はどう見つける?
「最大枚数」「平均との倍率」「上位時間帯への集中率」の3つを見ると分かりやすくなります。
最大1時間枚数
まず、もっとも処方箋枚数が多かった1時間を確認します。
上の架空例なら12時台の22枚です。
ピーク比
自局内の比較用指標として、「ピーク比」を作る方法もあります。
たとえば営業時間10時間、1日124枚なら1時間平均は12.4枚です。
ピークが22枚なら、
22 ÷ 12.4 ≒ 1.77
つまり、ピーク時は平均時間帯の約1.8倍の処方箋が集中しています。
「ピーク比」は法令・診療報酬上の公式指標ではありません。自局の時間帯差を比較するため、本記事で便宜的に使用する管理指標です。
上位2時間集中率
1時間だけ突出しているのか、2〜3時間にわたって忙しいのかも確認します。
22枚+20枚=42枚、1日124枚なら、
42 ÷ 124 ×100 ≒ 33.9%
1日の約3分の1が2時間に集中しています。
このような店舗では、全営業時間を同人数にするより、ピークへ勤務時間を寄せる余地があるかもしれません。
曜日×時間帯はどう見える化する?
もっとも分かりやすい方法の1つが「曜日×時間帯」のヒートマップです。
| 時間帯 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 |
|---|---|---|---|---|---|
| 9時 | 8 | 5 | 6 | 5 | 7 |
| 10時 | 15 | 8 | 9 | 8 | 10 |
| 11時 | 24 | 14 | 16 | 13 | 17 |
| 12時 | 22 | 16 | 18 | 15 | 18 |
| 13時 | 9 | 7 | 8 | 7 | 9 |
| 16時 | 12 | 11 | 10 | 12 | 15 |
| 17時 | 18 | 17 | 15 | 16 | 23 |
この架空例なら、
- 月曜日11〜12時が強い
- 金曜日17時も混む
- 13時台は比較的落ち着く
という傾向が分かります。
ExcelやGoogleスプレッドシートの「条件付き書式」で、枚数が多いセルほど濃く表示すれば、数字に慣れていないスタッフにも共有しやすくなります。
ExcelやGoogleスプレッドシートではどう作る?
受付日時から「曜日」と「時間帯」を作り、ピボットテーブルで件数を集計すれば基本形が作れます。
必要なデータ
| 項目 | 例 |
|---|---|
| 受付日 | 2026/8/3 |
| 受付時刻 | 11:23 |
| 曜日 | 月 |
| 時間帯 | 11:00 |
| 投薬終了時刻 | 11:42 |
| 待ち時間 | 19分 |
| 勤務薬剤師数 | 2人 |
| 勤務事務数 | 2人 |
1時間単位にする
受付時刻がA2セルに入っている場合の一例です。
=TIME(HOUR(A2),0,0)
30分単位にする
=TIME(HOUR(A2),IF(MINUTE(A2)<30,0,30),0)
待ち時間を計算する
受付日時と投薬終了日時がExcelの日付時刻形式なら、
=(投薬終了日時-受付日時)*1440
で分単位へ変換できます。
- 受付日時
- 曜日
- 時間帯
- 処方箋枚数
- 待ち時間
- 勤務人数
KPIの考え方から整理したい方は、
「薬局におけるKPI(重要業績評価指標)とは?」
も参考にしてください。
処方箋枚数だけで人員不足を判断していい?
いいえ。枚数だけでは処方内容による負荷の違いを評価できません。
| 処方・対応 | 負荷が変化しやすい理由 |
|---|---|
| 定期・変更なし | 比較的定型化しやすい |
| 初回処方 | 患者情報・副作用歴等の確認が増えやすい |
| 一包化 | 調製・監査工程が増える |
| 散剤・水剤 | 計量・調製等が必要 |
| 疑義照会 | 医療機関への確認時間が発生する |
| 多剤処方 | 重複・相互作用等の確認量が増えやすい |
| 服薬説明が複雑 | 患者対応時間が長くなる場合がある |
厚生労働省の資料でも、薬局薬剤師の処方箋調剤業務には、受付、処方箋入力、鑑査・疑義照会、服薬指導、薬歴記載、計数調剤、一包化など複数の業務が含まれています。【[3]】
したがって、
「1時間に20枚なら薬剤師○人必要」
という全国共通の単純な人数換算を作るのは適切ではありません。
1枚あたりの業務時間は何分で計算する?
全国一律の時間を当てはめず、自局で実測するのがおすすめです。
厚生労働省の検討会資料では、5薬局・76処方箋を対象としたタイムスタディで、処方箋1枚の処理に要した平均時間が12分41秒と報告されています。【[3]】
ただし、この調査は対象数が限定され、液剤等の計量調剤や一包化を要する業務は処方箋1枚のタイムスタディには含まれていません。
「厚労省資料が12分41秒だから、すべての処方箋を12分41秒で計算する」という使い方はおすすめできません。
処方内容・設備・業務分担・患者背景が違うため、自局で実際の業務時間を測定することが重要です。
自局でサンプル測定する
たとえば30〜50処方程度から始め、実際に薬剤師が使った時間を測ります。
| 処方例 | 薬剤師業務時間 |
|---|---|
| 定期・変更なし | 6分 |
| 初回処方 | 10分 |
| 疑義照会あり | 16分 |
| 一包化・確認事項多い | 18分 |
※上記時間は分析方法を説明するための架空例であり、標準値ではありません。
十分な件数を測定できれば、「処方箋枚数」ではなく薬剤師作業分数としてピークを比較できるようになります。
ピーク時の必要人数はどう考える?
実務分析では、その時間帯に発生する「薬剤師作業分数」と、配置薬剤師が使える時間を比較すると理解しやすくなります。
たとえば17〜18時に20枚来局し、自局の実測で1処方あたり薬剤師業務時間が平均8分だったと仮定します。
同時間帯の薬剤師が2人なら、単純な在席時間は、
60分 × 2人 = 120薬剤師分
です。
160分相当の業務が発生しているのに、120分相当しか配置されていなければ、業務が後ろへ持ち越されやすい構造だと推測できます。
ただし、この計算はあくまで自局の業務負荷を見える化する管理指標です。
複数処方の並行作業、事務職員との分担、調剤機器、来局のばらつき、電話・在宅対応などは完全には表現できません。

待ち時間はどう組み合わせて分析する?
処方箋枚数・勤務人数・待ち時間を同じ時間帯で並べると、本当のボトルネックが見つかりやすくなります。
| 時間帯 | 処方箋 | 薬剤師 | 待ち時間中央値 |
|---|---|---|---|
| 9時 | 5枚 | 2人 | 8分 |
| 10時 | 9枚 | 2人 | 10分 |
| 11時 | 18枚 | 3人 | 18分 |
| 12時 | 22枚 | 3人 | 24分 |
| 13時 | 8枚 | 2人 | 9分 |
| 17時 | 20枚 | 2人 | 23分 |
※上表は分析方法を示すための架空例です。
この例なら、12時だけでなく17時にもボトルネックがあることが分かります。
一方、処方箋枚数が多くても待ち時間が大きく増えていない時間帯は、現在の配置や業務フローで吸収できている可能性があります。
中央値を見る
待ち時間は一部の極端に長いケースで平均値が押し上げられるため、中央値も確認するとよいでしょう。
中央値とは、待ち時間を短い順に並べたときの中央付近の値です。
P90も見る
余裕があればP90(90パーセンタイル)も確認します。
たとえば、
- 中央値:15分
- P90:38分
なら、「典型的な患者さんは15分前後だが、一部ではかなり待ち時間が長くなっている」ことが分かります。
法令上の薬剤師数とピーク時の人員配置は同じ?
同じではありません。今回の記事でもっとも重要なポイントの1つです。
2026年8月27日時点で厚生労働省が掲載している体制省令では、薬局で調剤に従事する薬剤師の員数について、一日平均取扱処方箋数を40で除して得た数を基本とする基準が設けられています。1未満の場合は1とし、1未満の端数がある場合は切り上げる扱いです。【[1]】
また、前年の取扱処方箋数を使う際、眼科・耳鼻咽喉科・歯科の処方箋数については、それぞれ3分の2を乗じて計算する規定があります。【[1]】
一方、厚生労働省が掲載する「薬局業務運営ガイドライン」では、業務量に応じて必要な薬剤師数を確保することに加え、「薬局の処方せん受付け状況等を配慮した薬剤師の勤務体制をとること」が示されています。【[2]】
「1日平均40枚だから、薬剤師1人でピーク時間まで問題なく対応できる」という意味ではありません。
法令上の員数基準を満たすことと、患者さんが集中する時間帯に適切な勤務体制を組むことは分けて考えましょう。
シフトはどう改善すればいい?
いきなり採用を増やす前に、勤務開始時刻・終了時刻・休憩・応援時間を30〜60分動かせないか検討します。
たとえば、
- 午前9時台は比較的余裕がある
- 17〜18時に処方箋が集中する
という薬局なら、全員を同じ時間に出勤させるより、一部を遅番にしたほうが合理的な場合があります。
| 現状 | 改善案の例 |
|---|---|
| 全員9時出勤 | 一部を遅番へ変更 |
| ピーク時間に休憩 | 低負荷時間へずらす |
| 17時に勤務人数が減る | 17〜18時まで厚く配置 |
| 特定曜日だけ混雑 | 曜日限定で応援を配置 |
具体的なシフト作成は、
「薬局のシフト管理完全ガイド!公平・効率・人件費対策まで徹底解説」
もあわせて確認してください。
休憩時間はピークを避けて自由にずらしていい?
業務量を見て休憩時間帯を調整することは考えられますが、労働基準法などのルールを守る必要があります。
労働基準法第34条では、労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩を労働時間の途中に与えることが定められています。【[6]】
また、休憩時間は労働者が自由に利用できる必要があります。休憩中に電話・患者対応等を求めている場合、実態によっては休憩とは扱えない点にも注意が必要です。【[6]】
したがって、
「12時が忙しいから13時へ休憩を動かそう」
という分析自体は有用ですが、実際の運用では労働時間、就業規則、労使協定、雇用契約等も確認してください。
薬剤師と医療事務は分けて分析する?
はい。「スタッフ4人」とまとめず、薬剤師と医療事務を分けてください。
たとえば、
- 薬剤師2人+事務2人
- 薬剤師3人+事務1人
では、同じ4人でも処理できる業務の種類が異なります。
受付、入力、薬剤の取り揃え、監査、服薬指導、薬歴など、どの工程で仕事が止まっているのかも確認しましょう。
厚生労働省の「調剤業務のあり方について」では、薬剤師が調剤に最終的な責任を有することを前提に、一定の条件を満たす業務について薬剤師以外の者が実施できる基本的な考え方が整理されています。【[4]】
ただし、業務分担は「忙しいから事務へ任せればよい」という単純な話ではありません。
法令・通知・社内手順・医療安全上の体制を確認したうえで設計してください。
電子処方箋や事前受付は何時として数える?
可能なら「受付時刻」「調剤開始時刻」「患者来局時刻」「投薬時刻」を分けてください。
電子処方箋では、来局前に引換番号等の必要な情報を薬局へ伝えることで、薬局が電子処方箋を取得し、あらかじめ調剤を開始できる場合があります。【[5]】
そのため、患者さんが17時に来局しても、薬局側の作業は16時から始まっているケースがあります。
時間帯別業務量を正確に見るなら、
- 処方箋受付時刻
- 調剤開始時刻
- 患者来局時刻
- 投薬終了時刻
を分けると分析精度が上がります。


どの分析方法が人員配置に役立つ?
| 分析方法 | 分かること | 人員配置への使いやすさ | |||
|---|---|---|---|---|---|
| 月間処方箋枚数 | 店舗規模 | ★★☆☆☆ | |||
| 1日平均枚数 | 平均的な受付量 | ★★★☆☆ | |||
| 時間帯別枚数 | ピーク時間 | ★★★★☆ | |||
| 曜日×時間帯 | 曜日ごとのピーク | ★★★★★ | |||
| 枚数+待ち時間 | 混雑との関連 | ★★★★★ | |||
| 枚数+人数+待ち時間 | 配置不足の可能性 | ★★★★★ | |||
| 業務時間まで測定 | 実際の仕事量 | ★★★★★ | |||
利益や人件費まで含めて計数管理を学びたい方は、
「処方箋枚数が増えても利益が増えないのはなぜ?薬局の『計数管理』を超初心者向けにやさしく解説」
も参考にしてください。
本部へ増員を相談するときは何を出す?
「忙しいです」ではなく、少なくとも5つの数字を出しましょう。
- ピーク1時間の処方箋枚数
- 曜日×時間帯別処方箋枚数
- ピーク時の薬剤師数・事務人数
- 待ち時間中央値・P90
- 残業時間・薬歴等の持ち越し状況
さらに取得できるなら、
- 一包化件数
- 疑義照会件数
- 在宅業務
- 欠品対応
- 電話対応
- 服薬フォロー
などを追加します。
×「月曜は忙しいので1人増やしてください」
○「直近4週間では、月曜11〜13時に1日処方箋の約35%が集中しています。薬剤師2名配置時の待ち時間中央値は22分、P90は41分です。一方13〜14時は受付数が大きく低下するため、まず休憩時間と勤務開始時刻を変更して改善効果を測定したいです」
数字を出すと、「採用する」「応援を入れる」「休憩を変える」「勤務開始時刻を変える」といった選択肢を比較しやすくなります。
現場ではどんな失敗が起こりやすい?
もっとも起こりやすいのは、「1日の総枚数」だけを見て人数を決めることです。
薬局実務では、次のような状況が起こり得ます。
- 9時台はスタッフが多いのに患者さんが少ない
- 夕方にスタッフが帰宅してから処方箋が増える
- 最大ピークと休憩時間が重なる
- 処方箋枚数は減ったのに一包化が増えている
- 外来は少ないが在宅・電話・薬歴で詰まる
この状態で「うちは1日平均80枚」とだけ見ても、本当の問題は見えません。


分析後はどうPDCAを回す?
配置を変更したら、必ず変更前と変更後の数字を比較します。
- Plan:月曜11〜13時に人員不足があると仮説を立てる
- Do:休憩を低負荷時間へ移し、ピーク時の配置を厚くする
- Check:待ち時間中央値・P90・残業等を比較する
- Act:効果があれば標準シフトへ反映する
重要なのは、「人を1人増やした」こと自体を成果にしないことです。
確認するのは、
- 待ち時間が改善したか
- 薬歴等の持ち越しが減ったか
- 残業が減ったか
- 患者対応の余裕ができたか
- 別の時間帯へ負担が移っていないか
です。
改善サイクルの考え方は、
「薬局業務を効率化するPDCAサイクルの実践例とメリットを徹底解説」
も参考になります。
時間帯別分析でやってはいけないことは?
1日だけで判断する
曜日や連休、診療日の影響を受けるため、1日だけでシフト変更を決めないようにします。
処方箋枚数しか見ない
一包化、疑義照会、在宅、電話対応などが抜け落ちます。
薬剤師と事務をまとめる
どの工程がボトルネックか分かりにくくなります。
平均待ち時間だけを見る
中央値やP90も確認すると、長時間待ちの発生を把握しやすくなります。
すぐ増員だけを考える
早番・遅番・休憩・曜日限定応援などで改善できないかを先に確認します。
40枚基準を「処理能力」と解釈する
法令上の員数基準と「薬剤師1人が安全に処理できる処方箋枚数」は同じ意味ではありません。【[1]】
FAQ|時間帯別処方箋枚数でよくある質問は?
Q1. 何枚以上ならピークですか?
全国共通の「○枚以上」という基準はありません。
自局の平均、勤務人数、待ち時間などと比較して判断します。
Q2. 30分単位と1時間単位はどちらがいい?
最初は1時間単位がおすすめです。
ピークが判明した時間帯だけ30分単位まで細かくすると効率的です。
Q3. 何日分集めればいい?
まず4週間程度から曜日差を見ると分かりやすいでしょう。
ただし季節変動が強ければ数か月、前年同月も比較します。
Q4. 一包化が多い薬局でも枚数で比較できる?
枚数だけでは不十分です。
一包化件数や実際の作業時間を合わせて確認してください。
Q5. 法令上の40枚基準を満たしていれば時間帯分析は不要?
不要ではありません。
一日平均取扱処方箋数を基礎にした法令上の員数基準と、時間帯別の患者集中を見る分析は目的が異なります。【[1]】【[2]】
Q6. 電子処方箋は何時にカウントする?
業務負荷を見るなら、受付・調剤開始・来局・投薬を分けるのがおすすめです。
電子処方箋では来局前に調剤を開始できる場合があるためです。【[5]】
Q7. 待ち時間は何分を目標にする?
本記事では全国一律の目標値は設定しません。
まず自局の現状値を測り、配置変更前後でどれだけ改善したかを見る方法が現実的です。
Q8. 人員を増やしてもらえない場合は?
時間帯別枚数・勤務人数・待ち時間・残業などを数字で示しましょう。
増員以外にも勤務開始時刻、休憩、応援時間、業務分担という改善策があります。
Q9. 医療事務の人数も記録する?
はい。
受付・入力がボトルネックなら、薬剤師だけ増やしても改善しない場合があります。
Q10. 毎月分析する必要はある?
少なくとも配置変更後は再測定しましょう。
繁忙期、診療時間変更、スタッフ構成変更、近隣医療機関の変化などがあった場合も再分析する価値があります。
まとめ|時間帯別処方箋枚数を「シフトを変える数字」にしよう
- 処方箋は1日合計ではなく時間帯別にも見る
- 曜日×時間帯で本当のピークを探す
- 待ち時間・薬剤師数・事務人数を重ねる
- 一包化・疑義照会など処方内容の重さも考慮する
- 法令上の員数基準と実務上のピーク配置は分けて考える
薬局の計数管理で重要なのは、数字を集めること自体ではありません。
数字を使って、患者さんの待ち時間やスタッフの負担を改善することです。
「最近なんとなく忙しい」で終わらせず、まず処方箋を1時間単位に分けてみてください。
そこへ曜日、待ち時間、勤務人数を重ねるだけでも、これまで見えなかった薬局の「忙しさの波」が見えてきます。

薬局の数字をもっと体系的に学ぶには?
処方箋枚数、売上、在庫、人件費などを「なんとなく」ではなく数字で管理したい方は、拙著『はじめての薬局計数管理』でも、薬局の数字の見方を初心者向けに整理しています。
時間帯別処方箋枚数をきっかけに、店舗全体の計数管理まで学びたい方は参考にしてください。
著書一覧はこちら:
ゆずまるブログ|著書・執筆した本
参考文献
- 厚生労働省「薬局並びに店舗販売業及び配置販売業の業務を行う体制を定める省令」
厚生労働省公式ページ
最終確認日:2026年8月27日 - 厚生労働省「薬局業務運営ガイドラインについて」
厚生労働省公式ページ
最終確認日:2026年8月27日 - 厚生労働省「調剤(その2)」第9回 薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会 参考資料2(改)
厚生労働省PDF
最終確認日:2026年8月27日 - 厚生労働省「調剤業務のあり方について」(平成31年4月2日 薬生総発0402第1号)
厚生労働省公式ページ
最終確認日:2026年8月27日 - 厚生労働省「国民の皆さま向け 電子処方せんQ&A」
厚生労働省公式ページ
最終確認日:2026年8月27日 - 厚生労働省「労働基準法」第34条(休憩)
厚生労働省公式ページ
最終確認日:2026年8月27日
※本記事は薬局運営・業務改善に関する一般的な情報提供を目的としています。実際の薬剤師配置、勤務時間、休憩、業務分担等については、薬機法、薬剤師法、労働関係法令、関係通知、自治体の取扱い、就業規則、社内規程等を確認したうえで個別に判断してください。


コメント